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反乱の序曲

(2)エレナは領地に赴任すると農民をかき集め、公定価格で作物を買う事を条件に農業に復帰させた。

そして物価高騰の原因となりし、鶏の増加に全力を投入。

ミストリア出身の怪しげな商人から買い付けたり、商人を拝み倒して借金をしたりして鶏の買い付けに精を足していた。

都市の民には重い税を課し、(6公4民)軍資金を商人や職人に献納させる。

廃村になった農地は、取り合えず屯田兵に耕させ、鹿や猪、狼などの当座の食料の確保に努めていた。

エレナは、国内の夜盗討伐にも力を注いだ。

ギルモアはルイスの経済封鎖で疲弊しきっている。

景気対策に、女官を30万人を、現物支給で雇ってみたが、ギルモアの主要都市ザナハンと

改名された首都のゼネジアを潤わせるに止まった。

この2都市からの収入は25万ディルスである。

エレナは、失業者救済の為に大規模な海軍の増強を決定して、800トン級戦艦4隻の建造に着手したのだ。

兵員と船員も、総勢1200名が訓練を受け、1万人以上の雇用が生み出された。

エレナは、ルイスと組んで鶏の相場で、大儲けしていたらしい商人ギルドから献金させ、その金で農民を50万人雇用して、人口の増加にも勤めた。

ギルモアで一旗挙げようとした、エンドレ人のみが集まったが、エレナは気にしない。

エレナは雇用対策に、兵を8万人雇うと16万ディルスの給料を出し、国庫の食料庫を開いて民衆に分配した。

兵士用の食料は、最近数を増した大蜥蜴のパラトルクと狼肉、兎や猪などの肉である。

野菜は、ミレイド産の玉蜀黍などであった。

「最近金が底をついてきてね・・・、如何する?」

エレナは、雇用対策で掻き集めた兵士達に尋ねた。

ここでいいアイデアを出す者がいれば、将軍に昇格か、中央官僚になれるところである。

「アリシアとは同盟を結び、ミストリアは友好国であります。アリシアとミストリアを和解させ、援助をこの2国から受ければよいと思います」

エレナ軍少尉の(部下5人)マルクは、常識的な意見を述べた。

「私はミストリアには援助を仰がない。お前達はあたしがあのブルマー好きの変態王の配下に、なった方が良いと言うのか?あたしはアリシアにつく。父上がミストリアと事を構える気がないなら話は別だけど・・・」

