パタレーン会戦
(4)サラディスの残骸を背景にセタと配下6万人が飢えに苦しみ、各地の食料貯蔵庫を襲撃しながらハルラーンをめざしていた。
ミストリア軍がパタレーンに配備した7つの食料庫は、セタの意外な名称ぶりに怯えたミストリア軍の焦土作戦(食料焼失の罪で3階級降格された)によって全て陥落して炎上した。
セタ軍に食料を渡したら、悪名高いスクール水着美少女陵辱事件で混乱するミストリア軍では勝ち目はない。
軍の勝利は食料と金と指揮と戦術戦略で決まるのだ。
誰がブルマー好きの変態王になど本気で仕えるか?
ジョンに反抗する勢力の代名詞でもある。
ジョンのブルマー好きと、スクール水着美少女凌辱事件でジョンと国家に幻滅したパタレーンの2将は、セタに寝返り、イーボルトはたったの6千の兵で6万人のセタ軍を撃滅せねばならなくなった。
残った兵も、イーボルトの為に命をかける気はない。
イーボルトはスクール水着美少女陵辱事件の影響で兵の信頼を失っていた。
「やばいな・・・。本気で勝ち目ない」
イーボルトは、コレクションのUバック型水抜き付き旧スクの5千着を梱包して船に積み込む命令をだした。
全て税金の代りに業者から物納させた品である。
徴税官としての功績を認められて下げ渡された。
ミストリアの宝物庫には、スクール水着とブルマーが富士山位の量、積み上げられているらしい。
「スクール水着は産業と軍の要だ。スク水なくしてミストリアに未来はない」
イーボルトは、セタの持ち込んだブルマーとスクール水着の製法も抑えていた。
之がある限りミストリアは何度でも再建できるとイーボルトは信じている。
「イーボルト様。セタは来ますかね?」
部下の1人、A大佐(部下千人)グラン・エットフォードがイーボルトに聞いた。
「さあ?こない方が良いに決まっているが、来るんじゃないか?」
イーボルトは、本国に援兵を要求すると共に、川を堰き止めて、セタ軍の進軍を阻止しようとした。
まともな軍隊なら、水攻めを恐れてよってこない筈だ。
「ブルマーとスクール水着だけは敵に渡すな。之を敵に奪われたら俺達の給料は出ないぞ」
最近獲得したエティルの市場にビヤッカが介入したらミストリアは終わりだ。
セタの経済圏を奪って、ブルマーとスクール水着をモルゲイン(傾斜国のある大陸)に広める事は、セタを撃滅する以上に急務である。
最近は、ミストリアに服属した筈のエティルが軍事力を強化しているし、油断は禁物長期戦も出来なかった。
イーボルトは、落とし穴を掘り、その上に秘蔵のスクール水着を置いて見た。
まさかとは思うが、ビヤッカ軍なら罠に掛かるかもしれない。
イーボルトはセタを完全に見くびっていた。
謀略で叩きのめしてやる。
イーボルトは卑劣な軍師トルハの影響を受けているらしい。
小手先の策略を披露してセタを倒す心算のようだ。
然し形勢がやばくなれば手下はイーボルトを見捨ててセタ側に付くだろう。
イーボルトが兵の人望を持たないのは、特殊な趣味のせいだがそれならジョンも同じだ。
だがジョンの直轄兵は最初からジョンの特殊な趣味は知っているので裏切らなかった。
それでも軍隊の士気は下がる1方で、マクユイの中にはブルマー禁止令の勅令を要求して武装蜂起に走るものまで出てきた。
全員女子教育制度で家事手伝いの女性を失った男共である。
(全寮制の学校であるので)重ねて言うがこの世界ではブルマー派は女性解放の象徴として受け止められていた。
その代わりに男の性的欲望を満たす為にセクハラ御礼の国家にしたのにその恩恵を受けている筈の男共が反旗を翻すとは如何いう事だ?
ジョンには理解できない。
話し合いもしてみたが結局不調に終わった。
「王。ルーシーに御戻り下さい。このままではミストリアは内部崩壊いたします。パタレーンを放棄してミストリアに逃げましょう」
イーボルトはジョンを説得しようと試みた。
6歳になるジョンは頑なにこれを拒否した。
ジョンはマクユイの封じ込めを即座にミレイレアに命じ、マクユイにジャージの着用とセクハラ反対派の象徴として、青い薔薇の首飾りの使用を認めた。
マクユイにはセクハラをさせないとジョンはミレイレアの言葉を借りて明言した。
しかし、ここまで国家が譲歩してもマクユイは不安を隠しきれないらしい。
自警団を結成してミストリアの町の1つを実効支配した。
その数240万人。旧ミストリア人の男全員である。
夜盗出身者とこの国で生まれた子供達、女子教育制度の恩恵を受けた者はセクハラを必要悪とみなし、叛乱には加わったのは僅かであった。
発端となった事件の無実を信じる者も信じない者も之には仰天した。
98%のミストリア人はまさか反乱軍を起こすとは思っていない。
「何で胸や尻をちょっと触ったぐらいで内戦にならなければならないんだ?」
大部分のミストリア兵は(女の子の兵である)そう思っていた。
確かに出来れば触られるのは少し恥ずかしいし、女性としては嫌なので出来ればやめてほしとは思うが反乱を起こすことはないだろう?
