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セツキのヴェア地下遺跡攻略実況配信①

 

 side 白峰 セツキ


「よし、着いた。時間は......まだ大丈夫ですね」


 いつも通り余裕を持って目的地に到着。

 今日は不定期で行っている攻略実況配信の日。

 今回配信をする場所はヴェアの地下遺跡。

 事前にクロ先輩に注意点などを聞いているから、その通り進めていけば問題ないはず。


「まずは、撮影ドローンの設定っと」


 カメラ付きの撮影ドローンはマギア内で破壊不能オブジェクト扱いなので、仮に地形が変わるような大技を使っても問題なく撮影することができる。

 現在ドローンは待機状態で、連動させた僕のステータスボードを使って細かい調整をしていく。


「......うん。これで大丈夫かな」


 時間も予定通り。


「それじゃあ、そろそろ始めましょうか」


 頭で一通りの流れを確認した後、配信の開始ボタンを押す。


「みなさんこんばんは。ギルド太陽と月のセツキです」


 視聴者のみなさんに手を振る。

 僕の配信はありがたいことに、マギアの攻略配信としてじゃなく、僕目的で見てくれている人も多い。

 なので、こういう所でしっかり顔出しをしておかないといけない。



 〈きたああああああ!!〉

 〈待ってたああああああ!!!〉

 〈セツきゅーーーーーーーん!!〉

 〈きたあああああああ!!〉

 〈セツきゅーーーーーーん!!!〉

 〈セツきゅーーーーーん!!〉

 〈セツきゅーーーーーん!〉

 〈うおおおおおお!!〉

 〈セツきゅーーーーん!〉

 〈待ってたああああ!!〉



 開始と同時に視聴者がなだれ込んでくる。

 同接も順調に伸びてるし、いい感じのスタートだ。


「今日は事前告知通り、ヴェアの地下遺跡攻略をしていきたいと思います」



 〈楽しみ!〉

 〈助かる!!〉

 〈ヴェア!〉

 〈今日も可愛い好き〉

 〈結婚して〉

 〈よっし!〉

 〈今日も数名沸いてるなww〉



「最初にヴェアの地下遺跡の説明からですが、地下遺跡に行くにはまず、上層に位置するヴェアの遺跡マップの踏破をしなければいけません」



 〈だな!〉

 〈うん!〉

 〈ふむ〉

 〈ほぉ〉

 〈好き〉

 〈うんうん〉



「一度踏破してしまえば、次回からは地下遺跡に行けるようになります。それでは早速行きましょうか」


 地下遺跡に向けて進んでいく傍ら、コメント欄を確認していく。



 〈セツキ無双楽しみ!〉

 〈わくわく〉

 〈どきどき〉

 〈今日は獣装する?〉

 〈獣装見たい〉

 〈セツきゅんの獣装見たい〉



「すみません。今日は獣装はしないです。一応攻略配信なので、バフとスキルもなるべく抑えて行きたいと思ってるんですよ」



 〈残念〉

 〈そっかぁ〉

 〈しゃーないな〉

 〈みんなが同じ獣装じゃないしな〉

 〈可愛いセツきゅん見れなくて残念〉

 〈は? 今でも十分可愛いだろ〉



「あはは、また次の機会にお見せしますね。それでは地下遺跡に到着しました。通路はこんな感じです」


 視聴者に見えるようにカメラを操作する。

 壁や天井は四角く切り出された石積みで出来ていて、通路幅はそんなに広くない、大人が二人横並びで歩けるくらいだ。



 〈せま!〉

 〈思ってたより明るい〉

 〈狭いな〉

 〈遺跡って感じだな〉

 〈セツきゅんと遺跡デートしたい〉

 〈なんかミイラとか出てきそう〉



「地下遺跡のモンスターは全てゴーレムです。通路には敵は現れず、広間で戦っていく感じですね」



 〈うんうん〉

 〈別名ゴーレム遺跡だしな〉

 〈あいつら固くて嫌い〉

 〈倒し方のコツ期待〉

 〈セツきゅんはやわらかそう〉



「はい。その辺も説明していきます。今、広間の前に着きました。この先に足を踏み入れると、ゴーレムを全て倒すまで広間からは出られない仕様になってます」


 広間は学校の体育館サイズ。

 そこに石を複数積み上げた様な見た目のモンスター、ゴーレムが複数待機状態で立ってるのが見える。



 〈え?〉

 〈え?〉

 〈まじ?〉

 〈倒せなかったら死ぬのか〉

 〈通路に逃げれないってことだな〉

 〈もっと顔見せて〉

 〈中にゴーレムいるじゃん〉

 〈うわ! スタンバってる〉

 〈沢山いるな〉

 〈あいつら全部倒すのか......〉


 

