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侵略者

(2)「この馬鹿者が・・・。貴様は3階級降格でエティル方面隊長とする」

ジョンは大敗して戻ってきたミシェリアを怒鳴りつけるとそのままエティル方面に追放した。

温厚で(ブルマーネタ以外は)部下の責任を責める事は滅多にしないジョンにとっては、久しぶりの逆鱗である。

王宮御用達の商人ガンガルジャンから貴重な水を3杯も買わねばならぬほど喉が枯れ、3日も公務を控えたくらいだ。

然しジョンの怒りは何故かペレトンに向かった。

部下の密告があって以来、特別な感情を抱くことになった様だが、その分泣き言の聞き役にもなっている。

小心者のペレトンにはきついところだ。

それでもペレトンは色仕掛けの効果がでてきたと思い、満足している。

「月の食料はどうなっている?」

八つ当たり的にジョンが尋ねた。

ジョンの唐突な命令にはペレトンも既に慣れている。

一応温厚を保っているが下手をすると逆鱗に触れるかもしれない。

慌てた家臣団はジョンに大金を献上してご機嫌を伺った。

こういう態度は、権力者の怒りに火を注ぐだけだ。

案の定ジョンは機嫌を悪くした。

「月の食料はどうなっているのかと聞いているのだがね?聞こえなかったか?」

不機嫌そうにジョンが言った。

部下達は、ジョンの真意を測りかねて、黙り込む。

ジョンにとっては、経済方面の話と金儲けが重要だ。

戦争はその為の手段に過ぎない。

「僕は機嫌が悪い。質問に答えろ」

之を聞いた部下達は慌てて答えた。

「300億人が2年暮らせる位は多分あるでしょう」

「ほう?」

意外に月の開発は進んでいるのか・・・。

ジョンは機嫌を直して再び尋ねる。

「鉱物はどうだ?月にダイヤモンド鉱山が眠っていると言う俗説は正しかったのか?」

ジョンは家臣のイーボルトに尋ねた。

何故か返事を渋るイーボルトにジョンは怒った。

短剣を取り出すと冷静に尋ねる。

「さっさと答えろ」

ジョンは護身用の短剣をチラつかせながら聞いてみた。

ジョンは戦況より、経済方面の話しか興味がない。

経済さえ良好なら、戦争には勝てると信じている。

イーボルトは、別に怖くはないようだが、ジョンの手前怯えた様子を見せた。

ジョンはその業とらしい仕草に怒ったが、穏やかにイーボルトに聞く。

「如何した?何か不味い事でもあるのか?」

普段からイエスマンの部下に囲まれているジョンはこういう部下は苦手だ。

「あることはあるがね」

イーボルトがやっと答えた。

「戦況より経世済民の方が確かに重要である」

イーボルトは嘆息した。

「宝石や金がほしければそういう魔法装置を造れば良いだけだ。お前にはそれが出来る権力がある。だが当面は月の麦の収入を背景に民衆の慰撫に務め、反乱を封じ込めるべきだ。月を手に入れた今、モルゲインなどはたいした領地でもない。ルミナスで第3惑星サラーシアを落とし、コロニーを建設する。パタレーン1、7665億人。ミレイド3、7252億。ミストリア3、1081億人のミストリア王国なら一億位ゴブリンを移民させれば直に100億、200億になりますぞ。お望みなら直にでも国中のゴブリンを集め、月に送りましょう」

