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第一章 

雲ひとつ無く、高い空が広がって、太陽の光を包み隠さず通し草原を歩く少女を照らしている。

「ちょっと暑いかな…」


 黒い外套を着ている少女は小型の方位磁針を取り出し、赤い針が示す方向に歩き始める。

 少女は名をラーゼと言った。

 数ヵ月前までの彼女に自由は無く、こうして外を歩く事も出来なかった。

 教えられたのは人の殺し方、与えられたのはラディアという名の黒い筒だけだった・・・、そして、ある出来事により育ての親を失ったラーゼは自由の身となった。

「あ、いい風」

 しおの匂いが風に乗って運ばれて来る、それは海が近いことを示していた。ラーゼは生まれてから海を見たことが一度も無かった。旅にでると決めた時海を一度見てみたいという気持ちがあった、それで次の町を選んだのだった。

 歩き続けると次第に町の姿が見えてきた。港で大きな船が帆をはっている、好奇心から足取りも軽くなりラーゼは町に進んで行った。



港町フィックル ─


「安いよ、安いよ!!」

「なんと!メタゴニスの本場ものが14万Gだよ!!」

「みてみろ!この魚たちの目の輝き!!こいつらはまだ死んでないぜ!!」

「よっしゃ!!15万Gで買ったー!!」

「毎度あり〜!!!!!!」

 今、水揚げされたばかりの魚が活気のある、声と共にさばかれて行く。

 港町フィックルーは、漁業によって発展した町で大陸に流通している魚類の5%は、この港で揚げられた物だった。海を見ようと思って港のほうに来たのだが、魚市場に来たようだった。

「…生臭い」

 ラーゼは足早に魚市場を後にして、町の中心部に泊めてくれそうな宿を探しに行った。


****


「……お嬢ちゃん、家出なら早くお母さんに謝ったほうがいいぞ」

宿屋の主人アルカノが無精ひげを右手でワシャワシャと触りながらラーゼを見下ろす。

「いえ、家出とかじゃなくて…」

「わかってる!!わかってるから何も言うな…その年頃じゃあ色々あるよなぁ!!オジサンも鬼じゃない、一晩なら泊めてやるよ!!」

「あの、だから…」

「宿代はいらねぇ。だから明日には謝りに行くんだぞ!!!」

 何かすごく勘違いをされている様だが、宿代を払わなくて済みそうなので受け入れる事にした。旅にでる前にいくらかお金を持ってきたのだが、働いている訳でもないので減っていくのは当たり前だった。

 部屋に入ると外套を脱いだ。

動きやすそうな服の所々にナイフや短剣が隠されていて、腰には男から与えられた黒い筒が備え付けられていた。武器は常に持ち歩いていた、いつまた黒い服の男達がやってくるのかわからないので、用心のためだった。

「魚の臭いついてないかな…」

 部屋は、最低限必要な家具が置いてあるだけだった、言葉に答える人間はいない。

 隠している武器を外し、二つに結っている髪をおろす。

髪が肩を通りこして、背中の辺りまで伸びる、その容姿には大体の褒め言葉が当てはまる、歳は15〜17だろう、はっきりとはラーゼ自身わからないが見た目にはそれくらいが適当だった。

 ふと、窓の外を見たら、

「あ・・・・綺麗」

青く広大な海が広がっていた。空には鳥たちが舞い、遠くの方に小さく船も見える。そこからみた港の人達は本当に小さく海の広さがより感じられた。


 ふいに暗闇を感じた。

 なぜ私はこんなところにいるのだろう。私はここで何をしているのだろう。私は…なぜ生きているのだろう。

 それは以前から時々感じていた、多くの人を言われるがままに殺してきた私がこんなふうにしていていいのだろうか?

 私の両手は血に染まっている。

暗いものがラーゼを包んでいく・・・・・


「おーい!!!お嬢ちゃん居るかーい?」

 

「あ、は、はい!?」

 アルカノの声がラーゼを現実に引き戻す。

 ホッと息をついたラーゼは胸をなでおろし、また外套を羽織って部屋の扉を開けた。

 目の前にはアルカノが立っていた。

「おう、嬢ちゃん居たな。ノックしても返事がないからもう出かけたのかと思ったぜ」

 ノックされていることにも気付いてなかった、鈍っている証拠だろうか・・・。心に思いつつもそれを表情には出さない。

「えっと、何ですか?」

「おうそうだ!ちょっと食堂まで来てくれや」

 なんだろうと考えながらも木造の廊下と階段を進み食堂に着く、そこにはまだ湯気が立っているシチューが置いてある。

「え・・・?」

「どうせ、家出したまま何も食ってないんだろ?まだ飯の時間には早いが・・・」

「うちの特製シチューだよ、冷めないうちに、ほら食べて食べて」

 厨房のほうから女将さんが顔を出す。

「あ・・・ありがとうございます」

「いいってことよ!」

「おかわりもあるから遠慮せずにどんどん食べてね」

 スプーンでシチューをすくう、それだけでもいい香りがお腹を刺激する、そのまま口にシチューを運ぶ

「おいしい・・・」

「そうだろう?」

 ラーゼの心にあったかいシチューが溶け込んでいった。




できるだけ定期的に続きを書いていきたいと思いますが、いたらない時もあると思うのでご了承ください。

メッセージなどいただけたら幸いです。

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