しかも主力は男共である。
真相は家事手伝いの女子を失った者の腹いせと受け取った。
ジョンは之を地方反乱と受け取った。
早速若手の将軍に討伐を命令する。
将軍は軍勢を率いて討伐に向かい、反乱兵を包囲した。
幸運な事に反乱軍の食料は3カ月分である。
食料が尽きれば降伏する筈だ。
「奴は夜襲をかけると思いますがね」
将軍に部下が忠告した。
そんなことは分かっている。
反乱軍はその手しかミストリアに勝てる手段を持ち合わせていない。
「説得だ。ジョン様の兵は人殺しではない。話し合いで解決しよう」
将軍は、説得の才能では宇宙でも有名な、レトミー女官長を派遣する事にした。
ミューファ付きの女官長である。
説得の才能だけで、ジョンの隠し財産が50億ディルスも増えたと噂されているほどの人物だ。
それ故にジョンの外交を担当している。
セタだけは説得できなかったようであるが・・・。
「降伏しなさい。勝てると思っているのか?」
使者に赴いたレトミーは、才能の欠片も感じさせない説得を試みた。
こんな交渉能力では、TVサスペンスの悪党でも落ちないだろう。
「降伏したら一人当たり100ディルス与えるとジョン様は言われた」
勿論けじめとして、お前らは牢獄行きだが・・・。
「俺達はジョン王のブルマー好きに抗議しているんだぜ?」
金など問題ではない。
戦争で生活は苦しいが、耐えられないほどではない。
決してブルマーの代金を踏み倒す為に反乱を起こしたのではないのだ。
「ギャグなのか本気なのか知らないが、軍隊をブルマーの販売収入の税金で賄うなど国の恥だ。即刻止めさせろ」
「では税金を引き上げても良いのか?」
レトミーは理不尽な要求を突き付ける反乱兵に質問した。
「ブルマーとスクール水着の収入が使えないとなると、税金は最低で一割アップ。ヘタをすれば15億ディルスから30億ディルスの負担増になるな。本当に良いのか?」
だったら軍備増強をしなければ良いだろう?
反乱兵は口々にそう言った。
大体剣と軍服だけでどうやったら金が掛かるのだ?
「船の製造コストだな。海軍力の増強で、民間企業の技術も上がって、造船と大砲は好景気に沸いている。君らの都合で止める訳にはいかない」
レトミーは冷たく言い張った。
ついでに言えば、山師と農民も取引先が見つかり、好景気なのだ。
「話し合うだけ無駄のようだ」
反乱軍の首領は、交渉を打ち切ってレトミーを追い返した。
交渉決裂を知った将軍は愕然とした。
伝説の交渉人が之では、話し合いは無理だろう・・・。
「俺、実戦は初めてなんだよ。勝てるかな?」
将軍は交渉で片付ける心算だったらしい。
慌てて軍隊を進撃させた。
こんな調子で勝利を収めた軍隊は希であろう。
「ブルマー好きの変態王を倒せぇ」
案の定反乱軍は討伐に来たミストリア軍220万人を一戦のもと打ち破り、兵士全員を追い払うと、独立宣言をしてシャリーを担ぎ出し、正当ミストリア政府を発足させた。
「何?220万員も訓練の行き届いた兵がいて如何して負けるのだ?」
ルゼーティアで報告を聞いたジョンは、有望な将軍を処罰せねばならなくなり、嘆いた。
何とか敗戦の罪を不問にできないか?
将軍(ジェネラル・カート・ヒート2世)は追放するには余りに惜しい人材だ。
「将軍の罪を不問に処す口実はないか?僕の懐も暖かくなる一石二鳥の妙案は?」
無いだろう?
部下達はそう思ったが黙っている。
余計な事を言えば将軍の立場はもっと悪くなる。
そこへカルトミール老が現れ、貴重な意見を1億ディルスと引き換えに提言する。
「罰金刑にしたら如何ですか?王は部下に甘いので、厳しく処罰するべきかと思います。それでいて罰金なら金さえ払えれば良いのだから、返済の為に命がけで働くでしょう」
そんなに上手いくかなぁ?
