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電気治療

「は、はい。お爺ちゃんみたいな大魔術師になるのが夢です。ただ……その……魔法があまり上手く出来なくて……使えない訳じゃないんですよ?」

「別にワシの様にならんでもレナはレナにしか出来ない事をすれば良いと思うのじゃがな……」


 く……空気が重い。


「その分、調合学や錬金術は良い成績を出しておるじゃろう」

「それでも……諦められないです」


 と、レナさんは本に意識を向けている。

 これは……アレだな。


「勉強も重要ですけど、あまり根を詰めますと肩凝りになりますよ?」

「ですが……」

「この際ですから電気治療をしましょう。そうしたら頭がすっきりして学習効率が上がるかもしれませんよ」


 祖父が祖父なだけに肩凝り腰痛のマイナス技能があるかもしれないしな。


「うむ……それが良いかもしれんな。じゃが……あんまり孫娘に妙な事はせんでくれよ?」


 ああ、マッサージで淫らな所に触る事は許さないって言いたいのね。

 大丈夫だよ。

 シュタイナー氏と同じ場所しか触らないから。

 しかも触るのは俺の手ではなく、サンダーソードだ。


「特にその剣……ワシの見立てが間違って無ければ相当の業物ではないだろうか?」


 お? やっぱりわかる?

 まあシュタイナー氏ほどの人物ならわかって当然だろう。


「この剣を手に入れるのに俺も随分と苦労したんですよ。俺にとっては命よりも代えがたい代物なんですよ!」

「あの……」


 ここで自慢をしようと思っていると、リーサが近寄って来て服の裾を掴む。

 どうしたのだろうか?

 そう思ったけれど、レイジールでの事を思い出す。

 ああ……あんまり見せびらかすのは良くないって注意したいのかな?

 そうだね。じゃあやめておこうか。

 俺が頷くとリーサも察したのか手を放して離れた所に座る。


「電気治療ですが、シュタイナー氏が見て居れば大丈夫でしょう?」

「まあ、そうじゃな」

「では座るか横になって背を向けてください」

「は、はい……マッサージは屋敷で経験した事はありますけど……」

「彼のは効くぞ。レナ、これで長旅の凝りもバッチシじゃ」


 一応シュタイナー氏の肩凝り腰痛が解消したお陰で動きは随分と良くなったっぽいんだ。

 だから太鼓判だけはしてくれる。

 凄く感謝されたしな。


 そんな訳でレナさんは恐る恐ると言った様子でうつ伏せに横になってくれた。

 俺はサンダーソードをレナさんの背骨に沿って立ててシュタイナー氏に施した時と同じく電気治療を意識する。


「あ、あぁぁんっ……! あっ……なっ、なんか効いてるのがわかりますっ」


 パチパチとサンダーソードの鍔の部分から弱電が出てレナさんの背中に当たって行く。

 やがて……やはりと言うか、魔石に電気が通ったのか俺の視界にステータスが表示された。



 レナ=トーレル Lv29 女 種族 人間 職業 魔法使いLv19

 習得技能 知識向上3 体力向上2 生命力上昇・代償魔力 命中向上4 素早さ向上1

 ボウマスタリー4 潜伏技能1 気配察知1

 風属性魔法修練2 四属性魔法修練2

 採取技能7 調合技能7 交渉術2

 スキルポイント26



「あっ……効くううううう……」


 うーん……申し訳ないけど、どちらかと言えば狩人に向いていそうな技能構成だ。

 転職は経験しているのか、狩人の部分もLvが上がっている。

 調合技能も高めだから錬金術師とかあるならそっちが向いているかもしれない。

 細かい部分も魔力が低いな。

 正直、魔法は向いていない。


 どうしてこんな微妙な技能振りをしているんだ?

 スキルポイントも無駄に余らせている様な気がする。

 これだけあれば魔法使い向けにする事も可能なはずだ。


「……」


 ふと、シュタイナー氏に目を向ける。

 なんか切ない目でこっちを見ている。

 周囲の調査団の人達の白い眼も何か痛い。

 孫娘がマッサージで漏らすちょっとエッチな声は確かにあまり聞きたい物じゃないよなぁ。

 出来るだけ早く終わらせよう。


 しかし、なんとなく疑問に思い始めていたのだが、もしかしたらこの技能って……俺以外には見えないんだろうか?

