表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

パタレーン攻略作戦

(4)6ヵ月後、3回の総選挙でトゥーロ派を根こそぎ落選させ、議席の99%を保持した連立政権ジョン内閣の面々がルーシー城の大会議室に集結した。

この年ついに達成した、食料自給率76%到達の祝宴をかねての当面の目標を定める会議である。

ジョンは、唐突に思いついた塩と天然水の独占販売によってこの頃には、7億ディルスの金貨と、物々交換により30億食分の麦を入手している。

砂糖と馬の中継販売にも手を染め、13億ディルスもの臨時収入も得ていた。

之を景気よく、公共事業に注ぎ込み、経済の活性化を図っている。

10万人以上の解放奴隷を動員して大規模な植林事業に乗り出したのだ。

植物を愛するエルフにあるまじき政治方針であるが、薪用の木は必要だし、落ち葉は肥料として他国で売れるかもしれない。

しかも若木はCO2を吸収してくれるので温暖化対策には最適だ。

木の実や草や虫は、動物達の食料となるので、狼や熊や狐や鹿に猪などの金になりそうな獣が増えるであろう。

獣の繁殖期は殆どが食料の草が豊富な春なので、すでに鹿や猪は確実に増え始めている。

その他の獣も食料の小動物が豊富なので、餓死せずに順調に増え始めていた。

肉食獣の死亡原因は、捕食より餓死するケースの方が多いらしい。

そして何処からやってきたのか、ゴブリン族がトロールを引き連れて森へ住み着き、ミストリアに税金を払って、狩猟の許可をもらった。

金額は月に宝石3個。

兵士なら2千人は雇える程の高値だ。

ジョンはこの宝石で、カルトミール老と弟子に武器を作らせ、他国に輸出攻勢をかける。

こうして得た金の一部をジョンは景気よく、民衆に分配して人気取りに勤めることも忘れなかった。

残りの、10億ディルス以上の金と兵糧の集積所にラーゼルン等が使われ、解放奴隷3千人によって守られることになった。

更に、ミストリアの新鋭海軍の乗組員に、水夫3万人が雇用され、軍需景気で各地の港や都市は潤っている。

そんなミストリアでは、人頭税を増やす為に、大規模な植民希望者を募集していた。

景気がよければ、景気の悪い地域から人がやってくるので、ミストリアは急速にその人口を増していた。

好況に沸く、ミストリアの商人や地主からの献金は月2億ディルスにもなる。

献金者には位の低い、貴族の称号を惜しみなく与え、支持を獲得する事も忘れなかった。

金山とミスリルの鉱脈を押える事も忘れない。

金鉱の採掘には解放奴隷が、25万人も動員されたが、報酬は収入の半分に当たる700万ディルスという事もあって、(頭割り)文句を言う者は皆無である。

税金は高めだが、この人為的に造り出した好景気が民衆の不満をそらしている。

なお、ジョンの命令により、建てられた急ごしらえの学校は魔法使いを目指す未成年の女子360万人全員が生徒になり、就学率100%を達成した。

男子には魔法戦士としての訓練を受けさせ、兵士として教育する事に決まった。

こうなったのは兵士こそが、手っ取り早く就職できて、大金も得られる(略奪により)唯一の職業だからだ。

身一つで就職でき、金もかからないし、武器防具は官給品である。

特にミストリアでは、海賊が多く、鎮圧の為に海軍の需要は多かった。

ジョンは引き続き、海兵の募集を続けて、海賊を蹴散らし、降伏兵は森林管理の仕事をあてがって、国力の増強に努め始める。

増えすぎた獣や草食獣は、ドルクレンの配下によって干し肉にされ、毛皮にされ、なめし皮にされてレザーアーマーの材料などにされてしまう。

干し肉は、ラーゼルンの食料庫に保管され、冬が訪れて食料の需要が高まる時を狙って売りに出す計画なのだ。

毛皮とかは、防寒具やブーツに加工され、クレスアで少しずつ売りに出される。

ちなみに天下の悪法ブルマー条例は(と名付けられた)ブルマー着用と引き換えに与えられると誤解されたゆえに99%の女性がブルマーを着用したが(体育の授業の話である)以外にもセクハラだとかそういうたぐいの苦情は極めて控えめである。

