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諸国攻防戦

(2)ミストリアを降したセタは、占領した国内から重い税金を(収穫の7割)取り立て、セタの王城ハルラーンの建設にエルフの労働者を使った。

セタは信用のおけそうなエルフを金で味方につけ、労働者の監視に当てた。

そして1万人もの精鋭を集めたセタは、忠誠心を試す為に、各地の山賊を討伐させ、集めた奴隷を、東方大陸に勢力を拡大中の、ゴドス帝国の商人に売り飛ばして利益を上げた。

ゴドスに渡った奴隷の運命はセタの知った事ではない。

特にドラゴンが高く売れた。

隣国のバルト国との抗争に明け暮れるゴドスでは、兵器として極めて貴重なのだ。

ゴドスは代りに、特産品の緑の石をセタに寄贈。

之を国内の病人に売り飛ばして、残虐だが領民には優しい男と言う評判を勝ち取った。

ゴドスはセタの軍事援助を背景にして、バルト国を圧倒している。

バルト国は、ミストリアに援助を申し込み、謝絶されていた。

交易相手としては重宝されたらしく、食料を送って多額の利益は得ていたが・・・。

「セタ様。ゴドスへの援助は我らの命運を分けます。いっそ軍隊を送ってバルト国を制圧しましょう」

ルミはそうセタに進言した。

サラディス以外の武装では、ミストリアにはとても勝てない。

なら、バルト国制圧に使った方が効果的ではないか?

「様子を見よう。東方大陸の国家はバルト国だけではない。バルト国をゴドスが制圧してから援助しても遅くはない」

ゴドスの勝利を信じて疑わないセタは、ルミの進言をはねのけ、国内の財力を高める事に血道を上げた。

武術好きなセタは、武道大会を連日連夜開き、金品を徴収している。

拝金主義者のジョンの真似をしている訳でもないが、為政者に金はつきものだ。

その意味では、ブルマー好きの変態皇帝と異名をとるジョンも間違ってはいない。

だがそんなジョン王も1つだけ間違っているとセタは思った。

結局の所は、戦争は死人が出る。

あの時、ジョンの手下が犠牲を恐れずに、切り込んで来たら今の自分はないだろうと思うからだ。

犠牲者のでない戦争など、ありえるだろうか?

兵士は生活費を略奪で徴収しているのである。

それを止めろと言うなら、高額の危険手当を払わなければなるまい?