エレナは、ミストリア王に偏見を抱いているらしい。

そう断言した。

「イーボルト商会の援助を受けるのですか?あの方が何故ギルモアを追われたかご存じないのですか?」

その理由を知ったら、ギルモアを援助しそうな国は、地上から消えてなくなるので理由はいわなかった。

エレナは少し不審げに部下達を見たが深くは追求しない。

「イーボルトさんの恋人のマリー姫は、アリシアの名将と聞く。味方にすればミストリアとの戦いに有利だよ」

エレナはマルクを、献策の褒美に陸軍少将(部下1万人)に任命して、ゼネジアに屋敷を構える命令を出した。

マルクは、有り金をはたいてゼネジアの王城より豪華な屋敷を4日間で造ってしまい、その才能を買われて、新たに新設した工兵隊の司令官に任命される。

之を知ったペレトンは、ジョンへのゴマすりの為に、マルクを5億ディルスで雇ってパタレーンに巨大な城を造らせてジョンに酷く褒められた。

マルクはペレトンと交渉して、ミストリアのなけなしの食料と家畜を少し分けてもらい、ギルモアの経済再建に多大に貢献してみた。

そしてエレナは、この3ヶ月で、ルイス侵攻の前の水準まで鶏の生産量を増やした。

然し如何言う訳か、鶏の値は下がらない。

「エレナ姫。何物かが買い占めているのでは?」

事の真相をいち早く悟ったマルクは、ミストリアに疑いの目を向けた。

然しそれなら有能な部下のペレトンを派遣する筈がない。

ならイーボルト位しか容疑者がいなかった。

ギルモアは気付かなかったようだがアリシアも養鶏をやっている。

買占めの影響を受けなかったアリシアでは一羽1ディルスで売られていた。

之を知っていたギルモア王の勘当王子、イーボルトはここで仕入れた鶏をギルモアで大量に売りさばき大金を得ているのだろう。

アリシアにはイーボルト商会の本店が存在し、他の商人から営業税をとれる特別の権利まで得ていた。

それを聞きつけたエレナの侍女サモーナは早速援助をしてもらうようにエレナを説得する。

この次女は真相を知らないようだ。

「姫様。援助のあてがあるとすればイーボルトしかいません。積年の恨みは忘れて和解するべきです」

エレナは之を拒否した。

あんな卑怯者共にどの面下げて従えと言うのだ?

「あたしが?まあ良いけど、あいつは援助しないと思うよ。それより国産鶏をブランド化して高値で売りつけながら徐々に値段を下げる方向で行ったほうがよい。出来るだけ早期に有精卵を5億個を調達するのだ。今、鶏の値を下げればアリシアがこの地に侵攻してくる。イーボルトが損をするからだ」

それでもエレナは手下をアリシアに送ってアリシアの鶏を2ディルスで買い取り、5ディルスでギルモアの富裕層向けに販売した。

この大幅な値下げに養鶏で暴利を貪っていたルイスは理不尽な怒りをエレナに向けた。

然し合法的に商売をしているエレナに文句を言うわけにもいくまい。

新たな嫌がらせの方法を模索した。

「月800万ディルスの税金を払え」

ルイスは言いがかりとしか思えない新税をエレナに要求した。

現在のギルモアの人口は1200万人(乳児も含む)であり、農業は破綻。

商業も破綻寸前。

4万ディルス位しか金は無かった。

勿論儲けは全て雇用対策と農業の復興につぎ込まれている。

「ふざけるんじゃなーい」

案の定エレナは怒り狂った。

「ルイス王は御自分でギルモア経済を破綻に追い込んでおきながら税が取れると本気で信じておられるのか?」

側近の黒仮面卿にエレナは尋ねた。

黒仮面卿は仮面の中でククと笑いながら答える。

その仕草がエレナの気に触ったが黙っていた。

「ルイス王は試しておられるのですよ。然し最後まで税の納入は遅らせた方がいい。山賊に命じて正式な使者を軟禁して催促の命令書を奪えば、後は知らぬ存ぜぬで半年は持ちこたえられます。その間にギルモアを再建すれば良いでしょう」

黒仮面卿の進言にエレナは躊躇した。王命に逆らうのは武人としてあるまじき行為である。「実際払えないなんて言ったら姫は太守の地位を剥奪されますぞ」

エレナの心情を察した黒仮面卿がたきつけた。

「俺がやってもいい」

エレナに甘い誘惑を吹き込み続ける黒仮面卿にエレナは疑惑を覚えた。

(この男はルイス王の放ったスパイかもしれない)

子供が財疑心を持つと厄介だ。

理屈でやり込める事が出来ないからだ。

「税を誤魔化すのは金策に失敗してからでも良い。アリシアとの鶏交易を続け、税を捻出しろ。2、3ヶ月はこれでもたせるのだ」エレナはルイスの送り込んだ徴税官を引見すると言い放った。

「ギルモアでは4万ディルスしか税収入は無い。どうやって払えというのか?ルイス王は何に税金を掛ければ800万ディルスもの大金を捻出できるか言っておられたか?何の根拠もなしに税を払えとは言わないだろう」

徴税官は威張って宣言した。

「ミストリアが欲しがる紅茶があるではないか。ペレトンという娘は紅茶を欲しがっていた。それの権利を貸し出せば月1千万ディルスにはなる筈である。前ギルモア王が健在であった3ヶ月前は紅茶収入が国庫の7割を占めていたらしい。それに比べりゃ安いものだ。どうだね?」

