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年越し。

年越ししながらかたかたとちょっと打ってみた。



 鐘の音が遠くに聞こえる。

夜の空に響いて行くその澄んだ音は一年を過ごしてきたこの街に沁み込んで行く。

まるで汚れを落とすかのように。本当に私たちの煩悩を払うかのように。


「今年ももう終わりだね」


彼女が言う。炬燵の向かい側に潜り込んで、顔を机につけてたれている様子はとても愛らしい。

みかんを剥いて彼女の前に出すとひな鳥のように「あー」と口をあけてくれて…ああ本当に可愛いなあ。


「そうだね。今年も色々あったような、結局何にもなかったような」


毎年毎年なにかあったような無かったような。結局曖昧なままに過ぎていく。

いつも通りだなあとひとりごちる。別に劇的な何かを望んでいたわけでもないけれど。


「……私と付き合い始めたでしょう」


「去年も一緒だったじゃないか。ちょっと呼ばれ方が変わっただけで」


「そーれーでーもー。女の子はそういうの大切にするんですー」


ぶー、と言いそうなほどに彼女は口をとがらせて不機嫌をアピールする。

そう、去年も彼女とこんなふうに過ごしていた。その頃はまだ恋人とかじゃなくて、ただ仲の良い友人であったけど結局その関係は今とは変わらないように思う。


怠惰に付けていたテレビが年越しを告げる。相変わらず騒がしいテレビとは対照的に、俺たちは特に何も変わらず、だらけながら気付いたら年を越していた。


まあ、そんなことより。


「今年もよろしく、ね?」


「こちらこそ、今年と言わずずっと」


今年もいい年になりそうな予感で、心が満たされていた。

あけましておめでとうございましたー。今年も……じゃなくて、今年からよろしくお願いしますねー。

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