兵を殺すなと言うなら捕虜にしなければならない。

それには金が必要だ。

捕虜収容所を建設しなければならない。

「金を集めろ。我が軍の目的はあの卑劣なジョンに復讐する事だ」

金が集まれば、良い兵士が集まってくる。

セタはジョンとの戦いで、それを学んだ。

ミストリアでは私利私欲。

セタ軍では、富国強兵・・・。

どちらも金なくしては話にならない。

「あのブルマー好きの変態王をサラディスにて踏み潰してくれるぞ」

因みにセタは奴隷時代のペレトンとは意外に仲が良かった。

それ故に復讐の対象はジョンとトルハとトゥーロの3人のみである。

最近のペレトンは赤い服。

トルハは白い服を好むので、間違える事はまずない。

ペレトンはジョンの前では赤いブルマー姿か赤の巫女服姿でとおしている。

そしてジョンからの給金で雇った、2600名の女官を束ねていた。

ペレトンの部下は、主の命令で青の巫女服で統一されている。

セタは自分の部下には黒の馬と、黒服で統一させていた。

この黒服の生産を請け負った服飾職人が大儲けして、セタから男爵の位と領地を授かり、セタの5傑と呼ばれる最強の軍団を編成した。

その数4千。

南方のビヤッカ領(島)統一に力を発揮して、セタをいたく喜ばせたらしい。

パタレーンの国民は戦乱の中、離散して2600万人しかパタレーンには残っていないので、ビヤッカの奪取はセタの勢力を倍増させた。

それ故に砂糖の生産拠点を失ったミストリアは、急速に弱体化してセタと戦う力を失った。

逆にセタは砂糖を傾斜国に売ってその収入を国民生活の復興に当てた。

その余波で、ジョンの手下3名が部下と共にセタに寝返り、ミストリアの軍隊を養うブルマーとスクール水着の製造法をセタに伝え、子爵の位を与えられたのだ。

勢いに乗ったセタはパタレーンに進出していたイーボルトの配下を急襲。

之を散らして莫大な金品を奪っている。

イーボルトは不覚にも敗退して、1人の犠牲者もなく、本国へ逃げ帰った。

然し、幾らセタが暴君でも今の国力ではミストリアに反撃されてしまうのは分かっている。

ミストリアからの賠償金は1万トン級戦艦の建設費用に充てられた。

サラディスの大砲の生産化も進めている。

セタとしては余程に不本意であったらしいが、スクール水着とブルマーの生産化と販売も始めた。

次々に新型を開発して、コスプレ用ブルマーとスクール水着を早急に売り出し、ミストリアの市場の2%を僅か数ヶ月で独占した。

「セタはやはり殺しとくべきだったな」

鬼畜の様な発言をしてしまったミストリアの1将校が追放された。

この将校はセタの軍に加わり、ミストリアの情報をリークしていたらしい。

セタは蓄えた金を、ミストリアの企業買収につぎ込み、先進的な技術の吸収に勤めた。

サラディス以外の文明レベルは、ミストリアの方が上だ。

ジョンには切り札のシレーリム麦があるのだ。

之がある限り、ミストリアが滅ぶ事は多分ない。

セタには切り札がなかった。

農業生産力と金が戦争の勝敗を決めるのだ。

サラディスの火砲が幾ら火を吹いても、ミストリアを攻略は多分出来ない。

セタは一応それは分かっていた。

それに万一サラディスを拿捕されたら、セタ軍に未来はない。

ミストリアに反撃の時を与えるのは危険だが、戦力の向上の方が重要だ。

セタはミストリアと戦う為に反ジョンの商人に金を借りてみた。

これでかなりの借金をしていたが之でミストリアの反撃を食い止められるなら安いものだ。

因みにゴドスにブルマーとスクール水着を売りつける計画があったが、ダークエルフの皇帝と

ゴブリンの住民が主体のゴドスではまったくうけなかった様だ。

バルト国では多少は売れたが、せいぜい3千万ディルスとミストリアでは取れないファーリクム鉱石(ミスリルとオリハルコンの合金と言われる)が代りに手に入っただけである。

セタもミストリアも、たいしてファーリクムを重要視していなかったが、ジョンは一応権益だけは抑えておいた。

何れ役に立つ時が来るかもしれないではないか?

