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これは昔の話です 聖女マイナ




『正しくあれとは思うまい。

勇者とて人の子なのだから。


されどもあれは、いかようにもしがたい。

だからこそ、もう一人の勇者が必要なのだ。


あれを正すために。

その身をもって勇者を諌める者として。

もう一人の勇者が』




「いやー、無理でしょ」

天井を仰いで、聖女マイナは今までの声に反論する。


自室の天井がキラキラと光って、天恵じゃない声が聞こえて来るのはもう慣れたなと、マイナは遠い目になる。

水色の髪が背中でまとめられている。今は聖女の服ではなく寝巻の簡素な白い服で、誰の眼も無いのでベッドに胡坐をかいて座っている。

神の眼は気にしない。実害ゼロだし。


「ご自分の選んだ勇者が、がっかりなのは同情しますけど。それに理屈を付けて暗黒の勇者を下げて、光輝の勇者を上げるとか、ないわー」

首をブルブルふると、少し頭がクラクラした。背中が凝ってるのかも知れない。今日も癒しだ、慰問だ、スマイルください、色々をこなして疲れているのだ。


「大体、何であんな子供脳の人が光輝の勇者に選ばれたのか、甚だ疑問です。暗黒の勇者は頑張って良識を保っているのに」

ほんと頑張ってるよ。まだ17歳じゃないの。


天井が明滅する。

何か反論がされているのだろうが、マイナはかくりと首を傾げたまま動かない。


「ロウチ様には無理だと思いますが?ディザイア様なら、まあ、いけるかも」

手で両耳を塞ぐも、天の声を塞ぐことは出来ないようだ。

「あー。金切り声を上げても事実は変わりませんので。魔法力でも剣の扱いでも、ディザイア様の方が優れているかと思いますが?」


耳を塞いでいた手を離し、天井を見上げてマイナが唸った。

「はあ!?何であんな奴が勇者なんだって、あなたが選んだのでしょう?は?聖剣が選んだって?選ばれる時に思いっきり祝福を述べていたじゃないですか!?どうやったって見てたでしょうよ?ならば関与し放題ですよね!?」


話してからマイナが溜め息を吐く。

「駄目勇者の為に、あとから勇者に選定されたディザイア様の気持ちも考えてあげて下さいよ。尻拭いの為に勇者に選ばれるとか、ほんとさいてー」

胡坐をかいて座っていたベッドから立ち上がり、伸びをする。


「もうね。あなたの聖女辞めたいぐらいだわ」

また耳を塞ぐ。

どうやら泣き叫ぶ神の声が聞こえるほど、優秀な聖女のようだ。


「ああ、でも。どうしてもって事態になったら」

胸のシンボルをいじりながら、マイナが呟く。

「最善は尽くしてあげるわ。命と引き換えてもね」

それからもう一度、背伸びをする。肩こりがきついようだ。


「でも、助けるならディザイア様一択だから。異論は認めん」





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