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第二章:秘密を抱えた同居人
翌日。インターホンが鳴り、雅史はドアを開けた。
そこに立っていたのは、河野栞。
十八歳。制服姿が、彼女の秘めた強さと、まだ残る繊細さを際立たせていた。
彼女の瞳は、今は亡き父・陽一にそっくりで、雅史の胸を強く打った。
「お邪魔します、渡辺さん」
彼女は、雅史のことを「渡辺さん」と呼び、距離を置いた。
「栞さん。堅苦しいのはなしだ。俺のことは、雅史でいい」
「…はい。雅史さん」
雅史は、彼女をゲストルームに案内し、三つのルールを提示した。
「一つ。俺の仕事場には入らないこと。二つ。俺の私的な過去には触れないこと。三つ。俺の恩人、つまり君の父の死の真相を探らないこと」
三つ目のルールを口にしたとき、栞の瞳に、激しい動揺と、すぐにそれを隠す強固な意志が閃いたのを、雅史は見逃さなかった。
「わかりました」
栞は答えた。
だが、その声には、微かな反抗心が宿っていた。
雅史の直感は告げていた。
栞は受験のためだけでなく、父の死のミステリーを解き明かすために、この「密室」にやってきたのだ。




