第五章:歪んだ愛情と監視の目
雅史は、栞が自分を探っているのを知りながらも、彼女への感情が「恩人の娘」という枠を超え始めているのを感じていた。
彼女の父親譲りの強い意志と、時折見せる孤独な少女の表情。
雅史は、彼女を守りたい、そして彼女の悲しみを全て受け止めたいという、切なく、そして危険な愛情を抱き始めていた。
ある夜、栞がリビングで受験勉強をしていると、雅史がそっと彼女の隣に座った。
「何か、困っていることはないか?」
「…いえ。大丈夫です、雅史さん。ただ、父の死のことが、時々頭をよぎって、集中できなくなるんです」
「…美奈子さんの言いつけだ。何も話せない」
「知っています。でも、雅史さんは何かを知っている。そして、その何かが、あなたの成功と引き換えになったんじゃないか、と私は思っているんです」
栞は、雅史の冷たい指先にそっと触れた。
「私には、雅史さんが『罰』を受け続けているように見える。…その罰は、父の死と関係があるんでしょう?」
雅史は、彼女の鋭い指摘に言葉を失った。
この少女は、ただの女子高生ではない。
真実を探る鋭い探求者だ。
「栞さん…俺の過去は、君が想像するよりずっと泥臭いものだ。君まで、その泥に足を踏み入れる必要はない」
「違います。私は、雅史さんが本当に背負っているものを知りたい。それが、父の娘としての、私の義務だと思っています」
雅史は、彼女のその一途な眼差しに抗うことができなかった。
彼は、彼女が真実に辿り着いた時、自分を憎むだろうと知っていた。
しかし、それでも、彼女に全てを理解してほしいと願う、歪んだ愛が彼を突き動かした。




