024
瞳の家は信吾の家の隣にある。リビングから庭を通っていけば瞳の家のリビングだ。庭を挟んで隣の家のリビング同士が繋がっている。
リビングから瞳の家に入った。家の間取りは信吾の家と同じで信吾の部屋に当たるところが、レナの部屋だった。
勝手知ったる瞳の家、二階に上がるとレナの部屋のドアをノックした。
「はい」
レナが直ぐに返事をする。寝ているんじゃないかと思っていたが、どうやら起きているようだ。昨夜の怪我はもう大丈夫なのだろうか?
「朝ご飯だから、俺の家に来てくれ」
怪我のことも心配だったが、それだけ言って家に戻ろうとした。
「和久井君?」
ドアが開き、レナが顔を出した。すでに制服に着替えていて直ぐにでも出かけることが出来そうな姿だった。
「怪我はもういいの?」
昨日、レナは右腕に大怪我をしていたはずだった。宮寺達が傷の手当てをしてくれたのは憶えている。レナは多少の怪我なら自分の魔力か何かの力で眠っているうちに回復するようだ。
「入って」
レナが部屋のドアを大きく開いた。
「いいの?」
「うん」
信吾は、今まで同年代の女の子の部屋に入ったことはない。瞳の部屋にさえ今でも入れてもらうことは出来ない。もしかしたら女の子の部屋って初めて入るんじゃないか?少しだけ期待しながら信吾はレナの部屋に入った。
カーテンやベットカバーが淡いピンク系の色で統一された室内。いつ運ばれたのだろうか、真っ白なクローゼットとドレッサー、窓際には勉強机や本棚が信吾の部屋と同じように置いてあった。
「女の子の部屋だね」
感じたままレナにおどけて言った。ぬいぐるみとかないが、部屋のカラーリングは間違いなく女の子好みの色使いだ。その淡い色遣いの部屋の中央にレナは立ったままで入ってきた信吾を真剣な顔で見ている。
「お願いがあるの」
「何?」
改まって何だろう?瞳さんに聞かれちゃまずいことかなと信吾は思った。
「むちゃをしないで下さい」
「むちゃ?」
むちゃなんかしていないぞ?何のことだろうか?
「和久井君に何かあったらあたしが困るの。和久井君は何もしなくていいからむちゃだけはしないで」
レナは、昨日のことを言っているのだろうか?でも、信吾だってレナを護りたいと思って行動しただけだ。
「俺はレナを護りたかったんだ」
「和久井君のことはあたしが命に代えても護るよ。それがあたしの使命だから。和久井君は、あたしに何かあった場合はお願いだから逃げて」
「レナのことを置いて逃げるなんて出来ないよ!」
「あたしの替わりの兵士は沢山いるの。でもね、和久井君は皇子なんだから代りはいないんだよ」
信吾は急に腹が立ってきた。
「何言ってるんだよ!レナはレナで、レナの替わりなんていないだろう!」
「あたしに何かあった場合、替わりの兵士は直ぐに補充さる。補充に時間がかかるときは宮寺先輩にお願いしてあるから」
「ふざけるな!」
信吾はレナのことを家族だと思ってここに来た。理由はどうであれ信吾のことを護ってくれると言ったレナに対して少なからず好意を抱いていた。もっとレナのことを知りたい。もっとレナの側にいたい。レナに何かあったときはレナのことを護りたい。そう思っていたのに。
「どうしてわかってくれないの?」
「わかってくれないのはそっちだろう!」
自分の気持ちがうまく伝えられない。レナの気持ちがよくわからない。
「瞳さんが待っているから早くこっちに来てくれ!」
レナの部屋を出てドアを勢いよく閉めた。レナが何か言っていたようだったがそのまま信吾は自分の家に戻っていった。
レナが信吾の家に来ると同時に信吾は学校へ向かうことにした。
「俺、先に行くから」
瞳がレナにどうかしたのか聞いていた。レナが信吾に何か言ったようだったが、それも無視して信吾は家を出た。




