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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
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 信吾達の住むこの町を南北に貫いて私鉄が走っている。信吾の住んでいる家はこの私鉄の駅から東へ県立中央公園を抜けた先の住宅街の中にある。信吾達は毎日、中央公園の中を抜け道として使い駅へ行き来していた。信吾の住んでいる住宅街は十数年前に作られたこの町でも比較的に新しい住宅地だった。


 対して駅の反対側は大手のデパートが建ち並ぶ繁華街でそのさらに先に古くからの住宅街がある。この辺りは昔から裕福な家が多いのか比較的大きな屋敷や邸宅と言う建物が多いところだった。


「でかい家だろう」


 その中でも、かなり大きな方に分類される家の前に信吾達は来ていた。


「ここが私の家です」


 西園寺由美子が大きな門の前に立つ。そのまま門の横に備え付きの通用口から家の敷地へ入っていく。


「なっ!でかい家だろう」


 西園寺の後を相川が追いかけるように通用口から入っていった。


 信吾はレナに先に入るように進めてレナの後から西園寺の家の敷地内へ入ってみた。


「本当だ。でかい!」


 ここに来る間、相川が「でかい、でかい」と連発していた。信吾が住む家とレナの住む瞳の家を足しても西園寺家の敷地の十分の一にもならないだろう。


 門から西洋風の大きな屋敷まで舗装された道が続く。庭は芝生になっていて所々に花壇があり綺麗な花が咲いている。


「立派なお屋敷だね」


 レナが先を歩く西園寺に追いつこうと早歩きで歩き始めた。


「来てみてよかったな。しかしここまででかいとは思わなかったぜ」


 相川が周りを見ながら感心している。信吾も駅の反対側にこんな大きな屋敷があるとは知らなかった。


「お帰りなさいませ、由美子お嬢様」


 屋敷の前で出迎えてくれたのはメイド服を着た信吾達と同じ年齢くらいの女子だった。


「風間さん、今日はお友達を連れてきたの。応接間にお通しして」


「はい。かしこまりました」


 風間と呼ばれたメイドが信吾達を屋敷内へ案内してくれた。


「お嬢様はお着替えになってからまいりますので、こちらでお待ち下さい」


 通された応接間は、その部屋の広さだけで信吾の家が入ってしまうほどの大きさだ。壁には小学校の頃美術の教科書で見たことのあるような風景画が飾られてあった。


「すげえ家だなぁ。お城みたいだぜ」


 相川が感心しながら辺りをきょろきょろと見回している。信吾は勧められたソファーに座った。信吾の家のソファーとは段違いの座り心地だった。


「素敵なお部屋ね」


 レナが風間から勧められたソファーに座る。


「ありがとうございます。お嬢様もお喜びになると思います」


 信吾は自分が凄く場違いなところにいる気がして何だか落ち着かなかった。天井からは大きなシャンデリアが下がっていて、応接間の奥にはグランドピアノが置いてある。相川を見ても何だか落ち着いていない様子で、まだ周りをきょろきょろ見回している。レナだけがこのような場所に慣れているのか落ち着いているように見えた。


