EP5 幼女の危機
ロリコン変態女騎士ローリエが逃走し、コトハを守ることに成功したドヘターレ。ちょうどいいのでローリエが使っていた宿屋でしばらく休息させてもらうことにした。
窓ガラスが割れたり、ドヘターレの怒号が響いていたにも関わらず、コトハは眠ったままだった。余程疲れてしまっていたのだろうと、ドヘターレはそのままゆっくり眠らせてあげていた。
「この世界にはあんな危険な
ロリコンもいる……。やっぱり
一刻も早く帰らせてあげたいな……。」
その時だった。
「魔王様に歯向かった魔導師ドヘターレ。
そして幼女コトハ。この街にいるならば
速やかに投降せよ。」
「なっ……!?」
突然、空からそんな声が聞こえてきた。ドヘターレは恐る恐る割れた窓から外を見る。上空には、人とコウモリが混ざったような姿の魔物が3体ほど、自分たちを探して飛び回っているようであった。
「ま、マズいぞもう追っ手が……。
いや、魔王様が自分でこの地域に
飛ばしたんだから、そりゃ居場所が
ある程度バレてるのは当然か……。」
ドヘターレは焦る。どうするのが一番良いのか、解決策が見出だせない。
ひとまずバレないように、このまま宿屋に身を潜めることに決めた。
コトハをベッドからそっと降ろし、毛布で隠した。自らも物陰に身を潜めた。
「どこだ。魔道師ドヘターレ。
幼女コトハ。このまま
逃げられると思っているのか。」
「しつこいな……。」
しばらく隠れ続けているが、相変わらず外で魔物たちはドヘターレとコトハを探し回っている。
そして、痺れを切らした魔物のうちの一体が、街の人々にも聞いて回り始めた。
「おい。命が惜しければ答えよ。」
「ヒッ……!?」
「顔の青い男と幼い少女が
この街にいるはずだ。
どこに行ったか言え。」
「た、確かに怪しい男が
女の子を連れているのを
見ました……。で、でも
どこに行ったかまでは……。」
「そうか。やはりいたか。」
情報を聞き出すと余計な時間は使わず、魔物は速やかに他の人間にも聞き込みをする。
「わ、私は男と少女が別れて、
少女が宿屋に向かうのを見ました!」
「……ッ!!」
ドヘターレの耳にそんな声が聞こえてきた。ついに自分たちの居場所がバレてしまった。
「ど、どうする……?
このままじゃコトハちゃんは
魔王様の配下に……。」
追い詰められたドヘターレは知恵を絞る。そして、覚悟を決めた。
「やるしかないか……。」
ドヘターレは宿屋にあったタオルを丸め、子供を抱えているように偽装する。そして…。
「おいっ!!
魔導師ドヘターレがいたぞ!!」
「何ッ!?」
「子供を抱えて逃げているようだ……!!
追えッ!!一網打尽にしろッ!!」
3体の魔物はドヘターレを追って追跡を始めた。宿屋には毛布で隠されたコトハが残されていた。
その宿屋の部屋に、再びローリエが戻ってきた。そして、置きっぱなしになっていた剣を回収し、戦闘服に着替え、鎧を着始めた。
「コトハちゃん……!」
神妙な面持ちでそうつぶやくと、そのまま部屋の片隅に毛布で隠されているコトハには気付かずに、外へ飛び出した。
「ろ、ローリエさん……?」
ついに目が覚めたコトハは、外へ向かうただならぬ様子のローリエを見ていたのだった。
「はぁ……はぁ……!!」
「待て!!ドヘターレ!!
投降しろッ!!」
「大人しく投降すれば、
痛みを与えずに
消し去ってやると
魔王様が慈悲を与えて
くださっているぞ!!」
「どこが慈悲だ!!
冗談じゃないぞ!!」
ドヘターレがコトハを抱えているフリをしながら逃走を続ける。そのまま街の外に出て平原に飛び出す。
「くそっ……もう足が……!!」
逃走を続けて足が限界に達していた。魔物がドヘターレに迫る…!
「来いッ……!!裁きを受けよ……!!」
その時だった。ドヘターレに追い付こうとしていた魔物が悲鳴を上げた。
「ぐあああああッ!?」
「な、なんだ……!?」
負傷し地面に叩き付けられている魔物。そこには剣を構えた女騎士が立っていた。
「な、なんだこの女はッ!?」
「お、お前は……!!」
真逆の反応をする魔物たちとドヘターレ。ドヘターレには見覚えのある女だった。
さっきベッドで幼いコトハを襲おうとしていた変態女ローリエが、自分の危機を救っていた。
「許さない。コトハちゃんを
襲うだなんて……!!」
「コトハちゃんは……!!
私が守る……!!」
「いや、お前が言うな!!」
当然のツッコミだった。