ジョンはこの時点で3億のゴブリンと160万のコボルトを従えていた。

月には、ケンタウロスの月防衛軍、ヒドラ隊もいる。

ゴブリンの繁殖力は物凄く、月で繁殖計画を行えば、直に増える筈だ。

まずは月やサラーシア。

そして頃合を見て銀河の物流の拠点トレビゾンを攻略する。

イーボルトはその為の兵と軍事力を部下に命じて編成させていた。

時が来ればジョンはこの星系を抑えられる力を身につける筈だ。

「確かに。然し僕はダイヤモンド鉱山があるのかと聞いているのだが?」

不機嫌そうにジョンが補足した。

余計な事を言うんじゃない。

部下はは国王の命令に黙って従っていれば良いのだ。

ジョンは、取り合えず敵のいない宇宙方面の開発に目を向けていた。

敵のいる所では、弱いジョンの私兵では勝ち目がない。

国防軍は基本的に自国を守る兵だからだ。

ジョンの兵ではせいぜい一人当たり、ゴブリン兵20名に匹敵する程度だろう。

この弱い兵を引き連れて、近隣の荒地を開墾するジョンにとっては、資金源こそ重要だ。

「月にはダイヤモンド鉱山はない。ルテリア鉱石なる鉄の200倍の重さで、鉄の4分の1の硬さの金属があったが使えないだろう?」

イーボルトはそんな金属発掘に大切な国費を浪費した責任を家臣の誰かが取らされるかもしれない事を恐れている。

戦いなら、エレナだろうがミューファの手下の豪傑のギラルとクルザームにも匹敵する名将だが、ジョンは政治家の才能にしか興味ないらしい。

宮廷儀礼にも通じていて、非常に貴重な男なのだが・・・。

「俺は戦場で戦いたい・・・」

イーボルトは常にそう思っていたが、ジョンの下では無理そうだ。

どの道イーボルトもペレトンも金属には詳しくない。

使えない金属だとイーボルトは決め付けたがジョンは違ったようだ。

商売の基本は、どんな品でも高く売りつける根性である。

そして経世済民の志を実行にうつすのだ。

「ふん。使えないかどうかは商人が判断する。取り合えずお前が鉱山を開発して、高値で売り飛ばせ」

「・・・」

イーボルトは黙りこくった。

如何考えても使えないと思うがな?

俺も商人なのだぞ・・・。

ルテリア鉱石。

商会で試しに使ってみるか?

あの拝金主義者のジョンが命令するんだから何か使い道があるんだろう。

イーボルトは淡々と言葉を続けた。

「ですからサクリアの使用許可を・・・。鉄の200倍の重さが人の手で持ち運べるとお思いか?貴方もそれ程幼くはない筈だ」

イーボルトはどうもレナに言い含められているらしい。

国の開発したゴーレム、サクリアの使用許可を求めてきた。

一応国家機密である。

命の次に大切な、国費を注ぎ込んでいる以上、敵に鹵獲させる訳にはいかない。

「敵の手に墜ちたら、追放ぐらいではすまぬぞ」

ジョンは本気だ。

「好きにしろ。納税は正確にな」

ジョンは論争を打ち切った。

イーボルトを去らせると、近頃よく徴収している臨時税5億ディルスを元手にお救い小屋を立てることにした。

どんな世界にも低所得者はいる。

下手に扱って反乱を起こされるより、食料を与えて黙らせるか再就職を斡旋する方が遥かにマシだ。

お救い小屋は高評だったらしい。

しかし、高所得者の多いミストリアではお救い小屋に来るものも少ない。

ゴブリンですら寄り付かなかった。

それでもこういう行為は人気取りには最適だ。

施しをうけて文句を言うのは、テラの某国位な物であろう。

「イーボルトさん。今のミストリアの税収はいくらだね?」

数日後の政務で、ジョンが質問した。

ここで言う税収は基本税である。

「1億位だ。商業税が400億。麦が120億。革命祭りの収益が63億。月と木星からの収益は120億と1400億だ。支出が兵の給金1人500ディルスで2500万の、ざっと3億と諸経費600億で、1月の純益1500億だ」

ジョンはこの金で、軍備を調え、オーディーンとルミナスとサクリアの大量生産にはいった。属州からの安い麦の流入に備えて、最低価格を一週間分の保存食で金貨15枚に定めた穀物法を議会に通過させる事も忘れない。

お陰で農業は儲かると言う事になって農地の相続争いが激化した位だ。

加えてミストリアの全ての男子には徴兵制を採用。(女子は如何考えても軍人には向かないとジョンは思ったから志願兵のみとなっている)