女子の方も初めて受ける教育に絶大な期待を寄せているからだと、ジョンは思った。

取りあえず、懸念事項の反乱は起こらず、ジョンの教育改革を見守ろうとしている様だ。

因みに学費は無料である。

無事学府を卒業して就職すれば、学費にかけた元手など、重税と技術革新で十分元は取れるのだ。

為政者たるもの学費と食糧生産の諸経費だけは、ケチってはいけない。

誰に何の才能があるか分からない以上、教育は出来るだけ受けさせるに限るのだ。

勿論無料で・・・。

そして暫く会議は食糧生産と税収アップについて話し合われた。

そして議題はこの春に生誕してそのまま塔に幽閉されている、シャリーの第一子ミューファの処遇に移っていく。

「あの娘はシャリーと共に安らかに天に召されるべきかと」

こんな鬼畜のような発言を平気でするのは勿論トゥーロである。

総選挙で負けて領地も没収されかかった為、腹をくくってジョンに気に入られようと忠誠を見せびらかしているのだ。

ジョンはこういう手合いが一番嫌いである。

なおトゥーロの領地人口は現在630名、同盟国は45領地で2万人を超えていた。数だけならジョンに引けはとらない。

トゥーロの領地では、税金は武器、鎧の収入を合わせて一人当たり300ディルスで3千万位である。

折からの好景気で、売れに売れ、こうなった。

そしてトゥーロは、この金で鉱山を買占め、10万人以上のドワーフを雇ったのだ。

雇ったドワーフに、鉱物を掘らせて採掘後にこの廃鉱を、龍の借家として月1万ディルスで貸し出し、大金を得た。

龍はジョンには忠誠を誓わなかったので、集まった8万頭の龍は、一大勢力となり、龍王セドランの元で繁栄を極めた。

特に、ミストリアのセドン島に住み着いた一族はドラゴニア王国と呼ばれてジョンから、独立を認められるほどになる。

龍達は、獲物を求めてミストリア各地で協定を結び、食べ物と引き換えにトゥーロの用心棒になる者まで現れる。

この軍事力を背景に、ジョンに対抗しようと思っているのか、蓄えた資金力を背景にして、ミストリアの農業部門の会社株を買い占め始めたのだ。

然しそれでもジョンの方が財力では上だ。

ジョンの私領での農民は収入が270ディルスで所得税金が100ディルス、まとめて2億ディルスだ。

商人が住んでいるルーシーはどいつもこいつも金持ちばかりで所得税3億ディルスを収めていた。

諸侯は全て一度ジョンに領地を返して改めて別の所領を開拓する資金として一人当たり50万ディルスを与えられた。

所得が400ディルスが限界だった諸侯にとって12億ディルスのジョンの収入は(この時点でほとんど全ての領地はジョンの私領となっていた)途方もない金額に思えてらしくジョンの命令に背くものはいなかった。

正確には一人いたが(ミレイレアのこと)黙殺された。

それ故に、ジョンにはミューファを恐れる家臣達の気持ちが理解できない。

何度も言うが、財力でも兵力でもジョンの方が確実に上だ。

それに兵権は確実にジョンが掌握している。

どうやったら負けるというのだ?

ジョンは、ミューファを保護することに決めた。

美人だし、一応従兄妹なので妹も同様だ。

因みに、ジョンの両親は、生きてはいるのだが、何故か遠くの領地に左遷させられている。

ジョンもあえて呼び戻さなかったので、身内は彼にとってはミューファのみだ。

それ故に暗殺する気に離れないのだ。

「殺すな。あの娘が反乱を起こすのが心配ならあんたが僕を守れば良いだろう?あの娘よりあんたの方がよほど信用できないんだがな」

ジョンは軍事大臣に成り上がったトルハの真似をしてトゥーロに嫌味を言ってみた。

トゥーロは農水大臣である。

ドルクレンは補給大臣となっていた。

金儲けが国策のミストリアでは宰相に次ぐ重職である。

「よろしいので?あの娘が蜂起すれば、ジョン様に勝ち目はありませんぞ」

ドルクレンは珍しくトゥーロの殺人計画に賛成した。

この男は元軍人だし、所詮殺人鬼に過ぎんのか?