「お嬢様がお友達を連れて来たのは久しぶりです。どうぞごゆっくりしていって下さい」


 風間が応接間から出て行く。広い応接間に三人は残されていた。


「でも、来てみてよかった」


 レナがソファーに座りながら庭が見える窓から外を見て言う。庭は英国式庭園になっており、庭師みたいな何人かの人達が手入れを行っているのが見えた。


「由美子ちゃんはここに来て最初の友達だもんね」


「俺は?俺は?」


「うん、相川君も友達だよ」


 レナが笑っている。最初は場違いな場所に案内されたと思っていた信吾だったが、レナの笑顔や相川のバカ騒ぎを見ているとだんだんとこの場所にも慣れてきたのがわかった。


 昼休みのことだった。


「私の家に遊びに来ませんか?」


 信吾と相川が昼ご飯を食べているとそこにレナと一緒に西園寺がやって来た。


「西園寺さんの家に?行く行く、絶対に行く!」


 相川が食べかけのパンを口からこぼしそうになっている。


「あたしも呼ばれたの。和久井君達も一緒に帰りに寄って行こうよ」


 レナが桜田高校に転校してきて最初に出来た同姓の友達が西園寺だった。


 西園寺は面倒見が良いところがあり女子達に人気はある。男子達にもその美形から人気はあったのだが、何処か冷たい人という感じがするためか男子とは一緒にいるところはあまり見たことはなかった。実際に信吾も宮寺に生徒会室に呼ばれたときが西園寺と始めて話をしたときだったが、その時も冷たい人だなと感じていた。


 レナと西園寺が友達になり、その関係で西園寺とも一緒に話すようになってそれが誤解だと言うことに気が付いた。


「うん、行こう」


 レナの友達だから西園寺のことも少しだけ気にはなる。それに相川が西園寺のことを好きになったのか、物凄く気にしているのがよくわかっていた。ここは間に入ってあげようと信吾は思った。


 そして放課後、西園寺の家に遊びに来たのだった。


「ごめんなさい、お待たせしちゃって」


 質素なワンピースに着替えた西園寺が信吾達が待つ応接間にやってきた。学校で見ている制服姿の西園寺も美人だが、今の姿の西園寺もなかなかの美形だった。


「由美子ちゃん、綺麗だね」


 レナが素直な気持ちを言ったのだろう。信吾も西園寺が綺麗だと思った。


 西園寺が礼を言い流れるようにソファーに座った。


「風間さん、昨日の御菓子まだあるかしら」


「ただいまお茶と一緒にお持ちいたします」


 応接間の隣から風間の声がする。直ぐ隣にちょっとしたキッチンのような部屋があり応接間の客に直ぐに持て成しが出来るようになっているようだ。


 暫くたわいない話をしていると風間が紅茶とクッキーを持ってきた。


「昨日、風間と一緒に私が作ったんです」


 出されたクッキーを西園寺がみんなに勧めた。


「美味しい!」


 レナが美味しそうにクッキーを食べている。


「お嬢様、料理も得意なんですよ。毎日のお弁当も私の分まで作ってくれるんです」


 風間が紅茶を入れてくれる。信吾が家で飲んでいるティーパックより断然美味しい。


「へぇ、自分で弁当作っているんだ。凄いね。俺なんかいつもパン買っているんだぜ」


 確か相川の家は、両親が共働きで家を朝早く出て行く。だから弁当を持ってきたことはめったになかった。


「作ってあげましょうか?」


 意外なことを西園寺は言った。


「俺に弁当を?」


 相川も驚いている。


「やったね相川君。由美子ちゃんの手作り弁当だよ」


「いいなぁ相川は、羨ましいよ」


 レナと一緒になってからかうように信吾も言った。正直言うと本当に羨ましかった。信吾はいつも瞳が作ってくれる弁当を学校に持ってきていたが、それとこれとじゃ訳が違うと信吾は思った。好きな人に作ってもらった弁当を食べるのはどんな弁当だって美味しいに違いない。信吾もレナに弁当を作ってもらいたくなり何げなくレナの方を見た。


「レナちゃんも和久井君に作ってあげたらどうですか?お弁当」


 西園寺がクッキーを食べていたレナに言ったのを聞いて、信吾は自分の顔が熱くなっていくのを感じていた。


「あたしが?」


 レナがクッキー片手に驚いて信吾の方を見ている。そこで目が合ってしまった。


「作ってくれるの?」


 信吾も思わず聞いてしまった。その時自分の顔が真っ赤になっていたに違いない。その場の雰囲気だったのか、もしかしたらレナの作ってくれた弁当を食べたいという本心だったのか信吾にもわからないがそう聞いてしまっていた。


「いいよ。明日早起きして瞳さんに教えてもらうわ」


 食べかけのクッキーを口に運びながらレナが答えてくれた。


「良かったですね。和久井君」


 西園寺が静かに紅茶を飲んだ。


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