年500ディルスの給金も出たので一応喜んで兵役に付いた。

之を女性差別だという者が幾人か出たので、一応来る者は拒まずになっている。

「イーボルトさん。国名を変えようと思うのだが」

定例の会議で唐突にジョンが言い出した。

「やはりミストリア王国では僕の反逆者のイメージが拭えないと思うんだよな」

ジョンは従兄妹のミューファから政権を奪った事を気に病んでいるらしい。

ミューファは気にしていないが、ジョンは如何考えても反逆者だ。

然しそんな事唐突に言われてもなぁ・・・。

こいつ何を考えている?

流石のイーボルトも、この気紛れな王の心中を計りかねた。

「ラティール帝国と言うのはどうだ?僕が初代皇帝というわけだがね」

ジョンのこの言葉に、ドルクレンの顔が凍りつく。

ペレトンは平然として、他人事を決め込んでいた。

この王の気紛れに付き合っていては、身が持たない。

それに我々が反逆者なのは事実であろう。

ミューファに同情的な廷臣は、困惑と憎悪の視線をジョンに向けた。

やはりあんたは帝位が欲しいのか。

彼らはそう思う。

最初からミストリアの王だろう?てめえは・・・。

粗暴な言葉が家臣や部下の間によぎったが、取り合えずペレトンが宥める。

「ジョン様のお望みが、国名の変更なら、家臣に拒否権はない。議会の採決を待つべきである」

ペレトンは、巫女服姿で廷臣を説得にかかった。

部下は黙り込む。

いつものブルマー姿であったら、説得は失敗して反乱が起こったかもしれない。

トゥーロとトルハとミューファは、何故か会議に欠席していた。

一応熱病と言う事になっているが、誰も信じない。

ミューファは辺境で、兵の訓練を行っていた。

「良いのではないか?いかにも強そうな名前だ。だがな・・・、皇帝はミューファ様の方が良いぞ。お前は皇帝補佐官として実権を握るのだ」

ミストリアの文官が好意的な意見を述べるが、ジョンにとっては癇に障ったらしい。

「だまっとれ・・・」

ジョンはこの五月蝿い家臣を黙らせると帝政への移行をその日の内に議会に通告した。

「何?帝政だと?」

トゥーロとトルハは驚いた。

ジョンは金にしか興味のない守銭奴だと思っていたが・・・。

「あの男にも野心があったのだな・・・」

トルハは何故かその時軍隊の訓練を行っていた。

訓練に金はたいしてかからない。

それにしてもトルハは軍師。

トゥーロは農水大臣である。

何故熱病だと言っているのに、会議を延期しないのだろうか?

仮病がばれている?

それにしたって、この2人ほどの重要人物を抜きにして国名を変更するか?