「人殺しなんかが偉そうに国策を語るな」

ジョンはイエスマンの元軍人とシャリーの元腰巾着に怒りを向けた。

「あんたらの過去をどうこう言う心算はないが、僕が王である限り、人殺しはやらん。覚えておいてくれないか?」

ジョンが、ミストリアの鍛冶職人に戯れに作らせた、髭剃りと備中鍬を突きつけて脅しにかかる。

2人は進言を止めた。

「とにかくあの娘を塔から解放しろ。分かったか?」

もはや、トゥーロもドルクレンも口を挟まない。

ジョン王は幾ら天才的な金儲けの才能があろうと、やはり子供だ。

甘すぎる。

「それから金をかけてルイスとの交易交渉に入れ。交易が再開されるなら幾ら金を使ってもかまわん。必ず成功させろ」

ジョンは従兄妹の処遇より、こちらの方が重要だとアピールしてみた。

別に密貿易商人の暗躍により、(希少価値で値段が8倍以上に跳ね上がった)ルイスが抑えている商品は手に入るのだから構わないのだが、王としては安い良質な商品を国民に提供する義務があるらしいのだ。

義務を怠ったパン屋と王は民衆に殺される事となる。

他の国では如何か知らないが、ミストリアではそうなるのだ。

然しトゥーロは言った。

「無理だ。お前の民をブルマー姿にするようにはいかん。独立国だしな」

あからさまに嫌味を込めてトゥーロが言った。

ジョンも尋ねた。

「エティルに軍需物資を送っても駄目か?あんたの手下に防具を造らせ、ルイスに送ってやれば交易再開に応じるかもしれない。エティルの紅茶は金になる。失うわけにはいかないのだ」

ジョンは取りあえず、金になりそうな事は何でもやる心算らしい。

人殺し以外は・・・。

そのジョンは取り合えず、即興で編成した大魔法使い86名とヘボ魔法使い672名に1万ディルスずつ与えて配下にしていた。

之を使って、エティルに圧力をかける心算なのか?

側近の2人はそう邪推していた。

いくらルイスでも、たったの800名弱の魔法使いでは落ちないだろうと思うのだが・・・。

因みにヘボ魔術師660名は11歳〜から15歳までの女子であり、ロリコン後宮魔術師などと年かさの市民から陰口を叩かれたが、当人達は殆ど気にしていない。

86名の大魔法使いは特殊訓練を受けて6ヶ月で修行を終えた、超エリートである。

全員女子だ。

この世界での魔法は学問であるから力馬鹿の男より、知恵のある女の子の方が早く魔法を覚えられるらしい。

男の学生は6ヶ月程度の訓練では魔法を覚えられない。

しかも戦士の訓練も受けているのだから2年くらいはかかるだろう。

なお、女子の体育の授業は有志による魔法戦士を目指す女子のみが行っていた。(週5時間の基礎体力訓練以外は)

よってブルマー解禁でも実際に穿くのは全体の97%位であるが、それでもスポーツ用品店の売り上げでは、全員所有している事になっている。

公式の練習ではほぼ全員が穿いていた。

然し、部活などでは短パンなどが主流である。

ジョンはこの即興の魔法兵団を使ってルイスとの交渉を有利に進めようと思い立ったのだ。

新兵器の、眠りの魔法を切り札にして・・・。

「エティルの統一を急がせろ。几帳面な交易国として独立国であるエティルが必要だ」

ジョンはこの時点ではエティル併合の野心は持っていなかった。自国の経済圏の確保が目的である。

その為にエティル企業の買収や、会社との闇取引を積極的に行っていた。

ろくな産物のないミストリアでは、船位しか造れない。

それ故に、好景気により安く製造した武器や防具を売って、産物の開発に努める必要があるのだ。

「ルイスはエティルの統合に忙しいから、武器の類は飛ぶ様に売れる筈だ。急いで馬車と食料と武器を国中の商人に集めさせよ」

この命令に補給大臣のドルクレンは慌てた。

「ミストリアの全ての職人を動員しても馬車と武器は間に合いませんし、馬は外国から輸入しているので、直には届きません。食料はまだまだ不足気味で、他国に回す余裕は・・・」

命令に講義するドルクレンにジョンが秘策を授けた。

「僕は人殺しをする気はない。武器などいらんのだ。ミストリアの将兵の中古品の鎧や武器を高値で売りつければ良いだろう」

なるほどとドルクレンは思った。

然し馬と食料は如何するのだ?

