それからとこれから
俺がスラム街に戻ると昨日までの様子とは一変していた。どうやら謎の病で寝むっていた人たちがみんな目を覚ましたようだ。メリーさんの赤ちゃんもムーおじさんもみんな無事なようだ。また、狩りに行ったきり帰ってこなくなってしまっていたライラさんも魔物に襲われていたところを通りかかった冒険者2人にたすけられたらしく負傷はしているものの無事帰ってきていた。
俺はジュエルを見つける。
「取り返したぞ。」
俺はそう言いながらジュエルにネックレスをかけてあげる。
「ありがとう。」
ジュエルは今にも泣き出しそうな声でそう言う。
「みんな無事だよ。」
ジュエルは嬉しさのあまり泣き出しながら言う。
この事件の真相は、病から復活したムーおじさんが俺とジュエルに教えてくれた。どうやらムーおじさんが若い時に一度だけ同じような現象を体験したことがあるらしい。
この病と上級魔物の出現は、"神々の秘宝"が原因らしい。"神々の秘宝"というのはこの世界の神が世界を作るために世界各地にばらまいたものだという。そして、その"神々の秘宝"が封印されるとその秘宝が守っていた土地が力を失い。その土地に災いが訪れてしまうという。ムーおじさんが以前に体験した時も同じような災いがこの街を襲ったという。そして、ムーおじさんは言う。
「ジュエルにあげたネックレスは"神々の秘宝"なのじゃ。」
ムーおじさんはあっさりと言う。
「ひぇ〜〜。」
ジュエルは驚きのあまり悲鳴をあげる。
しかし、確かにこの伝説が本物だとしてジュエルのネックレスが"神々の秘宝"だとすれば、たしかに辻褄は合う。おそらく城の地下で俺が開けた石の箱が、この神々の秘宝を封印していたのだろう。しかし、いったいこんな秘宝を隠し持っていたムーおじさんはいったい何者なんだよ。俺は密かにそんなことを思った。
アカリのパーティーの2人が街の中央の城に到着する。城への入り口を守る兵士にギルドの証を見せ、中に入れてもらう。
まずは王様に挨拶に向かう。アカリが見当たらないことを不安に思いながら。王様に挨拶に向かうと王様は歓迎してくれた。しかし、城内はザワザワしていた。話によると先程、大臣が王様が支持を出した政策についての進み具合を説明していると王様が怒りだしたという。"そんな愚かな政策を考えたのは誰だ"と"今すぐやめさせなさい"と。そして、街の現状を知った王は今までとは全く方針の違う。以前のような政策を提案したという。また、地下への侵入者への処分を尋ねても王様は自分で作らせた城の地下の存在を知らなかったのだ。まるで今までの自分を覚えていないかのように。今まで誰かに操られていたかのように…。
アカリは牢に入れられていた。どうやら入っては行けないところに入ってしまったらしい。2人は呆れながらも事情を説明し、なんとか彼女を解放してもらう。
彼女が倒した鎧の騎士だか、あの後、彼女は気絶している彼を医務室まで運ぼうとしたが、彼は気絶したまま光に包まれて消えてしまったという。その後、音を聞きつけて来た兵士に見つかり、入ってはいけない地下への侵入者として捕らえられてしまったようだ。
アカリ達はその後も、街を調査したが話に聞いていた病に犯されたと言う人は、みんな揃って元気になっていた。
それからしばらくしてスラム街は、見違えるほどに発展していた。今では路上で飢えている者も、ボロボロの家も見当たらない。王様がスラム街の現状をしり早急に手をうったらしい。王様はわざわざスラム街に来て、王様自ら頭を下げたと言う。ムーおじさんは昔の王様に戻ったようだと呟いていた。
スラム街は、グルメスポットとして発展していた。元々この街には多くの人が訪れてくる。そこで王様はスラム街の改築を行った。中央の街と同じように。あとは国王がそこへご飯食べに行く。それは単純に王様がスラム街に来た時に、もてなされた料理が美味しかったからだ。決して豪華な料理では無かった。しかし、人々の知識と愛情がその料理には詰まっていたという。すると、王様がお忍びでご飯を食べに来ているという噂を聞きつけ、1人の商人がやってくる。そこからはあっという間だった。美味しいご飯がお手軽な値段で食べれるという噂が街中に開がり、その噂は商人を通して世界に広がっていった。今ではこのスラム街だった場所はこの街の名物へと変わっている。スラム街から貧しさは消え、今ではその人々の優しさだけが残っていた。
ある日、俺はいつものように街を一人で歩いていた。
「見つけたぞ!」
後ろからどこかで聞いたような声がする。
俺が後ろを振り向くと一人の女が全速力で走ってきた。陸上選手のような綺麗なフォームで走ってきた。俺は慌てて逃げるが逃げきれない。一流の泥棒であるはずの俺が逃げきれなかったのだ。女は俺の肩を掴み投げ飛ばす。そして、流れるように俺に袈裟固を決める。
「確保ー!」
女は叫んだ。
そして俺は連れて行かれた。
そしてその後を追う少女が一人。