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ナイトグロウ

「へー……」


 なんて思いながらナイトグロウを見ているとパチッと静電気が走り、サンダーソードからちょっとばかり電気が俺を伝って行く。

 ふわっと俺の視界でナイトグロウが淡く光りパッと花が咲いた。


「な、ナイトグロウがいきなり咲いた?」

「急いで収穫!」


 そう言って子供達が急いで花を刈り取って行った。


「何がどうなっているのかわかりませんが助かりました。この量のナイトグロウがあれば当分のお金を確保出来ますからね」

「しばらくは贅沢な食事が食べれそー」

「俺、ソードボアのヒレ肉ステーキを食いたーい」

「いやいや、トランペットオウムの焼き鳥が良いよー! この前大量入荷したとかで安いしー!」

「肉ー!」

「お肉ー!」


 食べざかりの孤児達の肉コール。

 本当、元気と言う言葉しか無い。


「美味しいお肉だったね」


 リーサが前に食べた感想を述べている。

 どっちも一応食べたもんね。


「トランペットオウムの焼き鳥の大量入荷……」


 レナさんが俺を見てる気がするので背を向ける。

 そう言えばあったね。道中で結構倒したからこっちに運ばれたんだろうさ。

 巡り巡るって言葉しか出ない。

 俺達もちょっと手伝ってナイトグロウの収穫は終わった。


「これも何かの縁です。記念にどうぞ」


 アルフレッドと孤児院の子が俺とリーサに一輪ずつナイトグロウをくれた。


「じゃあリーサ、持っていて。夜光って綺麗みたいだから部屋で飾っておこう」

「うん」


 押し花にして栞にするとかすると勿体無いかな?

 花の形自体は綺麗だし、俺の奴は押し花にするのも良いかもしれない。


「後で私も調査した方が良いかも知れないです。ナイトグロウが昼間に咲くなんて例が無いですから……それともチドリさんが振れた事に何か……雷を蓄積、いや、その例は過去の……」


 レナさんが熱心にナイトグロウの花をしきりに確認している。

 元々の能力が狩人で薬学に精通している感じだったからその辺りが地として出ているのだろう。


「とにかく、挨拶は終わりましたから、当初の目的であるギルドに行きましょうか」


 考えるのを中断してレナさんはそう提案してきた。


「そうですね。ちょっと時間も過ぎて来ていますし色々と見聞きしたいですから」

「では失礼しますね」

「はい。今日は立ち寄ってくれてありがとうございました」

「ギルドで会ったらよろしくー」


 なんて感じで孤児院の元気な子供たちと別れて俺達はギルドの方へと歩いて行ったのだった。

 その道中、リーサはナイトグロウを入れた袋の中をじーっと見つめていた。暗い袋の中では淡く光っているからよりわかりやすい。


 ちょっとした発光スティックみたいだ。

 花の形をしたオシャレな感じだし。


 髪止めとかブローチっぽくしたらリーサに似合いそう。

 うん。美少女って何を着せても花になるから得だなぁ。


「ここがイストラの総合ギルドです。専門のギルドの方が良い仕事があったりしますが、まずはここから紹介しました」


 で、俺達はレナさんに導かれてイストラの総合ギルドに到着した。

 おお……レイジールの総合ギルドよりもさらに大きい。

 掲示板から何まで倍以上ある。

 しかもイストラはいろんなギルドがあるらしい。

 ここで俺が聞くのは……ちょっと不自然かな?


「専門ギルドってどんな違いがあるの?」


 リーサが空気を読んでレナさんに尋ねる。


「物にもよるけれど、例えば魔法使いギルドとかだと錬金術なんかも扱っているから薬草類を高値で買ってくれるわ。杖の材料に使われる魔物の素材とかもそうね」

「前に総合ギルドは纏めて扱ってるからちょっと安く買い取りされるって聞いた……」

「そうね。ただ、悪い事ばかりじゃなくて、いろんな依頼が来るから専門的な事を知らなくても力を貸してくれる便利な場所なのよ? ここで実績を積めば専門ギルドからの直接依頼が指名される事もあるの」

「ふーん……魔術学園の生徒は?」

「魔法使いギルドからの斡旋される仕事が多いけど、総合ギルドで受ける事もあるわ。自分に合った仕事と仲間を探さないといけないからね。ここはそう言った専門ギルドとは違ういろんな人が集まる場所でもあるから、人を雇うのにも良いわ」