「ジョン王の考えることは良く分からないな?気紛れ過ぎる」

トルハは嘆息した。

「あの王は何を考えているんだろうな?国名変更のセレモニーで、軍資金を献納させる気なのか?」

それはありそうな話であった。

ジョンは金儲けの為には何でもやる私利私欲の権化である。

特に光合成で食事を取るエルフ族には珍しく、食料にやたら五月蝿かった。

所詮旧態依然の、農民とゴマの油は絞れば絞るほどよく取れるものなり的発想しか持たないトゥーロにも、ジョンの考えが分からない。

「まあ良いがな。普通にあの凄まじい勢いで増え続ける国民達を養うには、食料がいるだけの話だろう?」

いつの間にか、補給大臣のドルクレンは話に割って入った。

「熱病だと聞いてジョン様が見舞いに俺をよこした。因みに仮病はばれているから」

そう言うと袋から3千万ディルスはするであろうダイヤの首飾りを取り出し、トルハの首にかけた。

「理由は知らんが機嫌を直して王宮に出向いてくれとジョン様は言っている」

ドルクレンは金貨の入った袋をトルハに渡した。

「見舞金だそうだ。薬代の7ディルスと、解熱剤が入っている」

仮病がばれているなら何故見舞いに大臣をよこすのか?まあ突っ込まないでおこうとトルハは思った。

「ファシスさん。ジョン王が国名を変更したと言うのは本当なの?」

ドルクレンは答える。

「今更反対しても手遅れですよ?」

ドルクレンが恋人に丁寧に告げた。

文句があるなら会議に出席して言えとは、トゥーロには言わない。

「別に私は構わぬがな。どうせ私達の造った簒奪王朝だからな。ジョン王はそれを気にしているんだろうよ」

トルハは呟く。

しかし何故今なのだ?

この前の敗戦が原因なのだろうか?

皇帝就任のセレモニーで、国民の引き締めを図ろうと?

「どうせならもっと早くに決断して欲しかった」

正直そう思ったが、それを言うと気紛れなジョン王に処刑されかねない。

金と食料にしか興味のない変態王だが、給料は滞ったことがないので、部下の信頼は厚いのだ。

それにブルマとスクール水着の販売収入が給料の源になっているので、ジョンに文句も言えない。

因みに鎧の摩擦防止用の水着は給料から天引きである。

鎧や制服自体は国からの支給品だ。

古くなった鎧は(一年買い替え)売り飛ばしても良いと言う、破格の条件である。

それ故に、帝国兵になればひと財産築けると言うので、入隊志願者が後をたたないのだ。

ドルクレンは、トゥーロの分も薬を渡すとその場を立ち去った。

因みにトルハ用の薬の中にはラブレターが入っていたが秒殺で細切れにされたらしい。

ショックをうけたドルクレンが仮病で出仕を拒み、事が露見して1万ディルスの罰金を支払わされたそうだ。

「気紛れなジョン様の逆鱗に触れて追放された時に備えて、財産は分散しておいた方が良いだろう」

トゥーロは、帝国では財産にもなっている女子用スクール水着を災難に備えて荷造りさせておいた。

この国では決して、変態行為ではない事は付け加えておく。

それに最近のテラでは、メンズ用のスク水もあるようだし。

「当然だね。私はペレトン姉様の妹だから、追放はされないがそなたは危ない。逃亡の準備はしておいた方が良い。利権を笠にきて、あれだけ蓄えた財宝を没収されたくないだろう?」

