表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

起1

ーーー起

「こんの、クソゲーがぁぁぁ!!!」


 迷彩柄の上下を着た彼。

『ブロンズ』は必死に逃げていた。


 後ろからは体が青白く、腐食し崩れている死体。ゾンビが襲ってきていた。

 ゾンビの走るスピードは早くない。せいぜい小走り程度だ。

 それであればブロンズの全速力の走りで逃げることは出来る。しかし問題はゾンビの数にあった。


 後ろからは数百を超えるゾンビたち。一匹が数匹を呼び、数匹が数十匹を呼ぶ。

 中には「アアアー!!!」と高音で叫ぶ個体もいる。その声で周囲のゾンビたちもブロンズのもとに集合した。


 荒廃した人の気配がない街。

 ブロンズが走る道は建物に挟まれた、広い四車線の道路。道路には壊れた車や、朽ちて落ちた看板や外壁。食われた死体。

 様々な障害物がある。


 それを屈指して数百のゾンビから逃げる。

 目の前から迫る走ってくるゾンビ。

 斜め前にある車。

 それに向かい全速力で走り、土台として真上へと逃げる。宙を舞い、着地。

 前から迫るゾンビも、ブロンズの動きに一瞬止まる。


「へっ! クソ野郎どもがっ、止めれるなら、止めてみやがれ!」


 そして大きな交差点。見える範囲ではゾンビの姿はない。


(突っ切るか、曲がって建物に入るか。よし! 曲がる)


 体制を低く、百メートル走のように曲がり角を目指す。

 後ろから追う、ゾンビたちとも距離が離れ、余裕できた。


「今度こそ生き残れるぜ! ざまぁ、みやがれゾンビ共が!」 


 ボフッ。


 目の前に柔らかい障害物にぶつかる。ブロンズは跳ね返され、尻もちをついた。


「っんだよ。んあ?」


 目の前には巨大なお腹があった。


「はっ!? ゾンビかよ!」


 お腹は三メートルほどの身長の巨大なゾンビ。お腹がふっくらとし、体色が青緑。戦いの後の返り血と傷が、今までのゾンビの比でないことが分かる。

 右手には人ほどの棍棒。


(いや、人かっ!?)


 そのゾンビは死んだ人間を振り上げる。


「なんだよ! またかよーーー!!!」


 そんなどこかの戦士長のように叫ぶ。ブロンズは体力がゼロ。死亡した。



 プレイヤー名、ブロンズ。


 彼は大学受験が終わり、暇が出来た。そこで発売初日に購入し、ホコリを被っていた VRMMOゲームソフト『Zombie Killer』をプレイした。

 国内ゲームソフトでランキング六位の人気で発売から半年が経過した。ゾンビサバイバル✕パルクール✕ハントという人気ワードをかけ合わせたゲームだった。


 VRMMOゲームでは今、パルクールが流行っている。電脳世界は当然、怪我も危険も無い。

 ちなみにソフトランキングではパルクール要素が入っているゲームが殆どだ。


 閑話休題。


 そんなゲームにブロンズは期待を大きくしていた。しかしプレイ早々ーー



「ん? どこだここ?」


 ブロンズは自身の肉体を確認した。

 茶髪の天然パーマをかき上げている。薄い眉毛に唇で塩顔。

 彼の実際の見た目をコピーして作り出している。

 服装は上下長袖迷彩柄の初期装備だ。


 久しぶりのVRゲーム。気分は良くルンルンとして飛び上がりそうだった。

 目の前には各種、ステータスと『運び屋』という言葉。目線中央から左上が自身の名前と小さいゲージ。右下が緑のゲージとオレンジのゲージ。


(緑が体力でオレンジがスタミナかな? 運び屋? は説明がないと分からん)


「しかし何処だここ?」


 ブロンズは辺りを見渡す。

 人の気配の無い部屋。アパートなのだろうが何もかもボロボロだ。


「プレイヤータウンか? にしてはボロいし、何の説明もないんだが」


 窓際に行き、外の様子を見る。


「んあ?」


 窓の外には荒廃した街。人の気配どころか、住んでいる様子すらない。建物は朽ち、道路には落下物が落ちている。


「お? 人か? おーい!」


 すると道路にトロトロと歩く人の姿。すると首だけ動き、ブロンズを見た。


「うおっ! ビックリした。あれがゾンビか、流石ゾンビゲーなだけある。リアルだな」


 顔は青白く、目が飛び出している。服がボロボロで、よく見れば体も傷を負っている。


 ピコンッ。


「おお?」


 するとブロンズの目の前にプレイテキストが表示された。

 先程のゾンビの写真と下に長い説明が書かれている。


「長えなぁ。まあ読むか、なになに〜」


 性格的には読み飛ばすタイプだ。しかしゲームを円滑に進めるため、仕方がなく読み始める。


『ゾンビは世界中に広がりプレイヤーたちを襲います。多数のゾンビは人の多いプレイヤータウンなどを目標にしています。プレイヤータウン近くは防衛システムにより自動的にゾンビを攻撃します。

 初心者の皆さんは、必ず武器を手に持ち、プレイヤータウン近くで戦ってみることをオススメします』


「プレイヤータウンってのがあるのか? あ? じゃあここは何処だ?」


 頭を掻き、横に傾げる。そして続きを読む。


「ぐぁぁぁっ」

「んあ? おわっ!」


 するとブロンズは押し倒された。


「あだっ。なんだ!」


 目の前、正確にはプレイテキストを挟んで、道路を歩いていたゾンビがいた。そのゾンビはブロンズを押し倒し、首元を噛んでくる。


「ちょい、ちょい。なんだよっ!」


 しかし目の前のプレイテキストが邪魔をする。ろくに目の前が見えない。

 ゾンビに首元を噛まれた。


「あだっ!」


 VRゲームでは実際の痛みは軽減されている。だが感覚を残すためゼロではない。

 ブロンズもビックリして声を出した。

 どうにかしてゾンビを追い払おうと暴れる。しかし目の前が見えていない。

 プレイテキストを消そうとするがやり方が分からない。 


「クソッ、これで終わりかよ!」


 ブロンズの体力ゲージはゼロになった。


 目の前は加速世界に入ったように周りが伸びて見えた。


 そして一瞬。


 再び体は見知らぬ場所。人の気配も無い、荒廃した世界。今度は四車線の道路の真ん中にリスポーンされた。


「はぁ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