播種量の戦い
(3)「それでこれからどうするのだね?」
小手先の謀略を駆使してミストリアの政権を奪取したトゥーロとトルハは途方にくれていた。とにかく食料がないのだ。備蓄量は1200万人が2ヶ月食べていける程度である。
3ヶ月も経てばトレニアと(豚)鶏以外の食料はあらかた食べつくされ、民衆の8割には荒野に出して食料調達に奔走させる事になりそうだ。
然しその日の食料しか集められない状況だ。
ジョン付きの女官に出世していたペレトンが、旧ペクダールのメデューサ・エルフから雇った8名の部下に、当面の食糧確保の疑似餌にする為に、薪用の倒木を掻き集めさせている。
倒木に巣くう虫を使って、大魚のレトニアッスを釣上げ、ついでに冬用の薪として、隣国のパタレーンに売って食料に換えるのだ。
この仕事をドルクレンが率先して行っている。
民衆から詐取した600万ディルスはエティルで食料の売買に使い、840万食に化けたが、之では全国民の一日分にも満たなかった。
このままでは、春のシレーリム麦の収穫の頃には大飢饉が訪れる事間違えなしである。
どうやって民衆の反発を抑え、種蒔きをする事が当面の課題であった。
然もこのままでは飢饉になるのは明白であるから農民はあからさまにやる気を失っている。
ちなみに現在は11月だ。
「農地を増やすしかないよ。荒野の兵を集めて屯田兵にするのはどう?」
驚異的な成長の速さで生誕3ヶ月で口を聞ける様になったジョンにトルハが指示を仰いだ。
ジョンはシレーリム麦といろんな土を混ぜ合わせながら本人は農業の研究でもしているつもりらしい。
恐ろしく早熟な子供であった。
一般的なエルフは生後1年で人間の4歳位である。
エルフが成長が遅いのは俗説だ。
エルフは植物の精霊がモデルだから、成長は早い。
「良いよ」
ジョンはあっさりと許可を出した。
意味が分かっていて許可を出しているなら天才である。
「出来るだけ上質な土を調達してくれないか?僕はシレーリムの播種を多くする研究をする。それとライトの魔法を使えるエルフを税収を上げて買収するんだ」
トルハは頭を抱えた。
やはりこの人は子供だ。
まあ仕方ないが。
トルハは何を期待しているのか理不尽な侮りをジョンに向けた。
期待しているのは勿論王者としての風格であろうが。
いくらジョンが早熟でもそれは過度の期待であろう。
トルハは仕方なく言った。
「ミストリアには裂ける兵力はありません。ご自分で何とかしてください。みな食べるだけで精一杯なのです」
突然こんな事を言い出したジョンにトルハは慌てた。
播種量の向上が、国策にとっていかに重要か、謀将トルハにもトゥーロにも分かっていないらしい。
ペレトンの要請に応じて、補給の仕事を担当していたドルクレンだけはこれを支持した。
他の家臣は流石にこの要求は拒んだ。
子どもの土いじりに構っている暇はないとあからさまに思っている。
こういう反応の方が普通だろう。
「王。まずは研究成果を出して我々に認めさせるのが先決ですぞ。ま、税収は貴方のものでないから60ディルスの給料のみは保証しますが」
ジョンの物となっているラーゼルン島以外は彼の物ではない。
領地の税収も保護者であるトゥーロの管理下であった。
トゥーロはジョンを見くびっている。
100歳以上の老人であるトゥーロにとってはジョンなど傀儡に過ぎないと、心底思っているようだ。
ジョン派は、ここで争うのも愚作と思い、折れることにした様だ。
「分かった。それでエルフを2人雇ってくれ。それなら良いだろう?」
ジョンは不条理な怒りをトゥーロに向けた。
之では王のうまみが全然ないではないか。
「まあ5年間は我慢してください。金は国家の再建費用に全て使いますが土地はいつかお返しする」
之を聞いたジョンは、トゥーロに対して反抗する決意をした。
トゥ-ロに隠れて新しく雇ったエルフをミストリアの大洞窟リーフの星門の地下深くに送り込み、金を拾い集めさせ始めたのだ。
かつて2頭のドラゴンに守られていた、この門周辺には財宝狙いの愚かな冒険者の落とした宝石や金貨が山のように眠っている。
モンスターや、魔族も多いが、機転の聞く食い詰めた盗賊なら、盗み出す事は可能だ。
ジョンは、ペレトンの部下と合わせて、10人の兵を星門へ送り込み、魔族を追い払い、莫大な食料と金を半分だけ召し上げ、王の権限で星門の居住権を認めてやり、数十名のゴブリンを配下に収めた。
ついでに拾った金を元手に、ゴブリンや近隣の夜盗をかき集め、食用の軍馬を買い漁り、次第に強力な勢力になっていき、たった2ヶ月で4千人の大兵力を有するまでになったのだ。