部下達は危ぶんだがカルトミールは断言した。
ジョンはカルトミールに1億ディルスの価値を持つ宝石1万個を与えると下がらせた。
将軍には、3億ディルスの罰金を通告して、ついでにかって敗戦したミューファとイーボルトには10億ディルスの金を支払うように命令した。
罰金は、3日後に銀行が立て替えている。
「ジョン王は何て良い人なんだ・・・」
本来なら処刑されても仕方の無い立場である。
将軍はジョンに感謝した。
他の部下にも、ジョンの政策にやや懐疑的なミューファを除いておおむね支持されている。
ジョンは低迷する支持率を取り戻す為、金を国中にばら撒き、国民の関心を買うことに勤めた。
金で忠誠心が買えるならジョンにとっては安い買い物だ。
農民の税金も2割下げて、2公8民とした。
之も商売と所得税で大儲けしているジョンにとってはたいした痛手ではない。
痛手なのは反乱軍がミストリアの経済圏で活動している事だ。
スクール水着美少女陵辱事件で収入の落ち込むブルマーとスクール水着の税収が気になる所である。
砂糖が20億ディルス。
馬が10億ディルス。
所得税は120億ディルス(月額)位だが、諸経費で残るのは3億ディルス程度だ。
ジョンの保有するミストリアの株は、ジョンの命令で一部売りに出され、数百億ディルス儲かった。
その頃セタかルミの策略だろう。
同時期にスクール水着の女の子が6人の男に襲撃され、腕章のおかげで事なきをえたと言う事件が170件も起きた。
明らかに反政府勢力の嫌がらせであることは間違えなかったのでミレイレアも事件の沈静化を図った。
之を教訓に急遽ミストリアの腕の立つ女の子を(男だと職権を利用して猥褻行為に走るかもしれないので)400万人掻き集めてセクハラ防衛隊(SB小隊)を組織し、各地に送り込んだ。
平たく言えば警察官である。
警視総監には夜盗出身のローゼインが任命された。
之以降ミストリアの性犯罪と普通の犯罪は皆無となった。
人心が安定しているから叛乱はともかく犯罪はめったに起きない。
しかもSB小隊が出来るだけ犯罪を起こさないように不穏分子を見つけては説得しているのだ。
国家公務員の特権として結婚の自由を認めた事も総勢650万人の公務員を生み出す背景となった。
この巨大組織を守る為にブルマーは必要なのだ。
ジョンは輸入ブルマーとスク水に10%の関税をかけた。
之だけで数十億の収入が保証される。
しかも国民も仕方ないと諦めるレベルだ。
ジョンは1億ディルスをトルハに与え、反乱軍の内部工作を担当させた。
その頃敗残兵が戻ってくる。
「如何するのだ?敗残兵を結集して反撃に転ずるか」
ルーシーに逃げ戻ってきた220万人の兵士は、断固決戦を要求した。
何かにつけ反抗的なエティルが介入してくる前に叩かねばならない。
エレナはミストリアが危うくなれば裏切るであろう。
「この内戦が終わったら戦い漬の毎日から解放されるかな」
ドルクレンが海軍と連携して町の補給線を断ち切る作戦に出た。
補給が続かねば降伏せざる負えない。
「早く国事を終わらせてトルハさんとデートしたいよ」
補給大臣としてミストリア人が10億人が1年食べられる糧食を米蔵のリーフの星門と呼ばれる禁断の地に隠し持っていた彼は、つい本音を漏らしてしまった。
トルハとは6年間も付き合った中である。
然しお互い国事が忙しくて、1度も普通のカップルらしいデートはしたことがなかった。
「俺はこの内戦が終わったら休暇をとるぞ。トルハさんとデートをするんだ」
「そんなに私のブルマー姿が見たいの?」
側にいたトルハが言った。
エティル風の恋人関係が基本であるトルハにはブルマーは告白の儀式の1環である。
エティルの愛はブルマー姿を見せてくれと男が思い人に言う慣習らしかったが1応硬骨漢で通っているドルクレンにはそんなフェチな愛は語れない。
ドルクレンは、ブルマーをセクハラな衣装と決め付ける(今のミストリアでもそうだが)世代のドワーフなのだ。
よって相思相愛なれどお友達な関係が続いていた。
「私のブルマー姿を見たいなら見せてあげても良いよ?それを見るのがファシス(ドルクレンの姓)だけなら」
エレナ統治下のエティルではその言葉はプロポーズも同様である。
然し恐らくドルクレンは気付いてもいないのだろうが。
「頼むからそんなはしたない格好は止めてくれ。
俺はジョン王裏切る気はないだけでブルマー反対派だ。それをやらねば恋人同士になれないならともかく、ミストリアではそんな慣習はない」
このセクハラに厳しい世界で、変態の汚名を覚悟しながらブルマー姿になってあげると言うのがどれ程の愛か、ドルクレンは良く実感できないらしい。
下手をすれば諸国民から蔑まれるような行為である。
ミストリアでも愚かな恋人同士がスクール水着で愛を語り合ったせいで内戦状態に陥ったのだ。
スクール水着美少女陵辱事件は愉快犯もとい狂言だとする説をトルハは信じている。
事件の現場は山小屋なのだ。
どの変でスクール水着になる必要があるのだ?
