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序盤だけ

序盤だけ  1

作者: 月読 龍

海を見ている。

この場所に来たのは初めてだ。

今日は車の使用許可が出たので遅めの帰宅でも問題無い。

逃避するように久々に来た場所は波の音が心地よい。

砂浜に出ても良かったが、夕日は既に沈んでおり星の明かりしかない状況ではやめておいたほうが良いだろう。

防波堤の上にポットを置き、カップにお茶をそそぐととても良いバニラのような香りが広がる。

苦味と甘い香りが甘くないのに何かしら心を落ち着かせる。

クッキーでも持って来てたら良かったのだろうがあいにくと手持ちの荷物には無い。

「あの~…」

声を掛けられてびくりとする。

どうやら波の音にまぎれて気付かなかったようだ。

声を掛けた相手を見ると声の通りに女の子だった。

…しばし考えてお茶を入れなおしたカップを差し出すと嬉しそうにカップを受け取り飲み始める。

意外と香りを楽しんでいるようだ。

今回のお茶は自分の周りでは受けの悪いタイプだけに気にしたがとても気に入ったようだ。

飲み終わったのか落ち着いたのだろう、話し始める。

「おいしいお茶をありがとう、それで少しお願いがあるのですが・・・」


いわくこういう事だ。

・つい遅くまでまったりしてしまった。

・交通機関のある所に移動しても明日の朝まで動かない。

・迎えを頼んだが断られた。

・お腹が空いてきた所に甘い香りがして近づいてみた。

・できれば助けて(帰りたい)

・帰り先は同じ


聞きながら考えてはいたのだが、問題点があった。

一人乗りの車にどうやって二人乗ろう・・・

もちろん、無理をすれば乗れない訳では無いが、後で色々問題がありそうだ。

ほむ。


車には返却の必要性があるので放置は当然出来ない。

視線で状況がわかったのだろう、彼女に諦めの表情が見えた。

「すみませんでした、諦めます」

そう言って離れだす彼女をすぐに停める。


「運転か飛ぶか小さくなるかできる?」

この島では運転できる人がそもそも少ない。

空が飛べればそもそも自分で飛んでいく気もするが暗いのでそれもどうだろう。

小さくなれれば一緒に移動もなんとか可能かもしれない。


ふりふりと首を横に振る彼女になんとなく庇護欲が出るのは自分だけだろうか。

時間を確認すると、結構遅いので彼女には色々とまずいのだろう。

あ、なんか諦めがついた。


「今からの事は内緒ね」

そう言って車を仕舞う。

うん、折り畳みが出来るって素晴らしいね。

コンパクトタイプの極みの一品で、ベビーカーを頭に浮かべて欲しい。

車だけど駆動系がコンパクトなだけではなく、エネルギーは搭乗者に頼る仕組みなので畳むとバックに収まり便利です。

それだけに搭乗者を選びますがこのさい、それは置いときます。


翼を広げて飛ぶ準備。

背負えば翼が使えないのでお姫様抱っこで運ぶ。


「貴方サリアンだったの?」

サリアン、それは神の姿を残した種族。

「違うよ」

あっさりと否定する事にする。

「先祖がえりとか…」

首を振って否定。

「これは、見えるけど実物じゃないんだ」

サリアンはその身に翼を宿した種族。

決して魔法力で作ったまがい物ではない。

本物達はどうやって収納してるか解らないが実際に翼を身に隠す事ができるが、本物の翼を身に宿している。

空を飛べる魔法に翼は要らないが、サリアンは魔法ではなくその翼で空を飛ぶという。


しばしの時を空で過ごし、目的地にたどり着く。

残念ながら自身の部屋には入れるが彼女を送る事は出来ない。

彼女も解っているようで部屋に入ってくる。

「この部屋は空いているから使うといい」

そう言って彼女を部屋に置いて離れる。


部屋の構成を説明するとマンション構造なのだが一室単位だけでは提供されていない。

なぜかは知らないのだが、玄関を入ると大き目のリビングとキッチンが一つになった部屋があり、シャワールームを一室あり、小さな6部屋が個人の私室になっている。

ここはほかの人達と違って自分一人で利用させて貰っている。


くぅ~


場違いな音。

顔を真っ赤にする彼女。


「俺はこの後、お茶するけど付き合うか?」

暗にお茶菓子を食べるかと誘ってみる。

こくりとうなずく彼女をリビングに通し、ソファーに誘う。


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