第八章:雅史の告白と雪辱の序曲
雅史は、栞に全てを話すことを決意した。
「栞さん。俺は、君のお父さんを裏切った。俺が、不正取引のデータを盗んだせいで、君のお父さんは命を狙われた。そして、そのデータがどこにあるのかを知るために、山下夫妻は君のお父さんを殺したんだ」
雅史は、涙を流しながら、恩人への裏切りという罪を告白した。
「俺は、君に憎まれて当然だ。だが、俺は、君の父親の真の仇を討つことで、この罪を償いたい」
栞は、雅史の告白を聞き終え、静かに彼の目を見つめた。
「…憎みません、雅史さん」
その言葉に、雅史は驚き顔を上げた。
「私の父は、雅史さんのことを最後まで信じていた。父は、『雅史は、迷っても必ず正しい道に戻ってくる』と言っていました。父が私に真実を託したのは、雅史さんと協力して、自分を殺した人間を罰してほしかったからです」
栞は、文庫本の最後のページを指さした。
「$M.A.$は、美奈子。そして、$M.A.$の真実を知っている裏切りの共犯者は、山下夫妻。そして、父が最後に私にメッセージを送ったのは、『最も愛する者』である私と、『最も信頼した者』である雅史さんの力を借りるためなんです」
二人の間には、恩人への贖罪と真の仇討ちという、新たな強固な共犯関係が生まれた。
そして、雅史は、栞への切ない愛が、償いという使命に完全に結びついたことを知った。
「わかった。山下夫妻に、俺が雪辱を果たしてやる」