「この兵で北方の島、クレスアを制圧する」
この快挙で、調子に乗ったジョンは北部の島、クレスア攻略の兵を準備をさせる。
夜盗の幹部クラスで構成された60人の親衛隊に命じて、船を用意させると、
総兵力を動員してクレスア島に上陸。
何故かこの時、10万人の兵力を有するクレスアは、抵抗せずにジョンに降伏した。
之により、180万人の民を抑えてしまう。
この快挙によりジョンに帰属する者が急増。
弱小の豪族達が、貢物を送ってジョンに忠誠を誓った。
この時かき集めた夜盗出身の屯田兵76万人。
幼子が51万人の383万人が新たにジョンの私兵となった。
そして夜盗の海戦部門が所持していた500トン級戦艦ラミアスをジョンは接収して、42隻を保有している。
76万人の夜盗は帰農させ、食料自給率のアップに努めた。
そしてクレスアが貯め込んでいた金貨6億枚と外交に使おうと思って育てていたらしい煙草を入手する。
因みにクレスアは、女子教育制度を(学問)いち早く取り入れた先進的な領地で、スクール水着やブルマーの開発では世界でもトップクラスである。
というより女子教育制度を推進する国は世界でここだけであった。
女子が体育をやると必ずナマ足だの腹チラだの着替えを覗かれただの言ったいわゆるセクハラ問題が浮上するものだが、2年にも及ぶ女子本人との話し合いの結果セクハラ問題は黙殺する事に決まったらしい。
いちいちセクハラをとがめだてしていてはきりが無いし、ある程度は仕方ないと思ったのだ。それに人心が豊かな国はセクハラを気にしない傾向にある。
ようするに国を繁栄させることがセクハラ問題に対する答えなのだ。
「まさかこうもあっさりと降伏するとは思わなかった」
侵略戦争を仕掛けたジョン本人が唖然とするほどクレスアは早々と降伏したのだ。
「貴方を倒して何が如何なる?私達が貴方の軍門に下ればそれですむ事だろう?何故に抵抗する必要があるのだ?」
クレスア太守はそう言うと、あっさりと姿を消し、二度とクレスアに戻らなかった。
「君達は魔法が使えるのか?」
残された者達に唐突にジョンが質問した。
兵士は多少前途に不安を感じたが、明るく振舞っている。
クレスアの元兵士でジョンの配下に組み込まれた女性のみの騎士団に所属する将軍(最高司令官)モリアはこう答えた。
「はい使えます。並の男よりははるかに上出来でしょうね。私だけではなく騎士団10万人は全て火球位なら使えます。貴軍に降伏したのはジョン王に従うべきとの占者の占いがあったからです。然しジョン王の兵は躾が行き届いておりますね。5人位は貴軍の毒牙に掛かる女の子がでると覚悟していたのですが」
モリアはそう言ってジョンを煽てた。
それが為政者の言う台詞かとジョンは思った。
然し国が1つ入手できたのだ。
細かいことは気にしないことにしよう。
「君達は屯田兵にはなりたくないかね?トルハさんも同じことをやっているが僕も真似している。僕の資産はトゥーロに押さえられているから自分で領地を切り開く。君達の住んでいた土地を僕の私領として譲ってはくれんか?毎日の食べ物と水は保障しよう」
たどたどしい口調でジョンが言い切った。
クレスア出身の兵士は不安げにジョンを見る。
クレスア王ラーバンの時代は一日3食が保証されていた。
「本当に?今までのように5日に一度と言うのは嫌だぞ」
ジョンの手下の言ったこの台詞を聞いたモリアは痛烈な後悔にさい悩まされた。
降伏しなければ良かった・・・。
この国には我等を食わすだけの食料が無いのか。
然しもう降伏してしまった以上今更反乱を起こすわけにもいくまい。
そんな不穏な気配を察したジョンがあわてて言った。
「分かった。これからは1日一食を保証する」
かなり不満が(クレスア兵の間に)残ったが取り合えずジョンに従う事にしたらしい。
既に48日分の食料が新鋭ジョン歩兵団の懐に収まっていた。
金貨も6万ディルス蓄えられている。
トゥーロがうっかり管理を怠っていたセタの宿屋からの収入である。
クレスアから詐取した金貨は、食料の確保に使われた。
この時、気紛れを起こしたジョンは何を思ったのか、食糧危機の余波で倒産寸前のミストリアの商社の株を根こそぎ買占め、商社の部下38名を傘下に収めたのだ。
この国の商業形態は株式と個人商社である。
領主もたいがいは、株を買い占めた者がなるのだ。
それはともかく、ジョンは商社を買収すると部下を350人も募集して借財に勤め、4千万ディルスを掻き集めた。
「これだけ借財が出来るのに何故株を手放したんだ?」
ドルクレンはそんな感想を抱いた。
ジョン王とこの商社の社長では、信用が違いすぎるからか?
