第九章:予測外の展開と大逆転
雅史は、プログラマーとしての知識と技術を全て賭けた。
彼は、山下夫妻が持つ不正取引のデータを、彼らの手を経由せずに、捜査当局に匿名で流すための、完璧なプログラムを構築した。
「奴らは、このデータを美奈子さんを脅すために使おうとしていた。美奈子さんが持つ、陽一さんの会社の機密情報を手に入れるために。だが、俺が奴らの企みの核を、社会的抹殺という形で奪い取ってやる」
データ転送が完了した直後、雅史のマンションのインターホンが鳴った。
モニターに映っていたのは、美奈子、そして山下夫妻だった。
「雅史さん。娘を返して!」
美奈子がヒステリックに叫んだ。
「雅史! お前が持っているデータを出せ! お前は、陽一を裏切った卑劣な男だ!」山下が怒鳴る。
雅史は、平静を装い、彼らをリビングに通した。
「残念でしたね、山下さん、美奈子さん」
雅史は、静かに言った。
「君たちが欲しがっていたデータは、既にしかるべき場所に送られた。君たちの不正取引、そして陽一さんを殺害したことの証拠と共に」
山下夫妻の顔から血の気が引いた。
「馬鹿な…! お前が陽一を裏切った証拠も、全て一緒に流したのか!」
山下が叫んだ。
「いいえ。俺の『罪』は、俺自身で償います。ですが、君たちの『殺人』と『裏切り』は、法の裁きを受けさせる」
雅史は、さらに予測外の展開を見せた。
「そして美奈子さん。君は、自分の娘が、君の復讐の道具にされそうになったことを知るべきだ。君の夫と、君の妹に裏切られていたことを」
雅史は、美奈子と山下夫妻の共謀の証拠を、その場で美奈子に見せた。
美奈子は、ショックでその場に崩れ落ちた。
彼女は、陽一の死を雅史のせいにすることで、自分の人生の惨めさから逃れようとしていたが、真の悪意は、彼女が最も信頼した新しい家族の中に潜んでいたのだ。
数日後、山下夫妻は逮捕され、美奈子は失意の底で、雅史に「栞をお願いします」という一言だけを残し、姿を消した。