そしてセタは軍隊を動員して、パタレーンに砦を7箇所に造らせ、ジョンの侵攻に備えていた。

傾斜国にも軍勢を派遣して、侵攻の機会を伺う。

「モースを生産させろ。外国に売って大金をせしめるのだ。それから船でミストリア船を拿捕しろ。海軍を強化してしかも敵の株価を下落させられる」

セタは付近の海賊達に許可を与え、ミストリアの船を襲わせた。収益0.0000000001%と拿捕した船を国庫に支払う約束である。

海賊を焚きつける為の方便であり、収益に期待はしていなかった。

ミストリアの船は之により頻繁にビヤッカの海賊船に拿捕され、乗組員は(殺害すれば収益が減るから)全員開放された。

そしてミストリアが攻撃を自重しているのをいいことにミレイドまで船を送り込み、港を攻撃させた。

之に激怒した商人達は150兆ディルス相当の貢物をあらゆる方面からかき集め、ジョンに献上して嘆願した。

ミストリア軍の4年分の兵糧を添えてである。

「ビヤッカを野放しにしては我々は破産です。軍資金は差し上げますからどうか海賊を退治してください」

代表団の少女ファシーはジョンの目の前で手下に財宝の山を積み上げさせた。

ジョンの女子教育制度で経営を学んだ、新興商人である。

商人ギルドの元締めにブルマー姿になるだけで伸し上がった、グラビアアイドルでもあった。

意外に経営能力があるのを買われて、13歳の若さで成り上がったのだ。

決してジョンがロリコンそうだから、この人(人間)が派遣された訳ではない。

「150兆ディルスの価値があります。旨く交渉すれば二百兆くらいで売れるでしょう。陛下が攻撃できないなら船を武装する許可を与えて下さい」

ファシーは、お色気をまじえながらジョンを説得しようとした。

着ている服は韓国風の民族衣装である。

ジョンは之を見て当初の計画の変更を余儀なくされた。

覚悟を決めてセタと戦うかそれとも降伏してセタの配下になるか。

ファシーを送り込んできたあたり、断れば商人は敵に回るであろう。

「ジョン王。パタレーンは富の宝庫です。之を保持していただければ必ず王の富を倍増させてごらんに入れましょう」

ファシーは、ブルマー姿の参拝賞金をつぎ込んで、5年で開発した銀の腕輪をジョンに差し出した。

セクハラ男の攻撃を撥ね返すバリアー付きである。

之によってセクハラ反対派に対するセクハラは皆無となった。

ジョンは一度ファシーの頭を撫ぜると不機嫌そうに言った。

「サラディスにはどうやって勝つのだね?はっきり言うがミストリアの総兵力をつぎ込んでもサラディスには勝てん。白兵戦に持ち込んでもたぶん防がれてしまうだろう。セタがそれを考えていない筈はないからだ。それでもやれというのかね?負けるのが分かっていて兵を皆殺しにさせよと言うのか?」

こんな事を言い出すようではこの国もおしまいだなと居並ぶ家臣たちは思った。

だがジョンと運命を共にしてやろう。

奴はブルマー好きの変態皇帝だが、俺らの王だからな。

ジョンの一番のシンパであるペレトンですらそう思った。

イナクレンとトゥーロなどもそう思っている。

トルハは、降伏すればセタに処刑されるのはあきらかなので、交戦を主張していた。

そこに補給大臣のドルクレンが口を開く。

決して恋人を擁護している訳ではなさそうだ。

「俺に任せれば補給は万全だ。策はトルハさんが考えてくれる。攻撃するのはイーボルト辺りにやらせれば良いのではないか?」

イエスマンのドルクレンが、珍しく意見を述べた。

この人の活躍は極めて地味だが、暇な時は王国の武器や商売の特産品の開発を手がけている。

補給戦をやらせたら、ドルクレンにかなうものは多分ミストリアにはいないであろう。

「イーボルトだと?あの者が名将なのか?」

ジョンが驚いてドルクレンに尋ねた。

余り人の事はいえないがスクール水着の女の子と不順異性交遊に走る姿からは名将の面影はない。

しかもフェチは軽い男に見られがちだ。

因みにイーボルトの好みは、最近の日本で主流な露出が激しい奴ではなく旧型スクール水着と呼ばれる水着だ。

ミストリアでも旧スクが採用されている。

素材は樹脂だが、特殊な加工でポリエステル同様の感触だ。

セタ軍は、草の素材を生かしたスク水とブルマーを採用している。

製法は両国の幹部しか知らなかった。

「あの男がスクール水着フェチだという理由でミストリアの希望の星を埋もれさせるかね?ミストリアの法律上は問題ないし、コスプレ好きは彼の能力とは関係ない正当な趣味だ。セタに勝てそうな将軍はイーボルトしかいないぞ」

ドルクレンは愛しのトルハさんのスク水姿を想像したようだ。

顔を真っ赤にして強弁する。

当然ジョンと家臣は、ドルクレンが怒っているようにみたようだ。

「奴は何を怒っているのだ?」

ジョンはペレトンに聞いてみた。

ペレトンにもよく分からないようだ。

「あの人は変わり者のドワーフですからね。あの人が私の弟か兄かになるのかと思うと気が重いです」

ジョンはドルクレンを見た。

ほおっておこう・・・。

奴の気紛れ等些細な事だ。

それよりもイーボルトだ。

それでジョンは考えた。

試しに使ってみるのも1興かもしれない。

「徴税官イーボルト。お前をパタレーン総督に任命する。早急にセタを追い払い、サラディスを確実に沈めよ。生け捕ろうなどとは思うな」

ジョンの命令はイーボルトに衝撃を与えた。

何処の世界にスク水姿の女の子と淫行に走る男を総督に任命する奴がいるのだ?

幾ら法律で問題なくてもモラルが低下して困らないか?

「おい。俺の所業を知ってるなら何故総督にするんだ?」

イーボルトにとってスクール水着好きの変態男の不名誉な称号はトラウマらしい。

ストレス性心的外傷も多大にあった。

まあ自業自得だし、こういうのは彼の趣味を理解しているはずである愛妾の女の子の方がかかる傾向の方が強いと思うが・・・。

「お前の才能を試してみたくなったでは理由にならんか?それともセタはお前には手におえないか?」

この挑発にセタは心に決めた。

そこまで才能を買われて、従わなければ男がすたる。

「命令なら喜んで従う。然しサラディスは沈めなければならんのか?拿捕して海軍を強化するならきっと役に立つぞ。サラディスには750年前の宇宙大戦(170の銀河が戦争を繰り広げ、ブァンレイア帝国が勝利して170の銀河を統治したらしい)にて使われたゴーレム製造装置と巨人召喚装置が装備されている。セタは知らないようだが、サラディスは宇宙船だ。余り遠くには行けぬが月か太陽系(この世界の)位なら6日で往復できる。それを沈めるのか?考え直せ」

