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マギア観光

 

side 皇 遥


 学校が終わりマギアの世界にやってきた。

 目の前には、昨日と同じ現実と見間違えるほど美しい世界が広がっていた。


 やっぱりすごい綺麗。テンションあがるなぁ。


 高揚感に包まれながら、昨日も行ったマギアの炎槌を一望できる展望台へ向かう。

 今日は朝話した通り、クラスメイト達に色々な場所を案内してもらう予定だ。

 待ち合わせ場所の展望台にはもうみんな集まっていて、ワイワイ楽しそうにおしゃべりをしていた。


「みんなおまたせ! ごめんね。遅くなっちゃった」


「おっす! 遅れたっつっても時間ちょうどだけどな。名前は......ハルカって呼んでいいよな?」


「え? あ、うん。ハルカでいいよ」


 佐藤くんからのいきなりの名前呼びに驚く。

 でもそれも、みんなの会話を聞いていたら納得だ。


「うわっ! 佐藤将也(マサ)。急にハルカのこと名前呼びしてるー」


「は? ゲーム内はプレイヤー名呼びが基本だろ。茶化すなよ」


「知ってますー。ちょっと言ってみただけー」


「ウゼェ......」


 そっか。ゲームの中だから、本名を言っちゃいけないんだ。

 黒月くんも私のこと普通に呼んでたから、全然気にしてなかったよ。

 なら、私も黒月くんのことクロって呼ばないとだよね。

 私のことはハルカ......ハルカって呼ばれちゃうんだ。

 どうしよう。黒月くんに名前呼びされるとか、ちょっと恥ずかしいかも。

 もっとあだ名っぽい名前にすればよかったな。


「ハルカー。私のことは相澤直美(ナオ)って呼んでねー」


「おっけー! ナオよろしくね! あと鈴木く、じゃなかった! 鈴木翔吾(ショウ)くんもよろしくね!」


「うん。よろしく。ハ、ハルカ......さん」


「ショウ。お前照れるくらいなら、最初からさん付けにしとけよ」


「う、うるせーし! もういいだろっ! 早く行こうぜ!」


「あっ! ごめんみんな。ちょっと待ってもらっていいかな?」


 そう言いながら、ステータスボードを開く。

 画面上部には、新着を知られる吹き出しのアイコンがある。

 たぶん黒月くんからギフトだ。

 早速送ってくれたみたい。

 吹き出しをタップすると、予想通り『クロさんからギフトが届いてます 』とメッセージ表示された。

 早速中身を確認してみる。


「えっ!?」


「ん? ハルカどうした?」


「あ、な、なんでもないよ! もう少し待ってて......」


 黒月くん! 【低級マジックポーション】×900ってなにっ!? 人にあげる数じゃないよっ!

 それに【初級魔法の書】に【魔法の杖】、【低級ライフポーション】も......あぁ、こんなに。

 と、とりあえず、全部アイテムストレージに移動させて、考えるのはあと!