「女の子がブルマー姿を見せてあげると言っているんだよ、嬉しくないの?男なんてみんなやらしい目でブルマー姿を見ているってのに貴方は興味ないわけ?」
トルハがすねて言い募った。
ドルクレンは思う。
そりゃそうだよ。
幾ら好きな人でもドワーフがエルフの女の子に性的喜びを感じるものか。
愛おしいとは思うが。
「トルハさん。俺はあんたを性的慰み者にする気はないよ。一所に居たいだけなんだ。それではいけないのか?」
ドルクレンは更に言う。
「それに今の情勢でブルマー姿で愛を語らうのはまずいしな。それにあんたは未成年だ。具体的にいくつかは知らんが10歳位だろ?ゆっくりと愛をはぐくむ心の余裕がないとね」
ドルクレンが優しくトルハの頭をなでた。
「俺は行くよ。トルハさんは反乱軍を鎮圧する作戦を立ててくれよな。平和になったら買い物でもしようぜ。ルーシーに大型デパートを立てた奴がいるんだ。俺の為にコスプレしてくれるなら水着姿になってくれよ」
「・・・」
トルハはこの冗談を真に受けた。
少し考えてから答えを返す。
冗談の通じないところはペレトンとよく似ていた。
「スクール水着に?良いよ。それが貴方の望みならね」
そんな事をされたら今度こそミストリアは崩壊するだろう。
軍の維持費が払えなくなる。
「ちょっと待て今のは冗談だ。スク水姿にならなくて良いからな」
言いようのない慌て方でドルクレンは前言を取り消した。
ここでもしトルハが早まったらミストリアはこの時崩壊していた。
レナの占いにもちゃんとそう出ている。
然し運命は未来を知ったミレイレアの手によって変えられつつあった。
それとなくドルクレンに悟らせるように忠告して誘導してしまうのには苦労したが。
「ドルクレンさん。私は貴方が好きだよ。何時か私のセクシーなスク水姿でメロメロにしてやるんだから」
2人とも、おもいきしスク水フェチであるイーボルトの悪影響を受けているらしい。
然しトルハは本気であった。
「楽しみにしてるよ。でもメタボ体系になるのは止めてくれよ。ドワーフはメタボが多いがあんたがやる必要なないからな」
トルハは思った。メタボなエルフなど聞いたことがない。
トルハはそこで強引に話を変えた。
「話を真面目にしよう。ドルクレンさんはジョン王に補給物資を送らなくて良い。レナの占いでは今年は飢饉らしい。まだ誰も知らないが。150年ぶりの大雨で作物は全滅する。ミストリアとミレイドの作物は97%が根ぐされする。今のうちにエティルから食料を買い付けるのだ」
いきなりとんでもない事をトルハが言い出した。
政治家で軍人だと、プライベートな話はやたら奇異に映る。
「予言ははずれるのさ。でなければジョン王はシャリーに殺されていただろう?」
そのシャリーは正統ミストリア政府にいる。
殺しとけばよかったと思うが、誰も言わない。
あの可愛いミューファが悲しむではないか。
「そういえばそんなことも言ってたな」
ドルクレンは大して気にもしていなかったが大変な事態である。
ブルマー云々の話を気楽にしていられる状況ではなかった。
「ふふっ。私達のデートはもう少し先延ばしよ。後20年は国事に専念すると思うから」
20年か、長いな・・・。
ドワーフの寿命は長くて500年から200年位だし(一般論)エルフはせいぜい千年位。
「国民が花婿では浮気する訳にもいかんな」
遠まわしに振られたのだろうか?
ドルクレンはそんな気を起こしたが黙っていた。
トルハにそれを言っては「やはり男は体目当てなのだな」と言われるのがオチである。
それに恋人が誰と浮気しようと望んだ時にかまってくれれば如何でもよかった。
3世代も年の離れた恋人を誰が体目当てで付き合うか?
孫娘もとい妹も同様である。
「どうせエルフとドワーフじゃ子供もできんし・・・」
トルハが悲しむので口外はできないが・・・。
トルハは意外に子供好きである。
ペレトンの子供でも養子に貰うか?
「ファシスさん。補給大臣の腕の見せ所よ。ここで手柄を立てればジョン様の覚えがめでたくなるわ。私はセタを倒した後、敵の兵糧を持って民を救う」
セタ軍の兵糧が底を尽きている事を知らないトルハは、皮算用をしていた。
「東方大陸と傾斜国とエティルとペクダールに人と船を送って食料を買い占めよう。補給大臣の権限で予算を分捕ってくれない?一応ジョン様にも報告して、トゥーロさんにも対策を高じてもらうけど万一という事もある」
「・・・」
本当にこの娘拾い物だった。
ミストリアの運命を謀略にして根こそぎ変えてしまった女傑である。
「あんた王家のエルフと言っていたが、何処のエルフなんだ?」
唐突に過去を思い出したドルクレンは聞いてみた。
トルハも思い出したのだろう。
笑顔で答える。
「ペクダールの王家の嫡流ジュディス・ラ・アルモールの妹よ」
「あの瞳狩り戦争でシャリーに滅ぼされたアルモール王家の?」
この台詞にドルクレンは驚いた。
ジュディスの両親をぶった切ったのは他ならぬドルクレンである。
「安心して。ファシスさんに怨みは無いから」
トルハは一応言っておいた。
「そんな事よりミストリアの未来よ。予算を成立させてくれなきゃミストリアは滅びる」
「然し王の命令なしで予算を成立させるのは・・・」