「参考程度にゴーレムのランクですが、一番弱いモノでランクC+、ボスはランクB+が複数体現れます。なので、ソロで挑む場合には十分気をつけて下さい」



 〈ソロじゃ行かんな〉

 〈ソロはないwww〉

 〈ソロはないですね〉

 〈B+複数にソロは無謀〉

 〈セツきゅん大丈夫?〉

 〈セツきゅん死なないで〉

 〈セツきゅんなら余裕〉

 〈セツきゅんなめんな〉



「それでは行きます」


 カメラに宣言して広間に入ると、通路への道が淡い虹色の壁で塞がれる。

 そして、それと同時、ゴーレム達の目が光り、のそりと動き始めた。



 〈動いた〉

 〈こえーー〉

 〈こいつ......動くぞ!〉

 〈全員こっちみてる〉

 〈セツきゅん......〉



「ゴーレムはその体色で弱点属性が分かります。なので目の前の赤いゴーレムは青属性の攻撃に弱いということになります。それと、注意して見てもらいたいのが、胸に描かれた魔法陣の形です。その魔法陣の形で弱点が物理か魔法か判断できます」



 〈まじか〉

 〈属性は知ってたけど魔法陣は知らなかった〉

 〈魔法陣めっちゃ小さいな〉

 〈あんなん戦闘中判断できないぞ〉



「観察系のスキルがあると判断しやすいですね。それに絶対倒せないという訳じゃないので、人数がいれば問題ありません」


 目の前のゴーレムに素早く近づきジャンプ、胸の魔法陣を殴りつけると、バラバラになった。

 今のゴーレムは物理弱点のゴーレム。

 物理攻撃特化の僕なら一撃だ。



 〈ええええ〉

 〈はや!しかも一撃〉

 〈見えなかった〉

 〈セツきゅん!!!!〉



「『アイシクルランス』」


 空間に複数の魔法陣が出現。そこから鋭い氷の槍が一斉に発射され、ゴーレムを突き刺していく。

 一撃で倒せたのは魔法弱点のゴーレム。

 それ以外を素早く打撃で処理していく。



 〈なんだこれ〉

 〈すげーーー!!〉

 〈さすがとしか言えん〉

 〈セツきゅんセツきゅんセツきゅんセツきゅん〉

 〈これは惚れる〉

 〈属性とは一体......〉



 全てのゴーレムを倒したことで通路への道が開放される。

 素早く魔石とアイテムを回収した所で、伝え忘れていたことがあることに気づいた。


「すみません、伝え忘れていました。ゴーレムはお互い連動していて、連動したゴーレムを早く倒さないと倒したゴーレムが復活してきます」



 〈それな〉

 〈まじ?〉

 〈それが厄介だよな〉

 〈絶対ソロで行かない〉



「連動したゴーレムの見極め方法は、次の戦闘で説明しますね」



 〈はいよ〉

 〈了解〉

 〈了解〉

 〈らじゃ〉

 〈了解〉

 〈セツきゅん私も見極めて〉

 〈セツきゅん好きすぎてツライ〉



 コメントに返事をしつつ通路を進み、次の広間の中に入る。

 ここのゴーレムもさっきと同じランクC+。

 僕の侵入を確認して全てのゴーレムが動き始める。


「先ほど話した連動したゴーレムの見極め方法ですが、魔法陣の色やゴーレムの関節から漏れ出ている光の色で判断できます。見た感じ連動してるのは2、3体ずつですね」



 〈ほんとだ〉

 〈そういうことか〉

 〈なんか色が違うとは思ってた〉

 〈魔法陣と比べてこっちはわかりやすい〉



「では連動しているゴーレムから優先して倒していきます」


 低姿勢で走り出し、連動したゴーレムが直線に並ぶ位置取りをする。

 そこから一気に加速して一番手前のゴーレムの足下でジャンプ、回し蹴りを叩き込む。

 スピードの乗った回し蹴りは容易くゴーレムを吹き飛ばし、後ろに控えた連動したゴーレムを巻き込んで壁に激突。

 土煙が消えると、崩れた壁の破片と一緒に魔石が3つ落ちていた。



