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04.姉、才能を開花させる

姉の体重管理は思うより早く完成した。

あくまで興味が持続する範囲においてはだが、姉の集中力と爆発力には侮れないものがある。


7月に入ってから姉は1週間に2回のハイペースで練習試合を組み、おおむね優勢のまま勝ち続けた。


姉の視力が異常に良いというのはどうやら本当だったらしく、姉はあまり被弾しなかった。


姉のスタイルは長い手足を生かした典型的なアウトボックススタイルで、自分自身の適正距離からの攻撃を多段ヒットさせ、相手の反撃はほぼすべて紙一重でかわしていた。


8月に姉はアマチュアのトーナメント試合に初参戦し、そのまま初優勝を収めてしまった。


「やっぱりお姉さんは天才だったんですね! 僕は信じていましたけど」


と、彼女の信奉者である西田は試合後に我が家で行われた慰労会で姉を無駄に持ち上げた。


「うん。ありがとう西田くん。信頼にこたえることができて私もうれしい」


全ての試合を終えても傷らしい傷ひとつ負わなかった姉だったが、疲労の色は隠せなかった。


なんということだ……。


ボクシング歴2か月半の新人にすぎない姉にベルトを強奪された多くの人に成り代わって、僕の心は叫んだ。

そんなインチキみたいなことが許されるのか、と。

誰かがあの女を打ちのめして、その傲慢な鼻っ柱をへし折らなくてはならないのではないだろうか。


木村と山本はそれぞれ


「美しい勝ち方でした!」

「憧れます!」


と言ってますます姉を増長させた。


その日慰労会に来てくれた僕の友人たちは全員姉のシンパで、リビングから僕の部屋に移動した後も姉は褒められたくて勝手になかについてきていた。


姉を囲んで僕以外の全員が姉をちやほやするこの状況は、いったいなんなんだろう。

なぜに我が家で、自分の部屋で、アウェイ感を覚えなければならないというのだろうか。


それにしても、姉は今後ますます増長してしまうのではないだろうかと危ぶまれた。


もしもこれが男女の別なく争いあえる競技種目だったなら僕自身がリングに上がって直接姉を倒したいところだったが、今回ばかりはそういうわけにもいかない。


基本的には他人を頼みにしないのが僕の信条だったのだが、今回ばかりはどうしようもない。


勇気ある挑戦者が現れたら、僕は絶対にその人のほうを応援するのに。


なんなら、姉の弱点を研究してこっそり耳打ちするくらいのことは、僕はしてもいい。


そのように僕が祈っていたところ、ついに姉に挑戦する勇者が現れた。

その名を、栗原チサトさんという。

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