イエスマン根性が染み付いているドルクレンは困って抗議してみた。
トルハがそれを素早く遮った。
戦略においてはトルハに敵うのはルミかゴドスの名称Aしかいない。
「この国の主権者は皇帝陛下だ。責任は私が取る。皇帝の勅令という形で500兆ほど借金取りから借り受けろ。返済は5年後だ。補給大臣の辣腕に期待する」
ドルクレンはトルハの命を受けて食料探しに奔走し始めた。
金は借りられるだけ借りて4兆ディルスである。
この貴重な金を東方大陸の大穀倉地帯に(食料の値段がミストリアの14分の一)送り込み、
麦を買い込ませた。
代りにバルランと(ミレイドの玉蜀黍)トレニア(ミストリアの5倍)を売りに出した。
取引先だって自主経営に走るから、何時までも暴利はえられないが、この交易で30兆ディルスと東方大陸の食料の4割が手に入る。
ゴドスもラザニーヤもバルト国もこの交易の金で経済発展を目論んでいる。
ミストリアに対抗する新製品の癒し系ぬいぐるみの開発に勤しんでいた。
「何?トルハがか?」
ハルラーンでセタの軍勢と向き合っていたジョンは、トルハの部下の報告を一心に聞いていた。
セタをさっさと撃滅しなかったのはサラディスを捨てて悠然と陣を構えるセタ軍に恐れをなし、罠だと勘ぐったせいだ。
然しこの状況では、セタを撃滅して国難に備えるしかない。
「あのセタをさっさと追い払うべきだった」
公開しても後の祭り。
イーボルトさんに任せてさっさと本国に帰るべきだった。
兵力不足のイーボルトを支援する為にわざわざ主力軍でハルラーンに出向いたのは早計だった。
「事は一刻を争います。セタを撃滅してミストリアへお戻りください」
トルハの部下のカナトンは情勢を必死に訴えた。
「確かに食料は豊富にありますが、長雨で田畑が破壊されれば例年どうりの収穫は不可能です。何れ食料は尽きる事になります」
「そうか?」
懐疑的なジョンは反論する。
「然しあれは如何見ても敵の罠だぞ。サラディスを捨ててあんなに悠然と我等の進軍を誘うなど罠以外の何だというのだ?飢饉は雨季までは来ない。今は春だ。然し無謀な突撃をすれば我等は雨季を待たずにセタの火砲に全滅するであろう。もう少し待て。セタの食料が無くなればサラディスで撤退せざるおえなくなる。その時がチャンスだ」
それは何時来るのか?明日か?明後日か?部下が苛立って尋ねた。
「何時まで待てばよろしいのですか?ジョン王だけでもお戻りになられてイーボルトさんに指揮を任せれば良いではありませぬか?」
ジョンはその言葉に怒りを露にした。
「軍人としては僕では役不足であると言いたいのか?僕が地方紛争よりも国家の、国体の危機に対応してくれなければ困ると言いたいのだろう。違うのか?」
役不足の意味間違っているぞと思ってが指摘するのは止めておいた。
我儘な暴君ジョンを怒らせると拙いからである。
「分かっておられるなら直にでもイーボルトさんに任せてルーシーにお戻りください。その結果パタレーンを失ってもこの未曾有の危機には些細な事でしかありません」
部下は必死に説得をした。この混乱はジョン王にしか止められない。命の恩人であるジョンの命令ならスクール水着美少女凌辱事件で動揺する国民を黙らせる事が出来るだろう。
「王。お願いです。王を連れ帰らないと私は責任を取って切腹する羽目に陥ります。私はまだ死にたくありません」
この台詞にジョンの心が動いた。
ジョンはこう言う泣き落としに弱い。
「分かった。お前が命令してセタ軍を打ち破れ。そこまで言うからにはセタを倒せる自信があるのだろう」
「はあ?」
ジョンは印符を(軍司令官の任命証)トルハの部下に与えると脱兎の如く逃げ去った。
トルハの部下01は印符を眺めながら唖然とした。
私が軍司令官だと?
そうかサラディスの追撃を避けるための囮になれという事か?
この幸運に喜んだ01は手下に煽てられて段々その気になって来た。
このチャンスにセタ軍を打ち破れば戦功第一ではないか?
01は軍司令官になると直にイーボルトの執務室に足を運び、その支持を取り付けた。
しつこいがイーボルトのスクール水着好きは彼の軍事的才能とは関係ない。
味方につけておくに越した事はない。
「貴方もセタの布陣は罠だと思うか?」
01はイーボルトに尋ねた。
因みに01は女性である。
彼女の民族は名前を付ける習慣がなかったようだ。
一族の兵5千を引き連れてミストリア軍の参謀兼軍師のトルハに従った。
一応階級は准将だ。
役割はトルハの護衛である。
01は重ねてイーボルトに尋ねた。
然しイーボルトはこう答えた。
「罠だな。恐らくサラディスは不慮の事故で修理できない状態にあるのだろう。然し、セタの布陣は明らかに罠だ。奴はこちらが責めかかってくるのを待って決戦する心算なのだ。でなければセタの性格から言って艦砲射撃で陸のミストリア軍を一網打尽にしようとするだろう。セタは癇癪持ちらしいが、軍事だけなら俺に匹敵する才能を持っている。傲慢なセタの性格が折角の才能を無駄にさせているがな。悔しいがパタレーンを2分して廃墟になった西部4州は放棄するしかない」
01は嘆いた。
なら軍隊は何の為にあるのだ?
戦わずに和平したら兵などいらんではないか?