トルハは言った。

「ドワーフは頭が悪い等とは言われぬ様に私が知恵を授けているのだ。礼金は後で私の居住区に運んでおくように」

そして何時かはジョンに余計な事を吹き込む家臣が現れると思っていた農水大臣トゥーロはトルハと相談してラーゼルン島に屋敷を立てることにした。

どうもトゥーロはこの気まぐれな王についていけないらしい。

農業を推進して国庫に60兆ディルスの金と2千億の宝石と(10億人分の)150年分の麦を蓄えていたトゥーロも、ジョンの気まぐれには勝てなかった。

ジョンの命令があれば、トゥーロは確実に処刑される。

「俺は所詮裏切り者だからな」

この負い目が常にトゥーロに付きまとう。

今は大目に見られているようだが、何時の日にか蒸し返されて処刑される日が来るかもしれない。

こんな愚痴をトルハにするとトルハは笑いとばすが・・・。

不安は抱えていてもジョンは追放などしないと信じたいのだろう。

トルハは今度は真面目な顔で答えた。

「スクール水着好きの変態だってジョン王の配下にいるというのに。心配のしすぎは禿げるぞ。禿のドワーフなんて聞いた事がない」

トルハはエルフなのにドワーフの彼氏持ちだけあって、考え方が豪胆だ。

「私の方が立場は複雑だよ。何時ブルマー姿を披露してのセクハラ行為を強要されるか分からないもん。大臣殿は殺されるだけですむから気楽に行こうよ」

トルハはトゥーロを慰めた。

「ジョン様は今の所は権力にしか興味のないお方だよ。然し裏切り者は何れ処刑されるのが世のしきたりだ」

トルハは追放の不安と楽天主義が交錯する心中を打ち明けた。

「そうだな」

トゥーロも頷いた。

心配したって今更如何にもならん。

トゥーロは、こんな悩みはさておいて部下に命じた。

補給大臣のドルクレンを炊きつけて魔力を帯びたスーツアーマーに身を包んだ鋼鉄騎馬兵団を編成したのだ。

ジョンの主力部隊で総数250万人である。

志願兵のみで構成された。

金にすると5兆ディルス位。

鍛冶職人はこの法外な安値に、憤慨したが、一応注文どおりに、最高品質のスーツアーマーを作った様だ。

因みに女性用は皮鎧である。

指揮官を識別しやすくする効果と、体力的問題と美的効果を考慮に入れた結果だ。

この功績で、ドルクレンはラティール帝国初の男爵に任命され、褒美に金貨で100億ディルス分の名剣を賜った。

このあたり、ジョンはセコクない。

「トゥーロ。君には名馬を与える。ミューファさんがテラから貰ってきた馬らしい。見世物にでもすれば、1億は儲けられる筈だ」

トゥーロは恩賞に不満だった。

如何してドルクレンが名剣で俺は馬なのか?やはりジョンは俺を嫌っているのか?

「そんな事ないって」

トルハが慰めた。

「ジョン様は貴方に期待しているの。貴方以外で馬を育てられる人はいないわ。旨く馬を増やしてモース馬より頑強な鉄馬兵団の編成に成功すれば軍功第一よ。やりたくないならペレトン姉様に変わってもらって褒美をたんまり頂くけどそれでも良い?」

ここでトゥーロは考えた。

確かにそのとうりだ。

「皇帝陛下。一体何頭位頂けるので?」

即座にジョンが答える。

「600万頭位なら何時でも。テラ方面では、木星基地への移民を募集しているらしい。君も言ってみるかね?あの星には僕達の想像を超える兵器と麦がある。閃光で街1つ消滅させる核ミサイルとか、播種量800粒の麦だ。放射能汚染が酷い核ミサイルはともかく、麦のほうは使える」

