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最強幼女コトハ  作者: ざとういち
3/6

EP3 さらば幼女

全ての攻撃を防ぐ“絶対禁忌ようじょはこうげきしちゃダメ”で魔王を追い詰める幼女コトハ。しかし、魔王は幼女に恐れを成して遥か遠くへと転送させてしまったのであった。


「こ、ここは……?」


幼女と共に飛ばされた魔王の部下であった魔導師ドヘターレは、目の前に広がる見知らぬ土地に戸惑っていた。


「俺たちは魔王様に

 飛ばされたのか……。

 辺りに森やら、遠くに

 街やらが見えるけど……。」


「…………うぅ。」


ドヘターレはコトハが不安そうな声を上げていることに気が付いた。


「こ、コトハちゃん……?

 大丈夫かい……?こ、怖い……?」


彼女は小さくコクンと頷いた。小さな女の子を、自分がこの世界に喚んでしまったせいで、こんな怖い目に遭わせてしまっている。ドヘターレは弱々しいコトハの様子に、胸が締め付けられ申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「コトハちゃんは

 もう帰った方が良いよ……!

 ここにいたら危ないんだ……。」


「ど、ドヘターレさんは

 あ、危なくないんですか……?」


「あ、うん……。大丈夫。

 俺はなんとかするよ……。」


「そ、そうですか…………。」


コトハは自分には危ないと言うドヘターレの置かれている状況が、とても大丈夫だとは思えなかった。


「さあ、おうちへお帰り?

 お母さんが待ってるんでしょ?」


「は、はい……。」


「…………。」


ドヘターレは家に帰るように促すが、コトハは何故かいつまで経っても帰ろうとしない。


「こ、コトハちゃん……?

 どうしたんだい……?」


「お、おうちに帰れなく

 なっちゃいました……。」


「えぇっ!?」


ドヘターレは一気に血の気が引いた。召喚した存在が帰れなくなるなんて初めての事態だった。


「えっと……。コトハちゃん。

 落ち着いて、ゆっくりおうちに

 帰りたいと念じるんだよ……?」


「は、はい……。」


「…………。」


「…………うぅっ!」


しかし、いくら念じてもコトハは帰れなかった。そして、ついに彼女は泣き出してしまった…。


「な、なんでだ……。帰りたいと

 思えば帰れるはずなのに……。」


「だ、だって……!」


「ど、ドヘターレさんが……!!

 心配だから……!!うぅッ……!!」


「あっ……!」


彼女はドヘターレのことが心配になり、心の底から帰りたいと思えなくなってしまっていたのだった。そんな彼女の想いを知り、ドヘターレも涙が止まらなくなっていた。


「ご、ごめん……!!コトハちゃん……!!

 おれのせいで……!!本当に

 ごめん……!!くっ……ウッ……!」


ドヘターレはコトハの肩に触れ、そっと優しく撫でていた。それが、見ず知らずの男が幼い少女にしてやれる限界だった。


(泣いててもしょうがない……。

 しっかりしろ……!俺……!!)


ドヘターレはヘタレるのをやめ、コトハをとにかく安心させる方へ舵を切る。


「大丈夫。君が帰れないのは

 一時的なことだよ。

 安心したらちゃんと帰れる!

 だから、俺が大丈夫なことを

 しっかり見せるから……!」


「まずはあっちに見えてる街に

 行ってみようか……?」


「ぐす……は、はい……。」


(最強の存在でも心は最強じゃないんだ。

 俺がしっかり彼女を守らなきゃ……!)


ドヘターレは、コトハが帰りたいと心の底から思えるように、誠心誠意彼女を守ると心に誓った。


ドヘターレはコトハと手を繋ぎながら、遠くに見えている街へと歩き出した。


「コトハちゃん。歩くの

 疲れちゃったらおんぶするから、

 遠慮なく言ってね……?」


子供が歩くにはそれなりに距離がある。ドヘターレは何がコトハにとって最善か慎重に探りながら、常に気を配っていた。


「だ、大丈夫です……。

 学校に行く時も毎日

 これくらい歩いているので……。」


「あ、そ、そうなんだ……!?

 ご、ごめんね!余計なお世話

 だったよね……!あはは……。」


ドヘターレは気を遣いすぎてしまったことを申し訳なく思った。9歳という年齢の女の子について、魔王の城にずっと籠もり、部下としてこき使われていた彼はほとんど何も知らなかったのだ。


「…………。」


しかしコトハは少し人見知りしながらも、ドヘターレの優しい雰囲気に心を許しつつあった。その証拠に彼の温かい手をしっかりと握っている。


そして無事2人は街に辿り着いた。賑やかな雰囲気で、人の波が忙しなく動いている。


「さて……どうしよう……。」


街に来たものの、ドヘターレは魔族だ。人間とほぼ同じ見た目とはいえ肌の色が違う。彼はなかなか目立つ存在だった。


しかも彼の手には女の子の手が握られている。傍から見たら誘拐か何かにしか見えなかった…。


(あの子……。あんな怪しい男に

 連れられて大丈夫なの……?)


