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大洪水作戦

(3)「何?イーボルトとな。その者は何者なのだ?如何してこの国に来たのだ?」

ジョンは不審げに軍師のトルハに尋ねた。

王国では、新しく配下に加えた、クデル将軍とイベラーク将軍をそれぞれ一万人の少将に採用したばかりである。

新たに財務省にコルコット総裁。

文部大臣にエレナの手を逃れてきたルイスを登用した。

実はエレナに通告して迷惑料として紅茶を貰っていたりするのだが本人は知らない。

元ルイスの部下の、アーケノイドは白仮面卿を名乗り、白衣の宰相と呼ばれる軍参謀総長に就任した。

白鷺はミストリア軍中将(部下5万人)、白衣将軍は中尉副官。

ガイはミストリア軍大将。(部下10万人)

ルイスの兵5万は、マーキュリー将軍に取り上げられた。

アリシアと和議を結んだ時に、接収した海軍は、増強して総数6500隻の大艦隊と化している。

実験的に製造された4千トン級戦艦も、何とか完成していた。

海軍司令官は、ゾンビ指令クルザームに、製造方面は大僧正ドッペりーが兼任している。

リザーは、金龍を再編成して、飛流軍団を組織していた。

試しに、ミストリアに抵抗する島をクルザームに攻撃させ、兵士を生け捕りにすると、放逐した。

アリシア方面では、徹底抗戦派のマリーとミューファが激突。

マリーの軍を山岳地帯に追い詰め、降伏させる。

身柄は、アリシアに送り、イーボルトが保護した。

之に怒ったイーボルトがミューファ軍を三千の兵で奇襲。

之を蹴散らしてアリシアの山、ピクロスの城にて兵を募り、独立する。

たちまち3万の兵を掻き集めたイーボルトは、アルトニア領に侵攻して駐留していたミューファ軍を蹴散らし、その兵を併せて、15万の兵でアルトニアを支配下に置いた。

アリシアはこの機に、兵力の再編と国力の回復に取り掛かり、アルトニアに食料を援助した。

イーボルトは商会の倉庫に収められている、陶磁器を代金としてアリシアに送り、武器や防具を調えてミストリアとの決戦に備えた。

エレナはこの状況に喜び、莫大な軍資金を生み出すであろう蜂蜜をイーボルトに闇で寄贈。

エティルは、この機を逃さずに、海軍を増強して東方のペクダールに備える。

そしてミストリアの侵攻に備えて、護岸工事を始めた。

まさかとは思うが、あの卑劣な軍師のトルハなら村や街の住民を道連れにした、洪水作戦を行うかもしれない。

本来は優しい気質の娘だと思うのだが、戦争に手段を選ぶようなタイプではなかった。

因みに如何でもいいことだが、トルハには謀略担当の(ペクダール旧王家の)部下が3千人いる。

ペレトンの部下には、ペクダールの英雄ルーゼがついていた。

トルハは、ミューファの敗戦を知ると、主力軍の一部4万を援兵として派遣して、実戦訓練を積ませる。

イーボルト軍は、3万の軍で応戦。

ミューファ軍をジーダン、パルキアに追い払った。

イーボルトは追撃して、莫大な経済力で兵を再編して反撃に転じたミューファ軍を撃滅。

ミューファは国境の村に潜伏して援軍を待つ。

そんな状況の時、イーボルトの使者がミストリアに訪れたのだ。

使者は不覚にも両者の間で、戦端が開かれた事を知らない。

それ故、イーボルトの使者の出現はジョンにとって喜ばしい事であった。

何時の日にかイーボルトを傀儡政権としてエティルに侵攻できるではないか。

そうチラと思ったが使者のラナは気付いていないふりをしていたのでジョンは安心していた。

まあ当面は、ラナを丸め込んで、不利である戦局を好転させる心算であるが。

「ラナと言ったね?もし良ければ宮廷付きの女官長か僕の親衛隊長を勤めてくれないか?誓ってセクハラはせん」

取り合えず金と権力でラナを買収しようと試みた。

ジョンはこの2つで、買収出来ない人間(エルフとドワーフも含む)がいるとは思っていない。

「えっ?」

之を聞いたラナは呆れ返ってこの王を見た。

流石は噂に名高いブルマー好きの変態王だ。

女の子なら誰でも構わずと言うわけか?