エレナは物凄い形相で徴税官を見た。

「紅茶は輸出規制によって持ち出せない。ルイス王は紅茶の売買を認めたのか?帰って聞いてきてくれないか」

エレナはこの不快な徴税官を言い包めて追い払ってしまった。

「黒仮面卿。紅茶畑の再編に取り掛かれ。紅茶の密貿易で800万ディルスを入手する」

エレナはこの時背信を宣言した。

ルイスは軍人であって政治家ではない。

あの男ではエティルは路頭に迷うであろう。

エレナは軍隊を増員して、正規軍2万を新設すると、ルイスに対抗する地盤作りに乗り出した。

ペクダール大帝国の西の島大陸へ山賊を装って侵攻。

人口4千万人のアトポック大陸を手中に収めて賠償金2億ディルスと、国庫に納められた6千万ディルスを入手したのだ。

そしてもう1つの属領サーシア大陸も割譲させた。

人口は1800万人である。

この2国を押えた事によって、税金の800万ディルスは払えるようになったのだが、一度芽生えた反逆心は抑えられない。

「姫。この調子でペクダール本島も攻略してしまいましょう」65万人に増えたエレナ軍はひとまず軍をギルモアに返して800万ディルスの税金の撤廃とルイス王の辞任を要求した。

税金問題がエレナのクーデターの動機である。

何処の世界でも無茶を言うから反乱が起こるのだ。

「何だと。エレナが反乱を起こしたというのか?」

ルイスは之を聞くとエンドレ国の元宰相に、30万の兵をつけてエンドレに派遣した。

ガイには、海軍12隻を任せ、港からギルモアをうかがわせる。

「何故反乱など起こしたのだ?」

ルイスにはその理由が分からない。

「エティルの派遣が欲しくなったか?」

ルイスサイドの人間はそう解釈した。

ルシーは既に諦め、エレナを受け入れるようにルイスを説得している。

「妹に理不尽な税金を要求するから怒って反乱を起こしたのです。こうなっては大人しく軍門に下るしかありません。ルイス王の配下には、エレナと互角に戦える将軍がおりません。軍は瞬く間に敗走するでしょう」

