アンラッキーヒーロー4
宮部は悟っていた
宮部と同じようにヒーローになりたいと考えるのは、人間なら誰もが同じだ。
誰もがヒーローになりたがり、魔王になんて絶対になりたくない。人は皆、善に向かう本能を宿した生き物だからだ。
だがどんなに光ある道を望んだとしても、中にはヒーローになる素質を全く持たず、むしろ魔王になる素質に恵まれた者もいてしまう。それらは世間では“猟期殺人者”とか“独裁者”などと称される形で大成する。
宮部にはわかる。どうやっても悪の道しか生きられない人間は、必ずいる。宮部自身がそうだからこそ、はっきりわかる。
ところで本当に魔王として大成した人間は滅多に生まれない。なぜなら、そんな素質を持った人間の殆どが宮部と同じ結論に行き着くからだ。
宮部は今、ヒーローになろうとしている。自分という悪の天才を亡き者にしようとする、ヒーローなのだ。宮部のような人間がヒーローになるには、それ以外に方法がない。
屋上の柵のそばに、宮部は立っていた。もうすぐ魔王は死ぬ。彼自身の中に秘められた正義の心によって、葬られるのだ。
昔大好きだった英雄譚の中で、主人公と魔王は双子の兄弟だったというオチがあった。作者はどうしてそんなネタを使ったのだろうか?宮部にはわかる。主人公と魔王は、実は双子どころか同一人物なのだ。