「......ご、ごめん、おまたせ! それじゃあ行こっか! 」


「んん? ハルカー? 私になーんか隠してない?」


「い、いやぁ。あ、ほら! それよりも早く行こ! 今日はどこ案内してくれるの?」


 ナオの追求から逃れるため、少し強引だけど話を打ち切る。

 そして、マサくん先導のもと、私達はマギア観光を開始した。



────



 マギアの炎槌があるこの街の名前はセントラルエリア。

 マギア・ナシナ・オンラインのメインエリアだ。


 街並みは中世ヨーロッパ風で、三角屋根の建物が所狭しと建っている。

 街の中心を通る中央通りには、ギルド本部を始め、武器屋、防具屋、道具屋など主要なお店が並んでいる。

 街の中はプレイヤーとNPCが入り交じり、馬車なんかも走っていたりして、かなり賑わっている様子。

 NPCが普通に買い物をしていたのは結構衝撃的だった。

 ちなみに、NPCへの故意による暴行は、即アカウント停止とのこと。

 もちろんやるつもりはないけど、頭の中にはしっかりと入れておく。


 中央通りから一つ脇に入った道には、鍛冶屋、薬屋、工房など、少しマニアックなお店が並んでいる。

 高レベルになるにつれて、中央通りに並ぶお店よりもこちらを利用する頻度が高くなってくるそうだ。

 その中でも鍛冶屋は人気で、素材持ち込みで強力な武器や防具を作ってもらう人が後を絶たないそうだ。

 そのため、受注数によって完成がかなり遅れるなんてこともあって、そういうところまでリアルに忠実なんだなって感心してしまった。


 他には図書館なんかもあって、この世界の歴史についても調べることが出来るそうだ。

 この世界の成り立ちや言い伝え、過去に起こった争いとか、かなり詳しく書かれているみたいで、そういうのが好きな人は図書館に入り浸っているみたい。


 中央通りの隣にある広場には露店なんかも出ている。

 こちらはプレイヤー自身が販売しているお店で、使わなくなった武器や防具、アイテムなどを他のプレイヤーに売っているそうだ。

 フリーマーケットみたいにたくさんのお店が並んでいて、見ているだけでかなり楽しい。

 NPCが経営しているお店より安く買えたりするから、オススメだと教えてもらった。


 あとは、月に一度オークションなんかも開催されているようで、珍しいアイテムにはかなりの高値がつくんだとか。

 今の私には無縁の話だけど、もっとお金が貯まったら参加してみたいと密かに思っている。

 高額アイテムの落札とか、一度でいいからやってみたい。


 セントラルエリアといえば、マギアの炎槌のほかにギルドバトル会場が有名だそうだ。


 ギルドバトル会場は、セントラルエリア内ならどこにいても見える一際大きなコロッセオ風の建造物で、ここで行われる試合は、ギルドバトルトーナメントの本戦や上位ギルドのバトルなど、選ばれた数少ないプレイヤーしか上がることのできない夢の舞台だそうだ。


 ここでのバトルは現実世界でもネット配信されていて、私達が普段観るギルドバトルは、この会場で行われているものなんだって。


「すごいなぁ......」


 会場の入り口近くまで来た私は、その規模の大きさに圧倒される。

 いつもライブ配信で満席になっている会場を観ていたけど、こんなに大きな所だなんて思わなかったよ。

 黒月くん、こんなすごいところで戦ってるんだなぁ。


「ねえナオ、この会場って上位ギルドの人達が戦ってるんだよね? もしかしてここにいたら、そういう人達に会えたりするのかな?」


「それは無理なんじゃない? たぶん専用の入口とかあって、そこから入ってるんだと思うよ」


「まぁ、そりゃあそうだよね」


 もしかしたら黒月くんに会えるかもなんて思ったけど、普通に考えて、ここに太陽と月のメンバーがいたら、すごいことになっちゃうよね。


「なにハルカ。誰か会いたい人がいるの?」


「う、うん。ちょっとね」


 さすがに、クロに会いたいとは言えない。

 みんなにクロがなんて言われてるか知ってるし。それよりなにより、黒月くんの耳に入ったら大変だもん。


「なにその反応。ちょっと教えてよ。男? 女? それくらいならいいでしょ?」


「い、言わないよ。絶対茶化すもん」


「あ、男でしょ? うわぁ、ハルカがついに恋に目覚めたかー」


「ちょ、ちょっと、そういうのやめてよ! そんなんじゃないから!」


「大丈夫大丈夫。わかってるって。で、誰? 教えてよ?」


「絶対言わない」


 なんでだろう。

 ナオにからかわれているのがわかってるのに、あんまり嫌な気持ちにならない。

 そんなこと絶対口には出さないけど。

 それに、聞かれれば聞かれるほど気になって......