 〈すげーーーー!!〉

 〈なんだいまの!!!〉

 〈加速したと思ったら一瞬でゴーレムが飛んでった〉

 〈なにした?〉

 〈おそらく回し蹴り〉

 〈回し蹴りだな〉

 〈セツきゅんすき〉

 〈セツきゅんセツきゅんセツきゅん!!!〉



 残りのゴーレムもさっきと同じ要領で倒していく。

 その間もコメントはどんどん流れているけど、さすがに確認している暇がない。



 〈氷柱槍って中級だよね確か〉

 〈あれだけ撃ちまくれるのもすごいな〉

 〈俺のアイランなら全員一撃で倒せる〉

 〈は?〉

 〈は?〉

 〈は?〉

 〈こいつセツキのジョブ知らないのか?〉

 〈INTと対極にある格闘系に魔法で張り合うとかww〉

 〈俺魔法使い系だけどこんなに威力出ない〉

 〈お、おう〉

 〈まあ、がんばれ〉

 〈セツきゅんに勝てないのはしかたない〉

 〈どんまい〉

 〈どんまい〉

 〈どんまい〉

 〈どんまい〉



「お待たせしました。ん? どんまい? えっと、僕何かしましたっけ?」



 〈無自覚系主人公みたいなことをww〉

 〈いや、おまえじゃないww〉

 〈あとでコメ確認してくれ〉



「え? あ、わかりました。では次に移動します」


 魔石とアイテムを回収して次の通路に移動する。

 この後も何回か同じことを繰り返し、下層への階段まで辿り着いた。


「この階段の先が下層になります。ここからゴーレムのランクが上がります。ちなみにですが、ボス部屋はさらに一つ下の階になります」



 〈おつ〉

 〈おつ〉

 〈お疲れ様〉

 〈好き〉

 〈可愛い〉

 〈ん? 下が下層? 今までいたのが中層?〉



「あ、はい。ヴェアの遺跡が上層扱いになるので、地下遺跡は中層からスタートなんですよ」



 〈ほう〉

 〈ほう〉

 〈なるほど〉

 〈そういうことか〉

 〈なんか紛らわしいな〉

 〈物知りなセツきゅん好き〉

 〈好き〉



「それでは下層に向かいます」


 階段を降りて、下層の通路全体が映るようにカメラを回す。



 〈ここが下層か〉

 〈あまり変わらんな〉

 〈少し暗いか〉

 〈少し暗いな〉



「そうですね。それと中層よりもジメッとした感じがありますね。それでは進みます」


 遺跡の構造は同じで通路にはゴーレムは現れず、広間で戦うようになる。

 ただ、ゴーレムのランクがB-に上がる。

 さっきよりも倒すのに時間がかかりそうだ。


「広間の前に着きました。みなさん、この先にいるゴーレムの形、さっきと違うのわかりますか?」


 カメラを広間の中で待機しているゴーレムに向ける。



 〈全然違うじゃんwww〉

 〈なんか人に近くなったな〉

 〈人形みたい〉

 〈あの絵を描く時のやつに似てる〉

 〈デッサン人形みたいだな〉

 〈剣とか斧持ってないか?〉

 〈武器持ちか〉

 〈急に強くなったなw〉



「あれはハイゴーレムといってランクはB-になります。見た目通り動きが早く、武器を使ってくるようになりますが、倒し方は同じです。では行きます」


 中層と同じく、広間に入ると虹色の壁で通路が塞がれる。

 すると、ゴーレムがカタカタカタと震えだし、目が光るとこちらに襲いかかってきた。



 〈すげー身軽w〉

 〈なんか軽そうな音した〉

 〈木製か?〉

 〈木製かは知らんけど、色ついてるから弱点はそれぞれだろうな〉

 〈セツきゅん頑張れ〉

 〈セツきゅん負けないで〉

 〈セツきゅんなら余裕〉

 〈セツきゅん最強〉



 石を積んだようなゴーレムと違い、動きも人に近く攻撃の振りも早い。

 体をズラしながら攻撃を避けて、カウンターを入れるも......