自分もスク-ル水着姿で淫行に及ぶ変態だがあちらは権力があるだけに始末に負えない。

同類の趣味の持ち主に見えるが人妻にも手を出すタイプだろうか?

「王様。私はイーボルト様の部下兼愛妾です。主の地位から保証してもらえませんか?出なければ王様にお使えするわけには参りません」

ラナはそれでもやんわりと条件を出した。

仕える?

戦端は既に開かれていると言うのにか?

そしてジョンは悟った。

ラナはこの事実を知らない。

不幸にも戦端は開かれたが、恐らく使者をだした時点では、和平工作をする心算であった様だ。

ジョンはラナに言ってやった。

「主とは?ラナ」

ジョンが尊大に尋ねた。

ラナはジョンより、10歳は年上である。

ジョンの尊大な態度に、ラナは気分を害したが、思い直して友好的に笑顔を向けた。

ブルマー好きの変態王ならこんなもんだろうと思った本心は押し隠して・・・。

この王を怒らせたらイーボルトは兎も角、わが身が危ない。

ジョンの方も、ラナを怒らせて不利な戦局を打開出来ねば、エレナ軍の侵攻を許し、ミストリアが崩壊しかねない弱みがあった。

ジョンのジョークを聞いて以来、何かにつけてブルマー姿で王に言い寄り、取り入ろうとする、健気な野心家のペレトンは兎も角、トゥーロとトルハは寝返るかも知れない。

因みにペレトンはジョンの妃になりたいらしい。

特に実害はなさそうなので、ジョンの家臣は誰も止めに入らなかった。

ペレトンのブルマー好きが幸いして、王国のブルマー関連の収入が3億に膨れ上がり、兵の給料も上がっているので下手に反対すると、出世の道が途絶えるかららしい。

ジョンはそんな本心は慎重に隠して、重ねてラナに尋ねた。

スパイの報告で一応知ってはいるがスパイを使っている事がばれると外交上厄介なのだ。

ラナは、何故か殺伐とした空気に、少し怯えながらも、口上を述べる。

「元ギルモア公爵イーボルトです」

之を聞くとジョンはウザそうに聞いてみた。

「公爵様が何故にアリシアで、僕の従妹と戦端を開いたのだ?貴方は知らないのだろうが、此方としては、早急に和平を謀りたい所なのだ」

「はい?」

ラナはやっと殺気立った兵の理由が分かってほっとしていた。

こいつ等それで怒っているのか・・・。

マリー様と交戦に及んだのだろうか?

「ジョン様。イーボルト様は、長期戦に及べばミストリアの反撃で、敗北する事位分かっています。停戦して使者を派遣すれば、和平に応じるはずです」

ラナはそう信じていた。

冷静に言い訳に走る。

「ではさっさと和平しよう。ペレトンさんをパタレーンに送り、交渉させろ。ああ、交渉には、普通の格好で出向くように言明しておけ」

ジョンは、エティルとの交戦の責任を取らされ、投獄された後に、王命により復権したペレトンを和平特使に派遣する事にした。

やがて、巫女服姿で登場したペレトンは、ジョンに問う。

「私をあのイーボルトの元へ送ると言うのですか?」

ペレトンは、多少冷たい目でジョンを見た。

ジョンはイーボルトが何故ギルモアを追放されたか知らないのか?

