表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

これは昔の話です 魔王戦





自分の聖剣を振るいながら、ロウチが走ってペーシュ姫を探していた。

その後をマイナが走ってついて来ている。


地下に現われた魔王の気配は、もう王城の全てを包み込んでいた。

至る所で戦闘の音が響いている。

王国軍の姿が見えるが、ロウチは構う暇がない。


早く見つけなければ。

「姫で良いんだな!?」

確認のためにマイナに叫ぶ。


「そうよ!姫様でなければ!」

マイナも叫んで、ロウチに答える。

眼前に現れた魔物をロウチが切り払う。黒い汚泥のような魔物は今まで見た事がない。ロウチの聖剣は光りながら、魔物を消し去る。


王国軍は既に崩壊していた。

魔物の数が多すぎた。ラッテもケーファーも傍には居ない。

きっとどこかで戦っている。

ロウチは走りながら、自分だけが最後まで残るのだろう事は理解していた。


光を纏って戦えるのは自分一人しかいなかった。

走るマイナの前に、魔物が現れる。杖を掲げて追い払うが、相手が大きすぎた。

ロウチが振り返り、魔物を切りはらう。


腕を切られたマイナがロウチを見る。

その傷を治している暇が自分達には無い。

再び前を向いて走るロウチに、マイナも走りだす。

「すまない」

泣きそうな声に、マイナは微笑む。

「良いのですよ、あなたは勇者なのですから」

「なにが」

何が勇者だ。そう続く言葉をロウチが飲み込んだ。


王城の最奥、王家の間に姫はいた。

青い顔をして、駆けこんできた二人を見る。

その姿を確認したロウチとマイナがほっと息を吐く瞬間。


王家の間に真黒な魔王の姿が現れた。

ペーシュ姫が小さく悲鳴を上げた。

【…そこにいたのか】

歪んだ声で、姫を掴もうとする魔王に、ロウチが立ちふさがる。

「ああ、もう、なんだよ!」

姫を庇いながら、ロウチが叫ぶ。

「僕じゃ無理じゃないか!!」

聖剣は視界が無くなる程の光を放ち、王家の間を埋め尽くしているのに。

魔王は笑い声をあげながら、腕を伸ばしてくる。


「勇者ロウチ!」

姫が手を広げてロウチに叫ぶ。その姿を見て顔を歪ませながらロウチは自分の聖剣を、ペーシュ姫に差し込んだ。

姫の身体が光り輝き、小さな両手で聖剣の柄を握りしめる。


その姫を守るように、勇者と聖女が魔王を睨んでいた。


【こしゃくな】

魔王の声が王家の間に響く。

その歪な手が勇者と聖女をバラバラに切り裂く。


叫ばないように我慢している姫を見ながら、ロウチは遠い未来の勇者を思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