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賞金

「分け前はどうします?」


 俺は教官に尋ねると、教官は眉を寄せて俺を見て来る。


「お前が秒殺したんだから……お前の物で良い」

「そうですか。じゃあリーサ、いつも通り解体を手伝って」

「うん」


 そんな訳で俺はイノシシ……ソードボアって言うんだっけ。

 そそくさと解体して行ったのだった。

 魔石が他のイノシシに比べて綺麗だな。

 血抜きもしっかりとしてー……なんか淡く光って見える。

 もしやこれはサバイバル技能で解体に何らかの魔法補正が掛っているのではないだろうか?

 リーサの水の魔法で血を洗い飛ばして血抜きを行った。


「……」


 教官が何か言いたそうにしているけれど、気にせず行く。


「解体も終わった。じゃ、帰りましょうかね」


 どうもイノシシの匂いが辺りに漂っている所為で魔物も近づいて来る気配も無い。

 目当ての薬草も他の新米冒険者の為に採取して行ったら悪いからね。


「今度は私も戦いたい」

「そうだね。手ごろな魔物が居たらリーサに頼もうかな」

「がんばる」


 なんて感じで俺達は大物を倒して町へと帰ったのだった。

 肉類は……担いで持って行く方が面倒だったかな。




 大きなイノシシ……ソードボアの亜種の主を倒した俺達は足早に町に戻ってきた。

 一応昼頃に戻ってくる事が出来たかな?


「失礼しまーす」


 俺はソードボアの亜種を解体した物を総合ギルドの買い取りカウンターにドンと提出する。

 いやぁ……重かった。

 教官にも手伝って貰ってやっと持って来れた。ちなみに素材買い取りの一部は運んで貰ったお礼として渡す約束はしている。

 買い取り時に俺を介さずに渡してくれるそうだ。


「確かに、薬草ルートーンですね。それでは報酬を支払います。本日は依頼の達成、誠にありがとうございました」


 リーサが依頼を受けたカウンターに薬草を持って行くと小額の報酬として銅貨を5枚貰う。

 体験授業って感じで受付の人もリーサを相手に笑顔で相手をしている。


「あ、ありがとうございました」


 リーサもちょっと照れくさそうにお辞儀をして俺の所に戻ってきた。


「これ……」


 それでリーサが俺に銅貨を渡そうとして来る。


「気にしなくて良いよ。リーサ、君が好きに使って」

「でも……」

「君が初めて依頼を達成した大事なお金なんだ。君が使ってくれる方が俺は嬉しい」


 俺はリーサの視線にまで腰を落として諭す様に言う。

 さすがにね。これはリーサが受けた依頼であるし、リーサのこれからの為の教育でもある。


「……はい、わかりました」

「うん」


 思わず撫でたくなる謙虚さだなぁ。撫でても良いのだろうか?

 そう思って恐る恐る頭を撫でると、リーサはちょっと恥ずかしそうに俯いてしまう。


「あー……これにて初級の基礎講座は終わりだ。補足になるが、難易度の高い依頼を受ける場合は相応の実績が必要になる。十分に理解してくれ」


 教官が俺達のやり取りを見ながら説明を終わらせる。

 まあ、大体分かってきたし問題は無さそうだ。


「それじゃあな」

「本日はありがとうございました」

「ありがとうございました」


 俺とリーサがお礼を言うと教官は若干首を傾げつつ背を向けて歩いて行く。


「さて……これからどうしたものかな」

「倒した魔物の素材を売る?」

「そうだね。魔石はどうしようかな」


 なんか聞いた感じだとレアな魔物っぽいからサンダーソードに装着してみるのも良いかもしれない。

 その場合は同種の下位個体のアンバーソードボアの魔石は売っても良さそうかな。


「魔石はいつでも売れるし、ちょっと使い道があるから残したい奴は持っていて良いかい?」

「うん。チドリさんが倒したんだから気にしないで」

「ありがとう。それじゃあ、色々と素材を買い取って貰おうか。良い収入になると良いね」


 なんて話をしていると、教官がちょっと離れた所で学者っぽい眼鏡を掛けた男性と何やら話を始める。

 よく聞こえないし、盗み聞きも悪いよな。

 しかし、薄っすらと聞こえる。


「それは本当なのか? じゃあ……さっき出てきた魔物はその影響で住処から逃げてきたと言う事かもしれんな」

「ええ……確かに、確認しました。ラング村近くの滝を汚染していた邪悪な主であるマッドストリームイヴィルオクトパスは討伐され、あの地近隣の守護をしていた水龍エアクリフォが蘇った様です。土地がどんどん浄化されて行っています」