(誰か騎士団に連絡した方が

 良いんじゃないか……?)


ヒソヒソとコトハの身を案じる声が聞こえてくる…。それはドヘターレの耳にもしっかりと聞こえていた…。


「ヤ、ヤバイな……。このままじゃ

 俺、幼女を誘拐した罪で捕まる……。」


ドヘターレは辺りをキョロキョロしながら、コトハの手を握ったまま人通りの少ない方へ歩き出した。


(コトハちゃんは

 この世界の人間じゃない……。

 きっと事情も知らない人に

 保護されても安心出来ない

 だろうな……。)


ドヘターレはとにかくコトハを無事に家に帰すことを最優先にし、あてもないまま、落ち着ける場所を探していた。


「そ、そうだ。宿屋。

 宿を取ってそこで

 ゆっくり休もう……!」


「待ちなさいッ!!」


ドヘターレがそう決めた時であった。背後から威勢のいい女の声が響いた。ドヘターレが恐る恐る振り返ると…。


「あなたね?怪しい男というのは。」


そこには女性というにはまだ若く、少女と呼ぶには大人びている女が立っていた。そのどちかといえば少女は、騎士の鎧を身に纏っていた。


「き、騎士団……?」 


ドレターレはさっきのヒソヒソと聞こえていた街の声を思い出す。誰かが騎士団に自分たちのことを告げたのだと察した。


「まぁ、私は一時的に雇われているだけで、

 正式に団員という訳ではないけど……。

 と、そんなことはどうでもいいわね……。」


「そこの子供はあなたのなんなの?

 解答によってはこの場で斬り捨てる。」


「ヒッ……!」


斬り捨てると言われて素直に斬り捨てられる訳にもいかず、ドヘターレは定番の嘘を再びついた。


「こ、この子、僕の妹なんです……。」


「全然似てないわ。」


ドヘターレのド下手な嘘は、今回もあっさりバレてしまった。


「ど、ドヘターレさん……。」


ドヘターレは、心配そうに自分の手を握り締めているコトハに胸を痛める。仕方ない。そう覚悟を決め、騎士の女に本当のことを話すことにした。


「この子は手違いで別の世界から

 召喚されてしまった女の子です。」


「召喚された……?」


「本来、帰りたいと思えば

 帰れるのですが、今、

 心優しいこの子は、

 俺のことが心配で元の世界に

 帰れなくなっています。」


女騎士は顎に手を当てながら、ドヘターレの話を真剣に聞いている。コトハは心配そうにドヘターレと女騎士の顔を交互に見ていた。


「なので、この子のことを

 なんとか安心させて、

 元の世界へ帰れるように

 してあげて欲しいんです。」


「君。本当なの……?」


ドヘターレの言っていることが嘘とは思えなかったが、コトハにもしっかり確認する女騎士。コトハはコクンと力強く頷いていた。


「分かった。その子は

 私が責任を持って預かる。」


「……っ!」


コトハはドヘターレとずっと行動出来ると思っていたので、予想外の話の流れに困惑していた。しかし、ドヘターレはこうなるように話を進めていた。


「はい。お願いします。

 絶対に帰らせてあげてください。」


ドヘターレは女騎士に会釈をすると、そのままコトハを彼女に預け、立ち去ろうとしていた。


「ドヘターレさん……ッ!!」


寂しさと未だに彼を心配する気持ちが入り混じり、コトハは泣きそうになっていた。不安にさせてしまっていると感じたドヘターレは一旦彼女の元へ戻った。


「あのねコトハちゃん。

 俺はこんな怪しいから。

 君と一緒にいると、君を

 きっとたくさん困らせて

 しまうんだ……。」


「だから、このお姉さんに

 全て任せることにした。

 このお姉さんは正義の味方だ。

 俺より信頼出来るよ。」


「そ、そんな……。」


別れの時が近いと感じたコトハは、愛らしい大きな瞳から、一筋涙を流していた。もう一緒にはいられないと感じた途端、彼に抱いている好意的な感情が爆発してしまったのだ…。


「な、泣かないで……。

 大丈夫……。ほら、俺は元気だし、

 これから先も元気に過ごすから!」


「俺は君が帰れないのが一番困る。

 だから、君も元気な気持ちで

 いてくれると嬉しいな……。」


「……はい。分かりました。」


コトハはこれ以上ドヘターレを困らせてはいけないと感じ、涙をぐっと堪え、このまま別れることを決めた。


「じゃあ、後のことは

 よろしくお願いします……。」


女騎士に深々と一礼し、ドヘターレは今度こそ雑踏の中へと姿を消した。


「……コトハちゃん、だっけ?

 後は安心して私に任せて。」


「はい。よろしくお願いします……。」


コトハはドヘターレのためにも、健気にも元の世界に帰れるように気持ちを切り替えようとしていた。


「フフフ……。」


しかし、女騎士は、そんなコトハの後ろ姿を見つめながら、不敵な笑みを浮かべるのだった…。

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