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起2

 そこからは、ひたすらリスポーンの繰り返しだった。


 一○回目でプレイテキストが無くなったのか、目の前を邪魔する物は無くなった。全てプレイテキストによって抵抗できず死亡。


 ニ○回目でゾンビから逃げ回った。だがVRMMOでの行動が久々で不慣れなこともあり、出会い頭や挟み撃ちで襲われ死亡。


 三○回目で武器を発見することができた。鉄のパイプやバールなど、ゾンビ映画でよく見る武器だ。しかし一体を殺す間に、二、三体目に襲われ死亡。


 四○回目でゾンビの弱点である首元を狙い、一撃で沈黙させる技術を会得。そこで近くを探索することが出来た。探索途中、マンションの地下で銃を発見。だが地下に潜む大量のゾンビに襲われ死亡。


 五○回目でハイリスクハイリターンの地下探索を決行。数多のゾンビを沈黙させ、銃と弾を手に入れる。それで暴れまわろうとするが、プレイテキストが表示される。閉じ方や読む時間も無く、使い方が分からない。そしてゾンビに襲われ銃をロスト、死亡した。


 六○回目で地下探索をマスターした。銃と弾を手に入れ、使い方も試行錯誤でマスターした。「無双してやるぜ! 雑魚どもが!」と勢いよく、ゾンビを打ち倒す。一撃必殺の銃は、すぐ弾切れを起こす。そして銃声音で集めたゾンビに襲われ死亡。



「クソッ。何が駄目なんだよ」


 拳を地面を叩きつけて言う。ただ声は小さい。これは六○回死んだ中で学んだことだ。

 計六○回の死亡。プレイ時間は四時間を経過している。


「馬鹿め、これで無双できるぜ」と意気込んだ、散弾銃での無双も失敗。最善策で「俺、天才かっ!」と自画自賛するのほどの天才的な案だと思っていた。

 それ故に失敗の反動は大きい。


「なんだ。何か足りないのか?」


 ブロンズはプレイテキストを思い出すが、読む前に殺された。


(一回止めるか? 攻略法を調べる。いや、ここまでの六○回が無駄にされる。なんとか生き残ってプレイヤーたちに合流か、助けてもらえれば)


 だが逃げる中に思い出す。

 遠目だがプレイヤーの影は発見している。


「なんで助けてくれないんだ」


 彼らはブロンズを遠目で見るだけで、手を貸すことはない。幾つか蔑むような目線を向けられることもあった。


「どうにか、何か、クソッ。運び屋?」


 斜め左にプレイヤー名と共に表示された『運び屋』という名前。


(なんだ、運び屋? あ? ジョブ。あっ! そういえば)


 ブロンズはゲームのパッケージ裏を思い出した。


『ゾンビ世界で職業を用いて、生き残れ!』


(これが職業か? せめて戦える能力とかであればっ!)


 祈りながら表示された職業に触れる。

 すると『運び屋』の下に説明文が表示された。


『重量が十分の一になるぞ』


 ガタッ。


 ブロンズは地面に頭を叩きつけて倒れる。


「くそっ、使えねぇぇぇ!!!」


 せめて打撃威力強化や走力強化であれば、喜んでいただろう。しかし職業『運び屋』の能力は重量の軽減。

 今の彼には糞の役にもたたない職業だった。


(なんだよっ! 職業で無双しろとか書いてあったのに。それで与えられた職業が重量軽減って! 意味ねぇだろうがよっ! どう戦えってんだ!)


「アアア…………」

「クソッ、来やがったか。いや! コイツは高音野郎!」


 ブロンズが隠れていた部屋にはゾンビが入ってきた。

 命名『高音野郎』。このゾンビは高音を発して他のゾンビを呼び寄せる厄介な相手。気づかれないように倒さなければいけない。

 だが遅かった。


(しまった! バリケードでも作るべきだったかっ)


「アアアー!!!」


 高音野郎の声は建物内にも関わらず、広範囲に響き渡る。


「クソッ! クソッ、クソッ、クソッ。糞がーーー!!!」


 ブロンズは高音野郎の頭を殴り飛ばし、外に出る。

 しかし部屋の外。下階段から早くもゾンビたちが迫ってきていた。


「銃もパイプも何もねぇ! 逃げるに限るっ」


 階段を駆け上った。途中、躓きながらも殺されないよう必死に逃げる。


(死んでたまるかっ。生き延びて殲滅してやる!)


 何度、死んでも。六○回殺されても。天才的な作戦が破綻しても。自身の持った能力が恵まれなくても。

 それでも諦めず、生き延びようとしたのは。

 彼の性格である『負けん気』が強かったからだ。



 だが彼の負けん気を、打ち砕くようにゾンビたちは襲ってくる。

 高音野郎により数は増える。ブロンズを追うゾンビの数は判断できないほど多い。


 というか今は室内、連なったマンションや事務所などのビル跡の中を走っている。

 そのため追う、全てのゾンビ数は確認できない。


 パリンッ。


「そいやっ!」


 ブロンズはビルにガラスを割って飛んだ。

 ビルとビルの間は距離にして六メートル弱。


「とどけぇぇぇ!!!」


 走り幅跳びのように体を広げ、宙に舞う。そして飛んだ先のガラスを破壊できるように、体を丸める。


 ガシャン!


 コロコロと地面を転がった。体中に衝撃を感じる。

 体力の三割が減った。


「ハッ」


 ブロンズは油断をさせないよう飛び起きる。

 周りを見ればビルの中。


「シャッアアア!」


 拳を強く握り、振って喜ぶ。笑みを浮かべ、隣のビルのゾンビたちの様子を見た。

 隣のビルの窓。今の位置から目の前のビル。斜め上の窓。

 ゾンビたちはそこからブロンズを追うために落下していた。


「ハハハッ。お前らじゃあ、俺には追いつけねぇんだよ!」


 余裕の表情のブロンズは「馬鹿め」と悪口を言いながら、落ちたゾンビを見た。


「アア、アアァ!」

「ん? うおっ!」


 なんとゾンビが飛んで来たのだ。そのゾンビは窓の枠を掴み、必死に上ろうとしている。

 ブロンズはビックリして後退った。そして掴んだ手を蹴飛ばす。


「マジかっ」


 斜め上、飛んできた窓を見た。


「んなっ! マジかっ、マジかっ、マジかよ!」


 ビルからは大量のゾンビが宙を舞っていた。

 それを見て、ブロンズは後ろを向いて真っ先に逃げ出した。


『Zombie Killer』というゲーム初心者のブロンズには知らないことだが。

 ゾンビは人間の死体で作られる。その人間は死んでいることになる。つまりはゾンビは人間の限界を超えれる存在なのだ。


 人間は肉体の一〇〇パーセントを出せていない。それは脳がストッパーをしている。死んだゾンビにはそのストッパーは無い。

 ならゾンビが本気で走ったらブロンズは、もっと死んでいたのでは? と思われるだろう。しかしゾンビが本気で走ることが出来ないのは、体に欠損や破損があるからだ。


 ブロンズは『ゾンビ』と一括にしているが『お腹がふっくらしたゾンビ』や『高音野郎』、『ビルを飛ぶほどの脚力のゾンビ』『体の欠損であり数が多いゾンビ』など多種のゾンビがいる。

 その違いで『ビルを飛ぶほどの脚力のあるゾンビ』プレイヤーたちからは『ランナー』と呼ばれるゾンビだ。

 この脚力が備わったランナーが飛んできたのだ。

 しかし初心者であるブロンズには知らない話。

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