「馬と砂糖の生産地であるパルキアとジーダンを何れ攻略する。だから兵5千人分の装備は残しておけよ」

之にだんまりを決め込んでいたトゥーロが口を開いた。

「ミストリアには他国に侵攻する余裕は・・・。それに武装を売りさばいたら、たった5千でどうやって攻め取る心算なのだ?」

ジョンは之に対応する。

「先に攻め落とせれば、新品の馬を売りさばくさ。ドルクレンは密かに安い老馬を買い占めて置くように・・・」

「・・・」

「そうだ。魔術師を送ってやるか?如何するトゥーロ」

ジョンは実戦訓練もかねてエティルへの、魔法使いの派遣を提案してみた。

トゥーロが答える。

「ルイスのことは俺がよく知っている。あいつは物で動くエルフではない。奴は無類の女好きなのだ」

之を聞いたジョンはペレトンを側に呼んで命じた。

「シャリーを送ってやれ。人質としてな」

之にペレトンが反対する。

「女性としては反対です。ブルマー程度なら我慢も出来ますが人質作戦は止めていただきたい。人道に反するゆえに貴方が認めた女性票を失い、議席を失いますよ?それよりも私を成功報酬2千万ディルスとアルカド領(ミストリアの1州)でエティルへ派遣してください。必ずルイスを説得して見せます」

珍しくペレトンが(ブルマー姿で)功名心に満ちた発言をした。

王国のブルマー娘として評判だが、権力には興味のない人であるのに・・・。

之にジョンが噛み付いた。

「説得だと?分かった。君に盗賊出身の兵278名と幹部11名の指揮権を与える。軍資金に537万ディルスを持っていけ」

ジョンは目的の為なら金に糸目をつけぬ性格らしい。ペレトンは了承した。「ではルイスを誑かしてまいりましょう。エティルの領地は保証すると確約してもよろしいですか?」

ジョンが答える。

「かまわん。何でも約束していい。然し食料と領地と産物の譲渡だけはするなよ」

ペレトンは更に進言した。

「今、服飾職人のエランペに製造を委託しているブルマーとスクール水着の独占販売権と製造工場のエティルへの移転をルイスに申し入れてよいでしょうか?」

それに対して疑問に思ったジョンがペレトンに尋ねた。

「どういう意味だね?」

ペレトンが説明する。

「はい。ブルマーは只で女子に配っているわけではありません。親の金で買っているのです。以外にも女子が学問を受け、家事労働から撤退する事に反対するものは少ないのです。王の妾に自分の娘がなれば王族としての左団扇の生活が待っているとか、使用人を雇えば良いと思っているものが多いのが幸いでした。だからこそ、きっとエランペもルイスもブルマー姿を見たさにこの提案に同意するでしょう」

よく分からない理屈であったが取り合えずその場のノリでジョンは許可を出してしまった。

ペレトンは更に、今後の政治方針を進言する。

「ジョン様。産業を興すのです。そして南方のパタレーン大陸へ進出して兵の忠誠心を試しましょう」

パタレーン大陸はミストリアの属領だがシャリー派の残党の巣窟となっていた。

中央政府は夜盗と位置づけている。

ジーダンとパルキアは、パタレーンの小国だ。

因みにルイス率いるエティルも侵略の手を伸ばし始めていた。

それ故に、侵略するなら速いほうが良い。

ジョンはルイスとの交渉の片手間に、パタレーンを攻略する腹を決めた。

2、3日は間を置く心算でいたのだが・・・。

「今26500の兵を国境に動かし、パタレーンを武力で脅せば弱小の勢力が少しばかり降伏してくるでしょう。その兵力に背後を付かせ、心理的に追い詰めればパタレーンの1950万人は労せずにて落ちます。ジョン王のブルマー政策が少しばかり貴族の抵抗を呼ぶかもしれませんが」

ペレトンは月額二億の収入をかもしだすブルマーとスクール水着に若干の羨望を覚えていた。国庫に収まる税金と違ってブルマーとスクール水着を売った代金の4割に当たる8千万ディルスはジョンの私有財産となるのである。