 一人じゃ出来ない事も仲間を集めてやれば出来る事が増えるからなぁ。

 固定パーティーで長く冒険するってのもよく聞く話だけど、依頼事に人員が変わる関係も顔が広がって得だ。

 この辺りは前の異世界とそこまで差は無いか。


「鍛冶ギルドは魔物の素材と鉱石、それと鉱石採取の依頼とかあるって話ですね。後は手伝いの募集……これは体力が無いと厳しいと思います。ああ、もちろん武具の依頼も受けてくれますよ」

「魔法使いギルドで弟子を募集とかありそうだね」

「ありますね。魔法使いの冒険者に弟子入りして実力を磨いてから魔術学園に入学しようって人もいます」

「魔法ってそこまで難しい?」


 リーサがここで首を傾げる。

 ああ、そういやリーサってアッサリと魔法を使ってるもんな。


「……リーサちゃん、そこで引っかからないって言うのは才能がある証なの。あんまりそこを無邪気で尋ねられると私も困るわ」

「……わかった」


 確かにリーサは魔法の才能があるのが電気治療でわかる。

 しかも水魔法の補助してくれる腕輪まで持っているのだから尚の事だろう。


「じゃあ今日は掲示板をちょっと見てみましょうか……何か手ごろに良い依頼があれば良いのですけど」

「緊急以外の依頼の更新時間とかわかります?」


 俺も前の異世界でそんな感じに依頼を受けた覚えがある。

 凄腕の仲間は指名依頼とか来てたな。

 俺も些細な指名はあったけど……大きな奴が来るのは稀だった。

 特に一番大きなあの戦い以降は凡人だった俺に来る依頼は……。

 悲しくなるね。


「飛び込みの依頼も多いですからねー……」


 なんて言いながら俺達は掲示板で良さそうな依頼を確認していたのだった。

 とりあえず依頼の相場とかいろんな目を養わないと無駄な仕事とかをしてしまう。

 ここは世界が変わっても役立つ知識と役立たない知識と言うのがあるから馬鹿に出来ない。


 どこかの酒場で皿洗いのバイトでもする所から始めるべきか?

 いやいや、魔物を倒してお金を稼ぐのも良いはず……じゃなきゃサンダーソードが勿体無い。

 俺は飾る為にサンダーソードを手にした訳じゃないんだ。


 ちなみに教官に教わった通り、確かに依頼のメモに触ったら頭に声が響いて聞こえた。

 便利な技術がこの世界には浸透しているんだなぁ。

 一々触って音声を聞きとらないといけないから文字が読める方が便利だけどさ。


 賞金首となっている魔物の情報も掲示板にはあるみたいだ。

 やはり魔石を納品すれば達成扱いとなる。


 ……マッドストリームイヴィルオクトパスは俺が倒した訳じゃないし挑むのは無謀か。

 シュタイナー氏からまだ報酬は受け取っていないし、とりあえず目を養う事を優先しなくては。

 そう思って依頼をチェックして行く。


 当然のことながら入手難易度の軽い薬草や倒しやすい魔物は報酬もそれなりか。

 一応、レナさんから薬草に関して教わっているから俺も身の丈にあった薬草採取の依頼とかをやって行くのが良いだろう。

 前の世界の経験が役立たない所と言うのは中々に面倒だ。

 詳しい事まではわからない場合は受付の人に詳しく聞くのが無難なんだろう。


 後は魔物退治とか、食料向けの魔物を持ちかえるのは儲けやすいな。

 魔石も燃料として取引されている訳だし……。

 ダンジョン探索なんかもあるみたいだけどそれは後日って所かな。

 ある程度、依頼の相場に関しては目は通せた。


「それじゃあ日も暮れてきましたし、帰りましょうか」


 総合ギルドの窓から夕陽が見えてきたので提案する。


「うん」

「そうですね。あの……依頼を受けなくて良かったのですか?」


 レナさんの質問に俺は頷く。


「明日また見に行こうと思ってるよ。今は色々とこの町と近隣の情報を知るのが先だからね」

「では後で地図を用意しましょうか? 余っていたと思いますし、色々とチドリさん達にはお世話になってますからね」

「ありがとうございます」


 と言う訳で俺達は総合ギルドを後にして家路についたのだった。


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