表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

ヒーローになれないなら2

宮部は街で一番好きだった建物の前に立っていた。興味のない人間からしたら、何の変哲もない雑居ビルだ。一階には本屋が、二階にはCD屋が、三階には中古のゲーム屋が入っていた。インドア派の宮部には遊園地のような建物だった。そう、“だった”のだ。

今は全ての店舗は撤退して、空きテナントとなっていた。宮部の天国は、不況によりあっさりと瓦解してしまったのだ。

(あ…これマジ思い残すことなくなったわ)

宮部は諦念に満ちた笑顔で、階段を登り始めた。冷ややかなコンクリートの感触と、黴の臭いが肌に染みた。

今日、宮部は全てを終わらせるつもりでいた。

幸福だった時代、まだ自分という人間の正体に気付かずに過ごしていた時代、普通の人間だと勘違いしていた時代に。最も好きだったこの場所で、宮部国充という名の生ける災厄を葬る決意をしたのだ。


階段を登りきった宮部は、屋上に繋がるドアを開けた。

ここは元々、買ったばかりの品を開けて購買意欲を満たした余韻に浸るための場所だった。家に帰るまで待ちきれない宮部と友人たちは、まず屋上に登り感動を噛み締めるのだ。買ったばかりの本をつい読み切ってしまったことが幾度あっただろうか。さんさんと降り注ぐ太陽が沈むまでポータブルプレイヤーと過ごしたことが幾度あっただろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