ジョンはこの収入を根こそぎつぎ込み、ラーゼルン島と国領の私有財産化を議会に要求して了承された。

ジョンはラーゼルンでパン屋を始め、観光客を呼び込む作戦に出た。

産物が乏しいミストリアでは、観光資源で儲けるのが一番だと思ったらしい。

それと祭りをやるのが一番手っ取り早いだろう。

ジョンは矢継ぎ早に、ミストリアの4千箇所で、7回の祭りを実行に移して、50億ディルス近い大金をせしめる事に成功していた。

この収入は、ミストリア防衛の要となる防壁の資金となっている。

金に任せて通常賃金の50%増しという大盤振る舞いで職人を雇った。

ミストリアの海岸線を根こそぎ城壁で被ってしまおうという壮大な計画である。

浜辺の生き物を保護する為に砂浜の内側に構築される事になった。

その労働力を確保する為に、ミストリアでは武装解除した国軍まで動員し始めた。

ちなみにミューファはジョンの命令どうり塔から開放され、ミストリアの皇帝職に付く事になり、之によってシャリー派は、(ジョンのブルマー条例に対する)支持基盤を完全に失い、セクハラ反対派と称するテロリストと(謀略専門)結びつき、反政府ゲリラ、マクユイを結成した。

然しこれは水面下で行われている事なのでジョン達はまったく知らずにスクール水着ネタをさらに発展させたレジャーランド、アケミスト川遊泳区域の新設を兵士にやらせていた。

川を遊泳区域に指定して、泳ぎを国内に普及させれば(スクール水着以外の)ワンピース水着が馬鹿売れするじゃないかとジョンは思ったらしい。

はたから見ればギャグかセクハラな話なのだがワンピース水着の販売収入はジョンの個人収入の増加に繋がり、本人達は大真面目であった。

部下の給料もブルマーと水着の販売収入から出ているゆえに文句を言う部下はトゥーロだけである。

海のレジャーランドにしなかったのは海には怪物がいる上に、海を支配する王国の勢力化にあるため勝手に領有化できないからであった。

前のミストリア王が同じ事を考えて王国の配下である鮫による大虐殺を引き起こした。

それ以来、海で泳ごうと考えるものは度胸試しで位でしか現れない。

ジョンも前ミストリア王の二の舞いになる気は更々なかった。

それ故に川に重点を置き、食料自給率100%達成以後の、国力の要となる水着販売収入に期待をかける以外にないのだ。

それに加え、観光収入はラーゼルンの主な収入であった。

5億ディルスもの国庫税収は、食料に化け、南方の大国、傾斜国へ流れた。

この収入によって傾斜国は兵を雇い、国軍280万人のゴブリン兵による大傾斜国を建国していた。

之によってラーゼルンは食料供給率140%(輸入66%)までになり、飢えから開放された。

貧困を平定したこの日は、国民の祝日とされ、一週間ぶっ続けの祭りが開かれる事となったのだ。

後年この祭りは、一ヶ月に拡大され、規模もい大きくなり、2京ディルスもの収入を上げるが、今の所は7億ディルス程度である。

国家予算は、総ざらいしても平均70億ディルス位が限界であった。

収入を増やす為には、国民を増やすか産業を興すか、植民地を増やすしかない。

ジョンはそれ故にパタレーン攻略の為、クレスアに兵10万。ミストリアに主力軍26500を配置して、敵国の侵入に備え、1500隻にも及ぶ大艦隊(千トン級)の製造に乗り出した。

あまり知られていないが、材木製造の魔法は存在するのである。

最近開発されたらしいが、森林保護の為にこの魔法を利用する事にしたのだ。

御蔭で、魔法使いと造船工は特需景気に沸いている。

「王。取り合えず賊軍のミレイドと交渉したいのですが」

この頃皇帝ミューファが、他国侵略の許可をジョンに執拗に願い出ていた。

当然であるが、前王シャリーの娘であることが余程こたえているらしい。

本来ならシャリー共々、処刑されても文句は言えないほど立場は弱いのだから・・・。

手柄を立ててジョン王のご機嫌を取らねば、命が危ないかもしれない・・・。

それにしてもどうもあの娘は傀儡の意味が分かっていないらしいとトゥーロは思った。

役に立つならまあどうでもいいが。

「今ミレイドと戦う能力はミストリアにはありません。兵はたったの26500人しかいませんからね。交渉してくれるなら有難いですが」

ジョンは丁寧に頼んだ。

一応従兄妹である。

向こうが敵意を抱かぬ限りは友好路線を維持しようとジョンは思っていた。

彼はミューファの望みをあっさりと叶えてやった。

「ミレイレアさんを降伏させて下さい」

ジョンは丁寧な言い方を続ける。

怒らせたら損だからだ。

「王の御心により、私はミレイドと交渉いたします」

ミューファは喜んで交渉に臨もうとした。

ジョンは部下に命じて補足させる。

「ところでミューファ領はあなたの物だ。あの地だけは没収せずにそのまま残してある。赴任して経営するといい。ジェナンの港があるから傾斜国と交易できるはずだ。ミレイドとの交渉が可能ならそれもいい。税金は国庫に納めるように」