「......やっぱり一撃じゃ倒せないですね」


 吹き飛んだゴーレムは起き上がると、そのまま一直線にこちらへ向かってくる。

 その間も他のゴーレムが攻撃をしてくるため、追い討ちをかけるのは難しい。



 〈囲まれてる〉

 〈やばいやばいやばい〉

 〈大丈夫か......〉

 〈セツきゅん......〉

 〈セツきゅん死なないで〉

 〈どうするんだ〉



「『アイシクルランス』」


 ゴーレムの攻撃を躱しながら魔法を唱える。

 自分の体を囲うように展開された魔法陣から、一斉に氷の槍が出現。ゴーレム達の体を貫いたまま停止する。



 〈おおおおおおおおお!!〉

 〈アイシクルランス!!!〉

 〈アイシクルランスかっけー!!〉

 〈セツきゅんもかっこいい〉

 〈はぁぁ好きすぎる〉

 〈氷柱槍を飛ばさずに足止めに使ったのか〉

 〈参考になる〉

 〈氷柱槍俺も使いたくなってきた〉



 足止めは出来たけど、INTの低い僕ではゴーレムを倒し切ることが出来ないので、ゴーレム達に素早く強力な打撃を与え、確実に倒していく。



 〈こうなると一方的だな〉

 〈なんかすごい音なってるぞwww〉

 〈ゴーレムってあんな感じに砕けるのか?〉

 〈レベルを上げて物理で殴るとああなる〉

 〈力こそパワーだな〉

 〈セツきゅん男らしい〉

 〈しゅきしゅき〉



「終わりました。やはりハイゴーレムになると倒すのに時間がかかりますね」



 〈おつ〉

 〈おつ〉

 〈十分早いw〉

 〈普通に早いぞ〉

 〈ソロでこれは異常〉

 〈結構危なかった?〉



「囲まれた時はどうしようかと思いましたけど、まだまだ大丈夫ですよ。それでは次の広間に移動しますね」



 〈頼もしいw〉

 〈結構ピンチに見えたけど余裕だったんだな〉

 〈そういえばバフ使ってないよな〉

 〈確かにwww〉

 〈なんだ余裕じゃん〉

 〈B-相手にあの立ち回りはさすがとしか言えん〉

 〈さすがセツきゅん〉

 〈俺達のセツきゅん〉

 〈おいネタにすんなよ。あいつらガチ勢はマジでヤバいぞ〉



 いつも通りの流れを確認しつつ通路を進み、次の広間に入る。


「さっきの戦闘で足止めの有効さがわかったので、今回は最初から足止めしていきたいと思います」



 〈今度は何するんだろ〉

 〈楽しみ〉

 〈また氷柱槍か?〉

 〈氷柱槍かな?〉



「『アイスフィールド』」


 ハイゴーレムが集まって来たところで、右足で地面を踏みつける。

 すると、右足の周りからみるみる地面が凍っていき、広間の床全体が凍りつく。



 〈アイスフィールドか〉

 〈アイスフィールド使えるのか〉

 〈氷界も使えるとかすげーな〉

 〈セツきゅんすごい〉

 〈セツきゅんしゅき〉



「僕のアイスフィールドじゃこの広間サイズまでしか展開出来ないので、ギルドバトルでは使えないんですよね。それにセツカがもっと凄いのを使えるので、コレを使うのは久しぶりです」