之に対してルイスは激怒して言った。

「俺は辞職などせんぞ。直にエンドレの兵をかき集めてエレナ討伐に行かせるのだ」

「無駄です。その前にエンドレは落ちるでしょう」

ルシーはそう言い切った。

たったの4ヶ月で3ヶ国を落す戦術家にルイスの兵がかなう筈は無い。

案の定、ルイスがエレナ討伐の兵を編成していると本人が知ると、エンドレに侵攻。

かの地を占領した。

例によって犠牲者は0である。

之を知ったルイス軍は崩壊して600人にまで減り、ルイスは、クーデターを起こしたルシーの侍女6名によってたかって捕縛された。

3日後にはサーテーとエンドレ、エレナ領は合併。

神聖エティル・ゼフィナ帝国が誕生する。

皇帝はルシー。宰相が2歳のエレナであった。

皇帝に実権は無く、宰相が全てを取り仕切る軍事独裁帝国である。

ルシーは政権を取るとエレナと謀って、紅茶交易を再開する為に、モラギーナで待機していたペレトンを呼び戻し、一人の1月分辺り7ディルスで紅茶を売る事を宣言した。

「本当によろしいのですか?確かに高いが15ディルス位は出しても良いですよ」

ペレトンがうっかりと言ってしまった。

然しエレナは穏やかに言う。

「暴利は敵を呼び低利は福を呼ぶ。汝欲を出す事なかれ」

エレナはギルモアの再建のことしか頭に無いらしい。

5千万羽の鶏を所望した。

「あたしを助ければミストリアはアリシアを攻略できる。あたしがアリシアに付く事がないからだ」

アリシアとの同盟をちらつかせ、揺さぶりを掛けた。

この辺の外交手腕は直情過ぎてあからさまだとペレトンは思った。

「送りましょう。紅茶交易は再開されると報告してよろしいですね?」

ペレトンは念を押した。

「勿論よ。出来たら農業技術に長けた魔法使いを送ってくれると嬉しいな」

エレナは欲を出して言って見た。

「王に会われますか?ご希望の農業経営者のジョン王なら破綻した農地の復興に力を注ぐでしょう」

エレナは嫌味を言われていると思ったようだ。

あのブルマー好きのロリコン王に会ったら何をされるか分からないじゃないか。

「いやいい。鶏だけで復興させて見せる」

エンドアには1500万人の民がいる。

税収は300万ディルス間で回復していた。

之だけで何とかなるだろう。

エレナはそう確信していた。

「エレナ。良いのか?ミストリアは援助してくれると言っているのだぞ」

皇帝ルシーが皇帝の椅子から声を掛けた。

「姉さん。あたし達はミストリアの属国になるつもりはありません。経済的に依存すれば何時か制圧されてしまうはずです。紅茶交易だって危険なのですよ」

それでも農業技術者は送ってもらった。

エレナは政治的にも優れているらしく3圃制なる新農法を考え出していた。

ミストリアの農法は基本的に2圃制である。

もう少し時間があれば経済力でもミストリアに対抗できるとエレナは信じていた。

「ジョン王が望むのは紅茶交易の利益だけです。後でどうなるかは分かりませんが、今の段階ではジョン王はエティルとの友好を心がけております」

ペレトンが慌てて言った。

「ではミストリアに報告しに戻ります」

そう言うとペレトンはその場を立ち去った。

「あれでよろしいのですか?」

黒仮面卿がエレナに尋ねた。

「アトポックが4000万人。(エルフ)

サーシアが1800万人。(メデューサ・ハーフ)もいる。

税収は問題ない」

問題なのはミストリアかペクダールの反撃を食らったら瞬く間に敗れ去る事だ。

エティルの首都はアトポックの東方漁港に定められた。

ペクダールの反撃を封殺する心算なのだ。

然し之によってミストリアはアリシア侵攻のチャンスを得た。

食料自給率がついに149%を超えたミストリアは自ら特訓して鍛え上げた18万の大戦士にて圧力をかけ、恐れをなしたアリシア兵が1人また1人と逃亡を企てた。

反アリシアの弱小貴族がジョンに寝返り、アリシアは次第に追い詰められていった。

局地戦では、マリーの軍がミューファ軍を圧倒していたが、幾ら敗れてもゾンビの如く戦力を立て直して、奇襲をかけるミューファ軍に、兵は疲れ果てている。

「かくなる上はエティルに援兵を送ってもらうのが最善の策かと思います。エティルの次の目的はミストリアかモラギーナに決まっております。ミストリアに味方すればパタレーンとミレイドを征服した後、エティルが攻撃の対象になるからです。どうせやるなら早めに各個撃破するはずです」

アリシアでこのような会話がなされている頃、エレナは、モラギーナとアドレン国(12州)とメサイア国の3カ国を滅亡させ、東方領土からマクユイを追い払った。

モラギーナだけは何故か家名の存続を許され、港町ビンチを与えられた。

人口34名の廃港だが無いよりはましである。

怪我人が双方の89%に及ぶ激戦であったが不思議と犠牲者は出ない。

傷を直す事のできる僧侶業が大繁盛して20億ディルスもの税金がエレナの懐に入ってきた。その上機嫌のエレナに不吉な知らせを持ち込んでくる。

その男は口上を述べた。

「アリシアからの援軍要請だと?国土が之だけ増えてしかも東南に仇敵を抱えている状況で兵など出せるか。ペクダールの反撃に備えて海軍も編成しなければならないし、第一補給が出来ない。残念だがあんたらはミストリアに滅ぼされるしかなさそうだ。それに最も重要なことはミストリアとは交易を始める事となった。貴国に援兵など送れる筈は無い。それに援兵を送れば貴国はエティルの属国となるだけだ。それでも良いのか?」

それは困る。然し援兵は送ってくれねばアリシアはお仕舞いだ。

「お願いです。援軍を送ってくれれば月150万ディルスの貢物を納めさせていただきます。何ならアリシア特産の1200トン級の大型ガレー船アルカルトの製造方法も伝授させていただきます」