イーボルトはジョン王に事の真相をお語り始めた。「エティルには宇宙大戦で勝利したブァンレイアの惑星統治機関が置かれていたんだ。俺はその民の正当な世継ぎである。まあその純血は俺の代で終焉するかな。俺は最後のブァンレイア人だからな。ちなみにミストリアの王家はブァンレイアのクローンと純潔人との間に出来た子供の子孫だ。一般にはハイファ・エルフと呼ばれている」

ジョンは之を聞いたミューファに手を振った。

意味不明のリアクションであるが従兄妹同士通じるものが会ったらしい。

「私は知っていた。王も少しは勉強をなさって下さい」

ドワーフのトゥーロが嫌味を言った。

このドワーフは今でもジョンとしっくりこないらしい。

ジョンは仕方なく決断した。

「分かった。サラディスは好きにしろ。どうせ破壊しても新しいのが来るんだろうが」

トゥーロを無視してジョンが言った。

「ジョン王。サラディスは沈めぬべきです」

ミューファもイーボルトに同調した。

「商業権益を守るため、サラディスは必要です。宇宙を手に入れたくありませんか?」

この言葉にジョンがキレた。

「だから好きにしろ。失敗したら給料カット90%と3年の労役を課すからその心算でいろ」全員の給料をか?ジョン王は思い切ったことをなさる。それだけ手下を信用しているのだろう。

「我々は失敗しません。必ずミストリアの青旗をパタレーンに掲げて見せましょう」

ミューファは形式上はジョンの上司でミストリアの元首である。

命令には逆らえない。

ジョンは仕方なく攻撃命令を与えた。

「海賊船に限定して攻撃を命ずる。全員捕虜にしてパタレーンの国民とせよ。それからこの前財務長官に任命したコルコット。150兆ディルスの財宝を担保に紙幣を発行しろ。之で400兆ディルスを叩き返す。国民にばれない様に少しずつ増刷するのだ。そして商業の復興に取り掛かれ。言っておくがこの借金を返済するまで戦争の資金は出ない。やるなら自腹でやってくれ」

この言葉にイーボルトは応じた。

だが兵糧の現地調達だけは困る。

どう考えても経世済民の志に反する行為だ。

「補給だけは大臣殿にお任せする。軍事費は後で請求するが良いのか?」

ジョンも答える。

「ああ。払ってやる」

ジョンがそう言うと聞いていたファシーが笑顔を見せた。

「そういう訳だ。できるだけ早急にセタを打ち破るだろう」

ファシーは商売用の笑顔を更に向けると、ジョンの気を引いた。

この辺は趣味と商業利権拡大の為だ。

因みにファシーは、グラビア衣装の販売で儲けている。

主な取引先は東方大陸だ。

東方大陸の国家のひとつラザニーヤ国では(人口1億)ミストリア製のグラビア衣装がブームとなっているらしい。

「できたら我社のグラビア衣装をペレトン様に着て頂きたい」

別れ際にファシーはそう言った。

どうもファシーはペレトンをコスプレ好きだと思っているらしい。

まあ今時平気でブルマー姿や巫女服になるような人だから、誤解されても仕方がない。

ジョンは代表団を下がらせると早速借金の返済に奔走した。

まずは国債を発行して400兆ディルスを内々に支払う。

そして税金を50%借金取りから取り立て、その金で更に200兆払い、税金を取り立てる。こうして借金を450兆ディルスにまで下げてしまった。そして更に150兆ディルスを2重担保にして新紙幣アールを500兆ディルス発行して借金を根こそぎ返してしまう。こんな無茶な政策をとれば、普通は極度のインフレになるが情報の伝達の遅い中世では信用を失うまでに数ヶ月は時を稼げた。