 〈十分すごいwww〉

 〈ここまで展開出来るだけですごいから大丈夫だ〉

 〈ニヴルヘイムと比べちゃいかん〉

 〈ニヴルヘイムには勝てんわ〉

 〈そもそも格闘系が使うスキルじゃないしな〉

 〈それな〉

 〈それな〉

 〈セツきゅんはいつだってすごいよ〉



「ありがとうございます。それじゃあ、倒しちゃいますね」


 下半身が凍りついたハイゴーレムがまた動き出す前に、素早く倒していく。

 赤魔法で氷を溶かされる心配もないから、この広間はもうクリアしたも同然だ。



 〈この方法を使えば誰でもクリア出来るんじゃないか?〉

 〈【悲報】ゴーレム遺跡で大量の死者出る〉

 〈勘違いしてるようだけどセツキだから簡単に倒してるだけで、普通のプレイヤーはこんな簡単に倒せないぞ〉

 〈そもそもまだボスじゃないしな〉

 〈ゴーレム遺跡初見者はボスを見てから判断した方がいい〉

 〈それな〉

 〈それはそう〉

 〈まったくだ〉



「みなさんの言う通り、地下遺跡に挑む場合はボスを見てから判断してください。それでは次に移動します」


 上級プレイヤーと思われる人達から、地下遺跡を軽視しないようコメントされているので、僕からも軽く注意を促し、通路の移動を開始する。


 あとクロ先輩から聞いていた注意点は、隠し部屋か。


 これまでも通路を移動中に不自然な壁が幾つかあって、〈ここあやしくないか?〉というコメントも少数だけど流れていた。

 ちょうどタイミング悪く別の話題を話していたから敢えて触れてなかったけど、ちょうど通路の側面に怪しい壁があったので、ここで伝えることにした。


「今僕が立っている所の壁が、他と違うのはわかりますか? 今までもいくつかこういう壁があって、気づいていた人も何人かいましたよね?」



 〈ほんとだ。なんか色が違うな〉

 〈全然気づかなかった〉

 〈わからなかった〉

 〈やっと拾ってくれたか〉

 〈やっぱ気づいてたか〉

 〈わかりやすかった〉

 〈セツきゅんしか見てなくてわからなかったよ〉

 〈セツきゅんしか目に入らない〉

 〈セツきゅんもっと顔見せて〉



「この壁の向こう側、今までの所もそうなんですけど、隠し部屋があるんですよ」


 壁に向かって少し力を込めて、拳の甲で打つ。

 すると壁は簡単に崩れ、その先に学校の教室サイズの部屋が現れた。



 〈ホントだ。部屋がある〉

 〈こんな簡単に壁が崩れるのかw〉

 〈裏拳で壁に穴あけるセツキかっけー〉

 〈何やらせても絵になる〉

 〈セツきゅん素敵〉

 〈男らしいセツきゅんに守ってもらいたい〉

 〈セツきゅんに守られるなんて至高〉

 〈ん? 部屋に何かあるな〉



「この部屋もそうですが、隠し部屋には必ず宝箱が置いてありまして、一応アイテムも入ってます。でも、ほとんどが消費アイテムばかりで、市場でも普通に手に入るものなので大した価値はありません」



 〈だから隠し部屋を無視してたのか〉

 〈納得した〉

 〈隠し部屋の宝箱から消費アイテム以外出たことない〉

 〈俺もだ〉

 〈同じく〉

 〈同じく〉

 〈でもほとんどってことは出ることもあるってこと?〉



「確かに稀にですがアイテムも出ます。一応レアアイテムなんですが、使う人が限定され過ぎていてほとんどの人には必要のない物なんですよ。出現するレアアイテムは1種類のみで【魔導人形の核】ってアイテムなんですけど、みなさん知ってますか?」



 〈わからん〉

 〈聞いたことないアイテム〉

 〈もしかして人形使いのやつか?〉

 〈人形使いが欲しがるやつ〉

 〈人形使いしか欲しがらないやつ〉

 〈人形使い自体プレイヤー少ないしねw〉

 〈人形使いはマギアで一番プレイヤー数が少ないって言われてるジョブ〉

 〈ランカーに1人いるよな〉

 〈え?人形使いって人気ないの?〉

 〈人形の操作が難しいから〉

 〈超上級者向けのジョブだからね〉



「人形使いは人形を操りながら、自分も回避したり攻撃したりするのでやることが多いんですよ」



 〈あれは頭がおかしくなるwww〉

 〈じゃあ強い人形使いってめっちゃ頭いいのか〉

 〈俺の知ってる強い人形使いは頭おかしいぞ〉

 〈俺の知ってる強い人形使いも頭おかしいな〉

 〈もしかしてセツキ狂い?〉

 〈メルか〉

 〈メルだなw〉

 〈強い人形使い+セツキ狂い=メル〉

 〈だな〉

 〈今日も来てるんじゃね〉

 〈メルいるかー?〉

 〈メルいるだろwww〉

 〈おい、今は隠し部屋の話だろ〉

 〈そうだった〉

 〈すまん〉

 〈スマソ〉



「あはは、大丈夫ですよ。では隠し部屋の話に戻しますね。消費アイテムでも手に入るならいいと宝箱を開けてしまうと、罠が発動します。今回は宝箱を開けるとどんな感じになるのか、実際に見てもらいたいと思います」