ジョンの側近中の側近、ペレトンが偉そうに言ったのだ。

ミューファは喜んで言い返した。

「分かりました。税は国庫に納めさせていただく。必ずやミレイドの楽器でラーゼルンの収入を跳ね上げて見せましよう。そして貴方の為にミレイドの五線譜を掲げさせましょう。」

そう言ったミューファは悲しげに空を見上げた。

そして本題に入る。

「母様は何時解放してもらえるのでしょう?私はそれを陛下に期待しているのですが」

ミューファの問いにジョンがため息をついた。

そうか。それが目的か・・・。

「ようするに忠誠を誓うからシャリーを開放しろと言う訳か?シャリーを幽閉したのは僕じゃない。恨まれる覚えはないぞ。それにミューファさんと違ってシャリーは政敵だ。このまま解放するわけにはいかんのだ。エティルへ送って永遠に厄介払いが出来ねば、僕の政権基盤の固まる5年後位先でないと開放できん」

良い子ぶるのに耐えられなくなったのだろう。

今度は高圧的な態度でジョンが公言した。

幾らジョンに忠誠を誓った兵士や魔術師がいるにしても所詮寄せ集めである。

どんなきっかけで裏切りだすか分かったものではない。

しかも魔術師は全員年頃の娘だ。

それに強制的に性的慰み者にしている(建前はともかくやっていることはそうだと国民の目には映る)ジョンを恨んでいるかもしれない。

「皇帝陛下。そういうわけですから僕に協力してパタレーンを落し、ミレイドを屈服させたほうが身のためだ」

之ではますます評判が下がるなと聡明なミューファは思ったが黙っていた。

ジョンを怒らせては我が身が危ない。

折角命が助かったのである。

たとえシャリーが殺されても怨むのは筋違いだと幼いミューファは思っていた。

「勿論王に忠誠を誓います。母様のこともありますが個人的に貴方の事が気に入りました。命に代えてもジョン王に仇なす者を蹴散らしてご覧に入れる」

ミューファは大見得を切った。自分を皇帝にしたあたり、利用価値はあるとにらんでいるのだろう。

それなら幾らかでも兵を入手してジョン王に忠誠を尽くし、復権を図るまでだ。

もっともシャリーの起こした戦争で奴隷にされたらしいペレトンとは違い、生まれた時から虜囚生活であるミューファは、そんなにジョンを恨む気もなかった。

然し私は如何すれば良いのか?パタレーンを落とすのか?それともミレイド?

「ミレイレアさんは後でゆっくりと降伏させてもらおう。まずは弱いパタレーンから片付けてくれないか?一人も殺さずに・・・」

出来るかそんなもん。

ミューファは一瞬そう思ったが口には出せない。

人を殺さずに戦争など出来るか?

然しそれがジョンの希望とあらば仕方がない。

「その為の兵を6名、お貸し願いたい。それを元にパタレーンとミレイドに揺さぶりを掛け、必ず降伏させてごらんに入れましょう」

この殊勝な態度にジョンは完全に油断したようだ。

ジョンは余計な事を言い始める。

「300名位は出しても良いぞ。僕の兵がどれだけ強いか確かめるチャンスだ」

賢明にもミューファはそれを謝絶する。

「結構です。6名もいれば十分。ジョン王は新たな未成年兵を編成して国境に展開してくれればそれで十分です。後は勝手に2国が降伏を申し出るでしょう。2,3年はかかるかもしれませんが」

ジョンは不覚にもこの言葉を信じた。

そして選抜きの精鋭6名をミューファの直轄にしてしまう。

魔軍将ギラル。

ゾンビ指令クルザーム。

妖魔書記リューグター。

騎士将軍シャームリー。

大僧侶ドッペりー。

龍軍騎兵長リザ-の6名だ。

ミューファ自身の地位は皇帝兼魔軍元帥となった。

軍資金として3千万ディルスと馬5千頭を与えられる。

「あの方は何を考えている?之では私の元に大兵が集まるじゃないの?」

申し出た本人が唖然とするほどジョンはあっさりと軍権の一部をミューファに譲渡した。

こんなお人よしの王は始めて見る。

反逆者と聞いていたからもう少し冷酷な人かと思っていたのだが。

「そうか。私が謀反するかどうか試しているのね?ジョン王も猜疑心の強い事。まあ良いわ。リューグターさん。パタレーンの港町に潜入して噂を流して。隣国が密かに同盟を結んで貴方の国を包囲攻撃しようとしている。之を全ての国に触れ回って。一カ国位は信じる国があるかもしれない」

