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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
26/43

025

「おはようございます」


 宮寺が家の前で待っていた。宮寺が信吾を護衛するのは室田が仕掛けて来るからだったはずだ。室田が逮捕されてしまった今は、護衛する理由がない。


「おはようございます。どうしたんですか?」


「別に何でもありません。神前少尉は?」


 レナはまだ家にいると告げると、そうですかと言いながら宮寺は足早に歩く信吾の後から付いてきた。


「室田軍曹は八十二師団本部へ連行されました。取り調べの後、配置転換になると思います。それだけ直接会って報告しようと今日も来たのです」


 暫く歩くと、県立の中央公園だ。広い公園の中をいつもの通りに歩いていく。信吾の直ぐ後ろに宮寺も続いている。


「喧嘩したんですか?」


 ジョギングをしている青年が信吾達を追い越していった。信吾が振り返ると宮寺が不思議そうに首をかしげる。


 宮寺の後ろに犬を散歩させている老人がいる。その後ろ、離れたところにレナがこちらの様子を覗うよう立っていた。


「してないです!」


「嘘、変ですよ。昨日は抱き合うほど仲が良かったのに」


 宮寺がレナのいる方に振り返った。


「先に行きます!」


 抱き合ったんじゃない。怪我をしたレナを助けただけじゃないか!


 足早に駅に向かって歩き出した信吾を小走りになりながら宮寺が追ってきた。


「キス、したんですか?」


「しませんよ!」


「押し倒さなかったんですか?」


「どうしてそんなことばかり聞くんですか?」


 信吾は急に立ち止まった。そのために宮寺が後ろからぶつかりそうになった。


「神前少尉みたいな女の子にはその位しないとダメです。特に神前少尉は軍務に真面目そうですけど恋愛関係は奥手みたいですから」


「じゃあ、宮寺先輩は押し倒されたことがあるんですか?」


「えっ?」


 宮寺が固まってしまっている。


「俺、先に行きますね」


「大人をからかわないで下さい」


 信吾が駆け出すと、宮寺も後に続いてくる。その遥か後ろをレナが追いかけてきていた。


 駅に着き、そのまま来た電車に飛び乗った。宮寺とレナがちょっと遅れてホームに来たが、ぎりぎりの所で同じ電車の信吾より二つ後ろのドアから乗ったみたいだった。


 走る電車の中で信吾は今朝のことを考えていた。どうしてレナは俺の気持ちをわかってくれないんだろうか?瞳がレナに対する接し方のヒントを与えてくれたのに、レナがあんな考えじゃ俺はどう接すればいいんだ。


 窓の外の流れる風景を見ながら、信吾はそんなことを考えていた。電車からは、住宅地が続いているのが見える。間もなく隣の駅に着くことを車内アナウンスが告げている。


「俺の気持ちって何だろう?」


 ふと声に出していた。隣に立って新聞を見ていた会社員がチラリと信吾の方をみたが、直ぐに視線を紙面に戻す。


 俺はレナに家族として接しようと思っている。でもそれはレナとの接し方だ。レナに対する俺の気持ちって、何なんだろう?俺はレナのことをどう思っているのだろう?


 電車が駅に着く。押し流されるようにドアから出た信吾はそのまま改札を抜け早歩きで学校に向かう。歩きながら信吾は自分とレナのことを考えていた。


 教室に入って自分の席に着くと、遅れて入ってきたレナが直ぐに信吾の所に来た。信吾はレナが怒っているなら無視をしようと決めていた。


「今朝はごめんなさい」


 意外にもレナが素直に謝ってきた。


「俺の方も、少し言いすぎたよ」


 あの時は自分の正直な気持ちを言ったから、言い過ぎたとは思っていない。でも信吾は男だからここはレナを立てて素直になろうと思った。


「宮寺先輩に怒られちゃった。価値観の違いでしょうって」


「価値観?」


「あたしも暫くはここに留まるんだから、ちょっとはここの生活にも慣れないとね」


 レナは、それだけ言うと自分の席に戻っていった。


 信吾はレナの言った言葉に引っかかりを感じていた。価値観はやはり違うのだろう。信吾のように平和な世界で暮らしている者と、レナのように戦いながらいつ自分が死んでしまうかわからない世界にいる者、それだけでも考え方が違ってくるのだろう。


 窓の外に目をやると、青い空が眩しい。白い雲がゆっくりと流れていく。


 信吾が引っかかりを感じたレナの言葉はそんなことじゃなかった。暫くはここに留まるとレナは言っていた。暫くって言うことは、いつかはここを出て行くのだろうか?


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