011
生徒会室の扉が勢いよく開けられ、レナが飛び込んできた。
「和久井君!」
レナが青白く光り出す。右手を真上に挙げるとレナの頭上に青白い魔法陣が浮かび上がった。
(全方位攻撃がきます。防御シールド最大パワー)
信吾のストーンが胸が熱いと感じるくらいに緑色に輝きだした。信吾の周りの緑色のシールがさらに輝きを増す。
「ダークホワイト!私はあなたを許さない!」
室田は飛び込んできた神前に向かい右手を向ける。信吾に向けられた時より大きな魔法陣が発生して巨大化していく。
「室田軍曹!ここは学校でです!直ぐにやめなさい!」
宮寺は、両手を広げた。生徒会室内部が青く染まっていく。
「死ねーっ!」
室田が放った青い光線がレナに向かう。同時にレナも全方向に向けて青白い光りを撃ち放った。
校舎全体を揺るがすほどの爆発音がした。生徒会室内部が校舎ごと吹き飛んだんじゃないかと信吾は思った。それだけ被害は大きかった。机や椅子の大半や壁の一部は炭化して真っ黒になり、金属部分は解けてグニャリと曲がっている。だが、校舎そのものは宮寺が作った防御シールドのおかげで無傷であり、四人とも各自のシールド内に居たためか怪我はしていないようだった。
自分が犯した状況に室田は呆然としている。レナはそんな室田に対していつでも反撃できるように右手のひらを向けたままでいる。
信吾のストーンはまだ防御シールドを解除していなかった。緑色の光りに包まれた状態で信吾はレナのことを見ていた。
「神前少尉、この場の後始末はこちらで付けます。ここは引き下がってくれませんか?」
宮寺は、自分の防御シールドを解除して、レナの方に歩み寄った。
「引き下がる?和久井君のことを呼びつけ攻撃したのはあなた達でしょう?」
レナは手のひらだけ室田に向けた状況で歩み寄ってきた宮寺を睨み付けた。
「確かに呼び出したのは私達です。けれど戦いをするつもりはありませんでした」
「あたしは和久井君を護ることを命じられてここに来たの。あなた達が和久井君に何かするならたとえ上官だって許さない!」
「私達も殿下のことを監視するように命じられています。危害を加えるつもりは全くありません。けれど神前少尉、室田軍曹はダーリングハーストの出身なんです。理解して下さい」
「ダーリングハースト・・・」
レナは室田に向けていた手のひらをそっと降ろした。
「このまま引き下がっていただけませんか。神前少尉、私もダーリングハースト出身で、あなたが沈めた船団の中に私の父もいたんです。この件に関しては後日ゆっくり話したいと思います」
レナが驚きの顔をして宮寺を見ている。
(防御シールド解除、スタンバイモードに戻ります)
信吾の周りを取り囲んでいた緑色の光りが薄くなり消えた。
宮寺が先生達に何と言って説明したか知らないが、生徒会室で放課後にぼや騒ぎがあったと後になって信吾は聞かされた。
レナの説明だと、宮寺が一時的に結界を作ったから被害はあれで済んだと言っていた。