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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
38/43

037

 時間はとっくに九時を過ぎている。信吾は駅に向かって走り出そうとした。


「和久井君」


 暗がりから声をかけられて、一瞬ぎょっとしたが直ぐに誰だかわかった。


「宮寺先輩、いつからそこにいたんですか?」


 ファミリーレストランの出入り口がよく見渡せる場所に宮寺が立っていた。


「アイリス小隊でファミレスを包囲しています。風間が出てきたら逮捕します。それでいいですか?」


「なんで俺に聞くんですか?」


 風間を逮捕するのも宮寺達の仕事なのだろう。なのにどうして信吾に許可を取るのかがわからなかった。


「風間がここにいることを連絡してくれたのは神前少尉です。私達は和久井君達の中の会話も全てモニターしていました。和久井君が第五皇子として風間と手を組むのなら私達は風間を捕まえることはしません」


 風間を逮捕するのも逃がすのも俺の意思次第ってことかと信吾は思った。


「中の会話は全て聞いていたのですか?」


「はい、神前少尉のことも全て聞いていました。あっ、でも、他言はしませんよ」


 信吾には、宮寺が全てを見通している気がした。


「俺にどうしろって言うんですか?」


 正直言って、信吾はどうすればいいのかわからなかった。


「それは自分で決めることじゃないですか?和久井君は、神前少尉がどんな気持ちでここまで駆けつけて、どんな気持ちでここから帰ったか、考えてなかったんですか?」


 レナの気持ち?俺に対するレナの気持ちって?


「風間のことを捕まえて下さい。室田先輩のこともありましたので」


 信吾は駅方向へと急いだ。


「ありがとう。和久井君」


 宮寺が信吾に対して深々と頭を下げていた。


 信吾は急いで自宅へ向かっていた。早くレナに会いたい。会って謝りたかった。


 全て自分が悪いってことはわかっている。自分が変な意地を張っていたためにレナを傷つけてしまった。


「ただいま!」


 自宅に飛び込むようにして帰ってきた。


 リビングには瞳が一人、ビールを飲みながらくつろいでいた。


「レナは?」


「自分の部屋じゃないの?」


 鞄をソファーに投げるように置いて、信吾はレナがいる瞳の家に向かった。


 瞳の家のリビングから家の中に入ろうとしたが、鍵がかかっていて中に入ることが出来ない。仕方ないので玄関へ回ったが、ここも鍵がかかっていた。


「レナ」


 信吾は普段から自宅と瞳の家の鍵を両方持ち歩いている。瞳もレナも同じように両方の鍵を持ち歩いていた。


 合い鍵を使って、瞳の家の中へ入っていく。二階のレナの部屋に行くために階段を駆け上がった。


「レナ!」


 部屋のドアをノックしたが中から反応はなかった。もしかしたら怒っているのかも知れない。信吾はレナの部屋のノブをそっと回してみた。


「空いてる?」


 普段から鍵なんかかけることはないと思っていたが、案の定、ドアはすんなりと開いた。


「入るよ、レナ」


 部屋の中は真っ暗で、そこには誰もいなかった。


 もしかしたら、レナは何処かに行ってしまったのだろうか?


 信吾は急に不安になった。かなりレナのことを傷つけてしまっている。もうここから出て行って二度と戻ってこないかも知れない。


 一階から物音が聞こえた。


「下か!」


 信吾は階段を駆け下りた。物音はキッチンの方から聞こえてきた。


「レナ?」


 真っ暗なキッチンの方へ声をかけた。


「和久井君?」


 不安げなレナの声。よかった。レナはここにいたんだ。


 信吾はキッチンの奥へ行こうとした。


「来ないで!」


 レナに意外なことを言われた。


「どうして?俺が悪かったよ。謝りたいんだ」


「わかったよ。わかったからお願い、こっちに来ないで!」


 信吾は手探りでキッチンの明かりを捜した。瞳の家は信吾の家と作りは一緒のはずだった。


「確か、この辺にあったはずだよな」


 手探りでやっと見つけたスイッチを信吾は付けた。


「きゃぁ!」


 眩しい明かりの下、裸でバスタオルだけを身体に巻いたレナがキッチンの奥でしゃがみ込んだ。


「ご、ごめん」


 信吾は慌ててキッチンの明かりを消した。


「ごめんね。シャワー浴びて、シャツとか下着とか洗濯機の中に入れちゃったんだよ」


 キッチンの奥でレナが何かをしている音がする。キッチンの奥は洗面所でバスルームへ繋がっているのだった。


「ごめん、そんな格好をしているなんて知らなかったから」


 信吾も慌ててしまった。


「着替えてくるから待ってて」


 信吾が立っている直ぐ横をレナが通り過ぎていく。シャンプーのいい香りがして思わず抱きしめたいという衝動に駆られた。


 わざと狭いところに立っていたわけではないが、少しだけレナの肩が信吾の胸元に触れた。


「ごめんなさい」


 シャンプーの香りを残してレナが階段を駆け上がっていった。


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