第七章:恩人の裏に隠された意外な人間関係
「美奈子さんが、俺を憎んでいる…」
雅史は、美奈子が陽一を愛していたことを知っていた。
その愛が復讐心に変わったのだとすれば、筋が通る。
「では、あの盗まれたファイルは、美奈子さんが何らかの方法で…」
「いえ、違います。私は、あなたの盗まれたファイルが、別の人物の手に渡っていることを知っています」
栞は、自分のノートパソコンを開き、雅史に見せた。
そこには、美奈子の再婚相手、つまり栞の現在の父である山下という男の顔写真があった。
「美奈子さんは、自分の妹、山下恵と連絡を取り合っています。そして、恵の夫が、私の今の父、山下です」
「義理の父と、義理の叔母が…?」
「美奈子さんが、私を雅史さんの元へ送ったのは、陽一さんのデータの在処を探るためだった。そして、そのデータは、山下夫妻の手に渡るよう計画されていたんです」
山下夫妻。
彼らは、陽一の死後、美奈子に近づき、彼女の心の隙間に入り込んだ。
山下は、美奈子の財産を狙い、恵は、美奈子の過去の罪を握ることで、優位に立とうとしていた。
雅史は、一つの恐ろしい可能性に気づいた。
「陽一の死は、事故ではない。山下夫妻が、陽一の持つ不正取引の証拠データを奪うために、計画的に殺害したんだ!」
雅史は、陽一が死の直前に、美奈子と山下夫妻の企みに気づき、真実を文庫本に書き残したのだと悟った。
そして、陽一が最も愛した娘に、その真実を解き明かす使命を託したのだ。




