表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様の娘が俺の彼女になるそうです。  作者: 七詩のなめ
番外編 ごく普通の聖夜
27/56

本物(ノンフィクション)

 しばらくショッピングモールを回っていると、昼を回っていた。トイレから帰ってくるとちょうどお腹を空かした楓がそこにいた。


「うぅ……お腹すいたよぉ」

「そうだな。昼も過ぎたしな。そろそろ昼飯にするか」

「うんっ! どこにする?」

「そう、だな……あれなんてどうだ?」


 楓は王様の娘だ。ゆえに、庶民の店には疎いと思っていた。それは的確で、楓はファミレスというところにあまり来たことがないようだった。

 嬉しそうに楓は俺の前を歩いていき、俺はそんな楓を見つめながらよくあるファミレスの中に入っていく。

 ファミレスに入ると店員がすぐに来て、席に案内してくれた。席は悪くない。ただ、隣によく見知った少年と少女が騒がしく昼をとっていたのだ。


「アーッ! 颯斗さん、それは私のチキンです!!」

「るっせぇな。お前の名前なんて書いてなかっただろうが」

「そういう問題じゃないですよ! わ、私のチキンが……」

「仕方ねえな。俺のピーマンやるから喜べよ」

「そんなのいりませんよ!!」


 少年は呆れ、疲れたように肩を落とし、少女は悲しみで肩を落としていた。

 少年は、案内されてきた俺たちを見て、ん? とジロジロと見てくる。そして、俺たちが誰なのか気がついたようだ。


「おー。これはこれはお二人さん。デートかい?」


 これはタカヒロたちをいじった天罰か、今度は俺たちが冷やかされてしまった。

 正直、俺はこいつの隣で飯を食べたくはないが、ほかの場所が空いているかと言われると、クリスマスというだけあって人ごみは否めない。

 仕方なく席に座ると、案の定黒崎颯斗は冷やかしに来る。


「どうだ? 女と二人でキャッキャウフフした感想は? 是非とも聞かせて欲しいもんだね」

「うるせぇな。ここは店だぞ?」

「だから? 一友人に付き合っている女を自慢する気にならないのか? ほら、自慢してみろよ。さあさあ、早くしてみろって」


 めちゃくちゃ意地が悪いぞ、こいつ。そして、どうやったら人が怒りを覚えるのかよくわかっている。怖いもの知らずという言葉はきっとコイツのためにあるんだろうな。

 俺は隣で茶々を入れる黒崎颯斗に少しだけ呆れを覚え始めていた。そんな時、黒崎颯斗は急に冷やかすのをやめたかと思うと、少し真面目な表情になって、


「北の王殲滅おめでとう。まあ今回、俺は活躍してねぇが、お前はそこそこ頑張ったようだしな。感謝されることくらい、あってもいいんじゃないか?」

「お前……」

「お前じゃねえ、黒崎颯斗だ。呼び方が決まらないなら、颯斗って呼べよ。お前は……か、か、か、そう、火蔵陽陰だったな。お前の方も勝手に呼ばせてもらうさ」

「あ、ああ」


 こいつ、案外いいやつだったのか?

 そう思ったのも束の間、颯斗は話し相手を俺から楓に切り替えた。


「あの時の借り、覚えているだろうな?」

「うん。パパに頼んでおいたよ。今日の夜九時、場所はこのファミレスだよ。君の欲しい情報がもらえるといいね」

「何の話だ?」

「いや、こっちの話だ。……何、こいつを救った代わりに東の王が俺の願いをひとつ叶えてくれただけさ」


 言って、颯斗は席を立つ。

 どうしたのかと思うと、颯斗は俺に手を振った。


「飯も食い終わったし、客が多くてな。これ以上待たせると店がいっぱいいっぱいになっちまうだろ? 俺はそろそろ帰るよ。てことだ、綾女。行くぞ」

「え、ちょ、待ってくださいよ! 私のチキン!!」

「帰ったら、自分でパンケーキでも作ればいいだろ?」

「それって、結局私しか損しないじゃないですか――――!!」


 綾女という少女も、相当不運みたいだ。

 颯斗が去ったあと、楓がどういった経緯で借りを作ったのかを詳しく教えてもらいつつ、昼飯を取ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