「嫌なのか?確かにあまり評判の良い人ではないようだが、それは僕も同じだからな」

「・・・」

ジョンのこの言葉に、ペレトンは黙った。

主命である以上逆らうわけには行かない。

「分かりました。イーボルトを説得して見せましょう。降伏の見返りに何を与えられるか、先に聞いても良いですか?」

「金貨5億枚だ。後は領地の割譲と追放をイーボルトさんに求めよ」

すかさず、ジョンは答えた。

「登用なさらないので?」

ジョンは答える。

「仕官ならエレナにでも仕えれば良いだろう?それともこちらに仕えねばならぬ訳があるのか?」

ジョンは致命的な失策を冒そうとしていた。

之を聞いたトルハとアーケノイドは慌ててジョンの口を押さえたて言った。

「折角貴重な人材かも知れぬ者がこちらに来ているのですぞ。下手な事を言って本当に敵に回ったらどうなさるおつもりですか?」

その言葉にジョンは我に帰ったジョンはラナに囁く。

「ミレイドを攻略したら太守にしてやろう。ミストリア男爵の位もつけてやる」

ジョンは打って変わって、破格の条件を提示した。

ラナは面食らう。

之は私に言っているのか?

ラナは答えた。

「私が太守なら主はどのような位に?」

ジョンは切り札を出した。

「帝国の財源を取り立てる徴税官の元締めはどうだ?僕の個人資産の管理も任せても良い。税務調査と称して可愛い女の子のスク水姿やブルマー姿が見放題だぞ」

之は学校法人の税務調査の話だ。

税務調査という名目なら、更衣室と風呂場以外の場所は堂々と入れる。

ラナは一瞬ギクリとした。

この国にもイーボルトのスクール水着好きが広まっているのかと思ったのだ。

何処の国でも之で就職に失敗している。

「王様。確かにイーボルト様はそういう御趣味を持っておりますが・・・」

言わなけりゃ良いのに錯乱したラナはつい言ってしまった。

「だからこそミストリアに来てみたのです。この王国はセクハラには寛容と聞きましたから」ジョンは無視して言う。

「法制作りを急がないと国民が勘違いして凶悪なセクハラ事件を起こすかもしれないね。僕は女の子は全員かき集めたが何もしてはいないよ」

ジョンはこの時気まぐれを起こしてセクハラの定義を決めてしまった。

いわくブルマーや水着はもとより、下着姿までなら見ても(セクハラではあるが)罪には問われない。

痴漢行為は罪に問われるが基本的には公開リンチで半殺しにされる。

罪に問われたものは国外追放である。

なおスクール水着の着替えは(当然素裸)覗き厳禁で問答無用で終身刑になるが女の子の同意があった場合は王国の持て男として尊敬され、爵位を与えられるしきたりとなった。

なお双方の同意があってのセクハラは15歳以上ならば罪には問われない。

この世界ではかなり厳しい法律であったがわざわざスクール水着と定義されているところにラナは希望を見出した。

スクール水着をやらしい目で見るものが多いという意味に受け取ったのだ。

この法律を実行させる為に法王のリージェル・アルバート公爵が裁判官(法規指令)に任命された。

そして返す刃で女子教育制度と家事労働を15歳以上と限定する法律を僅差で可決させた。

ラナは15歳だからこの法律だとイーボルトと浮名を流すことは可能だ。

しかも、この1年でジョンはトラド芋とトレニア用の牧草を、シレーリムとのローテーション方式で連作する事を思いつき、実行に移したばかりである。

ラナのような人材は貴重であった。

法案を即日可決させると、再びラナを呼ぶ。

「有難き幸せ。ところで女子教育制度は移民の子にも適用されるのですか?」

ラナが不安そうに聞いた。

もし適用されるのなら当然生徒になる心算である。

「勿論だ。でもラナは人妻だろう?バックアップ体制作りが大変なんだよな。子共を作られでもしたら学問は出来まい?」

ジョンはぶつくさと呟きながらも許可を出した。

「セクハラなら幾らしても良いが、子供を作ったら退学させて子育てに専念させるぞ」「・・・」

ラナは考え込んでしまった。

如何してそういう話になるかな・・・。

でも確かにジョンの立場ではそうとしか言えないか?