取り合えずファシーに命じて、交易の強化に努めさせて、財源を確保する事に努める。

更にジョンはエティルとの交易再会の使者をしつこく送った。

そしてエレナを屈服させる。

1万人目の使者を送ったとき、流石のエレナも降参して交易再開の新書をミストリアに送った。

少しノイローゼ気味になっていたらしい。

適当に追い払えばいいものをいちいち話を聞いてやってたらしかった。

5分おきに新しい使者がやってきて交易再開を申し入れたのだ。

「エレナは落ちたか。よくやった。早速商人を送り込んでエティルの産物を買い占めさせろ。そして紙幣を出来るだけ海外に出すのだ」

このジョンの命令は実行され、エティルにはミストリアの紙幣アールが出回るようになった。400兆アールがエティルに流れたのだ。

当然インフレになり、ミストリアに侵攻出来る余裕はなくなった。

それでもこの交易で国民所得が7倍に跳ね上がったので(生活レベルが5倍に跳ね上がった)文句を言うエティル人は皆無だ。

こうして金を根こそぎ返済したジョンは、ようやく他国への侵略に力を注ぐことが出来る様になった。

商人達の突き上げももはや抑えられない。

「王。之で心置きなくセタからパタレーンを奪回出来ますな。この1年、俺達がどれほど悔しい思いをしてきたか」

イーボルトとハタモンがセタを屠る為に近隣からかき集めた7万の精鋭がアイリスに集結していた。

イーボルトの新生ゴブリン軍団アーネスである。

モースもゴブリン用に7万頭用意した。

馬は鉄の鎧で武装しており、ゴブリンは皮鎧に小型のランスを装備している。

「王。必ずやパタレーンを開放してご覧に入れます。セタ・ブレーメンを倒してミストリアに平和をもたらしましょう」

イーボルトは丁寧な口調で進言した。

第5次パタレーン会戦の宣言である。

この会戦のためにミストリア株60億枚を担保にして銀行から借金をした。

返せなかったらミストリアは大商人アリサ・ロールス・レム・ケートンのものになるだろう。ジョンは知らなかったが彼が借りた銀行はアリサの私設銀行である。

ジョンの公的銀行では流石に貸してくれなかった。

「軍隊の強化の為には金がいるからな」

部下に命じて、三千人もの将校を集めたジョンは、取り合えず兵の訓練をさせる。

セタとやりあうなら、慎重にこした事はない。

「イーボルトさん。負ければミストリアは財政難のため崩壊する。インフレを力ずくで抑えるのは限界だ。帝国300万人の公務員とその家族が路頭に迷うのを防ぐためには勝つしかない」

ジョンが訓示をたれるとイーボルトも言った。

「分かっております。今密かにパタレーンに人を送り込んでいますからもう少しだけお待ちください」

イーボルトはセタの建国したビヤッカ帝国のスパイがいるものと仮定して嘘をついた。

本当は既に15万人の現地調達の兵が叛乱に備えて各町で蜂起の命令を待っていた。

港に狼煙が上がったら兵の詰め所に殴り込みをかけ、太守を捕虜にするだけだが。

密告者が出ないのはセタとルミがそういう人種を必ず処刑する人物だと兵に叩きこんでいるからである。

それに密告などしたら反乱者としてビヤッカに家族が殺されてしまう。

そしてミストリアの世になれば今よりいい暮らしが出来るのは火を見るより明らかだった。

それ故にミストリアを支持してパタレーンに残っていた828万人の民衆である。

ビヤッカの難民は、ミレイドに住居を持った。

戦乱を引き起こしたのはジョンのせいだがそれでもセタよりはましだった。

セタは女子教育制度を認めなかった。

ジョンは(ブルマー姿を衆人に披露する条件付でも)女子を金蔓と見込んで教育を受けさせているだけなのだがそれでもブルマー姿になる事さえいとわなければ、(と誤解されている)魔法使いにも僧侶にもなれるのだ。