 今度こっそり観戦に行ってみようかな。

 

────


 セントラルエリア観光のあとは、見渡す限りの草原エリア、キスレ平原にやってきた。

 時刻は19時30分。太陽がいなくなって、もう夜の時間だ。

 電気も外灯もないけど、星空が広がる草原は不思議なくらいに明るくて、時々吹き抜けていく風がなんとも心地いい。


 このキスレ平原は、初心者~中級者がよく来るエリアで、プレイヤー同士が間隔を空けながら、それぞれのレベルに合ったモンスターと戦っている。

 今いる場所も、セントラルエリアから近い場所とあって、私でも倒せそうなモンスターがいくつか見えるから、ここで戦うのもいいかもと思った。


「いくぜ!『獣装、ワイバーン!』」


「『獣装、羅刹』」


 キスレ平原に着いて早々、ナオが二人の獣装を見たいと言い出して、マサくんとショウくんが獣装を見せてくれることになった。


 マサくんの獣装はワイバーン。

 背中に黒い竜の大きな翼と尻尾が生えた姿で、見た目通り空を自在に飛び回って戦うスタイルみたい。

 ジョブは暗黒騎士で、姿や戦い方も太陽と月のワタルさんに似ている。

 本人も教室でワタルさんの話をしているから、意識しているのは間違いないと思う。


 ショウくんの獣装は羅刹。

 髪が赤くなり額から二本の角が生えている。

 ジョブは侍。甲冑を着けた赤髪の鬼が、刀を振る姿はすごく外国人受けしそうに見える。


 獣装を使うにはある程度のレベルが必要で、この辺りでレベルを上げているプレイヤーには珍しいみたい。

 その証拠に、二人に目を向けているプレイヤーは結構多い。

 マサくんもそれに気づいているみたいで、普段よりも機嫌がよさそうに見える。


「どうだ? ハルカ、ナオ、これが俺の獣装だ。二人も早く使えるようになれよな!」


「おおー! やっぱ獣装を使うと雰囲気あるねー」


「うんうん。マサくんの獣装は空飛べて気持ちよさそうだし、ショウくんの獣装はめっちゃ鬼! って感じで強そうだよ」


 そんな私達の反応に気をよくしたマサくんは、「よし! 模擬戦やろうぜ!」と言って、ショウくんを連れて少し離れたところで戦いを始めてしまった。


 空を飛びながら攻撃するマサくんと、それを上手に捌くショウくん。

 迫力があって見ていて楽しいけど、どうしても昨日の黒月くんと比べてしまう。


 黒月くんの獣装、かっこよかったなぁ。


 空間を染め上げる紅紫色の魔力が、キラキラと輝く光景はとても幻想的だった。

 アメジストの瞳に一瞥され、胸の高鳴りを感じたことは記憶に新しい。

 昨日黒月くんにもらった【結界石の指輪】を無意識に触ってしまう癖は、どうやら今日一日で定着してしまったようだ。


「それじゃあ、私も少し戦ってくるねー」


 ナオはアイテムストレージから杖を取り出すと、背中を向けたまま手を振って行ってしまった。

 ちなみに、ナオのジョブは神官で太陽と月のミミさんに影響を受けてのことだそうだ。


 よし。みんないなくなったね。


 ナオが遠くに行ったことを確認して、アイテムストレージから、黒月くんにもらったアイテムを取り出す。

 まず最初は【初級魔法の書(赤)】。

 本は各属性分あって、まずは自分の属性から使ってみることにした。

 手に持った【初級魔法の書(赤)】に表示されている使用許可をタップすると、本が目線の高さまで浮かび、パラパラとページが勝手にめくれていく。

 そのページが中央辺りまでくると、そこから赤く光る小さな玉が出てきて、私の回りをクルクルと回ったあと、胸の辺りから体の中に吸い込まれていくように入っていった。

 すると、急に閃いたように、赤属性の魔法の使い方がわかってしまった。


「『イグニッション』」


 早速魔法を使ってみると、手のひらの上にイメージ通りの小さな火が現れた。


「え!? すごっ! 火が出たんだけど! 私、めっちゃ魔法使いじゃん!」


 手のひらの上に浮かんでいる火を、色んな角度から眺めてみる。

 熱そうなのに全然熱くない。

 すごく不思議な感じ。

 手を握って消してみたり、また開いて出してみたり。人差し指を立てて、ロウソクみたいにしてみたり。思いついたことを色々試してみる。


 めっちゃ楽しい!

