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王様の娘が俺の彼女になるそうです。  作者: 七詩のなめ
王様の娘が俺の彼女になるそうです
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不正解な夜

久々に投稿できました! お待ちいただいて申し訳ございません!

 俺の日常はどこで間違ったんだろう。少なくとも、高校生の夜に親公認で女の子と一緒のベッドで寝るなんてどう考えても普通ではない。

 いや、俺自身が普通ではないのは知っている。だけど、こうやって異性とどうして夜を共にしなくちゃいけないんだ。べ、別に男と寝たいわけじゃないからな? こういうのはもう少し大人になってからっていうのが相場だろう?

 などと言い訳をしていても現実は変わらない。現に俺の後ろで楓がスンスンと可愛らしい寝息を立てて……いや待て、これ寝ている時の息遣いじゃないぞ。むしろ、俺の匂いを嗅いでいる……。


「おま、何してやがる!!」

「君の匂いを嗅いでるんだよー♪」

「気色悪いことするな! ていうか頬を赤らめるな!」

「えぇー、なんでー?」


 なんでって……別に俺たちは付き合ってるとかそういうんじゃないんだぞ? とは、はっきり言えない。こうされるのが嫌じゃないっていうのもあるが、相手がこの東日本の王の娘だからというのが正直大きかった。

 楓はそういうのを嫌がるが、俺みたいな一国民みたいなやつからしたら、心臓に悪いったらありゃしない。普通、王様と国民っていうのは接点がほとんどないのだ。それがこんなにも近くに……もうね! 心臓ばくんばくんだよ! めっちゃ緊張しているよ! いろいろな意味でね!

 俺は楓に背を向けて、寝る体勢に入る。明日も学校があるのと、今日はいろいろあって体が限界を迎えているからだ。しかし、当の楓はそんなことを許してはくれない。


「ねぇねぇ! お話しよ?」

「しねぇ。俺は寝る」

「えぇー、なんでー?」

「お前は子供か。なんでなんでじゃねぇよ。今日は、疲れたんだ」


 傍から見たら俺と楓は親子のように見えるだろう……何、今すごく鳥肌立ったんだけど。てか、絶対誰か殺意持っただろ! 誰だよ……あっ、東の王様か。

 はぁ、とため息を着いて俺は目を瞑る。が、背中に抱きついてきた楓のせいで目が冴えた。


「ふっざけんな! お前が何かすると、お前の親父さんから何されるかわからないだろうが!」

「大丈夫だよ。パパより君の方が強いから」


 そういう問題じゃねぇよ! てか、俺があのふざけた野郎より強い訳無いだろ!

 俺は頭を抱えたい気持ちを押し殺して、再び眠気が誘ってくるまでの間だけ楓の会話に付き合った。


「……お前のせいで眠気が飛んだから、眠くなる間だけ話し相手になってやる」

「やった! じゃあさ。今朝のすごいのどうやったの?」

「あ? ……ああ、封印を半分解除したんだ。俺の体の中の化け物は強力だから、全部を解放するとどうなるかわからない。だけど、半分だけならうまくすれば身体強化以上の力を得られるからな」

「なるほどねー。私が見たところ、君の中に居るものは早くて、破壊が得意って感じかな?」


 こいつ……アホそうな顔して意外といい勘してやがる。俺の中の化け物をもう勘付き始めているようだ。これは、警戒しないといけないようだな。

 憑き物の最大の敵、それは情報漏洩だ。自身の情報が漏らされれば、どんなに強いやつでも命がなくなる。何故なら、『憑き物』の正体が一度封印された化け物だからだ。封印されたということは一度負けたということになる。それは絶対に負けないという前提を覆すのに十分な事実だ。

