ヒーローになれないなら
それは宮部国充の二十歳の誕生日のことだった。
宮部は世間でいうところの、いわゆるニートと呼ばれる人種だ。高校三年生の終了間際から、彼は学校に行かなくなった。高校こそお情けで卒業したことにしてもらえたものの、それから先の人生は家に籠もったきりだった。
宮部が外界との接触を拒むようになったのは理由がある。彼のような境遇に落ちた人間は数多くいる。どんなケースであれ、理由がないということはないだろう。そして自らをして社会不適合者の烙印を押す理由は、多岐に渡る。拠ん所ない事情で社会をリタイアしたものも居れば、自己責任としか解釈しようもないものもいる。
そのような人種は全員が判を押したように同じことを思っているわけだが、宮部も例外でなく自分が前者であることを微塵も疑っていなかった。
その日、宮部は二年ぶりに外出した。在りし日の彼が友達と遊んだ街だ。都心郊外のあまり発展しているとは言い難い、最先端の流行から常に二・三年ほど遅れている街だ。
一番大きいプレイスポットが地方にもあるようなデパートというのは、若者の遊び場としては物足りない。
遊んでいた当時はショボいだの田舎臭いだのオバハンしかいないからナンパもできないだの散々なことばかり言っていたのに、今となっては懐かしいばかりだ。