「この大軍でセタを打ち破れぬというのか?」
軍司令官になった以上華々しい功績を挙げないと無能の烙印を押されてしまうではないか。
01はセタを追い払わなくてはならない。
そうしなければ追放される。
ジョンも余計な事をしたものだ。
私はできれば文官として忠義を尽くしたい。
因みに01の部下は昔はやった悪役のコスチュームで、ハイレグレオタード(全員女性)に露出の激しい皮鎧を付けただけの格好だ。
ブーツは穿いている。
護衛兵というよりは諜報部隊の格好かもしれない。
「謀略ならあっさり撤退するかも知れんぞ」
少し考えて01は言った。
イーボルトも同意する。
作戦はセタを挑発して誘い出すに決まった。
そしてセタの悪口を付近の民衆に言いふらし始める。
「セタは悪逆非道の連続婦女暴行殺人魔である。部下達はそのセタに怯えて女性幹部のXX将軍とC将軍D将軍と組んで、セタを裏切ろうとしている」
と言った流言だ。
事実だが01とイーボルトは真相を知らない筈である。
基本的にでっち上げであった。
それ故に所々流言には矛盾がある。
セタがやった覚えのない犯罪事件も含まれていた。
「何だと?」
セタは当然怒り狂う。
勝利者が略奪暴行に励むのは古くからのしきたりなのに、何故犯罪者の如く言われねばならないと言った所だ。
「小手先の流言作戦ですな。然し分かっていても突撃を命令するしかできない。
兵糧は明日で全て食い尽くすであろうから・・・」
謀略担当のXX将軍は01の策をあっさりと見破ったが、だからと言ってどうしようもない。
サラディスを失ったセタ軍は撤退もできなかった。
「イーボルトは誤解されやすい男ですが軍隊はミストリアでも有数の精鋭です。勝てるでしょうか?」
勝てる訳ないだろう?
C将軍とD将軍はそう思ったが黙っている。
セタが強姦殺人魔になった事件の二の舞にはなりたくない。
徴兵されたから仕方なくセタの陣営にいるが、できればジョンの方に付きたいぐらいなのだ。
こんな奴について怯える位なら、いっそ謀反を起こすか?
ジョンは家族の安全と食料、給金だけは保証する男と聞く。
思い切ってセタに進言した。
「セタ様。ハルラーンに我が兵をお送り下さい。イーボルトと01を打ち破ってごらんに入れます」
「何?」
セタは迂闊にもその言葉を信じてしまった。
軍勢はC将軍に2万、D将軍に3万、XX将軍に1万与えて突撃させてみた。
之を迎え撃った01は5千の軍勢で迎え撃ち、士気を失ったセタ軍は白旗を掲全員ハルラーンに雪崩れ込んでしまう。
「何だと?それでも栄光あるビヤッカ軍の精鋭か?」
セタは嘆くが、帰ってきた裏切り兵の言葉は辛辣だった。
「忠誠を要求するなら食べ物をくれ」
この兵の言葉に本隊の5千の兵も崩壊した。
どうしようもなくなったセタは案の定あっさりと挑発に乗り、全軍を率いて攻撃を仕掛けてきた。
そして後方に回ったイーボルトの兵によって座礁したサラディスを乗っ取っとられてしまう。セタは孤立し、遁走した。
「おのれ、卑劣なジョンめ。必ず天罰を与えてやる」
セタは再び流浪の人となった。
根拠地の北傾斜国はエレナに滅ぼされ、南極にいける船はない。
セタは泳いで大陸海を横断するしかなかった。(地球でも500km位なら泳げる奴もいるらしい)
セタとの戦いは01の大勝利となり、多額の恩賞を貰った01は、軍を辞職。
東方に渡り、商人となったらしい。
賢明な処世術というものだ。
ジョンも止めなかった。
パタレーンはジョンの私有財産の1つとなり、サラディスは接収。勢いに乗ったジョンはエティルに進出。エレナを脅迫した。
そのエレナは妖精界侵略の秘密兵器、マトン級光速艇(2千トン)をナタール帝国領内で開発していた。
元々ナタールの主力兵器であったミストゴーレムを接収して自軍の勢力に加えている。
「エレナ姫。妖精界を征服した暁には世界の2割を俺にくれると言ったのは本当だろうな?」妖精界に使者としてやって来たエレナは(時間がやや、ゆっくり流れる。妖精界の一日は地上世界の1.5日)即答した。
「勿論だ。光速艇で侵略できるとこまで侵略しろ。あたしは妖精界の皇帝になりたいだけなのよ。誰が実効支配しても構わないわ」
エレナは妖精界の広さが天の川銀河の太陽系位しかないと思っているらしい。
ナタール王ビシャスはそう思った。
「エレナ姫。まずは東の大大陸の1つ、エターナルを征服するべきだと思う。地上世界の魔法使いをこちらに呼んでワープゲートをお造りになり、3分で行き来が出来るようにすればどんな遠方へも侵略できます」
「確かに出来るが。」
エレナは考え込んだ。
「この島を領有するだけでも手1杯だ。
ここは軍事力と経済力を増強する事から始めよう。農業生産を行える荒野を12万平方km分けて欲しい」
ビシャスは答える。
「良いだろう。エレナ姫。だが約束を破れば俺は敵に回るぞ」
ビシャスは近隣から掻き集めたフェアリーエルフ(単に妖精界に住むブァンレイア人の事)6千人を配下にしていた。
イーボルトは知らなかったがブァンレイア人の強力な魔法の力はテラの核兵器にも匹敵する。ジョンは核兵器を配下にしていたのだ。
「分かっている。ビシャスは軍を増強して近隣諸国を圧倒しろ。あたしはひとまずエティルへ帰る」
エレナは配下の魔法使いに命じてテレポートの上位呪文で光速船をエティルに送ってしまった。
そして金属貿易を始め、大量に魔法の金属ファーリクム鉱石とラルシス石を輸入し始める。
東方大陸の当たりでも似たような金属は取れるが、こちらは純度50%。
妖精界のはオリハルコンの純度が90%だ。
エレナはジョンに隠れてこそこそと軍備を強化して反乱か有利な講和に持ち込むか?