 めっちゃ楽しいんだけど、早く他の属性も覚えなきゃだよね。

 ナオ達に見つかったら、なに言われるかわからないし。


 アイテムストレージから、【初級魔法の書】を取り出して順番に使用していく。

 青、黄、緑、白、黒、無。

 全ての魔法を覚えたあと、各指に各属性の玉を出してみる。

 これが意外と難しい。

 何度も何度も挑戦して、五色の玉を出せた時の達成感はそれはもう......って感じだった。


「よし!」


  たくさん魔法も覚えたし、そろそろモンスターと戦ってみよう。

 確か、黒月くんがくれたギフトに、杖も入っていた気がする。


 アイテムストレージには記憶通り、【魔法の杖】が入っていた。

 取り出してみると、なんだか見覚えのある杖。

 杖の先端がくるりと渦を巻いている。

 私が使っている杖と同じだ。

 でも、吹き出しの表示が私のと違う。

 黒月くんのには、付与効果が付いているみたい。


「えっと、なになに......」


【熟練度上昇効果A】【魔力自然回復量増加B】【魔力回復量増加B】。


「............え?」


 なにこれ!?

 なんかすごそうなの、いっぱい付いてるんだけど!

 と、とりあえず、モンスターと戦ってみようかな!

 強くなるのが恩返しだし、ね!


 気持ちを切り替えて、周囲を見渡してみる。

 夜だけど結構遠くまで見える。

 ラハの森の深域に比べたら、全然明るいくらい。


「ん? なにかいる」


 草原を歩く動物みたいなシルエットが見えた。

 目を凝らしてみる。

 カピバラだ。


 名前????

 ランクE+


 表示を見る限り、一応モンスターみたい。

 見た目完全にカピバラだけど。


 カピバラはゆっくりとこちらに近づいてきて、一定の距離まで来ると、攻撃の体勢をとる。

 私も杖の先端をカピバラに向ける。


 確か、「全力で魔法を使う」だったよね。

 使う魔法をイメージして、全力でっ!


「『ファイアボール!』」


 魔法陣が浮かび、メラメラと燃えるバレーボールサイズの火球がゴウッ! っと音を立てて、一直線にカピバラに飛んでいき着弾、爆発する。


「わっ!」


 想像していた以上の火力にちょっと焦る。

 黒煙が立ち昇る様子を眺めていると、黒焦げになったカピバラはコテンと倒れ、魔石になった。


「............」


 カピバラ、一発で倒しちゃったよ。

 なんか爆発したし、ファイアボールってこんな感じなんだ。


 焦げあとが残る場所に落ちている魔石を拾い上げる。

【黄の魔石 極小】と表示されている。

 カピバラは黄属性、緑魔法に弱いってことだ。

 赤魔法を使うのと、どっちが強いんだろう。


「......確かめてみよう」


 カピバラから出た魔石をアイテムストレージにしまう。

 周りを見渡すと、少し離れたところにまたカピバラを発見。

 今度は緑魔法で。


「全力を意識して......いけっ!『ウィンドボール!』」


 魔法陣が出現。

 バレーボールサイズの吹き荒れる風の球が発射。

 着弾と同時にミニ竜巻が発生、カピバラを襲う。

 小さく悲鳴をあげているカピバラを見ていると、少し良心が痛む。

 竜巻が消えたあとには、体中切り傷だらけのカピバラが倒れていて、魔石になった。


「うーん」


 予想していたけど、こっちの魔法でも一発だ。

 それだと、どっちが強いのか全然わからない。

 なら、もっと色んなモンスターで試してみよう。


 魔石をアイテムストレージにしまって、近くにいるモンスターを手当り次第に倒していく。

 色々な属性の魔法を、使って倒して30分。

 わかったことは、赤属性の魔法ならどんな敵でも一発で倒せるけど、他の属性の魔法だと有利属性以外は2発かかったということ。


 やっぱり、赤属性が一番強いみたい。

 もっと敵が強くなれば、また変わってくるだろうけど。

 この30分でレベルは4になった。

 魔力の回復速度も早いし、魔法の熟練度もいい感じに上がっている。


「明日黒月くんにお礼言わないと。あ、でも先にメッセージでお礼言った方がいいよね。その方が絶対印象いいだろうし......」


「ハルカー? なに一人でブツブツ言ってんの?」


「え? あ、ナオ。おかえり。ちょっと魔法のこと考えてただけだよ」


 いつの間にか後ろにナオがいた。

 変な声を出さなかった自分を褒めてやりたい。

 それよりも私の独り言、聞こえてなかったよね?


