13話 とある勇者の夢
「ユース!聞いてくれ、栄誉だ! 公爵が、俺を勇者に選んだんだ!」
大声で叫ぶ俺を見て、赤毛のあいつは一瞬目を見開いて……それから、顔をほころばせる。
「本当ですか、リスタ様!」
「あぁ! 俺は今日から、この国の勇者さ」
栄誉の証である文書を見せると、あいつが頷いた。がしゃり、とユースの鎧が音を立てる。
背負った大剣に振れると、目の前のユースも目を細めて頷く。それから、俺の足元に跪いた。
「国を守るために戦うなら、お供します」
その赤毛がふわりと揺れる。なんて頼れる従者だろうか。いい仲間を持った、と思いながら俺は頷いて。
「背中は任せたぞ、ユース」
遠くで鐘の音が聞こえた。
それから、共に戦う戦友を探し始めた。我が国の公爵がくれた仲間候補のリストから、俺が気になったやつに会いに行ったんだ。
最初に見つけたのはライオット。魔法使いの中でも実力は抜きん出ていて、しかし性格に難があるからと単独行動をしていたらしい。
そんなあいつに声をかけると、彼は少しも迷うことなく頷いた。
「報酬が出て、力を振るえるなら何でもいいさ。僕は君についていこう」
強力な魔法使いを仲間に加え、次に見つけたのはヴィヴィだった。祈り、願う美しい巫女。治癒魔法や補助魔法を得意とする彼女は、戦いを好まない性格だったが……説得したら折れてくれた。
「私を、パーティーに? 構いませんが……足を引っ張ったら、ごめんなさい」
回復役をパーティーに加え、最後に見つけたのは騎士のマルク。俺と共に前線に出て、敵を蹴散らすやつが欲しかった。それから、剣を使う男だったから選んだのもある。一緒に行動するうちに、きっとお互い成長し合えると踏んだんだ。分かり合い、競い合える。
声をかけた時、あいつは嬉しそうに笑って手を差し出してきた。
「よろしく。この国を、一緒に守り抜こう」
こうして、五人のパーティーが揃うことになった。
この国指折りの実力者を集めた俺たちは、向かうところ敵無しの、最高のチームだった。
戦いを重ね、名声を得て、やがて俺たちの名前は国内外まで轟いた。
「ライオット! そっちの一団を頼むよ」
「指図するな。言われなくとも焼き払う」
「ヴィヴィ様、ご無事ですか」
「ええ、私は大丈夫です。ユース様、リスタ様、敵が来ます」
「あぁ、任せとけよ!」
剣を振るい、魔法を輝かせる俺たちは、皆の憧れになって。
「お疲れ様です、リスタ様。今、傷を治しますから」
ヴィヴィが俺に笑いかけてくれる。そうして、きらきらした魔法が俺の傷口に降り注ぎ、あっという間に治癒していく。
「助かる、ヴィヴィ」
「はい! いつでも、頼って下さい」
花咲くような笑顔と、揺らめく金髪。
向こうの方で、ユースが俺たちを見守っている。ライオットは興味無さげに向こうの方を見ていて、それをマルクが困ったように笑う。
ああ。夢だ。
随分と、昔の夢。




