015
「あたしがみんなを殺したんだよ」
芝生がなくなっている広場の前に立ち、小さな声でレナは言った。辺りはもう薄暗くなってきており、街灯がなくなっている芝生広場跡はかなり暗くなってきていた。
レナの話を聞き終わって、信吾はどう言葉を掛けていいのか、わからなくなっていた。この話が事実なら信吾にとってあまりにも重たい話だった。
信吾の知らないレナのことを知りたいと、半ば好奇心で聞いてしまった。レナにとってこの話は触れて欲しくない過去じゃなかったのだろうか?レナは信吾に言われたからこの話をしてくれたのだろう。それは信吾が第五皇子でレナは皇子からの命令として仕方なく話してくれたのではないのか?
「結果はどうであれ、レナは自分がベストだと思ったことをしたんだろう」
この話は、聞かなかった方がよかった。信吾はどうレナを慰め励ましていいのかわからない。
もしレナが命令として信吾に話してくれたのなら過去の傷を掘り下げて彼女を再び傷つけたことになる。信吾みたいな戦いのない平和な世界に生きている人間にはレナの気持ちは理解してあげることは出来ない。
「優しいんだね、和久井君って」
レナに笑顔が戻ってきた。そうだ、俺は彼女の笑顔が見たいんだ。彼女を悲しませることはしたくない。
「帰ろう。瞳さんが待っているよ」
信吾はレナに接するときは十分に気を付けなければいけないと思った。信吾が軽い気持ちで聞いてもレナはそれを命令として真に受けてしまう。こんな関係は崩したかった。普通に友達として接したかった。
信吾達は、公園の出口に向かって歩き出そうとしたときだった。
(緊急起動!防御シールド全開!)
信吾のストーンが起動した。信吾の周りに緑色の防御シールドが展開する。
(上空より敵、急速接近中!)
同時にレナのピコが敵が来ることを伝える。
「和久井君、ここにいて!」
レナが青白く光り出すとそのまま真っ直ぐ空に向かって飛び上がっていく。信吾は飛び上がっていくレナのことを見上げる。その向こうに青く光る球体が見えた。