こんな国はこの世界ではミストリアにしかない。

しかも、ジョンの兵はその教育を施されたエリート魔法戦士軍団なのだ。

女性兵の割合が1般兵85%、将校が70%。将軍が62%である。

閣僚は男のほうが多かった。

「兵を送り込めれば後は人海戦術でサラディスを攻略するまでさ」

之を聞いたビヤッカのスパイは急いでパタレーンに戻る事にした。

之を伝えれば戦功第1、スパイ長になれるであろう。

そうなれば部下が出来、生存率が上がるのだ。

スパイはセタに褒められるその姿を夢想して悦に入っていた。

騙されているなどとは露ほども思わない。

「へっ。あのスパイは行ったか?哀れな奴だ。戻ればセタに処刑されるのは目に見えている」ジョンが部下の言い様に相槌を打つ。

「他国の事に気を使うほど僕は善人ではないよ。あいつが処刑されればセタの配下は叛乱を起こす。その期に乗じて武装蜂起するのも一驚かな。反乱者の名前はええと」

ジョンはわざとらしくセタの家臣の名を8名上げた。

古典的な手だがスパイはあいつだけではない筈だ。

最初の捨て駒のスパイを泳がせて、策略にかけた心算で、悦に入って(と思っている)ジョンが本音を語るのを身を潜めて待っている真のスパイが必ずいる筈である。

「あいつらが蜂起したらサラディスに兵を送って乗っ取る作戦だったな。良いか?絶対に人には聞かれるなよ。聞かれたら終わりだ」

ジョンは作戦を強調した。

地下で盗聴をしていたスパイ長のルービンは報告に戻る事にした。

ジョンが作戦成功を祈願する大宴会を始めたからだ。

「トルハさん。作戦どうり、セタの将軍に手紙を届けるのだ。2、3枚わざとセタに見せてやれ」

ジョンはトルハにこっそりと訓令した。

セタを油断させる為、ビキニアーマーを着込ませた年頃の娘に酌をさせて水をチビチビと飲んでいる。

何処から見ても馬鹿王に見えるはずだ。

(本人の同意を得て)ビキニガールのお尻を触りながらペレトンの悲しげな視線を受けている。

然し流石にペレトンのお尻を触るわけにはいかなかった。

ペレトンはセクハラには寛容なほうだが、(ブルマー姿で言い寄っていてさえ)真面目そうなキャラが災いして「そんなに女の子のお尻を触りたけりゃ私のお尻を触ってよ」などといっても誰も本気にしなかった。

一途な少女であるゆえ、男は怖気ずくらしい。

ペレトンの恋は恐らく結婚が前提であろうから。

それから数日後・・・。

「王様。イーボルトが予定どうり、パタレーンに向かいました。囮のゴブリン兵団もリーフの正門を通ってパタレーンに向かっております」

リーフの星門は古代ブァンレイア人の使っていたワープゲートの事である。

昔は銀河中に、存在していたようだ。

「王様。セタの海賊兵団を全て生け捕りにいたしました。之でセタ軍のふりをしてパタレーンに潜り込めます」

ジョンの将軍達が戦況報告に訪れた。

「王。パタレーンの農民が武装蜂起したようであります。即日鎮圧され、代表者は捕らえられました」

ジョンは将軍に言った。

「お前達も宴会を楽しめ。この宴会に10億ディルスも注ぎ込んだのだ。商売を活性化させる為にな。明日は帝国の財政難を解消するための税制の改革を始める。今のうちに英気を養っておけ」

ジョンの役割は国内の統治である。

戦争は部下に任せておけばいい。

大体パタレーンの作戦地帯まで命令を送るのは今の通信システムでは不可能であった。

「明日からは茨の道が待っている。今の内に楽しんどいた方がよいぞ。この資本投下でルーシーは活気付くだろう。たった10億の投資が疲弊した民衆を活気付かせ、100億の税収になって帰ってくるのだ。資本投下と買い支えはケチってはいけない。国家が買い上げるのは問題があるから市民に変装させた軍人に買いに行かせろ、明日にでも」

