第四章:恩義と裏切りの構造
その夜、雅史は自身の「罪」と向き合った。
雅史は陽一からプログラミングを教わった後、彼の紹介で美奈子が経営する小さなIT企業で働くことになった。
しかし、雅史の才能は美奈子の企業には収まりきらず、彼はインサイダー取引に関わる巨大な企業システムを構築する仕事で、高収入を得るようになった。
陽一は、雅史の高収入の道を最初は喜んでいたが、その仕事が不透明なグレーな取引に関わっていることを知り、雅史を強く非難した。
「雅史、お前は道を間違えている。俺はお前に、人を傷つけるための技術を教えたわけじゃない」
雅史は、陽一の言葉を「嫉妬」だと受け取り、反発した。
そして、陽一が亡くなる数週間前、二人は激しい口論をした。
雅史は、陽一の道徳的な諫言を振り切り、不正な取引の証拠データを陽一の会社から盗み出した。
それは、雅史がその取引から手を引くための、陽一への最後の復讐だった。
雅史が盗んだデータは、陽一の人生を狂わせ、不慮の事故という名の死に繋がった。
「俺は、陽一の恩を仇で返した…」
雅史は、陽一の死に直接的には関与していない。
しかし、彼がデータを盗み、陽一を窮地に追いやったことが、陽一の「事故死」の間接的な原因となったことは、雅史の心を深く苛んでいた。
彼の高収入と成功は、恩人への裏切りの上に築かれたものだったのだ。