「この商社の商品は馬車の生産らしい。一台300ディルス位のようだ」
馬は別でこの値段だ。
ペレトンは、意外な商才を発揮して、ミストリアの金持ちに馬車を売りつけ、50万ディルスをジョンの個人資産に積み上げた。
借財は国庫の武器と引き換えに清算した。
どれだけ借りられるか知りたかってだけで、借財に頼る気は最初からない。
しかし大勢の国民を養うためには、金は必要だ。
食料自給率さえ(クレスアを含めて12%になった)好転すれば3食食べられる日がまた来るだろうが今は金に頼るしかない。
蓄えの武器は、王の個人資産なので、ペレトンが無理やりに押えたらしいが、これがジョンの権力増大に大いに貢献した。
この収入で、成り行きに任せて、800トン級帆船50隻を船会社に注文してみた。
取り敢えず、餓死者の出る心配はなさそうだから、軍事力の増大に力を注いでいる。
木造船だが、倒木を中心に造られているらしく、エルフも文句を言わなかった。
食料確保と景気振興策は、同時にやらねば意味がない。
国が民間企業の株や品物を買える機会は利用すべきなのである。
景気がよくなれば、ミレイド以外の他国から勝手に食糧を輸入出来るから国が面倒を見る必要もなくなるし・・・。
このジョンの計略により、食糧危機にもかかわらず、ミストリアの人口は鰻登りに増え続けた。
そしてエルフ達は家族をミストリアに呼び寄せさせ、3千人となったのだ。
ジョンは、このエルフに交代でライトの呪文をかけさせ、シレーリム麦150億本の促成栽培に乗り出したのだ。
光なら太陽光でなくても、光合成は可能らしいし、ちゃんと育つのである。
土は兵士達の出す人糞であった。
最初は気まぐれにやってみただけなのだが、之が以外に旨くいき、一月後には播種量4粒の麦が8192本も出たのだ。
「何でもやってみるものですね・・・」
ペレトンは感嘆の声を上げた。
「見たかね?これが僕の実力だよ」
自慢げにジョンは答えた。
ジョンは之をさらに高名な僧侶に1万ディルスを報酬に、シレーリムを4分割させて32768粒にした後ヒーリングの呪文で修復させた。
之をもう1回繰り返し,131072粒にした後再び地面に播かれた。
ファンタジー世界ならではの食糧倍増作戦である。
ジョンは之をトゥーロに横流ししてたらふく私財を蓄えた。
「王。意外と出来るものなのですな」
ジョン軍歩兵団隊長であり、夜盗出身のローゼイン・アモン・ドム・ローレスダムが感嘆の声を上げた。
意外だと思う向きが多いが、大抵の夜盗は食い詰めた農民である。
それ故にジョンの政策を支持した。
「土さえ良ければもっと収穫はあがるはずだ。取りあえず残りの700億本(播種量3粒)と掛け合わせて様子を伺うんだ。それと頭数がほしい。700億本の方も4分割を2回続けよ」ジョンはローゼインに命令した。
そして1兆粒となった播種量3粒のシレーリムの種子も地面に播かれた。
之もクレスアの魔法使いの地道な努力の賜物である。
この頃になると、クレスアの魔法使いを動員できるようになっていた。
クレスアでは景気が良いせいか、良い人糞も豊富にあったようだ。
「少しでも栄養を与えよ。この一年で1200万人の食料を得なければならんのだ」
ジョンの恫喝の下、兵士達は団結した。
食糧を調達出来ねば餓えるだけだから皆必死だ。
「この播種量4粒が花を咲かしたら近くの農家を全て回って掛合わせろ。良いな?」
ジョンが命じた。
幾ら早熟でも子供のジョンには、代わりに行動する手下が必要だ。
「はい、必ず」
ローゼインはこの時から農家を回って説得を続けた。
トゥーロも荒地と言う荒地を根こそぎ開墾して人糞を注ぎ込み、収穫量のアップを図った。
ジョンの真似をして僧侶にシレーリムの分割再生を繰り返させ、それを根こそぎ播いたのだ。然しジョンの様には旨くいかない。
せいぜい播種量3粒が限界であった。
「あの男は俺が見込んだとおりだ。農業にやたら詳しい」
トゥーロが感嘆の声を上げた。
とても生誕4ヶ月とは思えない。
エルフの成長の速さはだてじゃねえな。
「領地は返すべきか」
トゥーロは管理していたジョンの領地を返還する事にした。
こうなっては領地を管理する意味がないと思ったのだ。
然しはっきりとは言わない。悔しいからだ。
「トゥーロさん。僕の部下は26500人の人間。138名のゴブリン親衛隊、14920名のゴブリンがいる。それにクレスア兵が10万。彼女らを養うためには領地が必要なのだ。領地さえあればシレーリム麦の大規模な生産に取り掛かれる」
トゥーロを憎んでいるジョンは、わざわざ代理人のペレトンに之を言わせた。
トゥーロは、この人の処遇についてグランパスや、マーキュリーと話し合ったが、物別れに終わった。
ドルクレンは完全にペレトンとトルハの犬と化している。
カイン曹長はミストリア軍学校の教師としてクレスア人主体の士官候補生を育成していた。「引渡しを拒めば王命により兵を送る。僕の土地を取り戻すだけだから議会の許可は要らないはずだと王は申していた」
嘘つけとトゥーロは思った。
お前が機転を利かせて言っているのだろうが。
トゥーロは毒づいた。
