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神託の巫女  作者: たけのこ
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『牛人類(ゴズ)』の王子

 私に与えられた神託。

『秘宝を集めて神器を成せ』


 秘宝、それは神が人の世に与えた人知を超えた力を持つもの。

 神器、それは大いなる災いが訪れた時、人々を救うもの。


 それ即ち、災いが起こる前兆を意味する。

 神託を授かった私は、旅に出る……






 クレセン島はかなり大きい。

 最初から知識が無いと、その全体像が把握できない程である。

 と、いうのもこの島の全景は三日月型をしており、上空から見た景色はそれはそれは圧巻だと言う話だ。


「ねえ、こうしてても仕方ないし、観光でもしよっか」


 私が話しかけた『鼠人類(ネズ)』の少年(キューソ族独特の前歯がかわいらしい)は、ぶつぶつ独り言を呟きながらの考え事を一時中断したようである。



「リンナはまたそうやって遊ぶ事ばっかり……」

と、いつものお怒りが炸裂するかと思ったら。

「まあ仕方ないか、僕の集中力もそろそろ限界」


という事である、仕方ないのなら私も遊ぶ準備をしなければ。


 私、自称普通の女の子、『猿人類(ヒイ)』のエン族のリンナは、なんやかんやあってこの少年、『鼠人類ネズ』のキューソ族のムウリと旅している。




 白い砂浜、凪いだ海、高台から望める最高の景色、島独特のフルーツやご当地食材を使ったグルメを堪能。

「いやー、こんなに楽しんじゃって良いのかしら!」

「良いわけないでしょ」


 あらら。

ちょっとはしゃぎ過ぎたようである。反省。

 ムウリ君は私にこの店おススメのスイーツなるものを卓に運んでくれた。


「やっぱり、王子様が御帰還されない事にはどうしようもないね」

「そりゃそうでしょ、私の勘は当たるんだから、あ、これおいし」

「そりゃあ、神託を承った巫女様の勘を疑うわけじゃないんですけどね、ほんとだおいしいね」



 ここまでの経緯はこうだ。



 どうやらクレセン島の王様が秘宝らしきものを所持しているらしいとの情報を得た私達、厳重な警備を掻い潜り、観光という名目で島に下り立つ事が出来た。

 王様から秘宝を貰う為には、この島で名を上げるとか身内に取り入るとか、あるいは盗んでしまうか……

 計画を練るうちに、どうやら今の秘宝の所持者は王から王子に継承されたのではないかという疑念が上がる。

 情報を集めるうち、王子は外交とやらで島外に出ている事が判明した。



「いやあ、何も考えずこうしてぼーっと海を眺めているのって幸せよねー」


「そんな幸せでいいのか……」



 ムウリ君がまた何かぶつぶつ言いだしたが、温かい潮風に吹かれ、私は夢見心地だ。

 海の彼方から暖かい空気がやってくるようである。


 実際、目を凝らすと水平線からは何かがやってくるではないか。

 そう、風に乗って……海を……


「ねえあれ」

 私は飛び起きた。

 拍子に椅子が転がり、ムウリ君が周りに謝罪しているが、そちらには目もくれなかった。



 暖かい風が髪をなびかせ、視界をちらつく。

 かき上げ、更に目を凝らした。

「船だ」


 ムウリ君もそう言うので私も確信した、王子が帰ってきた!

 観光が短めに終わってしまいそうなのは残念だが、時間を無駄に過ごさなくて良い。

 私はスイーツを無理やり口に放り込み、駆け出した。

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