「ほう?」

エレナの目が興味を帯びてきた。

「アルカルトの製造方法を教えてくれるのか?ミストリアを追い払えばよいのだな?」

エレナは不覚にも男の口車に乗り、援兵を出す事を承知した。

節操のない外交だが普通こんなものである。

庶民上がりの姫であるので、考え方が極めて小市民だ。

「6万人しか出せんぞ。それでも良いか?」

エレナは即断すると50隻の400トン級船でパタレーン北の海域に船を駐留させ、ミストリアの補給線を分断した。

之にはジョンも激怒した。

得意満面の笑みを浮かべながら成果報告をしていたペレトンはたちまち周囲の冷たい目に晒され、一時的に投獄された。

そしてラーゼルンの船大工に命じて強弩級戦艦(2500トン)の製造に取り掛からせる。

ドルクレンが何故か総指揮を取らされた。

船大工出身の彼ならそれくらい出来て当然と思われているらしい。

ドルクレンは恋人のトルハと謀って50万人もの農民(未成年の男女)を金で雇い、大海軍の設立に全力を注ぎ始めた。

陸上兵の方も250万人の男性(女性は志願制で37人)をかき集め、訓練を施し始める。

給金は30ディルスだ。

その間エレナはパタレーンに侵攻。

4日で全土を攻略。アリシアにその領土を献上した。そして逃げるミストリア兵を捕虜にして身代金4億ディルスをミストリアに出させてその部下を解放する。

ジーダンとパルキアは辛うじてエレナの侵略を防ぎきり、ミューファは援軍の派兵を本国に要請した。

ミューファは、魔将軍ギラルに軍勢を預け、海軍の停泊地を襲撃する作戦に出た。

「流石はエレナ姫。あの凶暴なミストリア兵を簡単に追い払うのですからな」

アリシア王はエレナがミストリアを追い払うと、何だ弱いじゃないかと思ったらしい。お世辞は言っても約束を果たそうとしない。

それどころか暗殺者を送り込んでエレナを殺そうとした。

報酬を払えば海戦で勝てなくなるからだ。

「ミストリアさえ追い払えばあたしは用済みなわけね」

怒ったエレナはその日の内に海軍を率いてアトポツクに帰ってしまった。

そこでアトポックを奪回しようとするリースの海軍と偶然遭遇。

之を打ち破り、兵士全員を捕虜にした。

「何?エレナがエティルへ帰ったと言うのか」

ジョンはミストリア1国に領地が減ってしまったこの状況でも之を喜んだ。

然し直ちにパタレーンに再侵攻する気はないようだ。

「240万人の大人が懐妊しているようだ。戦争をしてミストリアを戦火に巻き込むわけにもいかん。しばらくは捨て置け。それからシレーリムの播種量を増やして国力の拡大と技術向上で、失った領地の穴埋めをする」

ジョンはアリシア攻略作戦の不利を悟ったらしい。

圧力を掛けるだけで再侵攻する気は本当にないようだ。

ジョンはスク水とブルマーの販売価格を2ディルス上げて2千万ディルスもの大金を得て、アリシアの豪商アドバン出版の株を20%買占め、反撃してみた。

アリシアは、増資により抵抗。

之が他の株主の反感を買い、株価が急落。

社長が解任される騒ぎとなった。

之がアリシアの経済を圧迫して、同業者が2社ミストリアに寝返り、世論は一気にミストリア派に優位に働いた。

金の力で買収されたアルトニア領を収めていた太守が、ミストリアにわざと敗北して、領地を明け渡したのだ。

マリーは太守の軍に包囲され、敗北して本国に逃げ帰った。

エレナはその隙に、アトポックの復興に力を注いでいた。

雇用対策にエルフの兵150万人を編成したエレナは、海軍と貿易船の生産に没頭。

之を使って特産のエルフの雫なる鉱物と、蜂蜜に香辛料などをミストリアに運ばせ、交易をしている。

戦争はしていても、経済封鎖を仕掛けない限り、交易は続く。

両国とも交易で資金を調達しているのだ。

ミストリアは、特に産物がない為に、資本は急速にエティルに流れ込み、ミストリアは物価高に悩まされ始めている。

ジョンは食料をエティルに送り、金貨を得ていたが、徐々にエティルに経済力で押されていた。

ジョンは群臣を集めて聞いてみる。

「ところで兵士諸君はショセルを知っているかね?持っていたら一粒500ディルスで買いたいのだが。別に怒ってはいないさ。只、播種量12粒のショセルを譲って欲しいだけなのだ」誰かがジョンに密告したのだろう。