本人こそが、一番そういう事をしそうな気がするのだが・・・。

王だし。

「良いでしょう。学府に入り、魔法使いを目指させてもらいます。その後で宮廷魔術師の座を目指させていただきましょう」

ラナは取り合えず学問に専念する事にしたらしい。

この3日後に、ミューファ軍とイーボルト軍は停戦。

イーボルトは軍隊を解散してミストリアに投降した。

マリーは抵抗を続けたが、ミストリアの増援部隊の到着で陣地を包囲され、降伏する。

ちなみに現在のミストリア軍勢力は歩兵18万、(訓練兵250万)将軍51人。エレナ級が11名である。

大魔法使いは758人、弟子が2018人である。

見習いが7580名だ。

ゴブリンが8570人。

ゴブリン親衛隊が138人である。

金で雇った90名のトロールと3名の巨人も警護隊長を務めていた。

それに加えて食料で雇った最強のコボルト兵が40万人いる。

全員ミストリア軍の将校だ。

更に、白龍318頭(雛1,908頭)、金龍418頭(雛2110頭)の大軍が控えている。

人口は1990万人に増加していた。それに何処からか流れ着いてきた夜盗や海賊が194万人、加わり、2184万人となった。

金で雇い入れた他国の農民が150万家族である。

ついこの前完成した2500トン級の大型船1万隻は海賊の首領ロルロン提督と補佐官としてミシェリア・ラフト・リート提督をに指揮させた。

手下は元海賊と夜盗194万人である。

この海軍は良く戦い、ミレイド軍を一人残らず蹴散らし、捕虜にした。

そしてミレイレアを降伏させる。

そして15州を占領してしまった。

之によりミレイド3350万人の人間は(成人670万人)ジョンの配下となった。

なお、519万人の流れ者が戦火を避けてミレイドに移民している。

旧ミレイド軍8万人(全員騎馬隊)はそのまま首都に駐留して国家から給金を貰う事になった。

ミレイドの玉蜀黍と、未納分の税金は、それを溜め込んでいた国庫と共に、押えられてジョンの私物と化している。

ミレイド海軍の誇る、1500トン旧戦艦と、備え付けの火炎放射器(動力と炎は魔法エネルギーである)も、ロルロン提督が鹵獲した。

ミストリアより遥かに進んだ、魔法使いと技術力は、ジョンの金儲けの計画を更に加速させる。

ミレイドの魔法文明を支える(古代の)宇宙エレベーターを押えたジョンは、兵力の一部を割愛して軍事兵器の製造に着手させた。

ミレイドに2隻だけ残っていた浮遊船の複製品の製造にも取り掛かっている。

ジョンとの決戦に備えて古代遺跡から発掘した物の様だ。

然し、取り敢えずは、ミレイレアを説得する事から始めるべきだとジョンは思った。

彼女を傘下に収めれば、国中の魔法使いを動員できる。

「ミレイレアさん。降伏してもらえないか?ミレイドに勝ち目がないのはお分かりであろう。

イーボルトさんも、マリーも降伏した。貴女だけで何が出来ると言うのだ?」

必勝の策でもあるのか、エティル方面のエレナは無視してジョンは言った。

皇帝が、部下であるルイスの娘であるゆえに見くびっているのかもしれない。

「王様。このミレイレアはシャリー王の配下でございます。王様に従う訳には参りません」

ジョンの前に捕虜として引き出されたミレイレアは毅然とした態度でそう答えた。

「王とは経世済民の志だと思うのだがね。違うのか?」

ジョンは尊大に言い放った。

ミレイレアはそれには頷く。

「貴方の部下が、反乱を起こさねばこんな争いは起こらなかった。ジョン様に言っても如何にもならない事ではあるが、やはり腹が立つ」

ミレイレアが、ジョンに不満をぶつけてみた。

ジョンはあっさりとそれを認める。

ジョンは護衛を去らせると、ミレイレアに言い渡した。

「いいよそれでも。でも前の議会で全員一致で宰相になったのだからその責任は果たしてくれないと困るんだよね。それにシャリーを追放したのは僕ではない。怨まれるのは筋が違う」