ジョンは補足命令で、麦を譲ってもらう事にした。

帝国特産のミスリル銀での、バーター取引である。

「はっ。有難く頂く。税収に期待して頂こう」

そう言うとトゥーロは下がった。

そしてトゥーロは、褒美として与えられた馬を元手に、仕方なく商売を始める事にした。

まずは土地の選択である。

月に土地を買い、馬牧場を造る事にしたのだ。

既にテラ方面には、進出している。

別の銀河でもゲートを開ければ簡単に交易できる時代だ。

それ故に、何故月開発が、ここまで遅れているのか、よく分からない。

「月は放射能汚染が酷いんだ。どっかの馬鹿が大陸消滅兵器を月に打ち込んだらしい」

事情通のイーボルトはそう説明しておいた。

多分前の文明が戦争かなんかで使ったに決まっている。

「帝国で開発した宇宙戦用空母ルミナスを月に送るのだ」

ジョンはそう命じる。

大量生産したルミナスを月へ送り、月基地を建設しようと言う計画である。

資金は無尽蔵と言えるほどにあるので、千基でも二千基でも造るだけなら可能だ。

ブルマとスクール水着の収入では流石に資金が足らずに、国庫の金も総動員していた。

「お前は一体何がやりたいのだ?」

あからさまにエスカレートし続けるジョンの野望を見かねたトゥーロを含む同志がジョンに進言した事もあった。

「之だけ予算をつぎ込み続ければ、財政破綻は免れませぬぞ」

部下達は財政破綻で、自分達の首と給料の減額か訪れるかもと、不安に思っているらしい。

然しジョンは意にも返さなかった。

「ミストリア領の生産力で、増え続ける我が民を養えるのか?アホな事を言っとらんで仕事に就け」

ジョンは珍しく部下を詰った。

この台詞で何故かトゥーロはやる気を出したようだ。

彼は渋々とジョンの命令に従った。

ジョンはこの論争を打ち切ると、新たな命令を下した。

「セタの行方が知れたら捕縛しろ。生きて裁きにかけるのだ」

ジョンは領地の兵を全て集めるとセタを倒すべくモルゲインに出陣した。

たとえ神が許したとしても、婦女暴行魔を世間に住まわせておく訳には行かない。

犯罪者に相応しいのは、刑務所だけだ。

それにジョンにとっては皇帝としての初陣である。

経済が崩壊する前に、セタを捉えないと、また停戦せざるおえない。

「今度こそあの女性の敵を捕らえて裁きにかけてください」

セタを憎む、ミストリアの女性は、献金3兆ディルスを国家に献納した。

「有難く頂こう。今度こそセタを捕縛してみせるぞ」

ジョンは留守を守る皇帝補佐官には何故か無名のシラクス将軍が任命した。

「では留守を任せたぞ。失敗は許さん」

シラクス答える。

「心配めされるな。俺は臨時雇いのバイトだが、50万ディルスの給料分は働いてやる」

之を聞いたジョンは、安心して命令を下した。

「セタ軍を1人残らず捕らえよ。どんな悪党にも裁判を受ける権利はある」

ジョンは部下を招集するとそう宣言した。

部下達もその心算だ。

生きて捕らえれば1人120ディルスを貰える協定を密かにシラクスと結んでいた。

それに加えて捕虜は奴隷として売りさばいても良い旧ミストリアの法律が残っている。

大抵はジョンが買い取るので余り酷い問題にならないうちに、いつの間にか帝国臣民に溶け込んでいた。

そんな献上奴隷の1人にフォートレス・ファミリアと名乗る少女がいた。

エティルの内戦の時に孤児になり、帝国に売られてきたらしい。

最初は部下を2人つけて、苦情処理をやらせていたらしいが、ミューファの目に留まり、彼女の推挙により、本営付きの副官に任命された。

ジョンは何故か彼女を気に入り、即座に養女にして帝国の皇位継承順位2位を与えてしまう。

1位はミューファであった。

フォートレスには、占領した惑星サラーシアの陸地の95%を与えられ、大公の位まで頂く事になる。

この贔屓に国民と家臣団は怒り狂ったが、フォートレス本人には言わなかった。

自分の財産を如何しようとジョンの勝手である。

然し将兵の士気の低下は避けられなかった。

「陛下。あの娘のどこが気に入ったのです?そこらへんをはっきりさせないと部下も国民も怒りますぞ」

セタ追討によるモルゲイン解放に動き出したジョンは部下のペレトンに窘められた。

ジョンのお気に入りの彼専用のグラビアアイドルのペレトンですら毎月150ディルスの年金と献策による褒美に月の土地700エーカーを貰っただけだ。

(念の為付け加えておくが、ペレトンは断じて巨乳ではない)

領地に興味はないが、褒美の金が忠誠心の証とされるラティール帝国では、重要な問題である。

「陛下の側に侍る女性はは取り合えず私だけにしていただくと有難いのですが」

ペレトンは珍しく反抗的に嫌味を言った。

「・・・」

ジョンはあからさまな、ペレトンの嫌味に少し不機嫌になった。

俺の資産である、月やサラーシアを如何しようと勝手ではないか?

「フォートレスの才能は君の10倍はあるよ。いずれは、帝国宇宙艦隊を任せるからその心算でいろ」ジョンはペレトンにそう言うと急いでモルゲインに出陣してセタの軍を打ち破り、北傾斜国を併呑した。