慌てて兵士達は口を開いた。

「あれは大量の水を使います。本格的に栽培をすれば水不足に悩まされるでしょう。連作は出来ますが」

それを聞いたジョンは早速部下のショセルを買い漁り、試験農場で栽培を始めた。

とにかく播種量と飢饉に強いショセルを栽培してシレーリムと掛け合わせる心算なのだ。

ショセルとシレーリムは同じ種でDNAも100%一致する。

畑作か稲作かの違いだけだ。

「おい、ドラゴン。あんたらは炎の吐息でショセルを温めて成長を促進させろ」

ジョンは金龍にそう命令すると自分はかねてより計画していたラーゼルンの観光地化を推し進めた。

エレナが幾ら交易品で優勢でもミストリアには切り札があった。

クレスア特産のスク水とブルマーだ。

ミストリアでは国王、ジョンの趣味の影響もあって青のワンピース水着が大流行して試験的に遊泳区域に指定されたラーゼルン島では泳ぎが楽しまれていた。

こうなると観光客の輸送を担当する会社も出現して、土産物屋も現れた。

税収だけで月6億ディルスを越える月もあったのだ。

しかも船会社が需要の拡大に応じて船を増産。

6家の船成金が出現するほどである。

その6家が美術品を買い漁り、芸術家が急速に台頭したのだ。

この収入も合わせて15億ディルスになる。

そんな急成長のミストリアをエレナは脱帽して見ていた。

「ミストリア本国を叩いておかなかったのはあたしの不徳ね。こうなってはもう手が出せない。後2年早く生まれていればあたしは天下を盗って見せたのに」

宮廷絵師のギャラハンがミストリアに寝返るに及んでエレナは早くも己の敗亡を悟ったようだ。

使える金は全て農村の復興に注がねばならず、農業国として出発せねばならないエティルではミストリアには太刀打ち出来ない。

商業を行い、産業を興そうにもジョンのようにブルマーネタを使うわけにも行かず、農村のストライキにより女子を登用するわけにも学問をさせるわけにもいかない。

男を登用するにも食うのに精一杯で学問をさせる余裕が無いのだ。

極め付きはエレナが女性であるという事である。

ジョンのようにやっても男をかき集めても(反乱が起きるくらい)自身の評判が下がるだけだ。

実際ストライキも起こっている。

女官を桁外れの50万人かき集め、教育を受けさせたが(エレナは教育を受けている)それだけでも3回叛乱が起き、武力で鎮圧したトート州をモデルケースとして女子に教育を受けさせた。