別に怨んではいないが・・・。

ミレイレアは思った。

怨むならトルハかトゥーロだろう。

トゥーロはああでもしなければ、シャリーに殺されていただろうし。

トルハは、ペクダールを滅ぼした瞳狩り戦争でシャリーを怨んでいるはずだ。

それを考えると、叛徒共を怨むのは筋違いである。

然しそれでも・・・。

「そうですね。でも私はシャリー王以外ならミューファ様に仕えたく存じます。我が姪は皇帝陛下。仕えるのに何の不都合もありません」

ミレイレアは嫌がらせにそう言った。

ジョンが名目だけの傀儡とはいえ、前王シャリーの娘で、ミストリア皇帝であるミューファの

指揮下にミレイレアが入る事を認める訳はない。

ミレイレアはそう思ったらしいが・・・。

「それで良いよ」

ジョンは前線から戻ってきたミューファをミレイレアに面会させると、イーボルトを帰順させた功績により、アルトニア太守に任命して、兵糧と150万ディルスに、王国の重要な産物である砂糖の交易を任せた。

そしてミレイレアを配下にするように言明する。

「はい?」

ミューファは面食らったようだ。

ジョン様は何を考えているのか分からないとその顔が伝えている。

それが分かったのだろう。

ジョンは説明した。

「ミューファさんがパタレーン戦線でイーボルトさんを降伏させている間に、ミレイドが我が手に落ちた。ミレイレアさんは、貴女に仕えたいというので望みどうりにする」

之を聞いたミューファは、会心のカリスマ性でミレイレアに微笑んだ。

ミレイレアは不覚にも、この笑みに陥落した。

そして意外とあっさりと観念したミレイレアは宰相職に復帰した。

ミレイレアは、国中の魔法使いに命令をだし、軍事技術の向上に努め始めた。

宇宙エレベーターには、ジョン軍の精鋭であるゴブリン親衛隊とトロールを送り込んだ。

将来の宇宙戦略の為に、人間の有志で募った3千のミストリア宇宙軍を設立する。

司令官には、有志の一人であり、ジョンの両親であるフィレーシア・ラッセルとクライシェル・ニードが任命された。

シャリーの手を逃れ、ジョンを奪回する機会を伺っていたのだ。

シャリーは、あっさりと倒されたが、残党の報復を恐れて身を潜めていたらしい。

ジョンは、この2人を公爵に任命して、宇宙戦略を任せる事にしたのだ。

エティルではこの知らせを受け、5000トン級戦艦の建造に取り掛かった。

主力の700トン級ではミストリアには勝てないからだ。

陸軍も、兵力の精鋭化を断行して、孤立しても戦えるように、学問と軍事訓練両方で鍛え上げ始めていた。

農地も急速に復興をとげ、都市からは税収が流れ込んでくる。

この機を捉えて、ミストリアの商人が、ガラクタを金持ちに売りつけて、莫大な富を得ていた。

代わりに、エティルの蜂蜜を大量に買いつけ、保存食用のイナゴを捕まえる為の餌として使用する。

ミレイドを併合したミストリアは、他国から食料を輸入する必要もなく、蜂蜜だって自前で作ろうと思えば何時でも作れるが、エティルと交易が出来るうちは、その必要はなかった。

「エレナ姫。どういたしましょう。最近家畜の値が下がり、家畜商人が苦情を言っておりますが」

エレナの部下達は、家畜商人からの貢物を目当てに、彼女に懇願した。

エレナの家畜増産計画により、ミストリアから密輸入した0.4ディルスを1ディルスで売るまでに価格の下がった鶏や60ディルスまで下がったトレニアに家畜商人は頭を痛めているのだ。