セタは、南傾斜国へ敗走。蜂起した地方軍に補足され、ルミの手により救出される。

その後セタは姿をくらましたようだ。

本国に逃げ戻ったに違いないが、追撃するだけの予算はやはり足らない。

「如何しましょう?」

部下がジョンに質問する。

ジョンはあきれ果てて答えた。

「逃げ足は速いな。地方蜂起軍には1億ディルス与えて、ねぎらっておけ」

ジョンは政治的効果を狙ってこう言った。

味方に冷たくすると敵が増えるだけだ。

「ジョン様。セタを追撃して本国を奇襲いたしましょう。私に兵5千と船20隻を頂ければ必ずセタを捕らえて見せます」

何故かジョンの陣営に居るエレナがそう進言した。

お互い戦っても利益は出ないと分かっているから奇妙な同盟関係が維持されているらしい。

だがジョンは冷たく言い放った。

「セタは国内問題では暴君だが対外関係では覇権を争うライバルだ。今セタを捕らえて世が平和になれば、国民は僕の方に目を向け、非難を始める。それにセタには名軍師ルミが居る。流石の僕もルミには勝てんよ」

エレナはこれを聞くと内心呆れた。

「セタを逃せば禍根を遺しますぞ」

それ以前にセタ討伐の名目を全否定する発言だ。

この経済利益しか頭にない、暴君ジョンを国民が見捨てるかもしれない。

大体総兵力2753人、人口600万(奴隷は除く)のビヤッカ帝国にどうやったら負けると言うのか。

「ジョン様。この機を逃せばセタ軍は体勢を立て直し、モルゲインを奪回しますぞ。そうなれば国内で謀反がおき、帝国は瓦解するかもしれないですぞ」

エレナは追撃を進言したが早い話、ジョンは自分を裏切ってエティルにて自立したエレナを信用していなかった。

そしてジョンは何故かセタを恐れ、この時も追撃の機会を逃した。

「掻き集めた軍資金は利子つけて返してやれ」

流石のジョンもあれだけ大見得切った手前、民衆の反発が怖かったらしい。

然し、経済が崩壊すれば、多くの人が食えなくなるのだ。

「セタと講和をする。地方蜂起軍には占領地の4割を与える条件で和平を提案しろ。僕はちょっと買い物に町まで出るからトルハさんに後を任せる」

ジョンは無責任にも和平交渉を(かってセタの奴隷であった)トルハに任せるとどこぞヘ遁走した。

この筋金入りの気紛れに、部下は唖然とする。

「陛下は何を考えているのだ?」

エレナと皇帝の家臣団は愛妃ペレトンに詰め寄った。

一応この時の彼女の立場は王立最高顧問である。ブルマーネタのグラビアアイドルでありながら、その文官としての才能が評価されてこの地位に上り詰め、皇家の文官の元締めを兼任していた。

何分にも地味な職務であるので、余り評価はされないが、ジョンだけは彼女を大事に思い、常に側に侍らしている。

「ペレトン様」

部下が進言した。

「今セタを追撃すれば世界は我が手に落ちるのですぞ。和平など論外です。ジョン様を説得して追撃命令を出させて貰えませんか?」

部下の1人が気の小さいペレトンを恫喝した。

ペレトンは少し脅えたが、毅然として答える。

「皇帝陛下のご命令に背かれるのですか?ジョン様は和平を望んでおられるのです。それは貴方方がジョン様に信用されてないだけの話ではありませんか?ジョン様は、セタを追撃すればラティール帝国軍が内部分裂すると不安に思っているらしいのですから」