幾ら成長が早くても生誕4ヶ月の幼児に国を任せる気になれないのは仕方がない。
然し王命は絶対であった。
俺はミラル・カッペンの二の舞にはなりたくない。
「ジョン様。俺はあんたに忠誠を誓いたい。然し領地は返さん。」
トゥーロは領地の引渡しを拒んだ。
しかしそれは無駄な抵抗である。
ジョンの代理人(彼女が国政を取り仕切っていると一般のミストリア人は思っていた)はジョンと同じだ。
というか王よりたちが悪い。
「あんたの言葉を信じてあんたの命令で生産力アップの戦いを始めよう。良いか?春は近い。それまでに食料自給率を25%以上にせねば我々は餓死するか他国へ渡るしかないだろう」
トゥーロは偉そうに宣言した。
ペレトンも偉そうに言葉を返す。
小心者の真骨頂だ。
「エルフを雇ってライトの呪文で促成栽培するしかないだろう?質は落ちるかもしれんが」
ペレトンは一字一句にいたるまでジョンの詔どおりにトゥーロに伝えた。
恐らく奴隷からいきなり国政のトップに躍り出て舞い上がっているのだろう。
トゥーロはそう思った。
ペレトンは補足の言葉を続ける。
「理論上は播種量7粒まではいけるとジョン王は言っていました」
之にトゥーロが噛み付いた。
「7粒だと?2倍か。ジョン王が経済力で我等を凌駕するのは時間の問題のようだな」
トゥーロの手下は食料を探しながらの麦作りである。
重労働にあえぐ国民にこれ以上の負担を押し付けるわけにも行かない。
しかしクレスア経由の、ミレイドとの密貿易によって幾らかはミレイドからの玉蜀黍の輸入が回復していたジョン派は、屯田兵に全兵力を投入出来る。
交易停止は、ミレイドも国内の御用商人が嫌がるので、全面的に禁止できなかった。
ジョン派の粘り勝ちである。
「ジョン王は100万粒のシレーリムの種を所望している。出す気があるかね?」
ペレトンはとっさの機転で大嘘を付いた。
トゥーロの忠誠心を試す作戦である。
「何?」
トゥーロは、一瞬耳を疑った。
100万粒程度のシレーリムを貢がせてジョンとペレトンは何をしたいのだ?
そう思ったトゥーロであったが、それについては言わなかった。
「予備のシレーリム100万粒を差し上げる」
ジョンの集めたジョン歩兵団に謀反人よわばりされて領地を没収されるよりはましだった。
こうして100万粒のシレーリムを召し上げたペレトンはジョンが開墾した新畑にそれを播いた。
成長速度を高めるために篝火を炊いている。
エルフの中に火球の呪文を使えるものが3人と人間に500人、こちらは雷撃の呪文の使い手がいたのだ。クレスア兵は全員火球を使える。
「ふん。以後呪文の出し惜しみはしないように」
ジョンは人間とエルフを叱り付けると、作戦を強行した。
之が後にカルラド山脈の木材の2%を消失させたと言われる事になる篝火作戦だ。
でも然し取り敢えずは森の守護者、エルフの怒りよりも食料の方が大切だ。
「エルフの反乱は気にするな。だが若木は切るなよ。若木を残しておけば10年で森は復活する」
「はい。出来るだけ葉と小枝を採集するように心がけます」
部下達はエルフの植物好きは知っているので素直に命令に従った。
親衛隊は各地に散って龍部隊の編成に取り掛かっている。
作物の促成栽培には炎を吐ける金龍と穴掘り名人の白龍が必要不可欠なのだ。
然し不幸な事に龍は大飯食らいなのである。
牛や馬程度なら、一日で三頭はたいらげる。
当然部下の反応は冷たい・・・。
「この食糧難の時に金龍だと?ジョン王は血迷ったのか?」
そういう事を言う部下も大勢いる。
食糧不足はミレイドの嫌がらせだけが原因ではないらしかった。
然し食べ物に事欠いた龍達が白龍が318頭、金龍が418頭、ジョンの配下になるべく集まって来たのだ。
しかも卵つきで金龍が1055個、白龍が954個である。
「民衆が餓えているときにドラゴンを食わせなければならんのか?」
トゥーロあたりはそう思っていた。
大体ジョンがヒーリングで増やしたシレーリムを吐き出せば食料は確保できるのではないか?「些末な事に拘るな」
ジョンは言った。
「災害の時までとっておく。ヒーリングはやる度に質が落ちてくるのだ。食べてしまったら麦の頭数がそろわないし、これを播いても芽が出るか分からぬぞ。それでも良いのか?」
トゥーロは言う。
「かまわん。俺達は今たらふく食べたいのだ」
その時一人の男が報告にやって来た。
「お望みどうり、小枝と枯れ木を運んできました。」
ドラゴンの長、銀龍のイナクレンがジョンに挨拶した。
手土産代わりなのかその背には大量の枯れ木と枝が、ぎっしりと乗せられている。
「王の名声を聞きつけ参った。俺達の食事を保証してくれるなら配下になっても良い。何ならミレイドとか言う国を攻略してバルランを接収しようか?あの国さえ配下にすればこんな面倒な食糧生産などやらずに済むのではないのか?」
イナクレンがそう忠告するとジョンはそれを遮って言い返した。
「それは違う。自分の国で食料を作れてこそ真の食糧安保が実現できるのだ。食料を自国で作れない為に、僕達はこういう不条理な目にあっているのだぞ」
それはあんたの手下が理不尽な反乱を起こしたせいだろ?