「そうだな。少し輸入しすぎたか?まあいい。取り合えず爵位を与えて黙らせておけ」

エレナは農村の復興で自給自足体制を回復しようと試みていた。

それ故に出来るだけ輸入は控えている。

外貨は欲しいから輸出は奨励しているが,

ミストリアでは停戦交渉はしていないという事もあってエティルの造船所を襲って訓練代わりに船を奪っていた。

エティルの復興を1月遅らせるたびにミストリアが優位に立つのだ。

当然5千トン級戦艦は造船所ごとミストリアの手に落ち、海軍力をエティルより西に動かない事を条件に講和した。

ちなみにこの敗戦により、エティルの造船技術は10年遅れたといわれている。

その代わり、ミストリアは金で買収した全作業員2700家族を手中に治め、エティルは300トン級船しか造れなくなった。

エティル8千万の民は制海権を失い、エティル国内に閉じ込められる事となった。

更にトルハの策で、あの辺りの海底のマーマン王国システリアに釣り針と網と船を沈めておいた。

システリアの住民たる魚類を捕らえる3種の神器はマーマンにとって宣戦布告も同様である。おかげでエティルの勢力圏の海中で常に嵐が起こるようになり、漁民は全員失業した。

それに犠牲者こそ出なかったがエティル国内の全ての川がシステリアの怒りで氾濫し、農作物の99%を根腐れさせた。

「誰だ?システリアを怒らせたのは?」

辛うじて災難を逃れた農民達は、恨み言を並べ立てた。

「あの姑息なトルハに決まっているだろう?」

エティルではこの意見が主流となっていた。

証拠は何処にもないが・・・。

そしてジョンを含めてミストリアでも主流である。

「己、姑息な手を使いおって」

この戦法はミストリア国内でも非難する者が大勢いた。

ミレイレアなどはその急先鋒である。

「そこまでして貴方は戦に勝ちたいのか?貴方には戦士のプライドが無いのか?」

ミレイレアは、トルハを犯人と決め付けて糾弾した。

当たり前だろうとトルハは思った。

私は王国の魔術師兼服飾職人である。

本来生産活動に従事する立場だ。

戦士のプライドなどあるものか。

「この海域のマーマン王国とは友好関係を構築するべきだと思います。あるいは攻め滅ぼすか」

更に鬼畜なトルハの策に周囲は怒り狂った。

「そんな事したらエティルと同じ目にあうじゃないか」

トゥーロがあまりにも卑劣なトルハのやり口に噛み付いた。

「ミストリアは之でエティルに侵攻する事が出来なくなったのだぞ。この作戦にミストリアが絡んでいるのは誰の目にも明白ではないか?」

之に構わずトルハは進言した。

「私はミストリアの当面の国益を考え、王様に進言する。エティルがどうなろうと知った事ではない。王様。ドラゴン部隊に命令してエティルに食糧援助をさせろ。旨くいけば責任をシステリアに擦り付けた挙句、救世主としてミストリアは漁夫の利を得られるだろう。お前ら2人と王様が黙っていれば」

この言葉で全員黙秘を貫く決意をしてしまった。

エティル・ゼフィナではエレナと黒仮面卿は事の真相を知っていたが口には出せない。

ミストリアの謀略にはまった事が知れればエティルは崩壊する。

「ミストリアは救世主面をして援助に来るだろう。如何すれば良い?」

黒仮面卿は頭を抱えた。

「どうしようもないさ。然しどうやって知ったんだ?我々が海の勢力ともめている事を」

エレナが答える。

「トルハの策だろう。我々は海の生き物を搾取しすぎた。自業自得という奴さ。それを公表すればあたしの責任になるからな。死者が0なのは脅しの心算なのだろう。次に海洋生物を食せば皆殺しにするとな」

エレナは以外と穏やかに言った。

「エレナ姫。ペクダールから奪った2大陸を割譲してミストリアの援助を受けましょう。そうすればジョンは自分で怒らせたシステリアと戦う羽目に陥るでしょう。良い憂さ晴らしになるではありませんか?その上で天下統一の野心は捨ててミストリアの属国として力を蓄え、政治的実権を得る事に力を注ぐべきです。姫はまだ若い。逆転のチャンスは幾らでもあります」

エレナはうざそうにその言葉を遮る。

「気休めを言うな。今勝てないのに将来勝てるわけ無いだろう?あたしは負けたのだ。時期を待てばジョンは天下を統一する。軍隊も経済力もあちらの方が数段上だ。猪突猛進のあたしでは100戦しても敵の守りを破ることは出来ない。降伏しよう。エティルは解散してアトポックとサーシアをジョンに割譲する」