ペレトンは日頃からジョンに批判的な将軍達に嫌味を言った。

血の気の多い将軍達が色めき立つ。

「ペレトン殿」

部下がやや反抗的になってきた。

「文官が偉そうな事を言うではないか?」

シビリアンコントロールに対する反乱的発言である。

ペレトンは皇帝の最高顧問であり、彼女の発言によっては、この将軍の未来はない。

然し、ブルマーネタのグラビアアイドルを軽視する将軍はペレトンを軽く見ているらしかった。

「そもそも貴様が何故ジョン様の側に侍っているのか?そのロリコンじみた美貌でジョン様を篭絡しているからだろうが」

この将軍はもはや気がふれているのだろうか?皇帝の愛妃にこんな事を言ったら告げ口されるのが普通である。

この男の出世は間違えなく無くなるではないか。

「どうか追撃命令を・・・」

重ねて頼むがペレトンには軍を指揮する権限がない。

文句をつける相手を間違えている。

「皇帝を誹謗するものは不敬罪で追放されますよ?それでも良いのですか?」

ペレトンが出来るだけ穏やかに通告した。

偉そうに聞こえないように、努力はしているが、高圧的にみえるようだ。

「ジョン様の姦婦が俺を脅すのか?やれるものならやってみろ。俺の軍はセタを奇襲する。邪魔をするなら貴様をたたっきるぞ」

将軍はそう言い放つと自腹で雇った兵900名でセタの本陣を奇襲して散々に打ち破った。

セタは身1つでモルゲインを脱出して本国へ逃げ帰る。

潮流をよく知らないラティール帝国軍では、逃げるセタを追えなかった。

それに帝国の主力兵器、オーディ-ンもルミナスもビヤッカ本国の砂嵐には勝てない。

「何だこりゃあ?初めてみるだよ」

ビヤッカ本国の島の1つで偶然砂嵐にあった将軍はあまりの暴風に進撃を諦めた。

その足でのこのことラティール帝国本国に戻ってくる。

「愚か者め。お前は追放だ。ジョン様がセタを逃がさぬようにわざとモルゲインをセタに任せたのが分

からぬのか」

ジョンの心中を誤解したジョンの家臣団は、この将軍に怒りを向けた。

そしてペレトンから話を聞いたミレイレアが独断で密書を送り、この将軍を追放した。

将軍は、ビヤッカに逃げ込み、セタに斬られたらしいが、幾ら人殺しをしない戦争を主義とする(敵兵は基本的に生け捕りである)ジョンでもそこまで責任は取れない。

そのうちに、ペレトンに授ける土産物をしこたま買い占めたジョンが兵の駐屯地に戻ってきた。

「陛下。命令違反をいたした者が居たので追放いたしました。セタに斬られたようです」

ミレイレアは最近帝国の魔法使いが開発した、情報の聖石(電話のような物)にて、ジョンに通告した。

こんな話になるとジョンは烈火のごとく怒り狂う。

「ミレイレア叔母様。追放した将軍の家族に慰謝料を支払うように」

ジョンは何故か冷淡に通告した。

「お前などに帝国を任せた僕が馬鹿だあったようだ。叔母様。貴方を宰相から解任して、財務大臣に降格する。新宰相はイーボルトさんだ」

ミレイレアは、勿論反論した。

そもそも陛下が職務放棄して土産物を買うのが悪い。

然しそれを言ったらジョンは怒るだろう。

「陛下の居に背いた者を処罰していけないのですか?」

之に対してジョンは言う。

「追放されればセタに頼るしかないのは分かっていた筈だ。それをむざむざとセタの手に掛けたのはお前の失態ではないのか?僕はちゃんとペレトンさんに説明させた筈だ。セタと和平するのは、内部分裂を恐れての事だと。何故塔にでも軟禁してから僕の支持を仰がなかったのだ」

ミレイレアはようやくジョンの怒りの凄さに気付いたらしい。

慌てて反論する。

「陛下がいきなり逐電してショッピングなどをされていたのがそもそもの原因ではないのですか?」

こういう言い方をされては例えそのとうりでも天邪鬼な態度に出たくなるのが人情である。

「ミレイレアさん。僕のいないときはお前が帝国の主なのだ。部下が斬られれば、理由の如何によらず処罰される。お前は僕の叔母様だから降格程度で許されるのだよ。僕を恨むのは筋違いだ」「・・・」ミレイレアは考え込んだ。

確かにそのとうりだ。

「陛下。それでは私はイーボルトに引継ぎをいたします。確かにあの男の才能は私の20倍はあるでしょう」

この時ミレイレアはジョンについた事を猛烈に後悔したが後の祭りである。

ジョンはその日の内に、イーボルトに宰相職に任命して、ミレイレアを解任して財務大臣に降格した。

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