ジョンはビキニガールに酒を持ってこさせ、(純粋な酌をするだけの存在である)将軍に勧めた。

「私は未成年です。酒を勧めれば刑罰の対象に貴方がなります」

冷たい声でジョンではなくビキニガールを見た。

こういう趣味は少女の思うところではない。

「スクール水着フェチのイーボルトの方がまだマシだ・・・」

少女は心底そう思った。

何故かミストリアでは、スク水フェチとブルマー好きの地位が高い。

王族が率先して売り込んでいるからだろう。

その経済効果は180兆位だ。

ラザニーヤでは2億。

ゴドスでは2千万。

バルト国では5千万の経済効果である。

因みに借金の限度額はラザニーヤ3億、バルト1億、ゴドス4千万、ミストリア6兆である。

それ以上は貸してくれなかった。

少女は、ジョンへの評価を35%程下げた。

「そうか。では水杯をとらす。まさか嫌とは言わないだろうな」

ジョンはビキニガールに水と杯を持ってこさせ、少女に渡した。

杯に大量の蒸留水を流し込む。

ルーシーの氷屋で買い占めた長高級な水だ。

一杯50ディルスはする。

「有難き幸せ。之もって帰って売っちゃ駄目ですか?」

「・・・」

少女の言葉にジョンは感激した。

ここにも僕と同じ感性の者がいると思ったのだ。

ジョンはこの部下をその場で親衛隊長に任命してブルーローズ卿の称号を与えた。

自分と同じ感覚の娘だと思ったらしい。

この贔屓をジョンの譜代家臣はあからさまに無視した。

そして代表者を選んでわざわざブルーローズ卿を苛めない事を確約している。

我々は地位が欲しくてジョン王に仕えている訳ではない。

勿論くれるなら喜んで頂くがそれによって忠誠心が変わる訳では断じてなかった。

トゥーロ以外の側近は別段地位には興味がなかった。

それに冷静に考えれば之は降格人事である。

恨まれる筋合いなどなかった。

「近衛兵など置かなくても俺達が守ってやるさ」

忠誠心に溢れる兵士達はジョンを守るべく私設募金団を創設した。

帝国の財政基盤を固める為の僧侶医者の養成に使われる。

宴会はこうしてチャリティーパーティーに変質した。

因みに、この時集まったディルスは金貨35万枚。全て学校建設の費用になった。

そしてジョンはミストリア8874万人。

ミレイド1.3824万人に増えた総勢2億の民衆(農民)から臨時税10億ディルス。貢物(20億食分の年貢)を取り立てた。

更に150万人になった商人から1人1万ディルスの臨時税(総額150億ディルス)を、20万人の職人と1600万人の使用人から10億の収入がある。

それに銀行から借りた60億ディルスの借入金を差っ引いて110億の純益が転がり込んでくる。

ジョンの部下は体操着の収入で養っているので問題なくディルスは国庫の宝物庫に積み上げられた。

「ドルクレン。新たな産物を考え出せ。このままでは帝国は崩壊する」

ジョンは2億以上に膨れ上がった民衆を持て余していた。

食料は問題ない。

辛うじて今年は持つだろう。

然し今年中にパタレーンを落せなければ深刻な食糧不足が待っているのだ。

兵糧卵だけで冬を過ごす羽目に陥るだろう。

確実に内乱となる。

セタなどの相手をしている場合ではないのだ。

「ラーゼルンに4千万ほど移民させましょう。そして今の内にパタレーンを落としてしまえば当面は飢えをしのげます。今僧侶を総動員して備蓄食料を4倍にしていますから来年は何とかなるでしょう。だがお望みとあらば開発をして見ます」

ジョンは対して信用していないようだが一応誠意を持って答えてやった。

「頼むぞ。荒地という荒地は開墾してしまったからな。もう耕地に出来る土地は残っておらん。エルフの森を切り倒すわけにはいかないから」

ジョンは万策尽きていた。

反乱を起こされてしまっては犯された後に火あぶりかな・・・。

ジョンは男だからその心配はなさそうだが彼はそう思った。

考えただけで身の毛がよだつ。

因みに同性愛に走るならジョンの好みはセタ・ブレーメンであった。

流石のジョンも之を公言するわけには行かないと思っているのかそれは言わない。

「少し夜盗共を集めすぎたか」

ジョンは商人を炊きつけて食料の輸入に踏み切らせていた。

自由貿易なら税金は取れるし、食料も国庫の負担なしで民衆に供給できる。

急地に追いやられたジョンは自由貿易を正式に採用した。

農民には税の免除を保証する代わりに年貢を納め、代わりに国庫から代金を支給するシステムを採用する。

このシステムを運用する為に農協を設立した。

農民の自給自足体制を維持してなお、儲けを得ようとするならばこのシステム以外にないとジョンは思っている。

「まずはセタをパタレーンから追い出し、かの地を得て、国土を得るのが先決だな」

ジョンはミストリア軍60万を動員して囮の餌兵をルぜーティアに送り込む作戦を立てた。

本命は取り敢えずは同族のいるルぜーティアである。

だがたったの60万では人口6000万人のルぜーティアは落とせない。

サラディスをおびき寄せる餌兵に過ぎないのだ。

然し進軍してみると以外に守備隊があっさりと降伏してミストリアの軍門に下った。

一応降伏しろとは言ってみたが本当に降伏するとは普通考えない。

「何だと?」

之では作戦どうりに行かない。

セタの新手の計略か?ルミが指揮をとっているのか?