この激を受けて反対派の正義将軍とトルネー大佐がサーシアで反乱を起こした。

アトポックでもキルミー将軍が反乱を起こし、両大陸を占領した。

嵐を超えて通告に行った手下はあっさりとエレナを裏切り、キルミーに付いた。

エティル本土ではエレナの降伏により、旧モラギ−ナをミストリアが占領。

1980万人がジョンに帰服。残りは難民となって何処かに去っていった。

エティルは崩壊して人口は20万人にまで落ち込んでしまう。

「なんという卑劣な男だ。勝つためには手段を選ばぬ」

事の真相を悟ったセタはビンチで敗軍をまとめている途中だった。

モラギーナの丘陵を回復するべく反乱を起こしたのだ。

然しミストリアの金龍部隊に追い払われ、軍団は壊滅。変わりにビンチはミストリアの保護領となった。

セタは海軍(50トン級)にて反撃を試み、惨敗する。

之がシステリアを更に怒らせ、ジョンが大金5千万ディルスを迷惑料に海に投げ込むまで嵐は続いた。

その間、ミストリアは播種量18粒のシレーリムを生みだした権力者の人糞を大量生産し始めていた。

「之が生産できればミストリアは更に強くなれる。そうだ。今ちょっと思いついたんだが・・・。」

ジョンは造船工の長に命令した。

「船を鉄で覆ってしまえ。沈まない程度にな。そして魔法使いに浮遊石を造らせ、船を浮かばせるのだ」

「・・・」

部下の造船工は唖然とした。確かに出来るが、1万隻全部に装備するのか?

「どうせならミスリル銀の飛行艇を建造しませんか?エルフの神木ディカル・ウエップから取れる樹液からは鉄の5分の1の重量でしかも鉄の7倍は硬い、夢のような金属です。実はエルフの村アポルトにディカルの森が群生しているらしいのです。許可させくれれば早速材料の調達に言ってまいります」

ミシェリアの出したこの思い付きの案をジョンは公認した。

「秘密裏に造れよ。1万隻の船には鉄で武装して真の計画を見破られないようにしろ」

ジョンはこの他にもトレニアやマボウギュウを呼ばれる黒牛の生産にも取り組んでいた。

こちらは自ら生産に取り組んでいるので船の計画は命令するだけである。

鶏も品種改良を重ねた挙句、卵一個で3日分の栄養が摂取できると言われるほどに栄養価の高い兵糧卵を開発した。

之を試しにゴブリンに食べさせた所、本当に3日間マラソンをしていたという伝説まで残ったほどだ。

之の開発により、兵糧の消費が3分の1にまで減少して国庫負担が軽減した。

ジョンはこの卵を(無精卵)傾斜国に売り、莫大な利益を貪ったのだ。

その額27億ディルス。全てジョンの私有財産である。

この金は野心を持つ貧乏人の為の組織、銀行の創設につぎ込まれた。

システムは会員から集めた金を貧乏人に課して利子を取る。

(年60%)そして設けた金の10%を元本に上乗せして年に1回配当として10%を支払う仕組みだ。

なお、脱退は自由である。

元本は必ず保証された。

これらは議会の97%の賛成で可決された。

銀行法と呼ばれている。

これによって、ミストリアに650ヶ所。

エティルに420ヶ所。

ミレイドに800ヶ所造られた銀行に、立身出世を狙う野心家の若者がミストリアは女性40万人、男性107人。

(ゴブリン8570人。

)エティルでは女性170万人、男性60人。ミレイドでは女性470万人、男性8人である。

パタレーンは長年の戦争で衰退の一途をたどり、60万人の商人の(アリシア以外)都市国家となってしまった。こうなったのは(男性の商人候補が少ないのは)女性が社会進出すれば大抵の男はジゴロになるからである。

