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プラズマファング

 ブレイスリザードは……随分と高い所にいるな。

 俺達を消し飛ばす気か?


 日本に居た頃にやったゲームの召喚ドラゴンに衛星並みの高さや月から光のブレスを放つのがいたが似たような感じだろうか。

 とにかく、追い込まれたら高高度まで飛んで、そこから火山を大噴火させた挙句、攻撃の届かない高高度からのブレスなんてやって来る奴に負けられない!


「ギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 龍の様に長い体をくねらせ、ブレイスリザードは接近する俺達に向かって口を開いて炎を吐き散らしながら攻撃してくる。


「ルルルル!」


 それを巧みにルーフェは避ける。

 おお! 移動の時には感じられなかった重力が強く感じられる。

 空中戦に巻き込まれるって結構大変だ。

 とにかく、こんな状況であっても上手く戦わなきゃな。


「ルーフェ! しっかりとサポートしてくれよ!」

「ルル!」


 隼の要領で足場にしていたルーフェから盛大にブレイスリザードに飛び移りつつ鎌鼬を放ったその返しでその身を切り裂く。


「――ギャオオオオオオ!」


 溜まらず俺を尻尾で薙ぎ払わんとするブレイスリザードから跳躍で離れ……その隙を逃さず噛みつこうとしてくるのを水雷龍刃で雷を纏った龍として突撃する。

 もちろんブレイスリザードも負けじと黒い炎を纏い、炎を撒き散らして俺に向かって突撃してくる。

 バチバチと雷がブレイスリザードにぶつかって行き、相殺する形で、俺とブレイスリザードの攻撃は両者ともに弾かれる。


「ルルゥウウ!」


 ルーフェが弾かれて空中を舞う俺を上手く受け止め、そのまま高速で移動し、雨雲の中を通り過ぎる。

 パチパチとサンダーソードと雨雲の中で無数の雷が俺達を通り抜けていく。

 電気が充電されるような感覚がした。

 リーサが呼んだ雨雲は有効活用させてもらうとしよう。


「グルルルルル……」


 雨雲を出た所でブレイスリザードが水晶玉を三つ使って魔法陣を描き、俺達に向けて放つ。


「グオオオオオオオオオオオオオオ!」


 そうして雄たけびと共に虹色の光の刃が俺達……ルーフェを照らして切り刻む。


「ルルル! チドリ! パチパチをもっと!」

「ああ!」


 俺はサンダーソードに力を込めると、サンダーソードは俺の意思に呼応して電気を放つ。

 するとルーフェさえも巻き込んで虹色の光を払いのける。

 そしてルーフェは雷を吸収してみるみる傷が塞がっていく。


「グルルルル!」


 そして特攻とばかりにルーフェが加速してブレイスリザードの喉元に喰らいついた。


「オオオオオオ!」


 直後、ルーフェの胸の宝石から雷の光が発生し、喉を通ってサンダーブレスが放たれる。


「グギャオオオオオオオオオオオオオオ!?」


 ブレイスリザードがもがきながらルーフェに巻きついて引き剥がそうとしてくる。


「アームドサンダー!」


 その巻き付きを俺はアームドサンダーで薙ぎ払って阻止、そのままルーフェを巻き込みつつ電撃を放ち続ける。


 ルーフェには回復を、ブレイスリザードには攻撃を。

 上手い事攻撃出来ている!

 ここで一気に仕掛ける。


 俺は片手を前に出し、前に放った時と同じ構えを取って詠唱を始める。

 同時にサンダーソードから紫の光が放たれ始める。


「輝くは邪を屠る執行者、審判の雷よ紫電の聖剣となりて敵を切り裂け!」


 紫色の雷が周囲の空気に伝播して広がり、サンダーソードの刀身が紫色に変わる。

 そして分身しているかのような速度で俺はブレイスリザードの顔に近づき切り裂く。


「紫電剣!」

「グギャオオオオオオオオオオオ!?」


 堪らぬ一撃を受けてブレイスリザードの顔が切り裂かれ、見える頭の骨にヒビが入った。


「ググググ!」


 忌々しいとばかりにブレイスリザードが俺達に声を発する。

 恐ろしくタフな奴だ。

 それから炎が一旦消え……違うな。ブレイスリザードの中で凝縮している。

 サンダーソードの電気を通じてブレイスリザードの体の動きが伝わってきた。


「ルル!」


 それはルーフェも同じなのか、噛み付きブレスを中断してそのまま俺を乗せたまま大きく翼を広げて距離を取る。

 直後、ブレイスリザードを中心に黒い太陽の如き膜が放たれた。


 危なかった。

 アレに当たっていたら水龍の鱗があっても蒸発していたんじゃなかろうか。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオ!」