「ふぅん......んん? ちょっとハルカ、その右手薬指の指輪なによー?」


「え、いや、これは......」


 右手の薬指に嵌めていた【結界石の指輪】を目敏く見つけたナオが、ニヤニヤと笑みを浮かべる。

 別に隠すつもりはなかったけど、いざ聞かれると想像以上に恥ずかしくて、咄嗟に左手で指輪を隠す。

 でも、こうなったナオは強い。

 お構いなしに私の右手を素早く掴む。


「いいからいいから、ちょっと見せてみって」


「あ、ちょ、ちょっと」


「いいからいいから」


 強引なナオに抗議の声を上げるけど、全く聞く耳を持たない。

 マジマジと見つめ始める。

 でも、それもほんの一瞬の間。

 すぐにその表情は驚愕に変わる。


「は? ちょ、ハルカ! あんたこの指輪どうしたのっ!?」


「え? こ、これ? もらったんだよ。結界石の指輪って言うんだって。これすごいアイテムでさ。私も一回使ってみたんだけど......」


「それくらい知ってるっての......うわっ! なにこれ、めっちゃ透明じゃん。あんたこれ、もらったとか軽く言ってるけど、この指輪の価値わかってんの?」


 視線は指輪に向けたまま、ナオが怖いことを言い出す。

 価値とか言われても全然わからない。

 黒月くん、なにも言わずに普通にくれたし。


「ねえナオ、この指輪、そんなすごい物なの?」


「はぁぁ。あんたねぇ。これは......」


 呆れの混じった声で話すナオによると、 【結界石の指輪】は即死級の攻撃も防いでくれるすごい指輪で、結界がダメージを受けるたびに石の色が変わっていく仕組みなのだそうだ。


 透明→ダメージ4回→白色→ダメージ3回→灰色→ダメージ2回→黒色→ダメージ1回→使用不可


 ダメージカウントは、強い攻撃弱い攻撃関係なくカウント1。

 透明な石がついた結界石の指輪は計10回の攻撃を防いでくれる。

白色は6回、灰色は3回、黒色は1回の攻撃を防いでくれて、一度モンスター出現エリアから外に出ると、使用回数は元々の指輪の色まで戻るそうだ。


 所持上限は一つ。

 高難易度クエストだと、即死級の攻撃や回避不能の攻撃をしてくるモンスターもいるらしく、ダンジョン攻略の最優先必需品とも言われているんだとか。


 そんな結界石の指輪だけど、それ自体は珍しいアイテムでもないらしく、普通にモンスターが落としたり、露店でも売っているみたい。

 ただ、そのほとんどが黒色の石がついた指輪。

 良くても灰色なんだって。


 それ以上の白色の指輪が欲しい場合は、オークションで落札するのが一番簡単な方法みたい。

 でも、そもそも白色は数が少ないみたいで、出品されてもすぐに落札されちゃうんだとか。


「えっと。じゃあ、透明の石が付いた結界石の指輪って」


「まず売りには出されないみたい。最上位のプレイヤーやそういう人に譲ってもらう以外手に入らないって言われてる。ねぇハルカ、あんた変なことやってないよね?」


「へ、変なこと?」


「パパ活とか」


「パ、パパ活!? そんなのやってるわけないじゃん!」


「だよねー。ハルカの性格ならそれはありえないかー。てゆーか、なんで右手の薬指なの? あんた彼氏いないでしょ?」


「な、なんとなくだよ! 深い意味とか全然ないから! ほ、ほら、もういいでしょ! そろそろ二人の所に戻ろうよ!」


「え? ちょっと、押さないでよー」


 これ以上ナオに質問攻めにされると、ついうっかり口を滑らしちゃいそうな私は、疑いの目を向けてくるナオの背中を強引に押しながら、助けを求めるようにマサくん達のところへ向かった。

お読み頂きありがとうございました。

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