「おい。こいつ等をさっさと船に乗せてミストリアへ連行せよ。一応王侯の礼で迎えるのだぞ」

連れて歩いて反乱でも起こされたら事である。

本国へ送ってしまえばミレイレアが監視してくれるはずだ。

ルミの狡猾な計略と信じているジョンは用心深かった。

守備隊を船で本国に送ってしまうとルゼーティアを占領して女子教育制度の実行宣言をしたのだ。

但し、ミストリアの時と違ってセクハラな要求はしなかった。

流石に之は真面目にやらねば女子を味方に取り込むことは出来ぬと思ったのだ。

案の定セタの暴政に苦しめられていたエルフ達は(エルフは家事分担と共働きが基本らしい)ミストリアに恭順の意を示した。

ジョンは海軍を接収。

サラディスの居場所を聞き出すためにエルフ達を尋問した。

尋問して三時間。

「サラディスは傾斜国です。天下三分の計と言っておりました」

ジョンはあっさりと口を割ったセタの手下を船に軟禁すると大軍を率いて、スパイ達の報告を信じて国内の反セタ勢力の掃討にやっきになってたパタレーンの港町を奇襲した。

港町は之によりあっけなく陥落してルミは近くの町に逃げ込んだ。

「何だと?あのスパイ共め。後で処刑してやる。ジョンの策略に踊らされおって」

町の司令官であったルミは4千の兵で篭城して援軍を待つ作戦に出た。

主力は傾斜国へ遠征しており、帰ってくる当てはない。

おそらく3年は戻ってこれないであろう。

然しそうでもしなければ怒り狂った手下にジョンへの手土産代わりに首を刎ねられるのが落ちだ。

「必ず援軍は来る。守りとうすのだ」

ルミは無責任な公約を掲げた。

「ルゼーティアの海軍が助けに来るはずだ。お前達もジョン王の毒牙にかかりたくなければ死守せよ」

ルミはルゼーティアがすでに落ちた事を知らないらしい。

そしてイーボルトの蜂起によって既にパタレーンの主要都市が陥落した事も知らなかった。

パタレーン会戦の戦況はジョンも知らなかったからルミの兵に執拗に買収工作をかける。

援軍がもし来てしまったらジョン軍は撤退するしかない。

決死の援兵と戦えば確実に怪我人が出るからだ。

経世済民の志は商業利権を守ることだし、万一国内で敵の攻撃による死者が出てしまったら私利私欲の大儀にも反する。

一般に私利私欲は己の権益のみを追求する者の事を言うらしいが、それを権力者がやるには民を栄えさせねばならない。

持たざるものから奪うことは不可能だからだ。

民は栄えさせてから重い税金を獲るべきなのである。

米10俵の収入から7割獲れば7俵だが、100俵の収入なら4割でも40俵で5倍は増収を見込める。

なら米100俵を目指して努力するのが私利私欲の醍醐味なのだ。

そうすれば民は喜び、権力者は毎夜宴会を楽しめる。

何か間違っているだろうか?

「ジョン王、お喜びください。パタレーンが全て陥落いたしました。この町以外は」

イーボルトの愛妾ラナが報告にやって来た。

今の肩書きはパタレーン総督補佐である。

イーボルトのスクール水着好きが災いして愛妾も偏見の目で見られることが多かったが彼女も実力的にはエレナ級である。

25万のエルフが立て篭もるハルラーンを15名の手勢で落とした名将であった。

セタに愛想をつかして 突撃と共にエルフ軍が崩壊したのを差し引いても中々の采配振りである。

「ご苦労さん。総督にはいずれ報酬を与えると伝えておいてくれ。それから直にこちらに進軍して包囲に加われと言うのだ。サラディスが傾斜国にいる以上ルミを追い払えねば挟撃されて結局パタレーンを失う」

ジョンは60万人も動員してこの程度の城にてこずっているのかとラナは思った。

「突撃したらどうです?崩壊しますよ」

ラナがあっさりと言った。

この程度の城、形だけ攻撃を掛ければ総崩れになる。

ラナはそう睨んでいた。

「危険はおかせん。降伏するのを待つ」

ジョンは兵の損耗を避け、占領したパタレーン大陸全土をその強大な国力により、ミスリルの柵で覆い尽くそうという案を実行に移した。

之には流石のルミも度肝を抜かれたらしく、その日の内に姿を消した。町は3日後に陥落。

兵士達は解散させられた。


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