イナクレンはそう思ったが口には出さなかった。
然しジョンは敏感に感じ取ったようだ。
「言いたい事は分かる。だが僕があの人たちの支援を失ったらシャリー伯母様が復権するだろう。それは僕が困る。伯母様が復権したら僕は確実に処刑されるじゃないか?嫌だぞ?可愛い女の子のブルマー姿やスクール水着も拝めずに死んでいくのは」
スクール水着やブルマー云々は勿論冗談で言ったのだがイナクレンは真面目に受け取ったらしかった。
声を荒げて言い返す。
「そんなものは飢饉を片付けた後にでもやってくれ。あんたの為にスクール水着になるような奇特な娘がいたらな」
ジョンはエルフに中でも特に成長が早いらしく、見た目には4歳くらいに見える。
エルフはみなこうだ。
そして最低でも600年は生きる真に羨ましい種族なのだ。
それ故にイナクレンの目には只のエロ子供にしか見えないらしい。
しかもジョンの王宮のメイド頭ペレトンは、之を聞いて心ならず動揺した。
ペレトンは堅物で冗談の通じない人なのである。
(王は私達をそういう目で見ていたんだ)
ミストリアの作法では奴隷しかブルマー姿などにはならない。
スクール水着は海女さんの養成学校で使われているだけだからそれ程酷い迫害はなかった。
海にはシステリアと言う、海底王国が栄えているので、滅多に海女さんの出番はなく、この世界ではスク水はレアアイテムである。
「このエロ子供が。こんな馬鹿王の支配下にあるミストリアの国民が哀れでならんわ」
普通生後6ヶ月の幼児がこんな事を言ったら冗談と受け取ると思うのだが、不幸な事にジョンはエルフなのである。
それでもイナクレンはこの国に留まった。
ジョンのブルマー好きなどドラゴンである俺の知った事じゃねえと思っているのだ。
然しペレトンは同族である上に、ジョンにそういう感情が既に芽生えていると信じ込み、うろたえた。
王命により自分がジョンの欲望の対象にされる可能性があるからだ。
ペレトンは悩んだ末、真坂の時はジョンの欲望を受け入れる決意を固めてしまった。
元々奴隷経験のあるペレトンはご主人様の命でブルマーショーをさせられた経験もあり、そんなにブルマーに対する拒否反応はない。
ちなみにその祝宴でペレトンに一目惚れした、ミストリアの公爵ミラル・カッペンの夜の誘いを冷ややかに拒絶してセタに酷く殴られている。
(あの子の愛妃になれば奴隷出身の私でも公爵様になれるのかな)
ちなみにペレトンは4歳である。
見かけは12歳位なのでこの国の常識では恋愛感情を抱いても不思議ではなかった。
ペレトンはジョンの望み通り、ブルマー姿で誘惑してやろうと心に決めてしまう。
そしてジョンは自分の思いつきを気に入ったらしくジョン王の愛妃を決める養成機関と称して大魔法学院と名付けられた大学を作り、エルフ達に人間の女の子の(4歳〜20歳)教育を任せたのだ。
勿論女の子のブルマー姿やスクール水着を国民なら誰でも鑑賞できるジョンの趣味の間である。
王が女の子を独占していると言う批判をかわすため、公開授業制となった。
(一応スパッツと短パンも用意したが何故か人気がなかった)
エルフは人間の女の子などに興味を持たないから只の建前である。
本心はクレスア流の女子教育制度の採用目的であった。
これは軍師のトルハの策と後の歴史書に伝えられる事になる。
それに体操服や学生服の独占販売による税収アップも期待していた。
ジョンのこの方針を当初男共は反対したが女子徴税制度を(身内の女性から家長が収入の15%を税金として召し上げられる制度)示すと渋渋、(実は喜んで)命令に従った。
之によって税率は農民男子が収入の40%、女子が35%となる。女子は農地の権利を保有できなかったものが多く、農作物と土地の税金を払えないからこの税率となったのだ。
因みに、町人女子の税収は20%、(男子は40%)商人は男女共に40%である。
100%取り立てることに成功すれば、最低レベルでも7千万ディルスは見込める。
「税制改革を先にやればよかった」
王国の財務担当官はそう言って嘆くことしきりであった。
然し今更如何にもならない。
因みにクレスアのブルマーは、一番安いので7ディルスであるから、国営化に成功すれば1千万ディルスは堅いであろう。
