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実録!婚活サイト

これはある婚活サイトでのメッセージのやりとりの実録(コピペ)である その8

作者: 竹井閑山

某婚活サイトでの、私とaさん(46歳・女性・婚歴なし・子どもなし)のやりとり。

【私からaさんへ】

aさん。こんばんは。初めまして。

僕は郵便局で、深夜の仕分け作業をしています。

今日は仕事明けで、仕事は非番です。

サンサ右京(右京区総合庁舎)の近くに住んでいますが、実家は八坂の塔の下で、両親は健在です。

実家にしろ、現住所にしろ、読書が好きなので、図書館に近いというのが何よりです。

先週の朝、帰りがけの電車で、図書館で借りた田辺聖子さんの『新源氏物語』下巻を読み終えました。

文庫本で上中下巻総数1600ページ。この名作の舞台に住んでいることに、感謝せずにおれませんでした。

今晩中に、宇治十帖を読み終える予定です。

aさんは、最近どんなものを読まれましたか?


【aさんから私へ】

こんばんは。

私はこの頃は芥川龍之介を読んでいますが、

私には難しいかもしれません。

でも描写がとても繊細でその部分に惹かれます。

古の雅な世界が今にも残る京都に住んでいらっしゃるのは本当に素晴らしいですね。


【私からaさんへ】

こんばんは。

以前、短大の教務課に勤めていた時に、文芸専攻の学生さんの調書を閲覧する機会があって、その「愛読書」欄を眺めていると、『杜子春』を挙げた方が複数名いらっしゃったんですね。

当時の高校の教科書に載っていた『こころ』を選んだ人が何人かいたのはともかく、直近の読書体験以外から抽出された印象に残るお話として『杜子春』が出てくるというのは、とてもよくわかるように思いました。

おもしろいのは、『ラヴクラフト全集』と書いた人も何人かいて、女子の一部にコアなホラー・ファンがいるというのも、ゴスロリのはしりだった時勢もあるけれど、本質的にそうなのかなと感じたものです。

僕は、芥川龍之介は、随筆や評論など、思うところをストレートに述べた作品が好きです。

aさんのおすすめの本、愛読書を是非教えてください。


【aさんから私へ】

こんばんは。

私は特に愛読書と呼ぶものがなく、いろいろおすすめを教えていただけましたらと存じます。

今日も一日肌寒かったですね。

秋が今年も短いのでしょうか・・


【私からaさんへ】

こんにちは。

僕はmatch登録女性プロフの「最近読んだもの」をいつもチェックしているのですが、今月はその中から湊かなえ『告白』、原田マハ『楽園のカンヴァス』、篠田節子『インドクリスタル』を読みました。それぞれに充実した読書時間を約束してくれる秀作だと思いましたが、人にすすめるとなるとどうでしょう。

ゆうべ宇治十帖を読み終えた田辺源氏もmatch会員女性のおすすめ本で(日本語が美しいとのことでした)、図書館から借りてきたのですが(大抵買わずに図書館で借ります)、これはもとが千年もの間読み継がれてきた古典だけによかったです。通巻5巻の第2巻目中「真木柱」の巻で、鬚黒の大将が若い愛人の玉鬘(たまかずら)のもとへと通う夜、正妻北の方は甲斐甲斐しく夫の身支度を手伝いますが、理性では詮無いことと悲しみを押し隠していても、やがてこらえきれなくなり、とうとう発狂してしまうくだりは迫真の描写です。「火取りをとりよせ、大将の着物に香を()きしめた」という風に、北の方の屈辱に寄り添った場面がさりげなく示されるので、発狂に至る展開に説得力があるのです。ついには火取りを引き寄せ、大将のうしろからぱっと浴びせ、灰が真っ白に舞い立つ。「ほほほほ。いい気味だ、その恰好で六條院へ行かれるがよい。玉鬘の姫君とやらが、さぞ可愛がって下さいますよ……」

matchとは関係なく、僕個人からaさんへのおすすめがトマス・ハーディの『日陰者ジュード』。中公文庫から上下2巻で出ていましたが、現在は品切れです。図書館には置いてあるかもしれません。ただし川本静子の新訳に限ります。

このストーリーを昼おびで連続ドラマにしたら受けるのではと思うくらいですが(そういえば数年前にドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』をドラマ化した番組を昼おびでやってましたね。吉田鋼太郎の出演で)、ラスト近くに衝撃的シーンがあり、さすがに現代でも(いや現代だからこそ?)映像化はNGかもしれません。

トマス・ハーディは『テス』が代表作の英国の文豪ですが、『日陰者ジュード』のほうが数段おもしろい。

ましてノーベル文学賞受賞をきっかけに原作ドラマの再放送が決定したカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』より断然おもしろい。ファンだったらごめんなさい。

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