 黒い太陽と呼べる攻撃はしばらくすると消え、そこにはまだまだ戦意が落ちないブレイスリザードがそこにいた。


『愚かな人間と、共にいる愚かな魔物め! 神のごとき私をここまで怒らせるとは何事か!』

「おお、今更会話か?」


 追い込まれて今更喋ったか。


『ふん! 調子に乗りおって! その水の力、お前がマッドストリームを殺した奴なのはわかったぞ!』

「正解だな。正確には俺ではないが、俺が代表だ!」


 マッドストリームイヴィルオクトパスを倒したのはエロッチだからね。

 だけど、その場に俺も居たんだからエロッチに代わって宣言する。


「ルルン!」

『ここまで私を追い込むとは、勇気ある者か、はたまた狂人か。その武勇を讃え、ここで去れば後を追う真似はしない事を約束してやる。何なら褒美をやっても良いぞ? 近くの村に居る奴等に生贄を要求するからお前にやっても良い』

「その言葉に頷く奴がいると思ったか?」


 どこの悪党だ。

 そんな事に頷いて受取ろうものならサンダーソードに、エロッチに示しがつかん。


『ここで頷けば良い物を! 愚かな奴だ! いや、やはり狂人でしかない!』


 奥の手がまだあるかのようにブレイスリザードは後方でエネルギーを貯めていた水晶玉の力を解き放つ。

 黒い太陽は更に膨れ上がり、辺りを熱風で支配する。


『喜ぶが良い! お前の所為でこの辺り一帯は何人たりとも人間どもが入れなくなるのだ!』


 勝利を確信したとばかりにブレイスリザードは地表目掛けて黒い太陽を落とそうとしている。

 あそこにはリーサ達がいる。

 火山が噴火したら近くの人々が被害を受けるだろう。


 サンダーソードに力を込める。

 すると初めて紫電剣が発動した時のように俺の体を通じて電気が走って、次に何をすれば良いのか伝わってきた。


「ルル! チドリ! ルーフェもわかる!」


 それはルーフェも同様であるらしい。

 時間は残り少ない。

 ブレイスリザードが黒い太陽を落とす前に仕留めなければ!


「「迸るは雷光は信頼の力、神雷を宿す竜の牙よ邪なる者を屠り喉元を食いちぎれ!」」


 黒い太陽に張り合うように俺のサンダーソードとルーフェが青白い光を放ち、白い太陽と化す。


『何!?』


 ブレイスリザードが驚きの声を上げるが遅い。

 まるで俺達は雷の如き速度で動いているかのような錯覚を覚える。

 そして今までよりもはるかに強い雷がルーフェに向かって収束した。

 俺はそのまま導かれるようにブレイスリザード目掛けて飛び上がる。


「ルル!」


 それよりも早くルーフェが黒い太陽を落とさんとしているブレイスリザードの喉元に再度食らい付き……。

 プラズマドラゴンブラストを放つ。


 高圧縮された雷のブレスがブレイスリザードの喉を貫通し、後方の黒い太陽に突き刺さる。

 白い雷は黒い太陽の中に入って行った。

 直後、黒い太陽の中から白い光が漏れだし、黒い太陽が爆散していく。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 驚愕の表情を浮かべるブレイスリザードの眉間目掛けて今度は降り注ぐ。


「「ダブルプラズマファング!」」


 ザシュッとサンダーソードが深々と突き刺さるとサンダーソードとルーフェの魔力が反応して周囲の散り散りになりかかっていた雨雲が大きくなって雷が集約する。

 それから大きな爆発音が響いてブレイスリザードを爆発させた。

 煙が発生する中、俺はブレイスリザードを足場に跳躍し、離脱する。


「ルル!」


 合わせて離脱したルーフェが空中に出た俺を上手くキャッチして態勢を整える。


 手ごたえはあった。

 もはや技を放つ力も大分消費して、残り少なくなってきた所だが……。

 と言う所で爆発の煙から地面に向かって落ちていく影を見つける。


 敵わないと判断してリーサ達にターゲットを変えたかと思ったのは俺だけではないようでルーフェが羽を広げて追い縋る。

 が……ブレイスリザードの状態を見て一安心。


 そう……ブレイスリザードは全身の骨にヒビが入り、炎は見る影もなく消え去り、残ったのは骨と粘液上の体だけだった。

 間違いなく絶命している。


「仇は取ったぞ……」


 サレルの姉やリーサの学友だったスタッフクラスの生徒。

 そしてブレイスリザードに散らされてきた名も無き勇者達の、な。


「ルル!」

「ああ! ただ、注意はしないとな」

「ルルン!」


 落下するブレイスリザードの亡骸に合わせて俺達は地上へ降りたのだった。


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