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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
36/43

035


 昼休みに一人屋上で弁当を食べている信吾のところに宮寺麻衣がやって来た。


「昨日のデート、楽しかったですか?」


 屋上に置いてあるベンチに座っていた信吾の隣りに来て宮寺が座った。持っていた小さな弁当箱を広げ信吾の隣で食べ始める。


 信吾は答えなかった。宮寺達のことだ、すでに信吾が告白して振られたことくらいその情報網で知っているだろう。


「昨日、あの後リトルボムを三体園内で発見して処分したんです。共和国側は和久井君達があそこに行くことを知っていたようですね」


「帰ったんじゃなかったんですか?」


 遊園地側の空き地で宮寺と別れたとき、駅の方へ向かって歩いていったんじゃなかったのだろうか?帰るふりをして遊園地内へ戻ったのだろうか?


「二人の邪魔はしたくありません。帰ったふりをして遊園地内に戻りアイリス小隊で調べていたんです」


「じゃあ、知っているんですよね」


 俺が振られたことを。


「彼女、神前少尉はあれでも無理をして頑張っているんですよ」


「レナが?」


 何を無理しているんだろう。

「彼女はもともと空間航空隊所属だったことは知っていますよね。彼女の身体は戦闘機のパイロットとして最高に作られているんです。あらゆる乗り物を自由自在にコントロールできる特殊能力が持たされているのです。でも今は私達と同じ地上部隊としてここで軍務に就いています。なぜだかわかりますか?」


 そんなことはわからない。帝国軍の、近衛師団の人事なんか信吾にはわかるはずもなかった。


「彼女、ここに来たばかりのときに配置転換の移動命令が来たのですが自分で再申請してここに残ったのですよ。知っていましたか?」


「知らなかった。そんなことがあったなんて」


「陸戦や生身の空戦を経験したことがない彼女がどうして危険を承知でここに残っているか知っていますか?和久井君も見ているでしょう、彼女が戦い傷つくところを。神前少尉はここに来るまであのような戦闘をしたことがないんです。パイロットとしては超一流の彼女ですが、陸戦に関してはほとんど素人です。だからいつも怪我をしているんです。自分がいつ戦死してしまうかわからない状況でも、それでも彼女はここに残って戦っているんです」


「どうしてなんだろう?」


「知りたいですか?唐揚げひとつもらいますね」


 宮寺が信吾の弁当箱から最後にとって置いた唐揚げを横取りした。


「彼女がここにいるのは和久井君が好きだからです」


「えっ?」


 美味しそうに唐揚げを食べている宮寺のことを横から見入ってしまった。レナが俺のことを好きだからここにいるのか?それじゃなんで昨日の告白を断ったのだろう。


「私は、そんな頑張っている神前少尉を応援したいです。だから和久井君も彼女に答えてあげないといけません」


「どうすれば良いんですか?」


「振られたからって落ち込んでいてはいけません。自分から変わらないと神前少尉だって振り向いてはくれませんよ」


 宮寺は弁当箱をしまいだした。


「それだけ言いたかったのです。唐揚げごちそうさまでした」


 宮寺は立ち上がるとそのまま校舎内へ下りていった。


 どうすれば良いんだろう?


 放課後になってもそればかり考えていた。


「帰ろうよ、和久井君」


 レナは、今までと同じように信吾に接してくれている。遊園地での告白がなかったことのように普通に接してくれているのだ。


「ああ」


 だけど、信吾には耐えられなかった。告白して振られてしまったのだ。でもレナは信吾のことが好きだと宮寺は言っていた。ならば、どうすれば良いんだ?


「どうかしたの?」


 横を歩くレナが、心配そうに信吾のことを見ている。


「べつに、なんでもない」


 帰り道、いつもの県立公園の遊歩道を歩いたいるときだった。二人とも、学校から一言もしゃべらないでここまで来ていた。


 自転車に乗った小学生数人が信吾とレナのいる直ぐ脇を通り過ぎていく。


 レナが、ぽつりと言った。


「今までどおりでいようよ」


「えっ?」


 真っ直ぐに信吾のことを見るレナに、信吾は何て答えていいかわからなかった。


「あたしは、和久井君の側にずっといるよ。それでいいんじゃないの?」


 レナは、遊園地での告白のことを言っているのだろう。


「俺、気にしていないから」


 信吾は、自分にウソをついた。


「俺、振られたこと、気にしていないから。だから、今までと同じように話とかして欲しいんだ」


「あたしは・・・」


 レナが、何を言いたかったのかはわからない。けれど信吾もレナとの関係を壊したくはなかったのだ。


「今までと同じように、家族みたいな、友達みたいな関係でいて欲しいんだ」


 信吾は、レナの空いている左手を取ろうとした。


「嫌っ!」


 レナが左手を引っ込める。右手に持っていた鞄を胸元に抱え直して信吾から数歩離れるように後ろに下がった。


「どうして?」


 信吾には、わからなかった。レナの気持ちが。


「やっぱり、無理だよ。和久井君は皇子なんだし、あたしはただの近衛兵だもん」


「そんなこと、関係ないじゃないか!」


 またその話かと信吾は思った。せめて、ここにいる間は兵士とか皇子とかの話は持ち出して欲しくなかった。


「あたし、先に帰るね」


 レナは家の方角へ駆け出していた。信吾はその後ろ姿を見送りながら追いかけようとはしなかった。


「なんでこうなってしまうんだ!」


 今日はもう、レナとは会いたくなかった。信吾は公園の来た道を駅の方へ戻りだした。


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