魔法使いが身内に一人出れば月収1万ディルスの左団扇が待っている。

然しそれでもエレナはたったの9人しか魔法使いを得られなかった。

全員男である。

「姫。やはりこの国で女子教育制度は早計かと」

黒仮面卿は権力づくでかき集めた貴族の令嬢に囲まれながら忠言した。

言わずと知れたジョンの物まねである。

愛人という名目なら教育を受けさせても文句が少なかった。

「俺がやるなら問題は無いからな」

黒仮面卿はこの750人の弟子(全員女性)に魔法を教えているらしい。

「如何すればいいのだ?あたしは女の子の部下が欲しいのよ」

エレナは叛乱を電光石火の早業で鎮圧して、エティルを制圧すると女子の教育権を宣言した。この間1年も経っている。

ジョンが大艦隊を3千隻編成してミレイドに圧力を掛けていた頃だ。

ジョンは蓄えた金で武器を注文して鍛冶屋の魔法使いに魔剣を造らせている。

758名に増えた大魔法使いと弟子2274名+5312名の見習いはアリシア18州を脅迫。

保護国化していた。

アリシアは、強大なミストリアに抵抗できずに、和議を測り、停戦している。

播種量はショセルとシレーリムを掛け合わせた結果、シレーリムが10粒となり、食料自給率が180%に跳ね上がってしまう。

ジョンは傾斜国との取引を中止して今年生まれた310万人の乳飲み子を養うためににシレーリムをたらふく母親に食べさせた。

アリシアでは150万人の子供が生まれたが480万人近くが家族総出で宗主国となったミストリアに移住してしまう。

戦乱で経済が崩壊しかかっているアリシアでは子供を養えないからだ。

残りは480万人の老人と子供だけになってしまい、アリシアは弱小国に転落した。

貴族の中で残ったのはイーボルトとその側近だけである。

実はこの男、スクール水着フェチのロリコンなのだ。

当然側近は14歳位の(エルフ)少女5人である。

全員スクール水着やブルマー姿でイーボルトの側に侍っていた。

性道徳に厳しいアリシアでは鬼畜にも劣る行為である。

この辺の感性の違いがミストリアとの戦でアリシアが敗れ去る遠因となった。

「貴様の趣味がアリシアの敗因だとは思わんのか?」

アリシア王バトミント1世は食料を調達できなかった己の不徳を棚に上げ、イーボルトを怒鳴りつけた。

既に側近はミストリアに降伏して、残っているのは彼だけだ。

イーボルトはアリシア王の嫌味を無視して逃亡を進めた。

「王。ミストリアは確実に貴方の首を狙ってきますぞ。早く逃亡した方がよろしいのでは?」イーボルトは、この愚王に付き従って最後まで王の側にいた。

自分の特殊な趣味を黙認してくれた王朝がアリシアだけだったからだ。

ジョンの支配するミストリアならさぞかし住み心地が良いだろうとも思ったがアリシア王を見捨てるわけには行かない。

然しアリシア王は、イーボルトの趣味に理解は示さないし、無能だとアリシア王がそう思っているから、イーボルトは三国1の名将と歌われながらどの国も軍人として登用しようとしないのだ。

ギルモアを追い出されたのもギル・シャーンの最も可愛がっていた孫娘のマりー・りザーヌと(イーボルトの叔母に当たる。当時13歳)スクール水着姿で淫行に及んだせいだ。

当時イーボルトは15歳。恋愛自体はギルモアの法律では問題ないのだが、スクール水着での淫行がギルを激怒させた。

ギルモアのしきたりでは変態の二文字から逃れられない。

当然マリーと共に国外追放となった。

そして各地を放浪しながら同じ趣味の少女4人をかき集め、アリシアに流れ着いたのだ。

その国でさぞ酒池肉林に励んでいるかと思えばそうでもないらしい。

とっかえひっかえ、6人で3日間大乱交に及んだ末、話し合い、やはり未成年の淫行はよくないと意見が一致して、18歳になるまで自粛する事にしたのだ。

然しそれでも汚名は拭い去れない。

アリシア王はついにイーボルトを登用することは無かった。

「お前を匿ってやったのはこの俺だ。お前の財力で兵が雇えると思ったからだ。こうなってはお前のような変態王子に用はないわ。さっさとこの国から出て行け」

之を聞いたイーボルトは5人の少女を引連れ、ジョンの下に走った。

外国ではブルマー、スクール水着の大好きなジョンが夜な夜なスクール水着やブルマーで大乱交を繰り広げている事になっている。

ジョンがそういう口実で女の子に教育権を与えたのだが案の定誤解を生み、イーボルトは、ジョンの事を自分と同じ趣味の国王と思ったのだ。

「ミストリアに行けば俺を登用してくれるだろう」

才能はあるのにフェチな趣味が災いして仕官口が無いイーボルトは最後の望みをジョンに託した。そして愛妾の一人、ラナはイーボルトに先立ってジョンへの手紙を届けに船に乗り込んだ。

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