プロローグ 1
『僕にはそんな約束できないよ。でもまあ、やれるだけ。僕の全身全霊を賭けて、僕はみんなを守ることにするよ。理不尽な火の粉も、敵も、全てなぎ倒す。愛するみんなのためなら、僕は何だって出来る』
ある少年は傷ついた体でそう言った。勝率などない。虚無に等しい絶望の中で、その少年だけが笑っていた。
荒れに荒れた都市。けが人などいないことがない。皆が絶望を感じる街中で四人の少年がただ立っていた。目の前の巨大な体に、白銀の毛並みをしていて、鋭い牙と恐ろしい角をもつ化け物を打つために。
少年の名は、火蔵吠舞羅。ありえないほどの魔力を持ち、原初の魔術師のひとりでもある普通ならば歴史に残るはずだった逸材。だが、少年は歴史に残ることを拒否した。ただ、愛するみんなの中に残ることに決めたのだ。
その少年がいたから今がある。もし、あの少年がいなければ、未来を諦めていたであろう。あの少年のことを、大切な仲間のことを俺は忘れない。
『諦めるなよ。この国の王が、簡単に諦めるな。絶対に倒して、俺たちは生き残るんだ。死亡フラグだろうがなんだろうが、へし折って帰るんだよ』
複数の人格を作り出す能力を持つ少年、河西龍彦は日本が四つに分かれた時、東の王とともに日本を引っ張った者の一人。未来で初代西の王になった人物だ。
彼は自警団という形の生徒会の第三十四代生徒会長で、リーダー格でもあった。そして、彼にも守らねばならぬものが存在したのだ。
その少年がいたから今がある。もし、あの少年がいなければ、意思が折れて、立ち上がることはできなかっただろう。希望をくれた少年を、俺は忘れない。
『どうでもいいが、あの化け物は俺の日常を壊した。平和で退屈だった日常を。せっかく子孫を残すために旅をしていたのに、ここでの繁栄は見込みが浅そうだ。全部、あの化け物のせいだ。かっ消す』
ありとあらゆる事象を意のままに操ることが出来る原初の異能者、黒崎卍我は突如異世界から現れた謎多き少年だ。目的は可愛い女の子とキャッキャウフフすることだそうでよく、今は平和や平穏が必要だと謳っていた。
ふざけているように見えるがこれで彼は真面目なのだ。だからこそ、目的を邪魔されたときは本気で怒り、何が何でも敵を排除しようとする。
その少年がいたから今がある。もし、あの少年がいなければ、壊れた街は復興に何十年という時間をかけなければならなかった。平和をくれた少年を、俺は忘れない。
この夢は過ぎ去った過去の物語。御門恭介という少年が体験してきた物語。




