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レナ 第五遊撃隊  作者: まんだ りん
14/43

013

 レナはもともと帝国宇宙軍第七師団所属、空間航空隊のパイロットだった。


 戦闘機に乗り、敵である共和国軍と戦う。戦闘では、辛いこともあれば悲しいこともたくさんあった。


 それでも親友と同じ小隊で、一緒に戦えることは、レナにとっては救いだった。


「レディバードツーよりレディバードリーダーへ。唯、聞こえる?」


 レナの乗る機体は作戦行動の為、ある惑星の大気圏内に下りてきていた。この惑星は、まだ人類が植民地化してから日がそんなにたっていなく、人の手があまり加わっていない分、緑豊かな自然が豊富にあった。


 大気圏内の通常飛行高度まで降下して、ふと頭上を見上げると、空が真っ青に晴れ渡っていて気持ちが良い。


 レナはすぐ前を飛ぶ唯のスカイセイバーに無線で呼びかけていた。一面ブルーの青空を飛ぶ真っ白で直線的な機体。スカイセイバーは帝国軍が誇る大気圏内併用型の万能小型宇宙戦闘機だった。


「感度良好」


 ヘルメットに内蔵されたヘッドホンから唯の声が聞こえる。


 レナはこのとき、第七師団レディバード小隊の副隊長だった。レナが自分と運命を共にして未来を切り開こうと誓った士官学校からの親友が蒲生唯で、レディバード小隊の隊長を務めていた。


「綺麗だね、この惑星は」


 出来ればここを戦場にしたくはないとレナは思った。


「無駄口は叩かない」


 唯はどちらかというと無口な方で士官学校時代も友達が少なく、宿舎でルームメイトだったレナとだけ良く話をした。だから二人が同じ小隊に配属になったときはお互い飛び上がるほど喜んだ。


 今日は二人がペアを組んでから何度目かの哨戒任務だった。この惑星に下りてきたのも惑星内に敵である共和国軍の強行偵察艇が着陸したとの情報がレナ達にも伝わってきたからだった。


 レナのスカイセイバーのレーダーが反応した。


「真下に機影一機確認」


 唯が事務的にレナに伝えてくる。


「こっちのレーダーにも反応しているよ。行方不明の民間機じゃないのかなぁ」


 二時間ほど前に民間機が一機、消息を絶ったので哨戒任務中に発見したら連絡をするようにと師団本部から命令を受けていた。


 二機のスカイセイバーの直ぐ真下を、もと地上部隊が使っていた空軍輸送機を改造した民間機が飛んでいる。


「頭、押さえる。後方援護、お願い」


「了解。唯、気を付けてね」


「了解」


 唯のスカイセイバーが反転急降下していく。レナも後に続いて反転急降下をした。


 この空域は民間機が飛ぶ場所じゃない。もしかしたら反乱軍かも知れないので念のために調べることにした。二人は帝国軍のマニュアル通りに民間機に近づいていく。


 一面緑に覆われたジャングルの直ぐ上を民間機が飛んでいる。大気圏内専用機で今は珍しい双発プロペラのレシプロ機だった。


 唯のスカイセイバーが民間機と並列に飛行する。レナは後方から近づき民間機にレーダー照準を合わせた。


「こちらは帝国宇宙軍レディバード小隊、そちらの飛行目的を告げよ」


 唯がこの惑星で使用されているはずの緊急無線周波数で民間機に問いかける。


 レナは照準器越しに民間機を見ていた。すでにレーダーロックオン状態で操縦桿のトリガーは直ぐに引ける。そのまま民間機の後ろを飛行し続けた。


「レディバードツー、閃光弾で威嚇!」


 唯に命令されレナは閃光弾を発射した。


 民間機のすぐ右脇をすり抜けるようにオレンジ色の光りが貫いていく。光りによる警告をしたのに民間機は進路を変えることなくそのまま真っ直ぐに飛行を続ける。


 レナは照準器越しに民間機の後部上方ハッチを見ていた。そこにはまだ幼い男の子が座っておりレナの方に手を振っている。


「子供が乗ってるよ!」


 レナは唯に報告をした。


「民間機へ、こちらの指示に従わなければ撃墜します」


 唯は士官学校で習ったマニュアル通りに民間機に最後通告をした。しかし民間機は進路を変えるどころか何の反応も示さない。


「レディバードツー、対空ミサイルシュート!」


 唯はマニュアル通りにレナに命令をしてきた。


「待って!」


 レナには見えていた。あの機体には子供が乗っている。そんな機体をよく調べもしないで撃墜なんか出来ない。


「これは命令だから、撃墜して」


 冷たく唯が言ってくる。でも、もしかしたら機体に何らかのトラブルが発生してこちらに連絡が出来ないだけかもしれない。


「あと少しだけ、様子を見させて!」


 レナは照準器のロックを外し機体を民間機に近づけた。もう少し調べよう、撃墜するのはその後でもいい。


「命令無視はいけない」


 唯のスカイセイバーが進路を大きく変え民間機の後ろを取ろうとしている。レナが攻撃しないので唯が後方から撃墜するつもりだ。


「お願い、あと少しだけ!」


 レナのスカイセイバーが民間機と並んで飛行しようとしたときだった。


 一瞬だった。


 きらりと民間機の上方部が光ったと思ったら唯のスカイセイバーが火を噴いた。


「えっ?」


 唯のスカイセイバーはきりもみ状態でジャングルへと落ちていく。


「唯っー!」


 機体を急旋回させ、民間機の後ろに付いたレナは狂ったようにトリガーを引いていた。


 火を噴いた民間機がジャングルへ消えていく。


 あとでわかったことだが、この空域にあのような民間機は存在しなく、レナが撃ち落とした民間機はおそらく共和国軍に強力をしているゲリラ組織の物じゃないかとのことだった。


 蒲生唯は戦時中行方不明者として軍籍を抹消され、レナは命令違反の責任を取らされ後方部隊へ配置転換となった。

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