ミューファは誰でも考え付くような小手先の流言作戦を指示した。

リューグターは一応命令に従う。

「分かった」

「其れから信じた国には先制攻撃の世論を巻き起こさせるのよ。こうすれば攻撃を恐れた他国が周辺諸国と同盟を結んで疑惑が真実になるわ。そうして孤立無援に陥れてから同盟の話を信じた国に持っていく。そうすればどうしようもなくなって同盟に応じるしかなくなる。こうして一州を1つずつ切り取るのよ」

「そんなに上手く行きますかね?」

クルザームとリザーは、懐疑的な目をミューファに向けた。

どちらも、謀略には慣れていない。

「ミストリアの13万の兵がバックについているのよ?あっさりと降伏するわ。貴方達は、船をジョン様から借り受け、征服した土地の産物で直に儲けられるようにするの。分かった?」

「ああ。魔軍元帥殿」

部下達はミューファに従った。

6人の部下は忠誠を近い、この作戦はすぐに実行されたのだ。

噂が広まる暇な時間に、ミューファはエルフの兵を募兵し、直属の兵を4千と、馬3千頭を掻き集めた。

暇潰しに、この兵を訓練して、ミューファ弓戦隊と名付けられた最強の軍団を編成してジョンの許可をもらった。

之を魔将軍ギラルに指揮させ、ミューファ領の税収強化に努めている。

パタレーンの産物である砂糖の仕入れ値を、強制的に20%引き下げ、内紛で手も足も出ないパタレーンに承知させた。

之が原因でパタレーンは、ミストリアの取り込まれ、謀略に慣れていないパタレーンの諸侯は仕掛けた方が拍子抜けするほどあっさりと噂を信じ込み、国同士で仲間割れを始め、パタレーン18州の1つパルキア領とジーダン領が耐え切れなくなり、降伏と領土安堵を前提とした和議をミストリアに申し出たのだ。

「偉大なるミューファ様。蓄えた軍資金と砂糖は献納しますので所領安堵を確約して頂きたい」

「うん。約束しよう」

ミューファ無責任に、約束してやった。

まあこちらの所領が減るわけではないから。

然しそれでもこの展開にはミューファも唖然として最初は信じられなかったようだ。

「もう降伏してきたのか?」

噂を流して17日目にパルキアとジーダンが降伏の使者を送ってきて傘下に入った。

この地が砂糖きびにあたるバルモアの一大生産地で人口160万人の大国であった事もジョンを喜ばせた。

一部で評判の悪い、ブルマーやスクール水着の販売収入よりもはるかに儲かりそうだからである。

砂糖は角砂糖1つで70ディルスもする超高級調味料であるのだ。

こんな国が独立国でしかも小国だとは、ジョンにとってはまさに幸運だった。

「よくやった。パルキアとジーダンの兵の使用を許可する。軍備を強化して大国アルトニア(3カ国)の攻略に備えよ」

ミストリアの大臣兼軍師にのし上っていたトルハは王の言葉を代弁した。

「褒美に150万ディルスの賞金を授ける。好きに使うと良い」

之を聞いたミューファが嘆息した。

意外とけちな男だ。

10億ディルスは軽く稼ぎ出すであろう砂糖を手に入れたのに褒美は之だけか?

