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1.幼女と一緒に追放されました

「ナル、スピエル、貴様らは今日を限りにこのギルドを出ていってもらう」

「ん?は?え??」

「……」


ギルド長の言った言葉の意味がよく分からずに聞き返してしまう。


「聞こえなかったのか?貴様らはクビだと言ったのだ」

「いやっ、ちょっと、え?いやいやなんで?」

「……自分がクビになるのがそんなに疑問か?無能が」


ギルド長が見下すような目でこちらを見下ろす。いつもの事だが。


確かに僕は無能だ。なにせ全てのステータスがオールF、つまり最低ランクだ。しかも、なんの間違いか神様は僕にスキルどころか魔力すら与えなかった。そんな無能中の無能だ。

だから、僕がクビになるのは朝日が昇るのと同じくらい当然のことだ。むしろ3年間も置いてくれていたことがおかしいくらいだ。


「いやいやそうじゃなくて、なんでスピエルちゃんがクビなんですか!」


そう、問題はもう1人の追放者、スピエルちゃんだ。


スピエルちゃんは僕と同時期にこのギルドに入った天才幼女である。全てのステータスがオールSで、しかもスキルは『闘争神の加護』。僕とは違い、神に愛されている。

10歳にしてこのSランクギルドの最前線で戦っているこの子を追放するのはどう考えてもおかしい。


「そいつが悪魔の子だからだ」

「あんなの迷信でしょう!?」


確かに、黒髪は悪魔の子という迷信はある。それくらいスピエルちゃんのような黒髪は珍しいし、その話は未だに信じている人も多い。

でも、それだけの理由でいきなりクビなんておかしいだろ。


「真偽なんてどうでも良い。我がギルドに悪魔の子がいるなんて噂がたったら困る、それだけだ」

「主戦力じゃねぇの!?10歳でこんだけ結果出してりゃ世間なんて黙らせられると思うが!?」


まぁ、それを言ってしまえば、スピエルちゃんならどこに行ってもやっていけると思う。

でもスピエルちゃんはまだ子供だ。いきなり理不尽に追い出されるなんて経験はさせたくない……!


僕が憤っていると、仕方ないとばかりにため息をついて、ゴソゴソとポケットから何かを取り出した。


「ところで、貴様の荷物からこんな物が出てきたのだが」


ん?なんだ?写真なんて出して……あ"。

次の瞬間には僕はその写真をひったくっていた。僕史上最速の動きだったと思う。

この写真はアレだ。僕がつい、そう、つい出来心で()()()()()()()()()()()()()()()()()()……の、うちの1枚だ。

……何枚もある時点で言い訳すらできないっすね、ハイ。


当然、『治安維持ギルド』に突き出されれば僕は社会的に死ぬ。


「これをスピエルにしられたくなければ、さっさとそいつをつれてギルドから立ち去るんだな」

「くっ……!」


それはマズイ。『治安維持ギルド』に突き出される方がマシなくらいだ。とにかく、スピエルちゃんにだけは知られたくない。


大人しく、ここを立ち去るしかない……いや待てよ……!?


ここで急に、僕がヘコヘコしだしてギルドを去ったら……クソダサいのでは!?つまり嫌われるのでは!?

それだけじゃない。10歳なんてまだまだ子供と舐められがちだが、人を疑うことくらいはできる。まして相手は天才。怪しまれればまず間違いなくバレる…っ!


「……っ!」

「どうした、早く出ていけ」


つまり、ここで無力な僕にできる最良の選択は沈黙…っ!ついでに睨んでおこう。


「そうか、従わないというなら──」

「……もういいよ、ナルにぃ。いこ」

「いや、でもっ!……わかった」


助かったぁ!スピエルちゃんナイス!

一応食い下がるフリだけして、僕らはギルドを立ち去った。




挿絵(By みてみん)

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