スクール水着は20ディルス位が相場だ。
後、2ディルスの水泳帽に、バスタオル。
その他諸々の装備品で一人当たり50ディルス位は経済効果が見込める筈だ。
更にミストリアはファンタジーの王国なのである。
一般的に、この世界では混浴が当たり前である。
それなら何の問題もないではないか・・・。
しかしブルマー云々のジョークを本気にしたものがここにもいた。
トゥーロである。
彼はジョンの正気を疑った。
ジョンにとっては不幸な事に子供らしいジョークを皆本気でとるのでうっかりと発言が出来ない。
「ジョン王は血迷ったのか?この大変な時にブルマーだと?王は今がどれだけ大変な事態になっているか分かっているのか?」
事の真相を知らないトゥーロは居並ぶ重臣の中で怒号した。
いくら春の収穫が大豊作で食料自給率は35%を超えとはいえ、予断を許さない状況なのである。
ブルマー姿の女の子とイチャイチャ楽しむのは出来るなら男としては是非にもやってみたいセクハラ行為だが今じゃなくても良いだろう。
トゥーロはそう思った。
かくなる上は諫言の候補者選びである。
「あの馬鹿王を誰が諌める?ペレトンとトルハは論外だ。女性だからミイラ取りがミイラになる可能性が高い」
あのスケベ王がペレトンとトルハにそれを強要して万が一受諾したら政治的にトゥーロの権力が弱まるだけでなく、奴隷が台頭してしまう。
トゥーロは熱心な奴隷解放論者ではなく、政権をとったら奴隷を低賃金労働者として国家に隷属させ、重い税をとり、借金のかたに再び奴隷に落としてしまう計画を立てていたのだ。
長命なドワーフにとって人間は只の労働力である。
エルフや人間に媚び諂うドルクレンとは違った。
そこだけはドルクレンと意見が合わなかった。
「トゥーロ様。この王の思い付きではブルマーやスクール水着姿の女の子が見放題なのですぞ?このセクハラに厳しいミストリアで、男にとって之ほど都合のいい王の思し召しの何処が不満なのです?私には理解しかねます」
と何故かペレトンがこのセクハラ的思い付きを擁護すると、
「俺達をあんな変態と一緒にするなぁ」
トゥーロは怒って会議室の机を拳で叩き割った。連日の農地開墾と、政務とでノイローゼ気味になっているらしい。
「俺達の担ぎ上げた王がブルマー好きなどと之ほど恥さらしな事があるかぁ。大体之はお前達の立場も悪くするのだぞ。同じ娘としてこんなセクハラな衣装で男供のやらしい視線に晒されて言いというのか?お前がそれを許容する変態娘なのは勝手だが俺は御免こうむる。この思い付きでは俺の娘もブルマー姿にさせられるのだからな」
ついに本心を表したトゥーロは他の重臣に呼びかけた。
「とにかく早急にジョン王の差別的政策を止めさせ、食量増産を続けるべきだ」
然し重臣たちの反応は冷たかった。
後日行った世論調査でも国民の娘の反応は仕方ないかと言う意見が97%である。
「平民や貴族の娘はそうだろうが元奴隷の娘は受け入れるだろうよ。ブルマー姿(奴隷の作業着)になるだけで長年の夢であった教育を受けられるのだぞ?しかも高給取りの(一月2万ディルス)魔法使いになれるのだ。こんなチャンスを逃す奴は少ないと思うがね」
ジョンの家臣となっていたレナが粗暴な言葉で女性に教育権を与えなかったトゥーロに対する嫌味を言った。
レナも教育は受けていない。
この制度が採用されれば学生になるつもりであった。
レナはトゥーロに事の真相を教えてやった。
「王は御自分の愛人を選ぶ名目で女性が従属する家庭から女性を切り離す作戦を立てているのだ。それには全うな理由では駄目だ。もっともらしい理屈で丸め込まれて意見が通らないのが落ちだからな。それゆえブルマー好きの変態王が情婦候補をかき集めていると言う事にしたのだ。その理屈ならあきれ返って誰も何も言い出せないと思ったのだよ。大体常識で考えてみろ。生誕6ヶ月の幼児がやらしい意味があってこんな事を言い出すと思うのか?しかもエルフだぞ」
レナは呆れ返って言った。
トゥーロも流石に黙りこくる。そして代理人が大声で皆に言った。
「その為に食糧増産が遅れてもいいのか?」
トゥーロの部下が吠える。
レナは落ち着いて言った。