「土地を汚し、無数の挑戦者を亡き者にしていたあの邪悪な魔物をよくもまあ……一体何者なのだ? 奴を仕留めた奴とは」

「それが……よくわかっていません。しかし水龍エアクリフォが近隣の村に対して相当怒っていた様で……ただ、滝の近くにマッドストリームイヴィルオクトパスの死体が討ち捨てられていました。見た所、とてつもない高威力の雷を受けて絶命したのだろうと……」

「とてつもない高威力の雷……?」


 なんか教官が俺達の方を見ている様な気がする。

 聞こえた会話の中にエアクリフォの名前があったし、やばいかもしれない。


「更に、生死は不明ですが生贄に出された村娘が居たそうです。もう村の者達は水龍の機嫌を治させる為に生きているなら献上しようとしていて、近隣を探しまわっている様でかなり不快でしたね。ありゃあ近い内にエアクリフォから罰が下るんじゃないかと……」

「生贄の村娘……?」


 なんか教官とその隣の学者っぽい人が俺達を見ている。

 まあ我ながら見るからに該当する人物達だとは思うが。

 やがて教官は俺達の方にやってきた。


「説明を忘れていた事なんだが……」

「なんですか?」

「この辺り近隣で悪さをする様な人物や魔物なんかが賞金を課せられている事があったりする。その相手を倒し、倒した証明として魔石を専用のカウンターに見せると相応の賞金がもらえたりするぞ。何か大玉を倒したりしたら確認してみると良い」

「それって魔石は換金されちゃうんですか?」

「いや、それとは別だから安心しろ。もちろん頼めばその場で買い取りもしてくれるがな……金がいるだろ?」


 へー……そんな副次効果もあるのか。

 賞金首は俺が居た方の異世界でもあったけど、その場合倒した証明が面倒だったな。

 俺は手伝った程度で主動で関わる事は無かったけれど……こう、死体とか首とかを持って行く感じだった。

 魔石で証明出来るなら良いのかもしれない。


 ……今後の為に確認はしておいた方が良いか。

 この街の人達がどういう行動に出るかの確認もしておきたい。

 教官の金がいるだろ? というのがどういう意味であるのか、少々気になるしな。

 場合によっては、早めにこの町を出た方が良い。

 とはいえ、リーサが住んでいた村の人達に対して嫌悪感を示している所から信用したい……と思っている。


 町を出る場合、路銀が必要だ。

 そして出来るだけ多い方が望ましい。

 少々危険ではあるが、その路銀は魔石の買い取りで賄おう。


 そうして魔石買い取りカウンターに行く。

 なんか黙って教官が俺達に付いて来ているんだけど……。


「いらっしゃい」

「ちょっとこの魔石の確認をお願いして良い? 大物っぽかったから」

「ああ、わかった」


 受付の男性が魔石を受け取り、ルーペで何やら魔石を凝視している。

 それから……なんか台座みたいな物の上に置くと魔石が浮かび上がってちょっと光り出した。

 オシャレな小物って感じだなぁ、インテリアに良さそう。


「随分と純度の高いボア系の魔石だな……あっちで買い取りしている奴の物か?」

「ええ」

「ふむ……」


 で、なんかカウンターの下から書類の束を捲って確認している。


「グレークリムゾンブレードボアの魔石だな。小額だが数日前に懸賞金が掛っている。これが報酬だ」


 そう言って、専用カウンターの人が銀貨5枚をくれた。

 確かに小額ではある。

 でも稼ぎには良いかもしれないな。


「ついでに買い取りをするか?」

「いえ、今回はやめておきます」

「そうか」


 さて、次が本命だ。


「じゃあ……次はこっちでお願いします。これも買い取りはせずに確認だけお願いします」


 俺はグレークリムゾンブレードボアの魔石を受け取り、腰に差しているサンダーソードをマントの裏に回してグレークリムゾンブレードボアの魔石と、マッドストリームイヴィルオクトパスの魔石を交換する。

 交換してマッドストリームイヴィルオクトパスの魔石を見てもらう事にした。


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