そしてルーシーに逃げ戻ったジョンは50万人の魔術師を動員してルミナスの製造を続けていた。
取り敢えずの目的はスクール水着美少女凌辱事件の解決であるが、之はジョンの手に余った。政治はセタの首をひねる様には行かない。
そしてジョンは飢饉対策の方を優先した。
スクール水着美少女陵辱事件も重要だが、犯人は抑えてあるし、後回しにしても何とかなるだろう。
「戦艦など如何でも良いです。食糧生産に魔法使いをまわして下さい」
補給大臣のドルクレンが、トルハを通じて文句を言ってきた。
(因みに捕虜のビヤッカ兵は、裁判所が懲役20年の判決を下している。
食わせられないので、大金でエティルに引き渡してやった)
ジョンはトルハに言う。
「通常業務をこなしてから対策を練らないと、景気は低迷するではないか?食料は君達が何とかする。僕が景気を維持する。之で何とかなる筈だ」
それはそうだが・・・。
トルハは取り敢えずは黙っていた。
様子を見よう・・・。
トルハは、勝手に予算を捻出した罪で1万ディルスの罰金。
ドルクレンは無罪となった。
ゴドスはこの月、バルト国を攻略。
ラザニーヤ国を滅ぼして東方大陸の西4分の一を制圧した。
海軍を増強して、あきらかに西を警戒している。
2人の行動は、敵になる可能性のある国を増強させた事になり、罰せられて当然だ。
トルハはゴドスに和平特使を送ると、ゴドスとの講和を計ったが、ミストリアの弱みが分かっているのか高飛車な事この上ない。
「ゴドスとて中央大陸のアドニア国を抱えていて西にばかり兵を裂けない筈です。無視して国力の増強に走る方が良くないですか?」
来るべき月への進出の為に訓練を受けている腹心のF将軍などはそう忠告したが無駄だった。
トルハは50万人の軍事援助と引き換えに和平を実現させ、後顧の憂いを絶つと食糧問題の解決に奔走した。
僧侶を使って保存食以外の食料を作らせ、保有する保存食の消費を減らしたり、保存食そのものを魔法で増やしたり、雨よけの傘を農地の上に取り付けたりである。
白龍が居るので氷の息で零れた雨を凍らせて川に投げ込めばかなりの農地が助かるはずだ。
そして切り札の金龍も居る。
ジョンは金龍の炎の息で雨を蒸発させて農地を救う作戦を取り、回収できる川の水を災害用に倉庫に蓄えてみた。
ミストリアの200万人の兵も災害復興に勤しみ、多くの田畑を雨から救った。
当然村人はジョンに感謝する。
「ジョン様。有難うごぜいますだ。」
「之でミストリアの民百姓は救われます。」
ジョンのブルマー政策に反対していた勢力ですら彼を褒め称えた。
飢饉の噂を(と国民は思っている)聞いただけでここまで本腰を入れて対策に乗り出す王はめったにいない。
予言の類にいちいち付き合ってやるほど権力者は暇ではないからだ。
「あのう、どうしてジョン様はわし等を保護して下さるのですか?」
感涙きわまった百姓の1人が農地の視察に出てきたジョンに尋ねた。
最近ジョンの方針により、全ての農民は牛と農耕馬にトレニアと鶏を保持している。
収穫が格段に上がり、家畜を食わせる余裕が出来たので、文句を言う農民はいなかった。
しかも子豚や牛や卵をを産ませて育てて肉として売れば、ささやかな収入にもなる。
農水大臣のトゥーロがこの仕事を進めていた。
御蔭でブルマーネタ以外の反乱は起こった事があまりない。
「あのう・・・、質問を聞いておられますか?」
質問に答えないジョンに苛立った百姓が再び尋ねた。
何処の国でも農民は虫けらの如く扱われるのにこの王は変わっている。
そんな感傷に浸っているらしい。
この男は私利私欲色と欲の権化だが、民衆を慰撫するのが何故私利私欲なのだろう?
皇帝のミューファにもジョンの本心は分からない。
「聞いている。君達の働きがないと国庫収入がいちぐるしく減少するからだ。それに君達の作る食料なくしてどうやって権力者は飢えを凌ぐのだ?」
ジョンは出来るだけ優しい口調で農民に言った。
「食料を他国から買う金があれば農民は要らないが結局農民からの税収入で遣り繰りしている以上農民には食料を生産させて売った金で食料を 得なければなるまい。でも売る食料があるならば最初から年貢を取り立てれば済む話だ。だから結局のところ食糧増産に走るしかないのだよ。僕はそう思うがね」
ジョンの本心を聞いた農民達は色めき立った。
こんな為政者は聞いたことがない。
少なくともかつてのミストリアにはいなかった。
「では女子教育制度を採用したのは何故ですか?農民にとって女子の子供は収穫や農閑期の時、男手をとられる為に 家事と育児を担当する貴重な労働力なのです。女子教育制度は勿論男女同権の観点からは素晴らしい事なのですがもう少し農民の事情をお察し下さり、農閑期だけでも給食制度と子育ての為の家政婦制度を創設していただきたいと思う次第にあります。男手はともかく女子まで取られては農業は出来ませんから」
わざわざ言うまでもなく男子教育制度も存在する。
こちらは通いであった。
農民が主体なので全寮制にしてしまうと深刻な労働力不足になる。
ジョンは制度を創設した時之に気付かなかった。
「分かった。早急に派遣してやろう。但しこちらにも条件はあるが」
農民達の顔が青ざめた。
増税か?それとも労役?