ジョンはこの希望者に千金を与え、商売を始めさせた。

ちなみに自分も10億ディルス銀行に預けている。こうしてジョンは年1億の年収を確保したのだ。

之に水着の販売収入が12億加わる。

砂糖の販売収入が、20億。

武器の輸出が15億。

食料が8億ディルス位である。

月額55億ディルスの収入だ。

国庫には、月8億ディルスが積み上げられている。

「王。いい事を思いつきましたぞ」

1兵卒のライがジョンに進言した。

「塩に税を掛けるのはどうですか?国民は確実に塩を摂取いたしますぞ」

ジョンは直にその案を採用して塩に税金を掛けた。

この税はかなり国民に不評だったが月80億ディルスの収入を国家にもたらした。

ついでに酒にも税をかけ、こちらは月8億ディルスであったがこの収入はミストリアの鉄器騎馬団の編成につぎ込まれた。

1部の鉄器騎馬団は魔法の武具で身を固めている。

親衛隊でもなく攻撃部隊でもなく補給部隊に配属された857名の戦士である。

ジョンは自分で作った銀行から借金をしてまで鉄器騎馬団の編成にこだわった。

酒税や塩税を私物化したくらいではとても足りないのである。

この不正に対して議会は2年以内の返済を要求した。

之に対してジョンはラーゼルンの国債発行と株の増発で10億ディルスをかき集め、私物化した150億ディルスの一部を返済した。

更に播種量18粒の奇跡のシレーリムを担保に60億ディルスを銀行から借用。

借金を80億ディルスにまで引き下げた。

更に兵糧卵を担保に80億借り、不正借用の150億を1月で返した。

それなら最初からそうすれば良いとも思うがそのときは思いつかなかったのだ。

それに借金は膨れ上がっただけである。

利子を含めた240億ディルスはジョンにとっては鬼門である。

返済出来るわけが無い。

「王。水に税を掛けてはいかがですか?」

「却下」

流石のジョンもそれをやったら叛乱が起きそうなのはわかった。

只でさえ、ブルマーネタで変態王の烙印を押されているのに重税を掛ければ民衆の怒りが爆発して大乱が起こるだろう。

降伏したエティルが便乗して蜂起すればミューファが反乱を起こすかもしれない。

「皇帝陛下の動きに注意せよ。反乱を起こすかもしれん」

ジョンは自分で擁立したミューファを信用していないらしい。

当然だろう。

政敵の娘であるのだからと家臣たちは思った。

「何か良い税金のアイデアは無いのか?民衆の怒りを買わずに大金が入る税金は?」

ジョンは1億ディルスの賞金を掛けて募集してみた。

そして借金の利益に掛かる銀行税が採用されたりした。

税率は40%である。

他にもジョンの私有財産を増やす目的の貢物を一人当たり月5ディルス取り立てる案が採用された。

「そうだ。僕の借金返済も大事だが穀物は外国から買ってでも貯蔵しておけよ。飢饉が起きたとき食料が無ければ叛乱が起こる。エティルの二の舞にはなるなよ」

農水大臣のトゥーロに突如ジョンが言った。

「唐突で悪いが、農作物の1割を年貢として納めさせろ。食糧を蓄えるのだ」

トゥーロは答えた。

「やっております。今のままの人口なら2年は持つでしょう。外国から買い付けるために50億ディルス程銀行から借用したいのですが」

ジョンは考え込んだ。

国庫から支給するのは限界と言うわけか。

「分かった。銀行は融資をする。然し利子は払ってもらうぞ」

30億ディルスを俺が負担するのか?トゥーロはあまりに理不尽なジョンの指図に唖然とした。

こいつはブルマー論争のとき自分にたてついた事をまだ根に持っているらしい。

「どうやって返済しろと?」

トゥーロはそう尋ねるしかなかった。

「海の利権を与える。システリアと交渉するなり攻め滅ぼすかして金を入手しろ」

そうか、関税を掛ければ数十億は稼げるかもしれない。

然し其の甘みにはジョンも流石に気付いた様だ。

「税金は4割だからな」

何処までもセコイ王だとトゥーロは思った。

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