もう一人の来訪者
ある日、女警察は張り込みをしていた。ある泥棒がこの寺にあるものを盗むに来るいう予告状を出したのだ。しかし、上司にいってもどうせ悪戯だろうと相手にしてもらえず、彼女は1人でこの寺を張り込んでいる。仁王立ちで。
彼女にとってその泥棒は因縁の相手だった。それは彼女が警察になってまだ日が浅い頃だった、ある犯罪予告があり、宝石の警護をしているところにその男は現れた。他の誰も男の気配に気づかない中、彼女だけはその気配に勘付いた。野生の勘とでもいうのだろうか。彼女は気配の感じた屋上に行く。そこに男はいた。いつの間にやら盗んでいた宝石を持って。男は彼女の存在に気付きとっさに屋上から飛び降りる。そこは地上100メートルのビルの屋上である。しかし、彼女はとっさにあとを追うように屋上から飛ぶ。彼女は昔からそうだった目の前の人のピンチをほっておくことが出来ないのだ。その時は、宝石のことなんか頭になく、ただ純粋に目の人を助けようとしたのだ。しかし、彼女に策は無い。先に言っておこう彼女は頭が弱い。
男はあらかじめ用意していたパラグライダーを開く、しかし直後に後を追って女が飛び込んでくるではないか。男は驚きながらもとっさに彼女の手をとる。
そのビルから少し離れたところで無事2人とも着陸する。彼女は思い出したかのように男の腕に手錠をかける。
「すまない。助けてもらっておいて申し訳ないが。逮捕する。」
女は言う。
「今回の盗みで引退だ。もうしないから見逃してはくれないか。」
男は焦ったように目を泳がせながら言う。
誰がどう見ても男は嘘をついている。
しかし、彼女は嘘に気がつかない。もう一度言おう。彼女は頭が弱いのだ。しばらく悩んでから
「分かった。私も君が助けてくれなければ危なかった。今回は見逃そう。もうしないと約束してくれ。」
そう言って手錠を外す。
男は100メートルの高さから飛び降りて"危なかった"で済まそうとする彼女に驚きながらもあえて突っ込まなかった。
「わかった。」
男はそういってその場を後にした。
男は盗み中に顔を見られた致命的なミスに気づいてショックのあまりこのことを記憶から消している。
それから数年後…。
彼女は怒っていた。あの時見逃した泥棒は今も活動を続けているからだろうか。彼女はあの日の出来事も泥棒の顔も忘れられないでいた。
そして、張り込んでいた寺に物語は戻ってくる。
彼女は寺の中で音がしたので、全速力で走る。陸上選手のような美しいフォームで彼女は走る。そこには男がいた。
「まて、とうとう見つけたぞ!"こそどろ野郎"!!」
彼女は叫んだ。
そして、光に飲み込まれ彼女は巻き込まれた。
目を覚ますとそこは見たことのないところだった。空には月が2つある。
よくわからず、森の中を歩いていると何処からか悲鳴がきこてきた。彼女は声のする方へ全速力で走る。陸上選手のような美しいフォームで走る。そこには少女とそれを取り囲む"怪物たちがいた。彼女は考えるより先に行動した。彼女には少女を助けることしか頭にないのだ。その怪物に臆すること無く怪物に素手で殴りかかる。怪物の一匹が吹っ飛ばされる。すると周りの奴らが雄叫びをあげながら彼女に襲いかかってくる。彼女は近くにあった木の棒でもう一匹を吹っ飛ばし、負けじと雄叫びをあげる。そこは張り合うところではないのだが彼女は雄叫びをあげる。吹っ飛ばされた怪物はピクリとも動かず完全にのびている。残りの怪物はその様を見て一目散に慌てて逃げていく。
「大丈夫か!」
彼女はそう言いながら少女に駆け寄る。
「大丈夫。お姉ちゃんありがとう。」
少女は泣きながら言う。
しばらく少女が落ち着くのを待った後、彼女は少女の家に帰るまで付き添った。少女と会話の中で自分が異世界に来たことをゆっくりとだが理解していった。少女の家のある街は湖の上にあり、街の中にも水が流れていた。少女の話によるとこの街はギルドを中心に発展していったらしい。
少女を無事に親の元へ届けた際に親にどうかお礼をさせてくれと言われたが、気持ちだけ受け取った。その子の親はギルドへ行くことを勧めていたので、彼女はギルドへ向かった。
ギルドへ着くと、そこは、多くの人で賑わっていた。彼女はよく分からずにとりあえず、受付のようなところへ向かう。
「すまん。旅の者だか、仕事が欲しいどうすれば良い。」
彼女は言った。
「簡単な手続きがございます。少々お待ち下さい。」
受付嬢はそう言い。石板のようなものを触る。すると宙に文字が映し出されていく。
「ギルドに登録するにあたり、役職を登録する必要がございます。どの役職を希望ですか?」
受付嬢がそういうと、女の目の前に文字が映し出されていく。女はその中の一つをなんとなく選ぶ。
「剣士で頼む。」
女はそう言った。
「分かりました。」
そう言って受付嬢は慣れた手つきで石版を操作する。
「以上でギルドへの登録は完了しました。あとはパーティーですが…。」
受付嬢がそう言いかけた時。
「あのぉ。良かった私たちのパーティに入りませんか。」
後ろから女の声がする。
振り向くと、そこには日本刀のような長い刀を腰につけた女剣士と眼鏡をかけていて寝癖が特徴的な男がいた。男の方は杖を持っているあたり魔法使いだろう。
「旅の人が素手でゴブリンを蹴散らしたらしいって噂になってて、その服装を見るとあなたですよね?ぜひ私たちのパーティーに入って欲しいなって。」
女剣士は言った。
「私はカエデと申します。彼は同じパーティーのエマさんです。よろしくお願いします。」
女剣士は続けて言う。
「私は原田太陽だ。」
女は言った。
「私もここに来て日が浅い。仲間に入れてくれるというのはとてもありがたい話だ。」
続けてアカリは言う。
「やったー!よろしくお願いします。」
カエデはそう言って受付嬢と何やら手続きを済ませに行った。
アカリはしばらくその街で新しく出来た仲間と共に異世界での生活をおくっていた。
そんなある日、隣街の周辺で上級魔物の出現と謎の病が流行っているという情報がギルドに入り、彼女たちのパーティーが隣街に調査に行くことになった。
隣街の近くに着いた時だった。彼女は感じ取るあいつの気配を。それは同じ異世界から来た者同士、何か引かれ合うものがあったのだろうか。それとも彼女の野生の勘が感じ取ったのだろうか。
「すまん!ちょっと先に行く!」
アカリはそう言って、街まで全速力で走っていってしまった。陸上選手のような美しいフォームで。
カエデたちも慌てて後を追うが彼女に追いつけない。
「まったく、どうしたっていうの。」
カエデたちは呆れながら遠くに見える彼女の後を追うのであった。
そして、彼女はたどり着く街の中央にそびえる城の地下に。あいつのいるところへ。その泥棒が絶体絶命のピンチであるとも知らずに…