 だから、俺もそれに倣って自身のことは極力他言しないことにしているのだ。


「俺の話はいいだろ。それより、お前はどうして俺についてきた? やっぱり、俺の力が目的か?」

「ううん。まあ、それもあるけど。……言ったでしょ? 私は君に一目惚れしたんだよ。好きな人と一緒にいたいっていうのは普通なことだよ」


 行動原理は普通だ。しかし、やり方が普通じゃないんだよ、お前の場合。

 俺は何度も聞かされた、俺に惚れたという言葉に疑問以外の何も感じない。好意を持たれることに慣れていない俺にとって、(こいつ)のそれは警戒すべき感情だった。

 人を利用してきた奴らをたくさん見てきただけあって、俺の警戒心は誰よりも研ぎ澄まされたものだった。だから、例え相手が可愛くても疑うことを終始やめない。

 それを勘付いた楓は、俺に抱きつくのをやめて、真面目そうな顔でこう言った。


「言葉じゃ、通じないこともあるよね。じゃあ、交換しよ。私の弱点を教えてあげる。君の弱点だけを知ったら、不公平だもんね」

「何? 俺の、弱点だと?」


 もちろん、そんなことを教えた覚えはない。こうやって真面目に話したのも数える程しかない。なのに、コイツは俺の弱点を知っているというのだ。

 これはもう、勘付くとかの問題じゃない。『見抜いて』いるのに近いじゃないか。


「私の目、どう見える?」


 そう言って、楓が自身の右目を指差す。どうと言われても、可愛い目ですねとしか……ん?

 よく見ると、楓の右目は俺を見ていなかった。それより、時より入ってくる光が遮っても眩しさで目が動くということすらなかった。ということは、こいつの右目は……。


「見えて、いないのか?」

「今は、ね。魔力を与えるとなんでもできるんだよ。目からビームとか、遠くのものが見えたりとか……人の知られたくないこと見るとか、ね」


 寂しそうに俯く楓。人の知られたくないこと、か。なるほどな。俺の能力はその目で魅入られたということか。つまり、コイツの『勘』の正体はこの眼というわけか。

 そういう目があるかもしれないということは知っていた。だが、あるかもしれないという推測でしかなかったため、この目で見るのは当然初めてだった。

 そうか、よりにもよってコイツがその目を持っていたということか。


「大丈夫だよ。君が心配するようなことはしないよ。私も、この目のことはバラされたくないし」

「誰かに狙われているとかか?」

「ううん。王様の娘を殺そうとする人はいないでしょ? 私の場合、周りの人に嫌がられるのが嫌なだけ。君とは、全然違うよ」

「そりゃそうだ。俺は一国民。お前は王族だ。全然違うわな」


 俺はつまらないという顔で天井を見上げる。楓は、きっといい子なのだろう。きっと俺のことを好きというのも本当かも知れない。だが、それを信じきるために俺たちの関係はあまりにも短すぎた。だから、踏み込めない。距離を間違えれば、それは世界を変えることになってしまうから。

 人というのは、面倒なことでくよくよ悩むものだと、昔、本で読んだ気がする。今の俺も、たぶんそうなのだろう。くよくよ悩んで、結局決断できないのだ。

 ならば、関係が長かったら? もしも、昔からの仲だったら、俺は今、どういう決断ができたのか。果たして、俺はこいつを信じ切れただろうか。俺は、こいつの思いに答えられたのだろうか。

 俺は楓の容姿も、性格も嫌いではない。少し懐きやすいところも、子供っぽいところも、それでいてちゃんと高校生であるところも、全然嫌いではない。

 それならば、もっと付き合いが長ければ、俺は……俺は…………。


「なあ、楓――」


――お前にはわかるか?


 その言葉はとうとう口から出てこなかった。いつからそうだったのか、楓が俺の横で眠ってしまっていたからだ。そして、俺自身がそれを拒否したからだ。

 ふぅん、と息を吐いて、俺はちゃんと布団を掛けていなかった楓に掛け布団をかけてやる。

 今度こそ眠れるチャンスが到来し、俺は睡魔に嬉々として襲われる。意識がなくなる前、最後の一瞬で俺は思った。

 俺と(こいつ)が恋仲になる? はっ、天変地異が起きてもありえないな。と

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