「35%なら配給制にすれば持ちこたえられるわ。それに食料などエティルから買えばいいだろう?紅茶が買えて麦は買えんのか?確かエティルは友好国だったはず。ジョン王になってからも紅茶の輸入再開に躍起になっていたな。南方の、傾斜国経由で麦を輸入すれば良いだろう?」
レナは友好国のエティル・ゼフィナ公国を使ってトゥーロを説得しようとしているらしい。
然しレナは情勢が変わったのを知らなかった。
「一ヶ月前まではな」
トゥーロがあざ笑った。
「ルイスがエティルで反乱を起こし、王となって以来ミストリアには麦はこない。エティルは崩壊して幾つかの国に分かれてしまったからな。我々には自給自足の道しかないのだ」
トゥーロはあの狡猾な嘗ての従僕ルイスの以外な軍事的才能に心底悔しがっていた。
ミストリアにいればさぞ出世した事だろう。
「分かったらジョン王の愚かな政策を止めさせろ。今は食料自給率を100%にする事の方が重要だ。それとも魔法使い様は食料を降らせる事ができるのかね?」
レナは黙って呪文を唱え始めた。
すると光のオーラが2つのパンに変わっていく。
「どうだ?神官でもある私はパンを作り出す事ができる。本気でやれば一日300人分ぐらいは作れるぞ。之でも反対かね?」
トゥーロは之お聞くと反論できずに黙ってしまった。
初歩的な手品なのだがトゥーロはすっかり騙されているようだ。
「望みとあらばあと4ヶ月で一万人の神官戦士団を編成しだ見せよう。それには法皇様に収める税金がいるがな。王が十分の一税を払わんと魔法を教えてくれないんだ」
仕方なくトゥーロは言った。
「金なら幾らでも出す。素質のあるものは全て神官にせよ」
ようやく諦めたトゥーロは、神官戦士団の編成にOKを出した。
かくなるうえは、レナとジョンが抗争でも起こして共倒れになる事を期待しよう。
ブルマーネタのスキャンダルでジョンに対する忠誠心が少し鈍ったトゥーロは之以降領地の国民の数を大幅に増強して(月20ディルスで50人雇った)各地のドワーフ達と連合して力を蓄える事にした。
こうしてミストリアは、ジョンの愚かな政策で3つの勢力に分かれてしまった。
シャリー派とトゥーロ派とジョン派である。
ところで春の収穫で9本のみが播種量7粒となり、分割再生作戦により、掛け合わせにより32%が播種量3粒になった。
トゥーロから召し上げた100万粒のシレーリムは、ジョンの絶え間ない努力により、68%が播種量5粒となったのだ。
トゥーロが押さえている農地では播種量4粒が限界であった。
「この位が限界だな。今の農業技術ではこれ以上は播種量は上がらん。
掛け合わせて播種量の多い、この品種を増やす事が当面の課題であろう」
ジョンは取りあえず要らなくなった32%の麦を褒美として部下に分け与えた。
之でも他国では決して手に入らない貴重品である。
一粒金貨50枚にはなるだろう。
ジョンは部下に、食糧難を解決した後、金持ちになれるチャンスを保証したのだ。
「ジョン王万歳」
「ジョン王万歳」
手下たちは之をジョンに因んでショセルとなずけ、家宝にして水田で育てる事にしたらしい。ショセルは水田で力を蓄え、播種量12粒になっていたのだが情報は秘蔵され、かなり後になるまで分からなかった。
そして当面の課題はトゥーロの抑えるジョン派を友好的に政権から引き摺り下ろし、自分の政権を作ることだ。
「まずは議会に諮ってラーゼルンの支配権を取り戻すのだ。トゥーロの指揮下にあるジョン派に対抗してラティール党を立ち上げる。確か王の権限で議会を解散できたよな?」側近、ローゼインに尋ねた。
「ああ。でも本当にやるのか?こちらにはジョン派に勝てる候補者がいないぜ。どうやって戦う心算なんだ?」
之に対してジョンが答える。
「僕がジョンでトゥーロも建前上はジョン派だ。だから僕の政党に対抗することは王家に対する謀反だ。民衆はどちらに付くかね?王家に付くに決まっているだろう?」
ジョンには独自の秘策があるようだ。
「ふふっ。トゥーロ派がどう出るか楽しみじゃないかね?たぶん無条件降伏するしか手はないと思うよ。僕は女性に選挙権を認める心算だしね。トゥーロが反対すればトルハさんがこちらに付くのは間違えない。そうして議会を切り崩し、こちらの勢力を少しずつ拡大するのだ」