 薄々そう思えて来ている。

 リーサに確認を取った方が良いかもしれないな。

 かと言ってマッサージ中に聞くとかなり怪しまれそう。


「レナさん、実は魔法に効くツボを俺は知っているんですけど、試して見ますか?」

「ああぁぁぁ……は、は……いぃいいいっ」


 おお、ここで答えるとは、レナさんが答えられなかったらシュタイナー氏に尋ねようと思ったのだが、それなら良いか。

 とりあえず……習得出来る技能を確認、覚えている範囲でシュタイナー氏に近付く様にスキルポイントを割り振ってみよう。


 まずは生命力上昇・代償魔力という一番の患部な部分。

 おそらくこれの所為で魔力が低くなってしまっている。

 マイナス技能とも思えるが、その分恩恵があるから下手に割り振るとパワーアップしかねない。

 意識して確認してみよう。



 生命力上昇・代償魔力

 魔力を下げ、その分生命力を上昇させる。



 これはパーセントの割合が出ている。

 どうやら技能を上げる毎にこの割合が上がってしまう様だ。


 戦士とか狩人として魔法とは縁を遠くするなら意味があるのかもしれない。

 けれどこれを上げるとレナさんの目標は遠のいてしまう。

 となるとレナさんに必要なのは基礎の魔力部分だ。

 逆に代償系で魔力を上げれる物は……あった。



 魔力上昇・代償力

 力を下げ、その分魔力を上昇させる。



 腕力が下がってしまうけれど、レナさんの腕力は全体で見れば……どうにか出来る範囲だろう。

 いきなり下がったら違和感を持たれるか?

 とりあえず現在の状況を維持する為に力向上も習得しておけば良いか。


 後は祖父のシュタイナー氏が所持していた技能を参考に習得出来る技能を照らし合わせ……。

 魔力向上を発見、シュタイナー氏の時は『?』でわからなかったけれどコレだろう。

 5くらいは振っておいた方が良いかな?

 で、魔力操作を4振って、残り15。

 マジックマスタリーと魔力回復向上をそれぞれ4ずつ振って残り7。


「シュタイナー氏、どの属性の魔法をレナさんは覚えたいのでしょうか? そのツボを刺激します」

「四属性ならどれでも良い。そこから始めるのが無難じゃ」


 ならそのまま四属性魔法修練を割り振るか。

 四属性魔法修練を7まで上げる。

 汎用の幅が広い分、倍率が専門よりも低めのようだけど重複するみたいなので、この辺りで良いだろう。

 おや? 精霊魔法使いって職業が開いたみたいだ。

 結果……。



 レナ=トーレル Lv29 女 種族 人間 職業 魔法使いLv19

 習得技能 力向上1 魔力向上5 知識向上3 体力向上2 生命力上昇・代償魔力 魔力上昇・代償力

 視力向上4 魔力操作4 素早さ向上1

 マジックマスタリー4 ボウマスタリー4 潜伏技能1 気配察知1

 魔力回復力向上4 風属性魔法修練2 四属性魔法修練7

 採取技能7 調合技能7 交渉術2

 スキルポイント0



 とりあえずこんな所かな?

 四属性魔法は祖父のシュタイナー氏と同じくらいにまで上がったぞ。

 なので電気治療をやめる。


「ぁぁっ……んっ……」


 やっぱ女の子のこう言った声はちょっと赤面してしまう。

 何かに目覚めてしまいそうだ。

 だが、俺はサンダーソードの使い手として健全でなければならない。

 えっちな事はしっかりとした交際の後、結婚してからだ。


「な……なんか体の奥底が温かい感じがします。確かに良いですね、お爺ちゃん」

「そうじゃろそうじゃろ」

「チドリさん、ありがとうございます」

「いえいえ」

「……」


 リーサがなんか見つめて来る。

 その目はなんかイヤな感じがするなぁ。

 俺に邪な気持ちは無いぞ?

 ステータスの調整が難しくて、そんな物を考える暇すらなかったからな。

 俺は真剣な眼差しでリーサに応えた。

 サンダーソードを持つ者は誠実でなくてはならないのだ。


 それともリーサもサンダーソードに興味があるんだろうか?

 なんなら今度、色々と話してみようかな。


「それでは早速魔法の練習をしてみましょう」

「はい」


 で、レナさんは先ほどの様に魔法を唱え始める。

 すると霞が手の先に出るくらいだったものがしっかりと水が何処からともなく凝縮して藪に向かって射出された。


「や、やった! 今まで上手く行くのに凄く力を込めなきゃ行けなかったのに、簡単に出来た!」

「やったのう! 第一歩じゃぞ」

「やりましたね」

「はい!」


 レナさんは飛び上がる様な笑顔をこっちに向けて来る。

 それからリーサの方に顔を向けて同じ目線になって声を掛ける。


「一緒に魔法の練習をしましょ? 良い?」

「うん」

「じゃあ今日のお爺ちゃんが教えてくれた所を復習しましょう。まずは詠唱をして……」


 と、まるで姉妹の様にレナさんは前よりも親しい様子でリーサと一緒に魔法の練習を始めた。


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