「難しい条件で悪いがブルマーとスクール水着の評判を挙げ、女の子のブルマー着用率を上げる様、女子を説得してはくれんか?言うまでもなく軍の財源であるこの2つの着用率が落ちると兵士の給料が減り、軍が崩壊するかもしれん。それは防がねばならん。そして農地が戦火に燃え、飢餓に苦しみ、パタレーンの二の舞になるのは嫌だろう?」
農民達は思った。
何だそんな事かと。
都市部ならともかく農民が女の子のブルマー姿をいやらしい目で見る筈はない。
ブルマーは元々奴隷の作業着だ。
農民だって(女性は)最近はブルマー姿で農作業をしている。
余り知られていないがミストリアは暑い国である。
少しでも暑苦しい服の面積を減らそうと短パンではなくブルマー(旧型タイプ)が好まれた。その見慣れた風景に過ぎない女の子のブルマー姿に、今更助平な気持ちになる男の子は皆無であった。
それ故にジョンの出した条件の真意が良く分からない。
そんなに都市部では深刻な事態が起こっているのか?
「都市部とは商売以外では余り、立ち寄らんでね。まあ一応努力はしてみるがあまり期待はしなさるな」
老人がジョンに言った。
「でもなんだってこの格好が問題になるのかね?わしだってブルマー姿で農作業をしとるぞ。若者の穿く物と決め付けとるからアホな事を考える奴が出てくるんじゃ」
見た目では分からなかったがこの老人は女性らしい。
「それに男だってブルマー姿で農作業をする者は僅かだがいるぞ。ジョン王が女性の穿くものと決めつけたせいでこうなったのではないのかね?」
老人はジョンのブルマー政策にチクリと嫌味を言った。
「そうは言っても都市じゃ若者の着用率がダントツだからな」
商売用に農村に持ち込んだブルマーを500着老人に渡すと情けなく言い訳した。
その時若い男が話しに割り込む。
「確かにセクハラを認めればガス抜きになって犯罪は減るがね。然し都会人は気楽で良いわな。金さえ出せば幾らでも食料が手に入るのが当然の権利みていに思い込んでいるんだからな。俺もフェチな男だが1度王国の持て男に挑戦してみようと思っているんだ」
都会から(ブルマー姿を見たくて)就職活動に来ていた男が、以外に農業に溶け込んでしまい、趣味と実業をかねて農地の獲得の為気の合う美少女と偽装結婚する為(お見合いが主流の世界であるから結婚してから好きになる方式の恋愛が僅かだが残っている。友達としては一緒にいてもいい適な関係だ)お見合いで友達になった女の子(17歳)にその旨をお願いしてOKを貰っている。
本当に好きかどうかは本人にも分からないのだろう。
「婦女暴行の罪で終身刑か追放になる確率が高いぞ」
その言葉に男は呆れたような顔をして言った。
「こんなのやらせに決まっているだろう?スクール水着の女の子にあらかじめ着替えを見せてくれるように頼むんだ。勿論結婚と爵位を前提にな。俺がその着替えを目撃した事を証明する女の子の証人がいるんでちょっとハズイがな」
余り知られていないがどこぞの馬鹿息子がこの法律を利用して手管の限りを尽くして水泳部の女の子を40人(1応合法なので場所は特定されなかったが側に川のある学校らしい)の着替えを目撃してハーレムにしてしまった(イーボルトではない)らしい。
全員と結婚したが離婚したのはたったの2人だけであった。
そのうちの1人がスクール水着美少女凌辱事件の犠牲者アンナ・ペレスモレスなのである。
この男どこかでみた事ある顔だと思ったが、例のハーレム男か?
「俺はアンナも爵位も欲しいんだ。それでスクール水着での着替えを覗いてたらビヤッカ人の男に通報されてしまって」
何だと?この事件はこの男によって起こされたのか?
はた迷惑な話だ。
こいつのせいでわが国は崩壊寸前まで言っているんだぞ・・・。
「では何故釈放されたのか?再び同じ事を繰り返せば事の成り行きに係わらず追放するぞ」
男は答える。
「本人同士が同意と認めているんだ。釈放するしかないだろう。男爵の位も一応持っている。俺は正式にスクール水着での着替えを見たいんだ。同じ変態同士分かるだろう?」
ジョンはよほどこの男を叩ききってこの茶番を終わらせようかと思った。
然しいかに民衆が信じなくても2人は恋人同士らしい。
切るわけには行かなかった。
「君はほとぼりが冷めるまで身を隠して大人しくしているといい。君の軽率な行為がミストリアを脅かしているのだ」
ジョンは男に頼んだ。
この事件は闇に葬るに限る。
そして男はエティルの僻地に恋人と追放された。