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青白く光っていた球体が緑色に変化した。ピコが作っていた球体からレディバードが作る球体に変わったのだ。
(マスター、ピコを援護するために攻撃許可を下さい)
「援護ってどうやるんだ?」
(対人防御モードから対戦闘モードへ移行します。許可を下さい)
「わかった。許可しよう」
信吾はわかっていなかったが、ここはレディバードに任せようと思った。
(和久井君、聞こえる?レディバードの指示通りに動いてくれる?)
レナからの念話が聞こえてきた。
「わかった。レディバード、おまえの指示に従うよ」
(ありがとうございます。マスター)
信吾のシールドが輝きを増していく。まるでここにいますと言わんばかりの輝きでゆっくりと上昇を始めた。
「どうするんだ?」
このままだと敵に発見されてしまう。
敵が信吾の存在に気が付いたのか、小型強襲揚陸艦が二隻こちらに向かってきた。
(まずい、気づかれたぞ!)
信吾の叫びが念話となって周りに広がっていく。
(和久井君ですか?どうしてここにいるんです。早く逃げて下さい!)
宮寺だ、宮寺麻衣の念話が信吾にも聞こえてきた。
(助けに来たんだ!)
(レナさんはどうしたんですか?彼女と一緒に逃げて下さい。私達はもうダメです。ありがとう、助けに来てくれたことだけで十分です)
宮寺から覚悟を決めた思いが伝わってきた。このままじゃだめだ。必ず宮寺達を助けなければいけない。
(マスター、攻撃を開始します)
信吾のいるシールドから緑色の光りが束になって敵の小型強襲揚陸艦に向けられ放たれた。光りは矢のごとく敵艦を貫く。一番高いところを飛行していた敵艦が火を噴いた。
バランスを失い地面へゆっくりと落ちていく。その時、一番下を飛行していた一隻の敵強襲揚陸艦が戦隊を離れだした。
(敵艦奪取に成功。アイリス小隊、援護するわ。和久井君、戦域を離れて!)
レナからの念話が聞こえる。どうやって敵艦を乗っ取ったのかはわからないが、一番下を飛行していた敵艦を奪い取ったようだった。
(マスター、空間転移します)
「レディバード、これは命令だ。レナのところに転移しろ!」
(了解しました、マスター)
気が付くと、テレビで見た宇宙船のコックピットのような場所に座っていた。
「レナ?」
隣のシートにレナが座っている。目の前のキャノピー越しに敵艦が見えた。
「和久井君?捉まっていてよ!」
信吾はシートを両手で掴んでいた。
レナは乗っている艦をそのまま敵艦へ向け進め敵艦の目の前で急旋回させた。乗っている艦は横滑りして敵に真横から突っ込んでいった。
かなりの衝撃で信吾はシートから振り落とされそうになった。
(めちゃくちゃするわね神前少尉。敵艦が戦闘空域から離れていくわ)
宮寺から明るい声が聞こえる。でも敵の方が数が多い。どうして逃げ出したのだろう?
「ここは地球だからね。共和国軍も私達と同じように、この星の政府とかに見つかっちゃまずいんだよね」
レナが信吾の疑問に答えるように言った。確かに信吾のいるこの星、地球には帝国や共和国などの宇宙をまとめている政府組織があることを知らないはずだ。
こんな強襲揚陸艦が地球人に見つかってしまったら、共和国軍もまずいことになるだろう。
「何処かに着陸しないとね」
県立公園の駐車場にひとまず下りることにした。もう一隻、公園内に墜落してしまったはずだ。この二隻をどう処分するかは宮寺達と相談しなければならない。
信吾の住む街には在日米軍の通信基地があり、隣町には航空自衛隊の基地もある。このまま強襲揚陸艦を頬って置くわけにはいかない。早く何とかしなければ、大きな問題になってしまう。
駐車場に無事小型強襲揚陸艦を着陸させたレナは信吾と一緒に艦から下りた。
「でかいな」
バスより大きい。中には大人が二十人くらい乗り込むスペースはある。レナがこの艦を乗っ取ったときには敵は何人乗っていたのだろうか。
「レナ、怪我とかしなかった?」
信吾は心配になりレナに聞いた。
「うん、ちょっとだけだから平気だよ」
宮寺達が駐車場にやって来た。
「さすが、神前少尉ですね。こんな艦でも自由に操ることが出来るんですね」
「あたしは、操縦とかが専門だからね。アイリス小隊は全員無事だった?」
「ええ。助けてって言ったつもりはなかったのですが、全員無事でした。一応お礼は言わせてもらいますね」
レナの問いに宮寺が答えている。とにかく全員無事だったようだ。
(敵、高速接近中!)
レディバードが、信吾に伝えた。ほぼ同時に全員が各自のストーンから敵が近づいていることを聞いたらしく、ほとんど一斉に真上を見た。
「やはり来た!」
レナが言った。真上から真っ赤な球体が接近してくるのは、おそらく共和国軍の指揮官か誰かだろう。
駐車場の少し離れた場所に降り立ったのは、レナの元親友、蒲生唯だった。
「未開惑星域での非常事態および緊急回避のための一時休戦条約に基づいてここに来た」