この台詞をジョンの配下のトゥーロ派がトゥーロに報告した。
平たく言えばスパイである。
「何だと?ラーゼルンの支配権を得る為に総選挙をやると言うのか?この大事な時に何を考えている?」
トゥーロは困り果ててトルハに言った。
「如何すればいい?トルハは如何思う?」
トルハは秘策をトゥーロに授けた。
「ジョン王のお望みどうりにすれば良いかと。そうすれば選挙で勝てます。それとも反対して惨敗の憂き目を見る方がお望みか?折角議員になって月300ディルスの給料を戴き、騎士の位を金で買ったのに之を失ってたまるものか」
トルハはその他にも私領を沢山所有していた。
トゥーロ派に付いて万が一彼が選挙で負けたら再び領地を失い、傾斜国あたりの奴隷にされてしまうかもしれない。
「トゥーロさん。ジョン様の私領を返したらどうだ?そうすれば総選挙は先送りになるかもしれない」でも結局、総選挙はやるだろうな。
ジョン政権の信任投票になるわけだし・・・。
そうトルハは思っていたが口には出さなかった。
折角農地を2へクタールも入手したのにジョンに取り上げられてたまるか。
どちらについても勝利はおぼつかなく、特にトゥーロはトルハを信用していない。
ちなみに国体は株式会社である。
貴族は全員自分の所有する領地の株を平民に売りつけた以外の51%を保持していた。
ジョンも保持している筈だがトゥーロの管理化におかれている。
之を返せと言うのだ。
「あれを返したら俺の立場はどうなる?王は確実に諸侯の株を無償で取り上げられる権利を持っているのだぞ。株を抑えている限りは議会の解散権と領地の没収(名分があれば)しか王には権限がない。ミストリアの王国株は67%をシャリーが抑えている。あの王は暫定王に過ぎんのだよ。俺の協力なしで何が出来る?」
「領地の没収は議会の承認が必要なのよ。今戦えば議員の大半がラティール党に味方するでしょうね。反対票は如何見ても王への謀反になりますから」
「それではどうしようもないではないか?」
トゥーロは呻いた。
「分かった。総選挙を2年やらないでくれるならミストリア王国株とラーゼルン島株をお返しすると伝えよ」
ついに観念したトゥーロはどうせ守られないと思いながらも一縷の望みをかけてその日の内にジョンの領地を返還した。
案の定領地が返還されるとジョンはすかさず解散総選挙に打って出た。
シャリーを倒したトゥーロ政権に対する国民の審判と銘打って100人の候補者を送り込んだのだ。
之に対してトゥーロは630人の候補者を送り込み、(中選挙区制であるから)ラティール派への票の分散を狙ったらしい。
然し之は愚策であった。
トルハはどうもこのトゥーロを見限っているらしい。
出なければもう少しましな策をこうずるであろうから。
「トルハ。本当に勝てるのか?お前は前にも失敗している。二度目はないぞ」
トゥーロが痛烈な嫌味を言った。
「奴隷に学問を教える奇特な教師が貴方の臣下にいればもう少しましな計略を思いつけたでしょうにね」
すかさずトルハも言い返す。
「ジョン王に付きたいのかね?奴隷から開放してやった俺を差し置いて」流石にこの露骨な嫌味は石頭のドワーフにも通じたようだ。
「私は最初からジョン王の配下ですよ。トゥーロさんは何か勘違いをなさっている。お前はもう宰相ではない。国の政策を決めるのは、宰相がミレイドに篭っている今、王とされるのだ。お前に発言権はないのだよ」
トルハは高圧的な態度でトゥーロに己の立場を分からせた。
一瞬トゥーロは、トルハの発言の意味が分からなかった。
然しすぐさまトルハの意図を読み取ると顔を青くする。
「ミレイレアを宰相として呼び戻す心算か?」
「宰相は最初からミレイレアさんですよ。トゥーロさんがそう決めたのでしたよね?」
トゥーロは毒づく。
「裏切りの口実に過ぎんな。俺の手には負えんよ。ジョンはお前らのブルマー姿を見たいがために教育を餌にしているのだろう?お前はそれでも良いのかね?」
トゥーロがそう尋ねた。
「教育さえ受けられれば魔法は誰にでも使える筈です。それにスパッツや短パンでも良いとの事。
普段から生足を人前にさらすくらいこの世界では誰でもやっている事です」
トルハは怒りで喚き散らすトゥーロを残してジョンの下へ去り、2度と戻らなかった。