ミューファはアルトニアを攻略する為の兵を之で雇わなければならなくなった。

領地の収入の8千ディルスでは600名くらいしか雇えない。

人口470万のアルトニアは兵も6万人いる。

パタレーンに展開できる兵は3万がやっとだ。

農民兵を募兵して、結集させれば5万人はいけるが、それをやると産業が崩壊してしまう。

仕方なく流言作戦でアルトニアの民を動揺させる作戦に出た。

「アルトニア王はミストリアと裏で手を握っているのだ」的な噂である。

この謀略も長年シャリーに苦しめられた恨みも手伝って旨くいき、武将の一人、セタ・ブレーメンが反乱を起こした。

この男はミストリアを追われた後、アルトニアへ身を潜め、武将に取り立てられていたらしい。

セタは4千の騎馬隊をアルトニアに向けると、ジーダンとパルキア占領に向ける為の兵を募った。

名目は裏切り者の王を倒せである。

そこへ3州の隣国が便乗してアルトニアに攻め込んでいた。

慌てたアルトニアは苦し紛れにミストリアに救援を求め、疑惑を現実のものにしてしまう。

ミストリアはパルキアとジーダン軍を送り、アルトニアを保護領としてしまった。

王はミストリアに忠誠を近い、両軍を合わせた9万の兵でセタに迫った。

セタは之を防ぎきれないと思ったのだろう。

兵を置いて遁走した。

アルトニアに侵攻していた3国も、之を見て降伏し、パタレーンの10州は全てミストリアの傘下に入ったのだ。

この間僅か3ヶ月である。

ミューファはアルトニアの商人に命令して軍資金を献納させると、人気取りに各地の民衆に分配する。

ジョン王とミューファの名声は之により高まった。

名声を金でが買えるなら、惜しむことはない。

この工作によってパルキア、ジーダンの兵士と民衆は、完全に餌付けされてしまう。

ミューファは民衆の抵抗を封じ込めると、アルトニアの産物を早急に調べさせた。

アルトニアの産物は金鉱山とモースと呼ばれる馬であった。

ミューファは略奪を固く禁止し、その代わりに国庫に蓄えられていた全ての財宝とジョンから授かった資産(金だけ)の95%を兵に与えた。

之が民衆に受け、進んでミストリアのジョン王に忠誠を誓うことになってしまう。

「王。ミューファは使える人材ですな」

軍師のトルハがミューファの手並みを褒め称えた。

文句ばかり言うトゥーロより余程使える。

「シャリーを解放してやれ。パタレーンの反ミストリア勢力の元に返してやるのだ」

ミューファに対する褒美の心算なのかジョンが突如命令を下した。

反対するものは部下にはいない。

反対すれば給料を停止されるか首にされるのは明白だからだ。

「皇帝陛下にこれ以上の権力をお与えになれば専横の限りを尽くし、開放されたシャリーが反乱を起こしますぞ」

周囲に押されてジョンの諌め役に抜擢されたカルトミール老がおずおずと申し出た。

この人はジョンの正式な部下ではない。

只の爺さんだ。

「シャリーを盾に取ればミューファは逆らえません。残りの8州とミレイドを抑えた後に解放すればミューファは如何する事もできずに我等に従うでしょう。如何か御自重を」

カルトミールはジョンの部下たちが約束した60万ディルスの為に必死に説得しようと試みた。

然しジョンは命令を撤回しない。それどころか、シャリーに千金を与える命令を付け加えた。之にカルトミールは観念して苦情を言うのを止めた。

そして穏やかに聞く。

「良いのですか?出来れば作戦の趣旨を聞きたいのですが」

ジョンはこう答える。

「シャリーがアルトニアやパルキア、ジーダンの帰参を許すと思うか?シャリーがいる限りパタレーン10州はミストリアに組するしかないのさ。それにカルトミールさん。シャリーを解放すればミューファとシャリーは敵同士になる。ミューファさんは、シャリーにとっては裏切者だからな。之が戦略というものだよ。カルトミール老もその心算で僕に仕えてほしい」

ジョンは地面に頭をこすり付けて頼んだ。

目的の為には手段を選んではいられない。

その神妙な態度にカルトミールも心を動かされた。

「分かりました。お使えいたしましょう」

こうして新たなる知恵者を得たジョンは砂糖の独占販売権を議会に認めさせ、パルキア、ジーダン領から輸入して国民に販売。

4千万ディルスの収益を上げた。

全部売れば30億は儲けられるが、少しずつ売って品薄感を煽り、値段をじわじわと吊り上げるのは、商売の常套手段だ。

更にモースを買いあさり、2万人の騎兵団を組織してミレイドに圧力をかけた。

ミューファにはシャリーの捕縛を命令してシャリーの心中に疑惑を持たせるように心がける。ミューファはこの命令を聞くと直に9万の兵でパタレーン8州を有する、人口840万の大国アリシア・フリューゲント王国に圧力をかけた。

国王は大方の予想に反して交戦を主張して20万の大軍を全国から徴発して国境に展開する。こうしてミストリア最大の内戦。アリシアの戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