 部屋の隅に置いてある宝箱を開けると、中には【上級ライフポーション】が入っていた。

 と同時に、隠し部屋の入口が虹色の壁で塞がれ、部屋の床に無数の魔法陣が出現。そこからハイゴーレムが姿を現す。



 〈めっちゃ出てきた〉

 〈これはヤバい〉

 〈こんなとこで戦うのか〉

 〈予想はしてたけど、この数は多いな〉

 〈これは上級ライフポーションじゃつり合わない〉

 〈セツきゅん......〉



「こんな感じに地下遺跡の隠し部屋は、報酬とつり合わないと思ってくれて大丈夫です。今回もアイスフィールドでいいんですが、部屋も狭いので違うスキルを使いますね。それではいきます。『連殺』」


 一番近い壁際のハイゴーレムを殴り続け破壊する。

 自分の攻撃力が上がったことを感じながら、近くのハイゴーレムも同じ要領で倒す。

 するとさらに攻撃力が上がり、ハイゴーレムを倒すスピードが上がっていく。



 〈セツキどんどん強くなってる?〉

 〈連殺使ったからかな〉

 〈ここなら使いやすいしな〉

 〈どんな効果か気になる〉

 〈敵を倒すと攻撃力が上がる。5秒以内に次の敵を倒すとさらに攻撃力が上がるの繰り返し〉

 〈敵がいる限り無限に攻撃力上がるけど、5秒以内はキツい〉

 〈それに1回でも効果を切らすと一定時間全ステータスが大幅に下がるから使い所を選ぶスキル〉

 〈解説ニキ感謝〉

 〈だな〉

 〈ほんとそれ〉



 すでに数体のハイゴーレムを倒したことで、ハイゴーレムを一撃で倒せるようになった。

 殴れば吹っ飛び、蹴れば砕ける。

 部屋の中を駆け回り、目に入ったハイゴーレムを片っ端から倒していく。

 ハイゴーレムが倒される度に新しいハイゴーレムが召喚され、倒す度に攻撃力が上がる無限ループ。

 ハイゴーレムを全て倒し切り、隠し部屋から解放されるまでにそれほど時間はかからなそうだ。



 〈これはヤバいwww〉

 〈セツキ無双〉

 〈今のセツキはおそらく最強のプレイヤー〉

 〈それは間違いない〉

 〈連殺効果切れた時の違和感すごそう〉

 〈どれくらい強いのか味わってみたい〉

 〈それはある〉

 〈わかる〉

 〈セツきゅんはもとから最強〉

 〈セツきゅんしか勝たん〉

 〈今だけは同意〉



 床に転がる大量の魔石と素材アイテムの中、最後のハイゴーレムを倒すと、入口を塞いでいた壁が消えた。

 同時に連殺スキルの効果も消え、代わりにステータス低下の状態異常が付与される。


「終わりました。こんな感じに敵が大量に出現する割に、宝箱のアイテムがつり合わないことがほとんどなので、隠し部屋に入ることはおすすめしません」



 〈おつ〉

 〈おつー〉

 〈おつです〉

 〈すごかったぞ〉

 〈いいもの見た〉

 〈落ちてる魔石の数すごいな〉

 〈どんだけ倒したんだよ〉

 〈セツきゅんかっこよかったよ〉

 〈ライフポーション1つじゃ割に合わない戦い〉

 〈それはそう〉



「もう一度言いますが、宝箱から出るレアアイテムは【魔導人形の核】のみになります。必要ない人はスルー推奨です。それでは移動します」


 その後も何回か広間での戦闘を繰り返し、地下への階段の前に到着した。

お読み下さりありがとうございました。

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